活動方針2013

Ⅰ.私たちを取り巻く情勢

1.世界経済の状況

EUの危機はどうなるでしょうか?
昨年のこの項で「ユーロの危機は続くと見なければなりません。」と指摘しました。ECB(欧州中央銀行)の総額1兆ユーロにも昇るマネー供給の効果で、最悪の危機は脱しているかに見えますが、「引き続き下振れリスクがある」(ドラギ総裁・3月7日)として経済予測も-0.3㌫から-0.5㌫に下方修正されました。さらに追加金融緩和、新たな利下げも検討していると報道されています。「2013年後半には回復も」とも言われていますが、その実態はあらゆる非常手段を動員して最悪の事態の回避を全力で続けている状況と言えます。再びEUが世界経済のリセッションの震源地にならない事を願いたいものです。

アメリカ経済は回復しているのでは?
リーマンショック以降の財政出動であらたに供給された多額のマネーの効果で、自動車販売の好調や、株価が史上最高値をつけるなど“バブル”に湧いている市場の裏で、アメリカの実態経済も弱さが否めません。小売売上高の鈍化、鉱工業生産指数の低下、高止まりする失業率、回復しているといわれる住宅市場ですが実はファンドマネーが牽引しているに過ぎないという見方もあり、さらに16兆ドルの債務上限規制による財政出動の手詰まり状態など打ち手が極めて限られている状況に変わりはありません。世界の中で「量的緩和からの出口に一番近い」と言われる米国ですが、もしQE3の見直しなどに踏み込んだ場合、一挙に不安定化することも懸念されます。

中国やアジア諸国は好調のようですが?
中国も、50兆円に昇る財政出動の結果何とか経済的破綻を免れました。2013年度からは新しい習近平体制のもと、内需主導の安定成長路線に舵を切っていくことを目指しています。しかしこれが日本の中小企業にとってどのように影響するかは不透明です。定期的に繰り返される反日行動、人件費を始めとしたコストの上昇、日系企業の撤退を事実上困難にする国内法の変更など中国との経済関係は世界で一番難しいと言えるのでは無いでしょうか?そのような環境を受けてタイ、ベトナムなどアセアン諸国に期待する声が盛んです。たしかに日本の中小企業が直接海外と取引をする比率が低いことは事実です。(イタリアでは20名以上の中小企業の2社に1社が直接貿易を行なっています)単に製造コストの安さを求めるモデルではなく、自社の製品やサービスを世界で通用するものに鍛えながら、大胆に海外との取引を開始していく事は大切な事です。しかし、台湾・韓国勢などとの競争、軌道に乗るまでかなりの出費が必要な事など相応のリスクがあることも忘れてはなりません。

2.日本経済の現況と中小企業を取巻く状況

“アベノミクス”で自社の売上げも増えるのでは?
「株価押し上げのために金融緩和という“筋肉増強剤”を使っている」(USAトゥディ)と指摘されるような猛烈な金融政策の推進を好感して、これまで恐怖感から国債などの安全資産に流れていたマネーが、いっせいに割安感のあるリスク資産(日本株)に流れているのが足元の状況です。“アベノミクス”の第一の矢と言われる「金融緩和」ですがインフレターゲットを定めて、日銀が事実上、国債を無制限に引き取り金融機関に円を供給する事をめざしています。デフレをこのような手法で克服した前例は世界のどこにもありません。それだけ政権の危機感も強いと言えるのかも知れませんが、今後の為替や金利の動向には従来以上の注意が必要でしょう。また日銀が金融機関に資金供給をしても、中小企業の景気判断が前向きになり設備投資意欲が起こってこない限り、金融機関から市中に豊富な資金が回って行く事はありえず、中小企業を始めとした地域の実態経済に好影響を与えることは難しいと言えます。“アベノミクス”の第二の柱「財政出動」では、10.3兆円の緊急経済対策を実施(内5.2兆円が公共事業)するとされています。これが東日本大震災の復興、老朽化するインフラの系統的な補修事業などに有効に使われれば、膨大な政府債務と言うリスクを差し引いても有効だと言えます。しかし各地域における本当に必要とされ、有効な公共事業へのアセスメントは残念ながら不足していると言わざるを得ません。すべき事ではなく、とりあえず出来ることに流れてしまうと政府債務をより膨張させるだけの結果に終わり、国家財政の破綻の引き金を引く事になるでしょう。第三の矢と称される「成長戦略」はまだその実態が明確ではありません。「国民の健康寿命の延伸」、「グリーンで経済的なエネルギー需給の実現」、「安全・便利で経済的な次世代インフラの構築」、「世界を惹きつける地域資源」の4つの分野を戦略目標とする成長戦略が策定される予定といわれますが、表面的で具体性のないスローガンが掲げられるだけでは、EUやアメリカに見られるような、また「中小企業憲章」の指し示す地域経済への深い理解に基づく有効な戦略にはならない事が危惧されます。

円安で輸出が増え、下請け中小企業も潤うのでは?
僅か1年(2012年1月~2013年1月)で15.5㌫も円安に動いた為替も、輸出型下請け中小企業にプラスの効果は現れにくいかも知れません。実は07年時点で83兆円もあった日本の輸出額は、12年64兆円と5年で23㌫も減少しています。この原因を円高で説明する声もありますが、同時期の輸出金額の減少の93㌫は輸出価格の低下によるものであり、円高を相殺させるために日本企業が価格を引き下げている実態が見て取れます。つまり輸出の物的量は減らず価格だけが下がっているのです。今後「円安」効果で多少、輸出が増えるかも知れませんが、数量面で飛躍的に増える事は期待できないでしょう。下請け企業が潤うよりも、直接輸出をしている大企業が為替差益の恩恵を得るほうがより大きいと言えます。90円台後半の円安だと「1400億円の差益」(トヨタ)「600億円の差益」(コマツ)と言う声もあります。むしろ急激な円安は輸入原材料の高騰となって、中小企業の経営に悪影響を与えつつあります。また一方的かつ高額な電気料金の値上げも中小企業経営に大きなダメージとなります。

金融円滑化法が終了しましたが、体質の悪い企業は倒産もやむおえないのでは?
  金融円滑化法について「体質の悪い企業を延命させただけ」と言う声があります。しかし多くの中小企業の経営が悪化した直接の原因はその企業の体質にあるのではなく、2008年のリーマンショックと言う“100年に1度”と言われる外部環境の急激な悪化にありました。本家のアメリカでも失業率は4.6㌫(07年)から7.9㌫(12年)に悪化し、これを救おうとするアメリカ政府の空前の財政出動の結果FRBの資産規模は9000億ドル(07年)から、3兆ドル(12年)に膨張しました。日本でも年間8~9000件だった企業倒産件数が09年には13300件と20㌫以上も増加しました。もし金融円滑化法が実施されていなければ14000~5000件に上っていたと見られています。さらに同法の経営改善計画に基づいて立ち直った企業が4割(16万社)、立ち直りつつある企業まで含めると6割(24万社)とされています。リーマンショックと言う大きなダメージに対して、利用企業の過半数の経営改善に効果のあった金融円滑化法の正しい評価が求められます。一方、総資産1億円未満の企業の経営改善が進んでいない実態もあります。社員数が少なく、日常業務以外の事に割ける人員がいない企業の体質改善が急には進みにくい事はある意味当然と言えます。日本の中小企業の規模概念が広すぎ、調査や政策立案のピントが合っていない弱点がここにも現れているのではないでしょうか?

サラリーマンの所得も上がって消費が増えると期待していますが?
デフレスパイラルを克服するには、国民の所得が増えることが必要です。しかし雇用者報酬は1997年を100として、2011年度には88まで落ち込み、さらに低下を続けています。その結果国内民間需要も91に減少しています。一方税と社会保障を国民所得で割った国民負担率は増加の一途をたどっています。1970年には24.3㌫だったものがリーマンショックを経て2011年度には40㌫に到達した。さらに消費増税、厚生年金保険料率値上げを加味すると2016年には45㌫に達すると試算されます。つまり消費に回せる過分所得はさらに減少せざるを得ないという事です。このままでは国民の消費は減少し、地域経済は一層疲弊すると見なければなりません。

3.滋賀県の中小企業・自営業をめぐる情勢と課題

全国の動向と、滋賀同友会の8年以上にわたる要望、さらに厳しさを増す県経済への対応に迫られた形で、「中小企業の活性化の推進に関する条例」が制定され4月1日より施行されます。しかし、同友会がパブコメなどで提起した「地域産業振興会議」(仮称)の設置は盛り込まれず、推進エンジンを持たない条例になってしまう可能性が否定できません。この条例も「理念条例」の形式をとっています。「理念条例」は、その「理念」を生かすための多様な階層による、時間をかけた問題意識の共有と、実効を担保するために、当事者(中小企業家)を始めとして、市民、研究者、行政などが密度高く参画する、地域それぞれでの取り組みが生命線となります。残念ながらこの点で、わが県の「条例」は極めて不十分であると言わざるを得ません。しかし、この「条例」が制定されるに到った背景を踏まえて、同友会は少しでもその実効を挙げていくために全力を挙げて努力しなければならない事は言うまでもありません。県民の中で「中小企業憲章」「条例」などの認知度は極めて低いのが現状です。おそらく「なぜ中小企業なのか?」と言う疑問すらマジョリティだと見る必要があるのではないでしょうか。様々な場所でその地域の経済の安定的な維持・発展の必要性とそのための具体的方策を話し合い、コンセンサスを形作りながら「条例」の具現化を進めて行く必要があります。それこそが、自社を救い、地域を救う中小企業に課せられた大きな使命だからです。

Ⅱ.2013年度スローガン

強じんな企業づくりと同友会運動を推進し、
 県民の暮らしと雇用・地域経済発展の原動力となろう!
 ~経営指針の実践と共に育つ社風づくりで、地域雇用の担い手へ~

Ⅲ.重点方針

はじめに

政権交代後、希望的な観測も含め2013年は景気が上向くと新聞紙上に活字を見ることができます。しかし、情勢で述べている通り、地域の中小企業にとっては円安株高、輸出の伸長など期待はあるものの、実態経済として中小企業がその恩恵を受けることは難しいと思われます。

現に、金融円滑化法の期限到来、電気料金の値上げ、輸入品の価格高騰、消費税の3%アップ、社会保険関係など様々な値上げなど、地域の実体経済は厳しくなることが予想されます。滋賀県においても有効求人倍率は若干改善されていますが、近畿圏ではリーマンショック以降低迷しています。
この状況を真摯に受けとめ、今一度同友会らしい企業づくりを地道に実直めざすことが大切です。
同友会理念は、良い会社・良い経営者・良い経営環境の実現を、自主・民主・連帯の精神で追求し、国民や地域社会と共に歩む中小企業となること、同友会理念を体現する企業は、21世紀型中小企業像として次の通りまとめられています。(中同協第25回総会宣言1993年7月9日)
○第1に、自社の存在意義を改めて問い直すとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準でこたえられる企業。
○第2に、社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。

です。

2012年度はさらなる経営環境の変化に対応するため支部や委員会で学び、一つひとつ企業実践を進めてまいりましょう。そのために、経営指針の成文化と指針経営の実践、そして社員と共に育つ企業づくりを進めて引く必要があります。
21世紀型企業づくりを推し進め、そして地域の中小企業に広げでて地域経済発展の原動力となりましょう。 2013年度は下記の3点を重点方針として取り組みます。

1.「中小企業憲章」の精神を広げ、「中小企業振興基本条例」の制定に取り組みましょう

1)6月を「中小企業憲章を広める月間」に位置づけます。
2)中小企業憲章・中小企業振興基本条例の意義や地域課題の解決をめざす例会等の開催をめざします。
3)「滋賀県中小企業の活性化の推進に関する条例」を踏まえ、中小企業の経営環境を改善するための政策提言を行います。

2.環境変化に対応した強靱な企業づくりを広げましょう

1)経営指針(経営理念・経営方針・経営計画の総称)の成文化と実践運動を進めます
①経営指針を創る会の品質を向上めざします。
②経営指針を成文化し、指針経営を実践する運動を進めます。
③滋賀一企業への挑戦を促進し、企業変革支援プログラム(ステップ1・2)の普及に取り組みます。

2)人材の採用と育成で、地域の雇用を守り強靱な体質の企業をめざします。
①大学職員・学生と共に育つ場ち、魅力ある企業づくりを進める共同求人活動の構築をめざします。
②障がい者や高齢者など地域の多様な雇用を担う共育ちの企業づくりを進めます。
③採用~新入社員~中堅社員~幹部社員へと、ワンストップの学び合い活動をめざします。

3)優れた経営実践や新しい仕事づくり、国際化に対応した学び合い活動を行います。
①ニュービジネスへのチャレンジ、第二創業の経験等を広めます。
②中小企業の国際化・海外ビジネスのあり方を調査し経験を交流します。
③滋賀県経営研究集会を開催し、優れた実践事例から学び合います。

3.良い企業と元気な地域づくりを担う強靱な同友会をつくる

1)会員が主人公になり、顔と企業が見える生き生きとした学び合い活動を
①「自主・民主・連帯の精神」で学び合いと会活動を行います。
②「労使見解の精神」で、企業づくり・地域づくりを学び合う例会を開催します。
③経営課題や要求別の研究会活動をさらに進め、学び合いの主人公を増やします。

2)ビジョンを持って地域の隅々に同友会を広げましょう
①2022年度に、地域で10%の会員づくりをめざします。
②当面すべての支部が地域で5%の会員づくりを目標にします。
③「滋賀でいちばん大切にしたい会社」へチャレンジする会員を増やします。
④青年経営者の会員を増やし、リーダーを育てます。
⑤新しい支部づくりや支部内に地区会(地域会)づくりに取り組みます。
⑥同友会運動の発展を支え、組織建設を担う事務局づくりを進めます。

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