滋賀県中小企業家同友会

活動方針

私たちを取り巻く情勢

(1)日本社会が進むべき道が鋭く問われる時期に来ている

 少し広い視野に立ち,2030年までの日本社会の生産力の発展のテンポをみていくことにします。具体的には,日本社会では,潜在成長率が低下し,2005年に年率2.09%であったものが2030年には年率1.04%ほどに低下することが予想されています。ここで,潜在成長率とは,社会全体の労働者と設備が余すところなく働いている状態のもとで最大限生産した場合の年々の生産物の増大率と定義されます。
 一方で,2030年の介護サービス水準は2010年の1.89倍となると予想され,今後,年々確実に高齢者を中心とするニーズの増大も進行します。現在,社会問題化した介護のために企業を離職するいわゆる介護離職はこの高齢化がもたらしたものといえます。
 このように,生産可能な生産物があまり増大せず,同時に,介護・医療等のニーズは高齢者に増大によって年々高まるわけですから,社会構成員が消費する消費財や奢侈財,経済成長のための生産財といった何を社会で生産し消費していくかという生産編成,分配のあり方をめぐって,鋭い対立が生じることが予想されます。

(2)新たなグローバル化の進展とアジアの中の日本

 従来からいわれているグローバル化の定義は,カネ,モノ,ヒトの国境を越えた往来を指してきました。これに加えて,近年ではIMF等の国際機関において,移民のような直接的なヒトの移動ではなく,輸出財の生産に投じられる労働者数を意味する間接的な移民の移動に注目が集まっています。というのは,20世紀中葉以降,いわゆる従来言われるヒトの移動はそれ以前と比べると低調であり,グローバル化の実態をとらえることができないからです。この間接的な移民の推移をみると,日本ではGDPに占める輸出の割合が高いことから,いわゆるヒト面での「送り出し」を活発に行ってきたことがわかります。逆に,輸入,つまり間接移民の受け入れでも,日本はアジア諸国,とりわけ中国の位置づけが1990年代以降高まっていました。対照的に,米国からの間接移民の受け入れは低下し,中国からの受け入れの15分の1の水準(2007年時点)にとどまっています(「世界産業連関データベース」より試算)。
 このように,グローバル化は日本にも例外なく進み,アジア諸国,とりわけ中国との経済的な結びつきを強めてきたということが1990年代以降の大きな特徴と言えます。このように,国境や国家を超えた経済的な結びつきがより強まっていく中で,日本の社会構成員が,他国とどのような関係を将来,結んでいくのかが問われています。

(3)日本の民主主義の先進性が見直されている

 昨年春以降,東アジアにおいて,外交的な話し合いを通じた核兵器廃絶をめぐる動きが具体化する一方で,国家間での協議の場が軽んじられ,軍事的な解決手段を優先する主張も少なくありません。他方で,崇高な理念のもとで始まったEUでは,加盟国での若年層を中心とした高水準の失業,貧困や紛争,戦争に悩まされ,2017年には加盟国の初めての離脱が表明され,今なお議論の渦中にあります。外交や経済・通商問題を含めた多国間での平和や民主主義のあり方が世界中で問われる時代に突入したといえるでしょう。
 以上を踏まえ,現代の世界社会では,二つの課題が社会的に明らかになってきたと考えられます。
 第一に,間接的な移民の移動を含めて,ヒト,モノ,カネの移動が密になり,経済的なつがなりが地域や国家を超えて深まる中で,①国家を超えた国際的な民主主義の確立があらためて必要になってきたことです。武力によって威嚇することを中心とした紛争の解決のあり方を超えた,人々が平和的に円滑に生活をおこなうための国際的な民主主義の確立が必要となっています。
 そして,第二に,現段階の社会では,大部分の生産物の分配は国家によって担われています。そこで,②日本国内では,財・サービスの分配をめぐる丁寧な合意形成の方法の確立が求められています。

(4)2019年度の日本の経済状況と地域経済

 先程まででは,潜在成長率について述べました。これは,2030年という将来を議論するためのもので,失業率ゼロを想定した場合の最大生産能力の議論でした。他方で,私たち中小企業は,日々地域社会で経済活動をおこない,地域経済を担う住民と向き合っています。
 そこで,日々の生活の議論を検討するため,労働市場に視点を移しますと,直近の完全失業率は,2.5%(2019年1月)と,リーマンショック時(2008年4.0%,2009年5.1%)から年々低下しています。このように,完全失業率が3.0%を下回るのは,「バブル経済」と呼ばれた1980年代後半から1990年代初頭以来の水準です。また,内閣府が作成し閣議決定した「平成 31 年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」において,2019年度の完全失業率は2.3%と人手不足の状態が継続すると予測されています。同時に,滋賀県の求人倍率も1.39倍(2019年1月分の有効求人倍率)と人手不足が継続していることを示しています。
 消費者物価指数の動向をみると,2013年を基準とした数値で,2018年水準において,104.69(2013年から2018年にかけて年平均1%の消費者物価指数の上昇)となり,海外経済の動向など不確定な部分もありますが,今後,2020年開催のオリンピック開催にむけた首都圏を中心とした公共事業が盛んになること,設備投資と輸出が継続して堅調であることなどを踏まえると,景気過熱の進行が予想されます。
 一方,そもそもバブル崩壊後の1994年から現在までの日本経済は,輸出と設備投資を大きく伸ばし,家計消費を停滞させてきたという特殊な状況にあります。実際,内閣府「国民経済計算」で確認すると,GDPが1.26倍の倍率にとどまる中で,輸出は1994年比で2.75倍,設備投資は1.46倍と大きく伸びていました。一方で,家計消費は1.23倍とGDPの倍率からやや下回る意味で横ばいであったわけです。
 しかし,GDP全体に占める家計消費は約6割です。持続的な経済拡大と人や地域の持続性からみれば,家計消費を温める政策は待ったなしだといえます。そのための景気拡大政策を振り返ると,現政権では十分に実施されたとは言えません。事実,伝統的な景気拡大政策の一つである公共事業も2014年以降に削減されており,2018年の水準は,2013年1-3月期を10割として9割程度にとどまっています。
 さらに,景気拡大政策と逆行する動きが進んでいます。日本経済を支える大きな柱である家計消費の先行きですが,2019年10月に実施される予定の消費税率アップが非常に暗い影を落としています。消費税率が2%ポイント分上昇することで,家計消費は2019年10月以前と比べて5.42兆円分減少することが予想されています。加えて,この消費減は,小売業・飲食サービス29万人の就業者が減少をもたらします(滋賀県では小売業・飲食サービス4千人減。以上,事務局試算)。以上の検討から,日本経済や地域社会へ悪影響を及ぼす消費税増税について,中小企業家同友会全国協議会や諸団体,経済学研究者等と連携して,再検討を強く求める時期に来ているといえます。

(5)地域経済の活性化のために会員が先頭に立って地域づくりを

 一方で,現在,日本社会が急速なインフレ無しで増産できる財・サービスは,約10兆円であるという研究もあります(ひとびとの経済政策研究会「エコノミック・ポリシー・レポート 2017-005」より再試算)。つまり,経済全体では,中小企業の経済活動を促進する政策の実施,例えば,社会全体からのニーズも高く介護・保育離職を防ぎ,就業率を高める効果も持つ介護・保育などの増産の余地がまだあるといえます。2013年以降,十分ではなかった景気拡大政策を改善し,地域社会を持続させていく観点から経済政策や地域政策を提案できる主体は,滋賀県中小企業同友会です。
 これら提案を行うことは,「中小企業は,経済を牽引する力であり,社会の主役である」と前文に謳い,「中小企業の声を聴き,どんな問題も中小企業の立場で考え,政策評価につなげる」という基本原則に定めた「中小企業憲章」(2010年6月18日,閣議決定)の精神に沿ったものだといえます。このような中で,地域経済の根幹を担う中小企業とその経営者が「経世済民」を至誠に自社の経営に立ち向かい,加えてその努力が報われる経営環境の在り方に思いを馳せていくことは今まで以上に求められる経営姿勢であると言えます。そのためには,「全社一丸の全天候型の強靭な経営体質の確立」と「滋賀県中小企業の活性化に関する条例」の内実化を通して,中小企業の力を高めていく事が必要不可欠であるとの強い信念をもって主体的に努力するとともに,同友会運動の「質」と「量」を拡大していく事が必要です。

2019年度スローガン

50周年に向けて強靭な企業づくり、同友会づくりに取り組もう
~伝えよう地域の経営者へ「同友会の存在、理念、真髄を」~

重点方針

1.滋賀同友会50周年に向けて、同友会を伝える活動を継続します

1)2019年度に650名以上の滋賀同友会を実現します。
  • 県内全企業に「中小企業家同友会」の名前と存在を知らせる活動を行います。
  • 7,000名の経営者に広報活動で同友会を知らせます。
  • 各支部・ブロックで2,800名の経営者に同友会を直接知らせ、同友会にお誘いします。※
    ※上記②③は各支部で計画・実践を月次で目標の追及を行います。
  • 滋賀同友会ホームページ、フェイスブックで活動を発信します。
  • 「会員増強の手引き」、「会員定着の手引き」いずれも滋賀版を活用し、日常の活動に活かします
    ※入会率20%以上 退会率10%以下(650名以上)
     【例会・組織活性化委員会/すべての組織】
2)地域や社会の課題解決・要求に応える
  • 第20回障害者問題全国交流会in滋賀開催を成功させ、地域に「人を生かす経営」の実践を広げます。【障全交実行委員会/ユニバーサル、共育・求人、経営労働】
  • 職場体験学習・インターンシップ、大学とのキャリア教育支援に取り組みます。【共育・求人委員会、各支部】
  • 中小企業の経営環境を改善するための政策提言を行います。【政策委員会】
  • 地域課題を自社課題としてとらえ、地域の未来を考える「地域ビジョン」構想プロジェクトを実施します。【政策委員会/実施支部】
3)地域を担う同友会組織と会員企業をめざします
  • 同友会らしい例会づくり(注3)とグループ討論(注4)で会員一人ひとりの経営実践につなげます。【例会/組織活性化委員会】【各支部】
  • 会員の顔と企業が見える関係づくりに努めます。地区会(支部内の地域組織)を順次設置し、課題別・興味別の例会活動を実施します。引き続き研究グループ会の開催や役員・事務局による定期的な訪問活動を実施します。【例会/組織活性化委員会】【各支部】
  • 支部ごとに新入会員のオリエンテーションを開催します。【例会/組織活性化委員会】【各支部】
  • 組織(滋賀同友会)運営と企業づくりを学ぶため、同友会理念の体現、実践をめざすリーダー(理事・支部運営委員等)の育成に取り組み、関西や全国行事に目標を持って参加します。【理事会】【各支部】
  • 同友会活動の持続的発展のため、財務強化の検討を開始します【総務会】【理事会】
  • 事務局活動の合理化と支部、委員会の自主的主体的活動を支援します。【事務局】

2.維持発展し続ける企業づくり

1)経営指針に基づく強靭な企業づくり
  • 労使見解に基づく経営指針づくりと指針経営(注1)の実践を推進します。【経営労働委員会】
  • モデル企業認定制度(滋賀でいちばん大切にしたい会社認定)の認定企業と挑戦企業を増やします。【経営労働委員会、各支部】
  • 21世紀型中小企業づくり(注2)をベースに会員企業づくり報告による問題提起の例会を開催し、会員一人ひとりの実践となる例会や活動づくりを行います。【各支部】
2)人が育ち発展し続ける企業づくり
  • 新入社員、中堅社員、幹部社員研修や課題別研修などを会員の要求に基づき開催します。【共育・求人委員会】
  • 求人・採用活動通して、共に育つ社風づくり、指針に基づく社内整備で強靭な企業づくりをめざします。 【共育・求人委員会】
  • 誰もが働きやすく、人が育つ企業づくりの実践と普及【ユニバーサル、経営労働、共育・求人】
3)課題別・要求別の学びの場づくりを推進します
  • 中小企業の国際化・海外ビジネスの展開を支援し、経験を交流します。【新産業創造委員会】
  • 青年経営者・後継者の学びの場として、経営指針づくり、経営実務課題の解決の場を設けます。【青年部】
※【 】は主な担当組織をさします
注1)指針経営  「指針経営」=「理念経営」(注)を補強する概念。「経営理念」が「経営」の理念である限り、健全な「経営」と「理念」は不可分と言う考え方から、「経営理念」の成文化と共有・浸透だけに終わらず、自社事業の分析、外部経営環境の調査、自社の成長・発展戦略の立案、その戦略に基づく具体的な行動計画とその実践などを通じて、「経営理念」の実現をめざす。またその戦略、行動計画は「経営理念」に示された考え方や、価値観に沿ったものであるべきなのは言うまでもない。
 「理念経営」=経営理念を中心に置いた経営。経営理念で思い描く理想の自社、地域の実現をめざす。そのために、“会社がめざす目的と大切にする価値観=経営理念”を明らかにし、常に理念に立ち返り、理念に基づく業務、行動を実践しようとする。 注2)21世紀型中小企業づくり  第一に、自社の存在意義を改めて問いなおすとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業。
 第二に、社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ちあい、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。
 なお、「21世紀型中小企業」をめざす上で、欠かせないのが、「労使見解」(「中小企業における労使関係の見解」)の学習です。これは、1975年に中同協が発表した文書で、労使の信頼関係こそ企業発展の原動力であるとする企業づくりの基本文書です。
(同友会運動の発展のために第3次改訂版 11ページより抜粋) 注3)同友会らしい例会  「同友会らしい例会」=「同友会の月例会は会員の経営体験の報告とそれを受けてのグループ討論が基本となります。報告者と事前の打ち合わせを十分に行うなど例会づくりの準備の過程も学ぶ場になり、例会を充実させます。謙虚に学ぶ姿勢でのぞめば、どんな話からでも学ぶことができます。同時に企業経営で実践するために変革の姿勢で学び続けることが必要です」
(同友会運動の発展のために第3次改訂版 15ページより抜粋) 注4)グループ討論  「グループ討論」=「同友会の例会では、報告者は問題提起者です。報告者の話を自分の体験に重ねて聞き、さらに他の人の意見や体験も自らの経験に重ねて聞き、討論することで自社の実践に取り入れることができます。そのために同友会の例会ではグループ討論を重視しています。」
(同友会運動の発展のために第3次改訂版 16ページより抜粋)