滋賀県中小企業家同友会

活動方針

私たちを取り巻く情勢

(1)人類が直面する危機的状況と直近の課題

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が全世界に広がり、世界保健機構(WHO)がパンデミックを宣言し、感染者とそれに伴う死者が急激に増加し続けています。2020年3月末時点で、感染者およそ70万人、死者3万人を超える事態となっています。中国・武漢という一つの地域(ローカル)で発生したといわれていますが、それが全世界(グローバル)に瞬く間に広がる状況に、現代の人類はすべてつながっており、科学技術の発展によって経済的にも社会的にも繁栄を極めてきかに見えましたが、実際にはその非力さに打ちのめされそうになっています。
 しかし、絶望することなく、こうした危機的状況を乗り越えることは、人類が英知を結集し、国や地域の違いを乗り越え連帯していくことによってのみ可能となるのであり、人類のもつ科学性・社会性・人間性の発揮がいまこそ強く求められています。
 そのいくつかの当面の対策が、外出の禁止・自粛、あるいは3密(密閉・密集・密接)の回避などです。しかし、この対策にともなう影響は、経済的活動の停滞となって現れており、町を出歩く人の減少は小売業など商業活動の縮小を招き、生産活動などにおいても工場の一時閉鎖をはじめ、全世界的に景気後退に向かっています。
 NYダウ平均は3万ドルを目前にしていたところから一気に一時は2万ドルを割り込むまでに暴落、日経平均株価も2万4千円台から一時1万6千円台まで下落しました。その後、いずれも乱高下を繰り返していますが、日銀など中央銀行による買い支えなどが功を奏す状況ではない中、投機的な思惑に振り回されています。高株価によって景気回復が喧伝されてきましたが、異次元的金融緩和によって生み出された株価は、実体経済との齟齬を明確にし、バブル的部分が消し飛んでいる状況です。この消失に伴う景気後退的要素は、日本はもちろん世界的にも金融的術策によって経済を成り立たせようとしていることの危うさが露呈したことによるものと考えることもできるかもしれません。
 さらに、近年アメリカなどがとる「自国第一主義」のような姿勢は、国際経済の停滞をもたらしているばかりか、現在のような全世界が連携して対応しなければならない状況にとって脅威でしかないことが明らかになっています。人と人とのつながりが人類の本質です。それを生かして経営していくことによって、中小企業は発展してきたといっても過言ではありません。しかし、今回の新型コロナウイルスは、その人と人のつながりによって伝播させてしまう。まさに人類にとって脅威そのものであるといえます。
 これらの後退局面が、工場の一時閉鎖など実体経済への影響をもたらしており、かつて日本が経験したバブル経済崩壊やリーマンショック後の厳しい経済状況を再現しかねない状態となっています。
 このような厳しい経済状況に対して、中小企業はただ単に翻弄されるばかりではなく、過去の経験から、日本政府が打ち出す経済対策などを活用しつつ、当面の資金繰りの危機的状況を回避するなどの策をとることが求められています。また、当分は赤字営業が続くことを見越した経営計画遂行の覚悟を踏まえた財務内容と損益分岐点の見直しが必要です1。中小企業家同友会は過去の経験から、こうした情報を会員全体で広く共有し、「一社もつぶさない、つぶさせない」として、同友会の『労使見解』の示すように「どのような困難があっても経営者には会社を維持・発展させる責任がある」ことから、社員と一丸となって、また会員企業が相互に励まし助け合いながら、国民や地域とともに奮闘しているところです2
 社員およびその家族、そして経営者自身の健康を維持しつつ、雇用を守り自社の存続のために、直近では資金繰りなどについて各種支援などを活用しつつ、しっかりと対策をとっていくことが求められています。

1「危機打開のフロンティアとして~経営者に必要な“使命感・先見性・決断力”」駒澤大学経済学部教授吉田敬一氏 (同友会ニュース「会員皆さんへのメッセージ」2020年3月12日)
22020年3月6日中小企業家同友会全国協議会会長談話「一社もつぶさない!知恵と力を出しあい、新型コロナウイルスによる危機を乗り切ろう」

 また、東日本大震災における津波被害のためコンビナートで製造されていた薄いフィルムが入手できなくなったある納豆メーカーは、納豆そのものは生産できても、そのフィルムがないばかりに全ラインを停止せざるを得ませんでした。今回のパンデミックによって海外との貿易など物流がストップしたり、生産が停止したりしている工場は多々あります。通常であれば歯牙にもかけないような部材が入手できないことによって、事業の足元をすくわれることがないか、今一度、事業活動に必要な部材などのすべてについて入手ルートなどのバリューチェーンを見直し、脆弱性が潜んでいないかを確認する必要があります。
 自社やその事業が世界中のどことつながっているのか、これを機によく理解することが、自社の強み弱みを再認識し、明日の事業展開の種としていくことにつながるでしょう。

(2)これから現れる新しい経済・社会を積極的につくり担うことができる中小企業へ

 今回のパンデミックは、日本の経済や社会に対して、リーマンショックや東日本大震災と同等あるいはそれ以上の影響をもたらしており、収束したとしても、単に元の社会に戻ることはなく、新しい経済・社会の状況が現れることになります。
 東日本大震災後今日までにおいて、いずれ起こるであろう南海トラフ地震や各種の自然災害へ備えるべく、企業も社会も家庭もその準備や対応などを行い続けるという中で、それまでの社会のあり方や諸制度や組織などを変えてきました。BCP(事業継続計画)の策定があらゆる企業に求められ、場合によってはその策定や対応が取引条件化されることもありました。もともとBCPは、自然災害だけではなく、インターネットなどの情報関連の寸断などへの対策とともに、このパンデミックにも対応して策定すべきものとして本来は考えられていたものでした。リスクマネジメントの必要性を再認識し、あらゆる企業が対策を練らなければなりません。
 パンデミックも、生物学的に冷静に見れば、生物の進化の過程で起こる突然変異がもたらしているものであり、それは自然界の法則から見れば当然起こりうるものであり、SARS(重症急性呼吸器症候群)が十数年前に起こったことや、鳥インフルエンザウイルス感染症なども含めると、周期的に起こるものである、という認識を前提に社会を構成する必要があると考えるべきです。
 それゆえ、社会や企業などは、今後もこのようなことが起こっても対応できるように、様々に変化させようとしていくことになります。そのため、厳しい状況に追い込まれる企業なども出てくる一方で、これをチャンスに大きく飛躍したり成長したりする企業なども現れるでしょう。期せずして、働き方も変わり、イノベーションを起こし、企業の存続を図っていく諸方策をとっていくことになります。
 グローバルに生産などを広げてきたことを、急に危険視してやめてしまうことはなくとも、そのあまりに脆弱な体制を再検討し、日本国内へ回帰させる流れも出てくるかもしれません。
 働き方は変わります。日本において進められているいわゆる「働き方改革」は、その実態としては単に残業時間を削減することにばかり注目が集まり、全体の仕事量が変わっていないのに、より短い時間ですべてを行うこと、つまり効率化を働く人たちに求めるばかりで、そのための諸条件を十分に作ってきたとは言えません。しかし、今回のパンデミックによって、否が応でもテレワーク(リモートワーク)を取り入れなければならない状況となりました。それが可能ではない業種業態などもあるとはいえ、可能な限り導入し、それによっても事業活動が一定行うことができることが明らかになりつつあります。当分の間は混乱も見られるでしょうが、いずれ定着していくことが考えられます。自社の働き方を改善する機会でもあり、男性だけでなく女性やいわゆる障害者と呼ばれる方たち、外国人労働者など多様な働き方を実現することは、人手不足で困っていた中小企業にとっては、人材確保のまたとないチャンスであるかもしれません。また、そうした働き方の変革に対して、自社の製品やサービスを提案できることになるかもしれません。中小企業だからこそ、決して多くはない社員との意思疎通を図れる規模や小回りのよさ、すなわち中小企業ならではの「中小規模の経済性」 を生かす時であるといえるでしょう。
 以上のような変化に対応していくことは急に必要になったことではありません。同友会として「人を生かす経営」(『労使見解』)や人間尊重経営の立場から見直せば、これから現れるであろう経済社会の変化は、大きな流れからとらえればいずれも自明のことで、パンデミックによって加速されただけです。困難な経営環境であるように見えますが、いまこそ持続可能な企業体質へと高めていくときです。一社一社がギリギリのところで踏ん張り、雇用を守り事業を存続させることは、自社のみならず、立地する地域経済の持続可能性を高め、地域からも頼りになる存在となるのはやはり中小企業なのだと、その存在感を示すことになります。これは以前から同友会が進めてきた中小企業憲章の理念そのものです。同友会の提案する中小企業憲章の草案では、「中小企業は、日本経済の根幹である。」「中小企業は、暮らしに根ざす仕事を生み出し、雇用の主要な担い手として、地域、社会、文化の力強い発展に貢献する。」「中小企業は、先人の知恵に学び、互いに結び励ましあい、競い高めあい、人を育て、国民や地域の期待にこたえる。」「中小企業は、日本経済の健全な発展、人類と地球の持続可能な未来に貢献し、国民の平和で安定した暮らしを実現する。」「日本の中小企業は、その歴史と経験をふまえ、世界の中小企業との連携を強める。」と前文で謳われています。苦しい中にありますが、こうした考えを生かし、自社の体質改善を進めつつ、中小企業振興条例の制定とその具体的推進の運動を展開することへつなげていくことが大切です。
 目の前では厳しい状況が続いていたとしても、その後の社会の変化において、自社がとりうるべき行動は何か。単にピンチととらえることなく、新たなチャンスが生まれるであろう中、そこに果敢にチャレンジしていく準備を、この状況下であっても着々と進めることが求められているといえます。同友会運動において最も重視してきたことの一つに経営指針の成文化があります。滋賀同友会は「経営指針を創る会」として多くの会員に向けて開催し続けてきました。こうした経営指針書を策定・見直しをしていくことが、新しい時代の中小企業経営にとって不可欠であることが、より一層明らかになってきていると思われます。一社だけで戦うのではなく、会員相互の連帯・連携によって相互に価値を生み出す力にしましょう。

3黒瀬直宏『複眼的中小企業論』同友館2012年

記 青木雅生氏
三重大学法律経済学科教授

2020年度スローガン

人を生かす経営の総合実践で真の共生社会をめざそう
~気づき、学び、実践で、地域に同友会の輪を広げよう~

重点方針

1.労使見解の精神に基づく企業づくりを推し進めます《企業づくり》

1)経営指針・共育・採用の三位一体の強靭な企業づくり
  • 労使見解に基づく経営指針づくりと指針経営(注1)の実践を推進します。【経営労働委員会】
  • 21世紀型中小企業づくり(注2)をベースに会員企業づくり報告による問題提起の例会を開催し、会員一人ひとりの気づきと実践につながる学び場としての例会や活動づくりを行います。【各支部】
  • モデル企業認定制度(滋賀でいちばん大切にしたい会社認定)の認定企業と挑戦企業を増やします。【経営労働委員会、各支部】
2)人が育ち発展し続ける企業づくり
  • 共に育つ企業づくりをめざし、会員の要求に基づき研修会を開催します。【共育・求人委員会】
  • 求人・採用活動を通して、共に育つ社風づくり、指針に基づく安心して働ける職場づくりで強靭な企業づくりをめざします。【共育・求人委員会】
  • 障害者問題全国交流会in滋賀での学び、障害者をはじめとする就労困難者が働ける企業づくりを実践します。【ユニバーサル、経営労働、共育・求人】
3)課題別・要求別の学びの場づくりを推進します
  • 中小企業の国際化・海外ビジネスの展開の経験を交流します。【新産業創造委員会】
  • 青年経営者・後継者の学びの場として、経営指針づくり、強靭な経営体質づくりなど、経営実務課題の解決の場を設けます。【青年部】【支部小グループ/研究グループ】
  • 女性経営者の学びの場、課題解決の場として2021年度に女性部の設立をめざします。【理事会】
4)2)3)の学びの場
  • 指針・採用・共育、ユニバーサルのテーマを例会の年間スケジュールに組み込み、委員会と支部・青年部が連携して例会を開催します【支部】【専門委員会】【例会委員会】
  • 各支部でBIG例会など、テーマを深め、同友会を地域に広く知らせる例会を開催します。【組織活性化委員会】【支部】
  • 課題別分科会を設置し、先進事例を学ぶ第29回滋賀県経営研究集会を開催します。【青年部・各支部】
  • 全県で会員が一同に会する「2021年新春例会」を開催します。【例会委員会】【支部】

2.地域課題に取り組み、地域と自社を元気にします《地域づくり》

1)人が育ち地域に人材が残る地域連携の取り組み
  • 大学と連携し、人が育つ地域づくりの取り組みをスタートします。【共育・求人委員会】
  • 支部を中心に職場体験・インターンシップなど、学校連携でキャリア教育支援に取り組みます。【各支部】【共育・求人委員会】
2)中小企業を広く地域に知らせ、中小企業と地域経済の発展をめざします
  • 中小企業の経営環境を改善するための政策要望を作成し、その実現をめざす懇談会を開催します。【政策委員会】
  • 報道関係者との懇談会を行い、中小企業や地域課題などの情報発信を行います。【政策委員会】
  • 学校・金融機関・行政・他団体との連携・協力を行います。【各組織】

3.滋賀同友会の存在を地域に広げ、
気づき、学び、実践する輪を広げよう《同友会づくり》

1)2020年度に675名の滋賀同友会を実現のため、意義・目標・プロセスを共有し、取り組みます。
  • 県内全企業に「滋賀県中小企業家同友会」の名前と存在を知らせる活動を行います。
  • 滋賀同友会ホームページ、フェイスブックで活動を発信します。
  • 「会員増強の手引き」、「会員定着の手引き」いずれも滋賀版を活用し、日常の活動に活かします。※入会率20%以上 退会率10%以下【例会・組織活性化委員会/すべての組織】
  • 域法人組織率10%を展望し、滋賀同友会の魅力を伝える広報、メディア戦略に取り組みます。【組織活性化委員会】
2)地域を担う同友会組織と会員企業をめざします
  • 会員の顔と企業が見える関係づくりに努めます。
    ・同友会のポスター掲示を会員企業に依頼するなど、訪問活動を通じて顔の見える関係づくりを行います【組織活性化委員会】【各支部】
    ・地区会(支部内の地域組織)を順次設置し、訪問活動を行い、課題別・興味別の例会活動を実施します。引き続き研究グループ会の開催や役員・事務局による定期的な訪問活動を実施します。【組織活性化委員会】【各支部】
  • 同友会らしい例会づくり(注3)とグループ討論(注4)で会員一人ひとりが経営課題に気づき、学びを深める場としての例会を開催し、例会参加率を25%、会員参加率30%をめざします。【例会委員会】【各支部】
  • 支部ごとに新入会員のオリエンテーションを開催します。【組織活性化委員会】【各支部】
  • 組織(滋賀同友会)運営と企業づくりを学び、同友会理念の体現、実践をめざすリーダー(理事・支部運営委員等)の育成に取り組みます。
    支部・青年部で中同協役員研修会ほか、関西や全国行事に目標を持って参加します。【理事会】【各支部】
  • 同友会活動の持続的発展のため、財務基盤の強化を行います。【総務会】【理事会】
  • 事務局の在り方(役割・働き方)を整理・検討し、滋賀同友会の発展と支部、委員会の自主的主体的活動を事務局づくりに取り組みます。
    同友会運動を支える事務局員の採用と育成、労働条件を整備します。【事務局】【理事会】
  • 2021年第43回定時総会の企画運営を行います。【組織活性化委員会】【理事会】
※【 】は主な担当組織をさします
注1)指針経営  「指針経営」=「理念経営」(注)を補強する概念。「経営理念」が「経営」の理念である限り、健全な「経営」と「理念」は不可分と言う考え方から、「経営理念」の成文化と共有・浸透だけに終わらず、自社事業の分析、外部経営環境の調査、自社の成長・発展戦略の立案、その戦略に基づく具体的な行動計画とその実践などを通じて、「経営理念」の実現をめざす。またその戦略、行動計画は「経営理念」に示された考え方や、価値観に沿ったものであるべきなのは言うまでもない。
「理念経営」=経営理念を中心に置いた経営。経営理念で思い描く理想の自社、地域の実現をめざす。そのために、“会社がめざす目的と大切にする価値観=経営理念”を明らかにし、常に理念に立ち返り、理念に基づく業務、行動を実践しようとする。 注2)21世紀型中小企業づくり  第一に、自社の存在意義を改めて問いなおすとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業。
 第二に、社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。
 なお、「21世紀型中小企業」をめざす上で、欠かせないのが、「労使見解」(「中小企業における労使関係の見解」)の学習です。これは、1975年に中同協が発表した文書で、労使の信頼関係こそ企業発展の原動力であるとする企業づくりの基本文書です。
(同友会運動の発展のために第3次改訂版 11ページより抜粋) 注3)同友会らしい例会  「同友会らしい例会」=「同友会の月例会は会員の経営体験の報告とそれを受けてのグループ討論が基本となります。報告者と事前の打ち合わせを十分に行うなど例会づくりの準備の過程も学ぶ場になり、例会を充実させます。謙虚に学ぶ姿勢でのぞめば、どんな話からでも学ぶことができます。同時に企業経営で実践するために変革の姿勢で学び続けることが必要です」
(同友会運動の発展のために第3次改訂版 15ページより抜粋) 注4)グループ討論  「グループ討論」=「同友会の例会では、報告者は問題提起者です。報告者の話を自分の体験に重ねて聞き、さらに他の人の意見や体験も自らの経験に重ねて聞き、討論することで自社の実践に取り入れることができます。そのために同友会の例会ではグループ討論を重視しています。」
(同友会運動の発展のために第3次改訂版 16ページより抜粋)