滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-北近江支部-

8月24日北近江支部8月例会を開催いたしました~『最先端の事業は廃棄から考える!!俺はガソリ ンを売らないガソリンスタンドを目指すんじゃ!』

北近江支部 例会レポート

滋賀県中小企業家同友会 北近江支部8月例会報告

            

2020(令和2)年8月24日(月)18時半から、北ビワコホテルグラッツィエに於いて、油藤商事株式会社 代表取締役 青山 裕史氏を報告者にお迎えし、Zoom ミーティングルーム併用のハイブリット方式で、北近江支部8月例会が行われました。

☆北近江支部長挨拶より☆
今回のコロナ禍の時代だからということに関わらず経営者として改めて思うことは社員も含めて会社は一隻の船に乗っているといわれている。
羅針盤、地図を含めてどこに向かって進んで行くのかという制度の良い羅針盤と地図と行き先をしっかり皆決めて進まないと、船長すらどこに行くのか風任せの進路になってしまうとなおさら従業員はどこに連れていかれるのかと不安でしかたなく、みんなで頑張ろうという気持ちにはなれない。
そのことからも経営計画書、指針書、理念がないと、一つのまとまった船の船員、会社にはならないと考える。
また、経営者として計画書と共に誰もが納得できる事業報告書を毎年作り次年度も頑張る気持ちと決意をもってけじめと方向性を示すことが大事である。

☆青山さんご報告☆
テーマ『最先端の事業は廃棄から考える!!
俺はガソリンを売らないガソリンスタンドを目指すんじゃ!』
前半は油藤商事の事業内容を中心とした報告
後半はその中での事業展開についての報告をしていただき各々の後にグループ討論をするという二部制で行われました。


*青山氏報告①
・油を売っている籐八さんの籐八商店として創業明治30年の4代目
・ガソリンスタンド(以下GS)のイメージとは、ガソリンを入れるところ・生活必需品ではあるが、最近は脱石油、脱GSという流れになって来ている。
ハイブリッド車・電気自動車であったり、今回のコロナ禍での外出禁止となってくるといかに車を使わない方法というと我々GS業界は今後無くなって行く商売といえる。
・エコとか環境という視点から言うとGSというと排ガス問題やエンジンオイルの流出や不法投棄の代名詞にもなっているタイヤ販売、たくさんの水と洗剤を使う洗車などで環境に大きな負荷をかけているので環境に優しいGSができないものかと青山さんは考えたそうである。
・約20年前にペットボトルを集めようと思った。どこででも買えるペットボトルを100%リサイクルしたいと考えたが、リサイクルしてくれる場所、捨てる場所が無かった。
集められるのと同じくらい回収できる場所を見つけよう、それをGSでやろうと思いついた。
・GSの一角に回収ボックスを設置し作り、GSはお客さんが給油の他にペット・アルミ缶・スチール缶・段ボール・乾電池・古紙など家庭の資源ごみを回収できる場所にしよう。
お客さんにとってGSは曜日に関係なく営業時間内にいつでも回収してもらえるというメリットがある。GSにとっては資源を持ってきてくれる人はほぼ車で来てくれる。ということはガソリンを入れてくれる。GSは環境に悪いから環境に良いことをしようと思っていたが販売促進になっていることに気がついた。これは続けられるなと確信を持ったそうである。
・行政も回収業者もちゃんと綺麗に仕分けされている資源ごみであれば、しっかり資源としてリサイクルできるので全て誰も困らない仕組み作りができる。
・今の流通は買った商品を届ける物流(動脈物流)が得意だが、皆さんの所に散らばった物を集めてくるという物流(静脈物流)は世界的にも未発達であるといえる。
いまだ行政がゴミの回収を担っているが次の世代には、資源ごみを回収していくルートが物流の大きなビジネスチャンスになるかも知れない。
資源ごみを集める物流の市場規模は計り知れないがそれをGSが手をあげるとしたら面白そうである。
・“バイオディーゼル燃料について”
油藤商事はバイオディーゼル燃料をおそらく日本で最初に販売したGSである。
バイオディーゼル燃料とは、今までゴミとして捨てられていた植物性の廃食油から作ることができる軽油である。使い勝手は軽油とおなじである。
炭素の繋がり方や性質がガソリンより軽油とよく似ている。軽油とよく似ているからバイオディーゼル燃料は軽油車に使うことができる。ディーゼルエンジンが素晴らしエンジンなのでバイオディーゼル燃料がその許容範囲内に入っているというのが正確な表現であろう。
エネルギーの地産地消。地域で作る地域エネルギー、ローカルなエネルギーである。ということを熱心に発信している。これがあるからこそやる意義があると考えている。
天ぷら油を集めてくる。集めた油で燃料を作る、作った燃料を地域の車で使う
集める→作る→使うという三つのサイクルがいかに地域で回って行くかというのがこの燃料の最大の味噌である
この地域モデルをいかに回していくのかということが青山さんの会社の仕事となる。
・集める。環境教育として学校や生徒会、駅の駐輪場、スーパーのなどの店先、企業等の社員食堂など、スポーツクラブ、学童保育、公民館、集会場、作業所など人(特に女性)が集まる場所に回収BOXを置いている。
・作る。平成15年にプラントを設置、1日1000Lのバイオ燃料がつくられている。
・使う。車にはステッカーを貼ってもらう。福祉の車、たねやの配送者、平和堂内ででる油を回収し同契約配送業車やゴミ収集車、生協、ヤンマー本社屋、ネクスコ(SE内の廃油回収とゴミ収集車や除雪車)などまだまだ多数にわたっている。
SDGsの観点からも「7番のエネルギーをみんなにそしてクリーンに」というところにマッチしている。

☆グループ討論①
*討論テーマ「今後どんな新しいビジネスが生まれると思いますか?」
“2027年65%は新たな職業に就職する”(キャシー・デビッドソン氏)
現在高校1年生の子ども達の65%が大学卒業時に今存在しない職業に付くだろうといわれている。
日本だけでなく世界的にコロナの影響で働き方を見直している。非対面で行える事業が増えてくるであろう。
銀行もしかりで昔はお客さんと対面で行っていたが、非対面でできることやオンラインでできることに変わって窓口業務が減っていくであろう。
また、AIなどが進む半面、リアルな対面をあえて求めていくこともあるだろう。
逆に無くなる職業はなんだろうか、審判業、会計士、スーパーのレジ係、有人GSなど
も無くなっていくであろう。

・SGDsの取り組みについて漠然としていて中小企業とは関係性が見えなかったが、
1、中小企業にしかできないイノベーションを起こす
2、地場の経済に対する貢献
3、地場の人材を育成
というのを見つけこれこそが中小企業にしかできないSDGsではないかと思うようになった。この三つをいかにやっていくかを考えている。
・青山氏は『スロービジネス』という言葉を大事にしている。
『スロービジネス』とはおカネや効率、スピードを追い求める「スピード」とは違った
もうひとつの仕事のあり方。
「独り占め」するのではなく「分かち合い」。環境を破壊せずに自然と「調和」する。
「モノの豊かさ」よりも簡素で愉しい「心の豊かさ」。人と自然と生き物と全ての「いのち」を大切にする仕事。自分らしい「生き方」と「働きかた」がかさなる仕事
・コロナの前から話に出ていたがコロナが起こったあとこのスロービジネスの必要性をすごく感じるようになった。こんな仕事をしたいなと青山氏は言っておられた。
・青山氏のGSで取り組む「スロービジネス」の大きな柱は2つ
1、誰も困らない仕組み作り=資源回収
2、近くでまわす=バイオディーゼル燃料 である。
・2011年の震災前の価値観と震災後の価値観、コロナの後の価値観は大きく変わった。
残っていく商売と無くなっていく商売はあると考えた時に、自分のGSを今までの旧態のままのGSで良いのだろうか?と考える。そう考えた時に自分の仕事を“パラダイムシフト”するという発想に至った。
“パラダイム”とは物事はこうあるべき、GSは給油をするところ、洗車をするところ
というこうあるべきという概念を変えてみる。ほんの少しだけ向きをシフトすること。
ほんの1度横にずれてみる5年で5度10年で10度変わってくる。そうなると社員さんや周りは違和感を感じることなく自分の仕事の軸を変えていくことができる。GSという商売をしながら、ガソリンを売っていながら少しずつガソリンを売らないGSになっていく、そうすれば社員さんや周りにも違和感なくなんとなく変わってきたなと定着していけると思う。
・廃棄から考えるという言い方している。普通、生産→流通→販売→消費→廃棄だが廃棄から考えると色んな事が変わってくる。
GSを廃棄からスタートして考えると、GSではタイヤを売るのと同じように廃タイヤも引き取っている。お客さんからは「困ってたんや。助かった」と持って来てくれる。その中の何人かに一人は「タイヤ買うわ」と言ってくれる。古いタイヤを集めれば集めるほど新しいタイヤが売れていくという価値観がこれからの時代に当たり前になっていくのであろうと思う。
・新聞を配っている人と新聞古紙を回収している人が違う。だから古紙がゴミ問題になる。新聞屋さんが新聞を回収すればいいのではないか、本屋さんが本を回収すればよいのではないか、靴屋さんが靴を回収すれば、電気屋さんが電球・蛍光灯をを回収すればLEDが売れるのではないか。それぞれの仕事の延長線上でまだまだできることがたくさんあるのではないか。
これがコロナの間に考えてコロナ後に自分の仕事を“パラダイムシフト”していくという大きな展開になっていくことになると思っている。と締めくくられました。

☆“天ぷら油で世界一周!バイオディーゼルアドベンチャー”
ランドクルーザーにバイオディーゼル燃料を作る機械をコンパクトに作ってのせ世界の行く先々でバイオディーゼル燃料を作りながら世界一周をしようという企画だったが、この車を作ろうと思ったきっかけは中学生の頃に見た映画“back to the future”初作のラストシーンで、「ほー!ゴミも燃料になるんや」と思ったことを具現化したものである。

☆青山氏の大切にしていること
発顕還元 ⇒出せば入る
情報を出せば新しい企業さんと繋がれて大きなビジネスに発展する。「法則なんだ」
笑福来門 ⇒笑う門には福来る
朝起力  ⇒早起きは繁栄の第一歩 朝5時から8時までの3時間はゴールデンタイムで
電話やメールも入って来ず、邪魔もされず頭も冴えて資料やデーターをまとめたり
仕事をするにはもってこいの時間だといえる。

☆グループ討論②
*討論テーマ「地域貢献をどのように考えているか」
金融:本業が地域貢献になるのが本望。
地元があって、地元が元気になって地元の企業さんが健全であることが第一
旅行:店舗会議室等を自治体やサークルに解放できないか。
チェックインまでの昼間の時間を使って子育て世代のお母さんや、高齢者も巻き込んでお
母さん達の支援ができないか。
企業:地元で会社を営んでいて経営が良いことが地域貢献なのではないか、荒廃し人の出入り
がなく廃墟になると周りが不安になる。人が動き仕事をしているということは防犯にも
なる。どんな小さい企業にもできる社会貢献ではないだろうか。
地元で採用をし会社を継続し利益を生みお給料を払い、生き生きと働くことではないか。

☆質問・補足説明
Q:ガソリンは無くなるのか?
A:ガソリンが無くなるより先に、ガソリンで走る車が無くなるだろう。
数十年後には、博物館でガソリンで走る車が展示される時代が来るかも。
Q:ガソリンスタンドは無くなるか?
A:セルフスタンドは無くなっていくかもしれないが、スタッフ給油の我が社では
遠くから利用しに来てくれる方がおられるので、あえて付加価値を求めてきてくれていると思う。燃料の配達やスタッフ給油を突き詰めていこうと思う。
新しい分野の企業とのコラボレーションを進めていきたい。
Q:プラントに対する融資はスムーズに受けられたのか?
A:当時、環境融資が始まったところでうまく融資を受けることができた。その後は、
集める→作る→売るこの3つがうまく回りだすと勝手に回っていく。その売ったお金で投資をしていく。燃料を使ってくれる人が廃油をもって来てくれる。廃油を集めてくれる人が燃料を使ってくれるというストーリーを作っていくというイメージである。
Q:「スロービジネス」のヒントは?
A:明治大学の辻先生の著書「スローイズ ビューティフル」という本を見た。
Q:将来どんな風になっていきたいか?
A:色んな人に話を聞いて色んな人に影響を受けて感動したりしたことを、考えるだけでなくまずやってみようという実践者になりたい。
Q:水素・電池などのエネルギーではなくバイオ燃料だったのか?
A:設備が大掛かりになるので中小企業では扱いにくいと思った。実は、バイオディーゼル燃料は天ぷら油から作るが極端にいえばお鍋一つあればできる燃料であることも手を出しやすかった。
Q:現在の資源回収やバイオディーゼル燃料のアイデアは青山氏発だったのか社員さん発だったのか?
A:青山氏発でみんなが協力してやっている。
記録 C.F