記事一覧

トップ > お知らせ > 東日本大震災:復興に立ち上がる中小企業家の記録⑭

東日本大震災:復興に立ち上がる中小企業家の記録⑭

岩手県中小企業家同友会からの便りです。
震災から1ヶ月。復興への道程は長いものがありますが、理念の力、仲間の力、人間の力に確信を持って歩んでまいりましょう。

==以下・転載==
○北海道からの贈りもの~同友会運動の歴史を実感した9日間
 震災から一ヶ月が過ぎようとしています。これまで必死で目の前で起きた現実に向き合ってきた毎日でした。今日は一ヶ月の節目ということもあり、事務局で起きたこの9日間を一文、書かせていただきます。
 地震発生から15日目の土曜日、一枚のFAXが岩手同友会に届きました。北海道同友会の細川専務理事から、「新入事務局員3人を岩手の支援に向かわせたい」という趣旨の文面でした。正直なところ、この緊迫した中に22、3歳の新入事務局員が来ても・・・と瞬間、思いました。しかし新入の事務局員が自ら、「事務局員としての第一歩を岩手のために何か出来たら。ぜひ行って支援したい」という言葉を聞いた事、また安否確認と同時に企業再建と雇用維持、地域復興を一気に進めるためには、4人の事務局員では、精神的にも体力的にも全く余裕がない、一杯いっぱいの状況である事もわかっていました。そして4月1日から8日までの9日間、5人の北海道同友会からの力をお借りする事を決めました。
 4月1日(金曜日)、岩手同友会に北海道同友会函館支部の佐々木事務局長が一人、先遣隊でやってきました。まず岩手の現況を見て、どんな支援ができるか見るためでした。同友会事務局員歴15年のベテランは、新入社員合同の入社式研修会から参加。救援物資10トンが眠る倉庫にも入り、岩手の役員や事務局の動きから即座に全体をつかみ、翌々日、北海道から来る4人がすぐ動ける体制をつくっていきました。
 岩手の事務局内ではお迎えする前、激論を交わしました。後に考えれば、今回バックアップいただかなかったら、1歩も2歩も前進するのが遅くなったと思うのですが、その時は皆、相当感情が高ぶっている状況だったのではないかと思います。
 4月3日(日曜日)、2日前に入局したばかりの女性1人と男性2人、そしてしりべし・小樽支部の境井事務局長が、札幌から列車で8時間の道のりを経て、盛岡にやってきました。新入局員の名前は名越麻里さん、佐藤準さん、谷中亨さんです。4月1日に合同の入社式に出た後、北海道の研修に出ずに、翌日にわか仕込みのマナー練習と打ち合わせだけをして「支援研修」に出発しました。
 岩手同友会の事務局に到着した時の顔は、長旅の疲れもあってか、まだだいぶ不安そうでした。しかし翌日4月4日(月曜日)、北海道5名、岩手4名9名全員での朝の打ち合わせがはじまると、雰囲気は一変しました。事務局内が、「パッ」と花が開いたように明るくなり、9人の一体感が生まれました。これが同友会運動の歴史の積み上げなのだと思います。同じこころざしの者が集うと、こんなにも心強く、勇気づけられるものだと、実感しました。全国の皆さんが支えて下さっていることは、十二分にわかっていながら、周りが見えていなかったように思います。なぜ入局3日目の大切な時期に、彼らを岩手に送り込んでくださったかが、この時分かりました。新入事務局員の姿から、同友会運動の力を私たち4人が体で感じることができました。志を同じくする。こんなに力が湧くものなんだと、このとき思いました。
 9人の力は圧倒的でした。倉庫にあった10トンの救援物資は、たった一日で分類が終わり、岩手大学学生とのチャリティーバザー市開催決定までこぎ着けました。翌日から始まった「岩手の企業を一社もつぶさない、つぶさせない例会」でも、雇用調整助成金や融資に関する膨大な資料の作成に始まり、沢山の参加者が来場し騒然とする中でも、スムーズな運営ができ、岩手の復興へ向け感動的な例会となりました。
 そして4月6日(水曜日)、陸前高田での新入社員合同入社式には、北海道の3人も一緒に新入事務局員として臨みました。入社式の直前、3人を大きな漁船が未だ国道沿いに横になりがれきが山積みに残る、大船渡市街へ案内しました。3人に聞くと「自分の足で立ちたい」と車から降り、無言で街を見渡しました。そして何も無くなってしまった陸前高田へ。言葉が全くなくなりました。
 そのまま会場の陸前高田ドライビングスクールへ。会場に入りきれないほどの応援団、報道陣。人の熱気が更に高揚感を高まらせます。「あなたたちが希望の種です。赤々と燃やしてほしい」全員が新入社員、新入事務局員に向いていました。
 14時に始まった入社式はその後例会へと移り、27名全員がこの1ヶ月の想いを発していくと、既に陽は西に傾いていました。悔しさ、絶望感。誰もが同様に感じたこの間の思い。そこからどうやって希望と展望を描いていくか。自分に言い聞かせるように話す、その経営者の方々の一言一言が、胸に染みました。現場に行ってみなければわからない空気感。そこで生きることを決めた人たちの叫び。北海道からの3人が体験した時間は、恐らくこれから起きるどんな困難をも打ち破る力を与えてくれたのではないかと思います。
 明日は岩手での最終日。そんな夜半に、突然震度6弱の余震が起きました。漸く動き始めたこの時期に、再び県内全域が停電となりました。北海道の4人が泊まるホテルも真っ暗に。岩手ではまだ、現実に震災が進行中である事を、私たち自身も気づかされた瞬間でした。
 北海道同友会から事務局員が応援に来て下さったこの9日間は、私たち岩手同友会事務局にとって、かけがえのない時間でした。今まで会員の皆様のために、被災された方々のために全力で向き合ってきた1ヶ月でしたが、冷静に周囲を見渡す余裕がなくなっていたように思います。長い長い復興へ向けた道のりでは、センターである事務局が、オアシスであり続けなければならない。北海道同友会の事務局5人の方々の姿から、思い出させていただきました。
 最後は、普段は冷静なベテランの女性事務局員2人も、そして私も涙が止まりませんでした。しりべし・小樽支部境井事務局長の「私たちは見てしまった、知ってしまった責任がある」、そして新入事務局員の3人の、盛岡に来た時とは全く違う立ち姿、輝く表情、前をしっかりと見据えた目に、希望の光を感じました。