滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-湖南支部-

2月18日湖南支部2月例会を開催しました~夢が見にくくなったこの時代、必要なのは長期ビジョンだ~

湖南支部 例会レポート

湖南支部2月例会を開催しました。

※※ 新型コロナウイルス感染防止対策のため、会場にアルコール消毒液を配置し、
参加者にはマスク着用をお願いして開催いたしました ※※

とき:令和2年2月18日(火) 18:30~20:50
場所:クサツエストピアホテル

テーマ:「本当に今のままでメシが食えますか?」
~夢が見にくくなったこの時代、必要なのは長期ビジョンだ~

報告者:梅南鋼材株式会社 代表取締役 堂上勝己氏(大阪同友会会長)

参加者 51名

湖南支部2月例会では大阪同友会会長の堂上勝己氏(梅南鋼材株式会社代表取締役)をお招きし、
経営指針書に基づく経営、特に10年ビジョン、社員共育をテーマにご報告いただき、
グループ討論を行いました。ご報告要旨を掲載いたします。

社員の平均年齢は、50名いますが、30.7歳です。製造業の割には若い人がたくさんいます。産業機械の関連の鉄工所などに鋼材を販売しています。プラントとか、建築も一部やっております。事務所ですが、若い女性もけっこうおります。若い子ははいったころは図面の見方もわからない子でしたが、教えてやっております。値付けも交渉できるようになりました。

ITが進んでいるといえば進んでいますが、注文、見積もりはFAXできますので、紙をなるだけ減らそうと、画面上で管理できるようにしています。一点ものから図面を起こしていますが、お客様も多いので数がたくさんあります。すぐに応対できるように、納品書と同時にクラウド上に図面を載せています。お客様の情報で絞っていけば、3から5分以内にはたどり着けるようにしています。

沿革ですが1956年に法人化しました。それまで10年間はいろいろやっていたそうです。1975年に親父がなくなった後、兄貴が後を継いで、私はサラリーマンをしていました。6人兄弟の末っ子です。滋賀県にも一時おりました。そうしているうちに、私が28歳の時に、兄貴が交通事故で亡くなりました。私は会社にも行ったことがなく、鋼材についても知らないなかで、だれが継ぐのか、俺しかいないということで、引継ぎなしで社長になりました。なのでほとんど社長の勉強もしていない中で継ぎました。

入った当時に、10人いなかったと思いますが、古い従業員さんが多かったので手ごわいなとおもいました。機械も古かったです。アナログの機械です。それではだめだと思いました。仕事もわからない、経営の仕方もわからない中で、いろいろ経営の勉強をしに行くわけですが、あとで同友会に入って、ここに全部そろっていたと思いました。なんとか40年今までよく持ったなと思います。

いまのままの仕事で食えるのでしたら続けていけばよいのですが、10年後に皆さんの会社や業界がどうなっているのか考えたことがあるでしょうか。10年先のことはわかりませんよね。先月まで、新型コロナウイルスがなかったのに突然やってくるとかそういうことはわかりませんが、実は10年くらい先のことは結構わかります。

しかし、経営者は見たくない、真実を見たくないので、何とか避けて通りたいというのが経営者の心境です。変わらなければなりませんからね。昨日していたことと違うことをやらなければなりません。

自社は鉄板とかではなくて、レーザー加工もやっています。バブル崩壊ごろまでは80パーセントは鋼材で飯が食えていましたが、それで食べられなくなったので、今では鋼材販売は10パーセントしかやっていません。変わろうと思って20年かかりましたね。すぐには変われません。

皆さんは経営理念をお持ちだと思います。ものづくりは昔と今とでは、違うつくり方をしています。進化していっています。今ではレーザー光線で加工していますが、この技術は20年前にはなかったものです。金属も鉄のほか、銅、真鍮といった非鉄金属も切るようになっております。技術の進化と、材料の深化をしていかないといけないということで、理念をにあった「進化」を「シンカ」としています。

また、お客様が満足するものだけではなく、びっくりするもの、感動するものをつくらなければならない、といっています。自社には難しい仕事がきます。他社でできない仕事が回ってきます。うちでできなければどこでもできないものですから、ノーと言いづらいです。無理なものは無理ですが、何とかやっています。

10年後はどうなるでしょうか。人口が減っていきます。このことは20年前から言っていました。高齢者が増えていく。若い人が減っていく。これは20年前からあった話です。今、人が足らないと騒いでいますが、わかっていたのであれば手当をしておけばよかったのですが、そうなっていないということが現実です。

生産人口がどんどん減っていきますので、日本だけの労働者ではやっていけません。外国人労働者を入れていかなければなりませんが、自社では雇っていませんが、外注はベトナムに出しています。2050年にむけて、人口の爆発が起こるとされています。とても食料がたりません。日本では人口が減っていますが、世界ではどんどん増えています。

地球温暖化ですが、今年は暖冬で滋賀県でも雪が降っていないとおもいます。去年9月にヨーロッパにいきました。そこで、科学の地球儀というものを見ました。NASAから送られたデータを地球儀上に投影するものです。日本近海の海水温が上がっています。発生した台風が日本上空を直線的に進みますので、大阪でも大きな影響が出ました。

皆さんはBCP計画を持っておられますか?自社もありますが、さすがに新型コロナウイルス対策はないです。ありとあらゆることを想定して作らなければならないということです。

今の場所では津波が来ればつかります。その為東大阪に工場をつくろうとしていますが、当面は外資系の地震保険、津波保険に入ってリスク管理をしております。営業保障までしてもらったら、大口の取引なので女性の営業担当が表彰されてということです。

 

温暖化対策を皆さんのところでやっておられますか?アクション21といって、温室効果ガスを削減する取り組みをしており、表彰ももらいました。真面目にCo2の削減をしています。

いまや社員の健康をどうするかということが言われています。受動喫煙防止法もできましたので、工場内での受動喫煙も対策しています。今の子は、ファーストフードやカップヌードルをたべていますが、彼らが40歳になったら健康上、ダメだなとおもいまして、仕出し弁当をとって食べたら170円補助を出すことにしました。ウォーキングラリーもやっています。60万歩という人がいて、夜な夜などこ行ってんねん、ということもありました。

SDGsはもう知らない人はいないと思いますが、知らない人は勉強してください。学生がSDGsの取り組みについて聞いてきますから、それで答えられなかったら終わりでしょう。ぜひ勉強してください。

 

10年後、このような大きなことは必ず起きるということを見据えたら、そういうわかっていることに対してどう手を打っていくかが重要です。

自社もバブル崩壊の時に、お客さんの仕事がなくなったので、新規開拓で訪問すると、鋼材やときけば、「値段はいくらや」ということを聞かれました。価格でしか勝負できませんので、こんなことをしてたらみじめなことになるなと思いました。「仕事もってきたらとったるわ」と言われましたので、仕事を持っていきました。お客様に、キャパシティーや納期でお困りの方は言ってください、と仕事を集めて持って行ったら「無理難題や、できるわけない」ということを言われました。それで、「お前のところが仲に入れ」と言われました。こんなことをやってたら、他社と同じことをしていますので、価格勝負しかない、独自性が出せないということで、加工を始めました。

前加工をしてもっていきますよ、ということをやっていました。そういうことをやればやるほど粗利率が上がっていきます。プラモデル加工72時間でやります、ということもやっています。プラモデルの部品状態で、組み合わせればはまります。それを72時間でやります、ということをやっています。自社は材料の調達が早いので注文をいただいたら、調達をしながら図面をつくっています。レーザーで加工して曲げて、自社便で配達して72時間です。データーさえあればなんでも切れる機械を入れています。0.1mmから25mmまで切れます。真鍮や銅、アルミなどの非鉄製品も切っています。

この加工をどんどんやってお客さんに、「トータルコストダウンお助けマン」ということでやっています。払ってもらうお金は高いのですが、お客様のコストや作業時間が減るのでトータルコストは下がりますよ、ということで人気があります。BtoCもやりかけていますが、なかなかうまくいかないのが現状です。

社員さんが、工場に張り付いた社員でしたらダメでした。ITに詳しい社員がいるのでもっています。中小企業での課題は人材難だといわれています。2004年くらいから採用を始めるわけですが、同友会は緑化運動だ、と赤石さんがおっしゃっていました。当時は多くの失業者がいましたので、中小企業が採用していけばなんとかなるやないか、と自社も新卒採用に取り組みました。まだバブルの影響から脱していないときです。大変だと思いながら採用に取り組むわけです。新卒採用するとなると、4月に入ってくるわけですから、4月に仕事があるかわかりません。それで採用してもすぐやめてしまいます。そういうことを繰り返しながら、不信感も抱きながら採用しました。地元の高校から採用しています。地元の高校で、むかしはやんちゃな高校で今は普通の学校になっていますが、そういうところから採用するので大変です。

あるとき女性2人を採用しました。男性一人女性一人でほしいと思っていましたが、応募が女性2人でした。「無下に断らないでください」といわれましたのでどうしようかと思っていましたが、社員がやりましょうよ、と。幹部社員が、レーザーを動かすためのCADやったら女性でもできますよ、というので機械を入れましょうということになりまして、4500万円かかりました。1か月もしないうちに動きました。それがきっかけでモノづくりの方へシフトしていきました。その女性がいなければ、もしかしたらつぶれていたかもしれません。

2名採用して1名やめ、2名採用しては2名やめ、ということを繰り返しました。なかなか定着しない。権限移譲などをしながらやっておりましたが、2012年くらいから、7人くらい採用できるようになりました。30名くらいの会社で7名採用したので「狂った代表理事」といわれながらも、採れるときに採っておこうということで採用しました。いまでは「先見の明がありましたな」と言われますが。7名もとったらやめないんですね。友達もできて。それで先輩が後輩を教えるという風土が定着していったかなと思います。

今後継者問題がいわれていますが、経営者の後継者のもんだいもありますが、各部門の後継者問題も大変です。各部門に後継者がいるかどうかチェックなされた方がいいと思います。会社には若い子が20名くらいいるわけです。そこを金融機関がみたら、うわーっという反応です。信頼性が高まります。金融機関にとっては将来性があってありがたいのかなと思います。

女性が配送やCAD、レーザーにいます。3割くらいが女性です。同友会の合同入社式に参加しています。100人くらい新入社員があつまってやっています。社員研修や社内行事は委員会形式でやっておりますし、新入社員研修は、500時間をやっています。そのうち同友会が120時間、ほかは社内で研修してます。配属される部署以外もまわって、最後に所属する部署に入ります。そのぶん、教える方の手が取られるので大変なのですが、長くやっていますので、慣れてきたのかなと思います。製造の子も、営業の研修もさせますから、電話にも出させるのですが、ブルブル震えながら電話に出て、お客様もわからないですから、お客様から怒られるんですが、「うちの社員と思わんでください。地域の若者を育てるというつもりでいてください」とお願いしています。女性も作業服をきて現場にでて、直接作業はしませんが、どうやってつくっているのかみて営業に入るようにしています。

経営指針についてです。SWOT分析をやっています。毎年幹部社員を集めて6回くらいで経営指針をつくっていますが、幹部が各部門に帰って個別目標までやっています。全社会議で要望を聞き取ることもやっています。給料の問題、休みの要望がでてくるのですが、幹部社員で聞けること、今は聞けないこと、業績次第でできることをわけてやっています。それで、SWOT分析をしています。機会としては、お客さんの社員の高齢化を書いています。お客様は高齢の職人さんが多いので、前加工をしてもっていけばすぐ組めるので、楽になります。そのような分析をしながら、お客様のお困りごとをチャンスととらえて、積極的に攻めるゾーンを戦略にどう落とし込むかを決めています。それをもってかえって、各部門で話し合って、各個人の目標まで考えています。

そうしていますと、あまりぶれることがありません。10年後どうなるかを考えながら、いまどうなのかを考えると、そうぶれない、ということになります。

経営指針の発表会を、場所を借りてやっています。税理士さん、社労士、弁護士さんなどの顧問と、借入のある金融機関は全部お呼びして立ち会ってもらっていますし、新入社員の父兄にも参加してもらいます。父兄の方は中小企業だというだけでブラックと思っています。それやったら、いっそのことお呼びしようということで、発表会にお呼びしています。

ただ、それがいやな子もいますから、3月20日くらいにランチ会をやっていまして、社員に父兄あての招待状を渡しております。発表会では、新入社員も目標を発表しますから、喜んでもらっています。ぶるぶる震えながら発表しています。

経営指針がうまくいかない人は、つくりっぱなしですね。うちでは各部門で会議をしたものを、月に1回、会社を全部とめて会議をしています。全体に今の会社の状況を知らせるためにやっています。各部門で揉んできたものを全社員にわかってもらえます。

PDCAを回すサイクルがないと、経営指針はうまくいかないと思います。中小企業家同友会全国協議会の広浜会長の会社は52週やっている、つまり毎週やっているそうです。

 

「中小企業であることに誇りをもち、優位性を考えよう」中小企業でよかったと思います。大手の製造業も軒並みマイナスですが、中小企業がまだまだ生き残れる道があるのかなと思います。大企業は大量に作ったものを売るにしても人口が減っていきますから大変だと思います。自社は間断なき変革をしてきたのがよかったと思います。

いまじっとしていて飯を食えるのであればいいのですが、じっとしていても地獄。なんか挑戦して失敗するかもしれないけど、どっちが得かということを考えてもらえればと思います。