活動方針2012

Ⅰ.私たちを取り巻く情勢

1.世界経済の状況

2012年の世界経済の足取りは、引き続き危険な崖っぷちを歩いていると言えます。


ギリシャ危機を発端としたユーロの危機は、EU各国の協調によって一端は最悪の事態を回避しましたが、その根本的な問題は解決されていません。

・単一通貨ユーロと、各国の財政政策の個別性の矛盾が今後も拡大していくと予想される。

・緊縮財政→景気後退→財政悪化の悪循環に陥っている。

・ギリシャ危機の回避のために事実上のデフォルト実行(CAC)を行ったことにより他のEU諸国の信用不安に一層の拍車がかかるなどの新たな問題も起こっています。

ユーロの危機は続くと見なければなりません。

一方、アメリカ経済は堅調に回復していると言われます。しかしそれは連邦政府の負債上限を超えてしまうほどの巨額の財政出動と言うカンフル剤によってもたらされたものです。重要な景気回復の指標としての雇用を見ると09年までのリセッションにより失われた860万人の雇用の3割しか回復していません。住宅価格も回復の兆しがみられません。これらの指標の回復の遅れはアメリカのGDPの70%を占める個人消費がまだまだ回復していないことを表しています。そして政府の財政出動ももはや限界にきており新たな打ち手が限られていることが、今年のアメリカ経済の最大の問題と言えるでしょう。

中国をはじめとしたアジア諸国の変化も急です。
「沸騰」と形容される高度成長の中で振興各国はインフレの危機に直面しています。また中国では地方政府の超過債務問題、その結果としての銀行の不良債権問題、EUの景気後退による輸出減少、中小企業の経営難などの難問を抱え込みながら、中国政府は経済の緩やかなクールダウンと、世界経済に影響されにくい内需の育成を模索しています。

2000年から2007年の8年間、世界経済は一人当たりGDPで歴史上もっとも高い成長を遂げました。しかしそれは良いことばかりでありませんでした。現在の世界の経済環境は、資本主義の内包する大きな矛盾の史上最大の変化過程であるのかも知れません。

2.日本経済の現況

世界経済の激変の中で日本経済も大きな困難を抱えています。欧米の経済動向にあまりにも簡単に振り回される通貨=円は、日本の経済や国民の暮らしが、グローバル経済の荒波にのみこまれようとしている典型かもしれません。もともと、日本経済は21世紀初頭の世界経済の高度成長とは裏腹に1990年のバブル崩壊以来、一貫してデフレ基調が続き、また労働力人口も2005年にピークアウトして、毎年30万人程度減少、また60歳以上の比率も20%を大きく超えていくと予想されています。少子化・高齢化による人口減少も重要なトレンドです。

しかし一方で戦後、国民や企業の努力で分厚く蓄積されてきたストック(国家資産)は世界でも群を抜いていることを無視してはなりません。日本の個人金融資産は1483兆円(2011年12月)で、過半が現預金。3年間で100兆円減少しているとは言え、世界のヘッジファンドの運用資金が百数十兆円と言われる中で、その10倍の流動性資金が日本の金融機関に眠っているのです。また上位1%の富裕層が保有している個人金融資産の割合は、アメリカでは40%、日本では20%と言う比較的フラットな構造も特徴と言えます。要はこの資産を、国民の合意を形成しながら、いかに今後の安定的な経済の発展に役立てるのかが問われていると言えます。

政府は「消費税増税」によりこの虎の子の金融資産を、社会保障財源や政府財政の赤字(過去の損失)の補てんに充てようとしていますが、これは全く本末転倒、“角をためて牛を殺す”の格言どうりの悪手であると言わざるを得ません。2010年に閣議決定された“中小企業憲章”の精神を生かし「経済をけん引する力」である中小企業が存続・発展できる環境整備につとめ「積極果敢な挑戦を続け、多くの難局~を乗り越え」る取組を支援することが大切だと言えます。

新しいビジネスや成長の芽は中小企業の中にあります。また中小企業は目先の利益よりも、長期的に安定した雇用を実現する特性があります。グローバル経済の荒波から国内や地域の経済を守り、自立した安定的な地域経済を確立していくためには「中小企業憲章」の精神の具体化が必須と言えるでしょう。またそのような重大な役割を担うべき私たち、中小企業家の自覚と一層の努力も不可欠であることは言うまでもありません。

再び1年延長された「金融円滑化法」の利用企業は30万社にも上ると言われています。仮にこれらの企業の平均従業員数を10名前後とみると、急激な変化は300万人にも上る失業者を生み、国家財政に与える影響は莫大なものとなります。前述の労働力人口の減少を前提に今後10年程度はソフトランディングと産業構造の切り替えの期間とみるべきだと思います。この10年はGDPの低下を可能な限り抑え、年次のプライマリバランスの黒字化を目指して、産業の在り方を変えていく10年でもあります。

原発事故の反省を踏まえ、太陽光や風力、バイオマスや地熱利用など多彩な新エネルギーへの転換をはかり、デンマークのように自然エネルギーを中心としながら高いエネルギー自給率を実現し、さらに輸出産業として育てていく発想が求められます。また衣料、食品、住宅建築、1次産業、小売り、サービス業などの中小企業が主体の分野でも、高い品質と感性、本物の感動を与えることのできる新しい“ビジネスモデル”の芽生えが見られます。これらの産業は実は世界的な競争力、参入障壁も非常に高いので有力な輸出産業へと育てることも可能です。

実は1951年には黒字企業の割合は83.5%もありました。それが現在の25%程度へと60年間で大きく減少してしまったのです。ここに日本の経済の今日の課題と、明日への希望があると言えないでしょうか。事実、2011年の一人当たりGDPでみると日本は、米国のそれを上回りG7の中で1位の座を占めています。(円高の影響もありますが)また、勤労者の80%を占める中小企業の一人当たりGDPでも、ドイツの平均にちかくイギリスやイタリアを上回っています。問題が多いと思える現在の中小企業の経済的実力がこれです。「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」「どんな問題も中小企業の立場で考えていく」と謳う「中小企業憲章」の根拠はまさにここにあると言えます。

3.滋賀県の中小企業・自営業をめぐる情勢と課題

全国平均よりも10%程度、2次産業の構成比率が高い滋賀県は、円高、国内市場の停滞・後退、新興国の市場規模の拡大、震災リスク、エネルギー問題などによりかつてない危機に見舞われています。また06年~09年では廃業率が開業率の2倍以上と急激に企業数の減少が起こっています。09年の県内総生産(名目)も08年に引き続き対前年比▲2.7%の大幅な減少となりました(08年度は対前年比▲3.6%)。従来比較的高いパフォーマンスを発揮してきた県経済は大きな曲がり角を迎えたと言っても過言ではないでしょう。

中小企業家同友会では8年前から、「中小企業振興基本条例」の制定をスタートとして、県経済を輸出型製造業およびその下請け企業を中心とした、いわば一本足打法の経済から、地域の特性や、強み、伝統や文化、人材と言った資源をバランスよく活用する「多角的多面的経済」への転換を提言してきました。その結果2010年11月に嘉田知事は「中小企業振興条例」の制定を県議会で表明されるに至りました。ただ元々、嘉田知事はその選挙公約(マニフェスト)にこの条例の制定を掲げられていましたので、「やっと」の感は否めません。今後は、この「条例」を、作成過程を含めて真に実効あるものにしていくのか、従来のリーディング産業先行の考え方を踏襲するのかが問われていると言えます。他府県の先行事例などを勘案し、「条例」を有効なものにし、滋賀県経済のパフォーマンスを回復させていくためには下記の点がポイントになると言えます。

1)従業員20名以下(業種により5名以下)の小規模企業の問題が非常に大きいと考えられるので、調査・実施への参画・推移の観測などを含めて、小規模企業に十分配慮した「条例」制定、その後の執行が重要です。

2)中小企業の活性化は、「3KBI」のようなリーディング産業偏重の「選択と集中」路線では実現できません。地域や中小企業の多様な強みを生かすため、市町など現場にできるだけ近い場所での、「条例」制定、中小企業家や、行政、研究者、有意な市民が日常的に連携できる「地域産業振興会議」(仮称)が不可欠です。またこの観点から「条例」の中で具体的な経済活性化策に言及することも避けるべきです。

3)現在、県の中に「中小企業」の名前を冠した部署は皆無です。この問題の重要性にかんがみ、知事直轄で「中小企業振興課」(仮称)を設け、様々な課題にワンストップで対応できる部署を設ける必要があります。またこの課題に対しては行政職員の自発的参画も大切です。専門部署の設置に当たり、単なる命令による配属ではなく、やる気のある職員の配置が必要です。

同友会会員の数々の実践事例を見ると、安売り大手の進出にもびくともせず、顧客のニーズを活かして着実に業績を上げている小売り店、衣類や住宅のリフォームと言う手間ヒマかかる仕事に強みを発揮し成長している企業、大手の下請けに依存せず、環境に優しい革新的な薪ストーブを開発している会員グループなど多くの事例が生まれています。これらに学び、「どんな問題も中小企業の立場で考えて」行けば、県経済を再び安定的発展のレールに乗せることは不可能ではありません。

Ⅱ.2012年度スローガン

「中小企業憲章」を高く掲げ、人と社会を幸せにする

強靱な企業づくり運動を進めよう!

~今こそ経営姿勢を確立し、経営指針の実践と社員共育を!~ -------------------------------------------------

Ⅲ.重点方針

90年代から続く出口のない不況。ワーキングプアと呼ばれる貧しい人々の増加、不安定雇用の増大。リーマンショックを引きずりつつ、何とか先が見えるかというタイミングで、突如として東日本の太平洋岸を襲った大地震、大津波、そして東京電力福島第一原子力発電所の大事故。さらに欧州の財政危機と円高。私たち中小企業を取り巻く経営環境と現場の状況は、本当に厳しいとしか言いようがありません。金融安定化法が再延長された下で、何とか息を繋いでいるものの、本業の再建まではおぼつかないことから、経営者の心が折れ倒産、廃業の危機が進んでいます。廃業率(H18~21年 滋賀5.6パーセント)が開業率(同2.7パーセント)を上回り、デフレの下で原材料と燃料高が進み、労使共に必死の経営努力の中で、経営を維持しているのが現状です。

政府が「中小企業憲章」を閣議決定して、今年の6月で丸2年となります。基本理念で「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である」と、政治史上初めて中小企業の社会的役割を明確にし、「どんな問題も中小企業の立場で考えていく」と国の政策理念を明らかにしました。しかし、その後の政府の姿勢はどのように変化したのでしょうか。

いま、日本経済は大きな岐路に立たされています。それは、野放図なグローバル化と、より一層の市場競争による経済成長第一主義の道なのか、地域と共に歩む中小企業の経営を強くし、そこに暮らす人々の幸せな生活に思いをはせる、持続可能な経済を歩む道を歩むのか。

私たちは「中小企業憲章」の理念を高く掲げ、大地震、大津波、そして原発事故の被害にあった仲間と人々の暮らしの復興を願いできる限りの支援を継続すると共に、よりよい経営環境の実現に向けて提言し、同友会理念の下で地域に軸足を置き、世界の人々とも繋がりながら、人と社会を幸せにする理念型の経営を実践してまいりたいものです。

同友会理念とは、良い会社・良い経営者・良い経営環境の実現を、自主・民主・連帯の精神で追求し、国民や地域社会と共に歩む中小企業となることです。

同友会理念を体言する企業は、21世紀型中小企業像として次の通りまとめられています。(中同協第25回総会宣言1993年7月9日)

○第1に、自社の存在意義を改めて問い直すとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準でこたえられる企業。

○第2に、社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。

人と社会を幸せにする企業とは、会員一人ひとりが「21世紀型中小企業」の有り様を自ら考え自社に適用し、創造的な実践を積み重ねた上に生まれてくるものでしょう。

同友会の会員企業には、この厳しい経営環境の下でも、元気な企業がたくさんあります。

それは、同友会理念による「21世紀型中小企業」を目指す経営、人を心から大切にする経営実践がすでに実りはじめていることの証です。

世界も日本も大きく変わろうとしている情勢の下で、私たちは科学性・社会性・人間性の側面から経営姿勢と経営指針を見直し、社員との共育ちにより活力のある経営を実現し、地域を活性化させ県民の幸福を実現する主役=社会の主役は中小企業であると定める中小企業振興基本条例の制定と担い手を目指し、滋賀県経済の再生を進めてまいりましょう。

1.「中小企業憲章(以下・憲章)」の精神を踏まえた「滋賀県中小企業振興基本条例(以下・振興条例)」の制定を目指します。

嘉田知事は政府が憲章を制定し、県議会でも振興条例の制定に向けて合意が形成される下、2010年11月県議会で滋賀での振興条例制定を表明しました。その後、商工観光労働部に担当官を置き、中小企業振興の基本的なあり方が検討され、経済6団体との研究会(企業研究会)や地域の諸団体との研究会(地域研究会)が行われ、2012年3月末までに滋賀県中小企業振興審議会において振興条例の制定に向けた中小企業振興の基本的なあり方が答申され、2012年度中に振興条例が制定される予定となっています。

私たちは振興条例の制定を目指し、2003年度から県への要請と県議会や他団体へも働きかけを続けてきましたが、その取り組みの成果として大いに評価をしたいと思います。

しかし、振興条例を実際に地域振興の強力な力として推進するには、条例の内容と共に、その後に中小企業振興策を提言し推進する「地域産業振興会議(仮称)」の設置と頻度の高い開催、県庁内に中小企業振興を部局横断で担う組織「中小企業振興課」なり「産業連携室」(共に仮称)の設置が必要です。そのほか、中小企業振興の進捗状況を知事の責任において明らかにし、さらなる取り組みを宣言するなど、具体性のある取り組みが必要です。

私たちは、本総会において滋賀同友会版の「振興条例草案」を発表し、県や県民に対して振興条例の意義や中身の議論を呼びかけ、本物の振興条例制定に全力を尽くします。

①滋賀同友会版「滋賀県中小企業振興基本条例草案」(滋賀同友会)を発表し、広く県民へ議論を呼びかけます。

②「同友しが3月号」と振興条例草案(滋賀同友会)などを活用し、すべての支部で学習会を行い、対応する市町へ振興条例の制定で意見交換をはじめます。

③全国的な中小企業振興の経験と私たちの経営実践上の課題をふまえ、県に対して要望と提言を行います。

2.憲章・振興条例の推進を担う強靱な企業づくり運動を推進し広げます。

憲章では「中小企業は社会の主役」であると位置づけ、「どんな問題も中小企業の立場で考える」としています。つまり、中小企業が先頭に立って、県民と共に明日に向かって希望の持てる地域を作っていく、その条件と環境を整備することが憲章の精神であり、滋賀でも期待される振興条例の内容です。私たちは県民を幸せにする企業づくり、社会を良くする企業づくりを目指して、自らの経営姿勢と経営指針書を見直し、具体的な目標を定め、社員と共に良い企業づくり運動を推進し広げます。

①21世紀型中小企業を具体化し良い会社・良い経営者を目指します。

イ.経営指針を創る会による人間尊重経営実践企業を増やします。

ロ.人間尊重経営の目標としての「滋賀でいちばん大切にしたい会社」を目指します。

ハ.企業変革支援プログラム(中同協)を活用し、強靱な体質の企業づくりを科学的に実践します。

②社員共育活動に取り組みます。

イ.経営指針を成文化し、その実践を担う社員との共育ち(共育)に取り組みます。

ロ.会員企業の共育をサポートする研修会を行います。

③地域雇用の担い手づくり(共同求人活動)を進めます。

新卒者(若者)、障がい者、高齢者など地域の多様な人材雇用の期待に応える企業づくりに取り組みます。地域若者サポートステーション事業(厚生労働省・滋賀県)を提案し受託を目指します。

④経営指針経営の実践を学び広げる場としての例会づくりを強めます。

すべての支部で、労使見解に基づいた経営指針の成文化とその実践、社員との共育ちに取り組み良い企業づくりを進めている実践事例を、例会を通じて会の内外へ広めます。
3.企業づくり・地域づくりを担う強靱な同友会組織を築きます。

まじめに元気な地域経済を目指す人々が増えるにつれ、滋賀同友会への期待も高まりつつあります。

また、起業家、比較的若い経営者・後継者が、会社を何とかしたいという思いで、同友会への新たな仲間が増えています。このような地域や経営者の期待に応える、強靱で質の高い同友会を作ることが焦眉の課題となっています。そのためには、まず運動のリーダーである理事が同友会運動と企業経営を車の両輪・不離一体とし、同友会理念を体現する企業、21世紀型企業、人と社会を幸せにする企業づくりに取り組むことが欠かせません。

また、支部を中心にした会員相互のきめ細かい学び合い活動こそ、会員一人ひとりにとってなくてはならない同友会づくりに繋がります。支部役員は会員の良き相談相手となり、現下の厳しい情勢を共に切り拓く仲間として、連帯の輪を広げてまいりましょう。

①強靱な理事会づくり

イ.学ぶ活動の推進 年に1回以上全国大会へ参加、中同協役員研修会参加経営指針を創る会OB参加、支部例会・委員会の行事・研修会へ社員と共に積極参加します。

ロ.仲間を増やす活動 支部や委員会メンバーと協力して、会員増強を率先垂範します。

ハ.元気な地域をつくる活動 行政、経営者団体、地域諸団体にも積極参加し、同友会理念を広めます。

②支部を中心にした知り合い・学び合い活動の推進

イ.役員(理事・運営委員)の共育ち活動(「滋賀でいちばん大切にしたい会社」をめざす場づくり)を進めます。

ロ.会員を主人公にする活動 研究グループ会を立ち上げます。会員訪問を通じて繋がります。

③新たな支部づくり

イ.高島市・・2013年度中に支部設立を目指します。

ロ.甲賀市・・2013年度中に支部設立を目指します。

以上の活動を通じて、地域の期待に高い水準で応えることができる、強く大きな滋賀同友会を実現します。

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