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東日本大震災:復興に立ち上がる中小企業家の記録⑮

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○岩手県中小企業家同友会より滋賀県中小企業家同友会へお便りを頂戴しました。その内容は、滋賀の中小企業経営者の皆さんにもお伝えしたい、中小企業復興のドラマでした。一気に読んでしまいました。そして、中小企業家としての仕事のやり甲斐、生き甲斐、地域と共に歩むことに意味や価値を実感いたしました。
  そして、今、ここで経営が出来ていることの幸せ。わが社や社員の幸せ、お取引先の人々の幸せを実現することへの思いを高め、強靱な体質の企業づくり、人を生かす企業づくり、世の中を良くする企業づくりに邁進することを、あらためて強く決意いたしました。
 岩手からの便りは、随時滋賀県中小企業家同友会のHPにも転載したいと思います。

○文中に、「経営指針書」という言葉が出て参ります。HPをご参考にご覧下さい。
 http://www.shiga.doyu.jp/iinkai_keiei-roudou_tukurukai.htm

==以下・転載==
 今日から企業訪問記新シリーズ「岩手の復興は私たちの手で」がスタートします。
 3月11日からこれまで、全国の方々から沢山の応援、ご支援をいただき35日が過ぎました。それぞれ一人ひとりにとっての人生の大きな転機であり、1社1社にとって言葉に言い表せない、それぞれのドラマがあります。
 どうしても映像に写りやすい一部企業に焦点が絞られてしまい、それぞれの想いがクローズアップされない報道が多く見られます。そこで今日からスタートするシリーズでは、岩手同友会の会員企業1社1社にスポットをあて、震災で何が変わりこれから何を展望していくか、刻々と変わる各社の表情、経営者の方々の想いをご紹介していきます。

 第1回は(有)橋勝商店(代表取締役 橋詰真司氏)です。

 食品の卸業を営む(有)橋勝商店。会社の事務所は陸前高田市街地の幹線沿いにありました。3月11日、地震が起きてすぐ、社員を家に帰し家族、子どもの安全を確認するため高台にある自宅に戻ります。
 その後大津波警報のサイレンがけたたましく鳴る中、最も大切なお客様の基礎データを確保するため事務所へ向けて急ぎ車を走らせました。しかし海岸線が大きく盛り上がって押し寄せるのを見てすぐ進路を変え、裏道を猛スピードでかけあがりました。途中高台に逃げる車が渋滞しており、間に合わなかった何十台もの車が波に飲み込まれてしまいました。事務所も、倉庫も、車も全て無くなりました。
 
 被災から一週間後、事業再開へ向けて動き出します。同友会で配布していたチラシの「経営指針を復興計画書に変えて」の文章を思いだし、手書きでA4一枚の「復興計画書」を書き上げました。
 経営理念、経営方針を4行。どんな仕事で事業を再開するかを数行。そしてそのために必要な設備、資金を明確に掲示しました。最後に今後のビジョンとして、「企業経営者と共に地域の復興を目ざし、『なつかしい未来』を実現する。企業と行政、市民が今こそ力を合わせ、同じ目標に一歩ずつ進むことで、街はもとに戻ると信じています。」と書き入れました。

 3月30日、三女の卒園式を終えてすぐ、事業再開へ全力で臨むため静岡の親戚の元に子ども達全員を預け、奥様である専務と2人でスタートを切りました。復興計画書を持って勇気を出して金融機関に相談しました。
 唯々真剣に想いを伝えました。伺った先全てが計画書を見て、協力を約束してくれました。「以外でした。こんなにも復興計画書を本気で聞いてくれるなんて。むしろこういうものがあれば出しやすい。頑張ってと励まされた」
 そして全ての商品を失ってしまい、調達が困難となっている卸元へ。一軒一軒、震災でご迷惑をかけたお詫びと、今後の商品供給のお願いに丁寧にお願いしました。
 怒鳴りつけられるだろうと覚悟して訪問した全社が「全面協力するから、早く立ち上げなさい。地域の小売店がなくなってしまったんだから、あんたたちが小売店もつくるしかないんだ。地域の方々にとってあんた達は絶対なくちゃならないんだ。物流のことは全く心配するな。」と熱烈に励ましてくれました。
 「残されたってことは、こういうことなんだ。」物流と資金の目処が付き、震災から3週間で事業再開が見えてきました。

 4月11日、自宅前に小さなハウスができました。まだ電話も電気も看板もない、仮設店舗です。そして全国の同友会の皆さんから届いた、大切な大切なノートパソコンとプリンターがそこに設置されました、いよいよ橋勝商店が再開します。 
 今陸前高田には、野菜や魚などの生鮮品はほとんどありません。ちょっと食べたい甘い菓子やスナック類も、そろそろ欲しくなっています。沿岸の被災地のほとんどが、未だそうした環境です。地域に切実な生きるためのニーズがあり、それに応えられるのは、古くから地域に根付く中小企業しかありません。
 用意されたものではなく、自分たちが欲しいものを欲しいときに買える店。顔が見えて言葉が交わせる店。決して目立たないけれど、たわいもない日常の欲求を満たしてくれる店。
 橋勝商店は、地域の「今の声」に応える店として、一緒に苦難を共にしてきた社員と共に、今週再開します。

※写真付きはホームページでどうぞ http://iwate.doyu.jp