滋賀県中小企業家同友会

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2020年新春例会を開催しました~働く現場から見えてきた企業の未来~

組織活性化委員会 その他活動


2020年1月22日13:30~16:45、ホテルニューオウミ(近江八幡市)において、滋賀県中小企業家同友会新春例会および賀詞交換会を開催いたしました。124名が参加しました。記念講演として、埼玉同友会会長の久賀きよ江氏(㈱メガネマーケット代表取締役)よりご講演いただきました。


1)代表理事挨拶 水野透氏(㈱渡辺工業代表取締役社長)
あけましておめでとうございます。令和最初のお正月でした。皆さまご家族や知人の方と健やかにお迎えになったことかと思います。2020年はいよいよ東京オリンピックの年です。昨年のラグビーワールドカップで大変感動するシーンを見ることができました。オリンピックも大変楽しみにしているところです。
今年の干支は子年です。堅いかめの中に押し込められていたエネルギーが陽気とともに一気に根付くといわれている年です。明るい希望に満ちた2020年であって欲しいなと思いますが、足元では、昨年の秋ごろから製造業では景況感が落込んでいるところです。昨年の台風19号で大きな被害でたくさんの方が被災されました。異常気象や米中貿易戦争、アメリカとイランとの問題。本当に先が見えない、不確実な時代になったなと感じています。中小企業では大きな問題がたくさん控えております。働き方改革の一環で、同一労働同一賃金の問題があります。われわれ中小企業も来年の4月には適用されます。終身雇用をめざして、家族のような会社を目指している同友会として、この制度がどうなのかということもありますが、しっかりと対応していかなければなりません。また、2015年に滋賀県が日本一になりました廃業率の問題です。最近は3.4パーセント程度だと聞いておりますが、多少下がったといいましても後継者問題、人手不足が理由で廃業される企業、われわれの仲間が少なくないと思います。中小企業として解決していかなければならない問題が山積みですが、こうした状況だからこそ同友会で学んだこと、同友会らしさで乗り切っていきたいと思います。
われわれ同友会は、中同協50周年の年です。全国5万名の改正を実現しようと頑張っているところです。滋賀同友会は現在602名ですが、650名の会勢を3月末までには迎えたいと思っております。2010年、閣議決定された中小企業憲章には「中小企業は経済を牽引する力であり、社会の主役である」と書かれております。是非、同友会で一緒に学び、ともに頑張っていく仲間を増やしていきたいとおもいます。2020年もどうぞよろしくお願いいたします。

2)記念講演
テーマ:「働く現場から見えてきた企業の未来~自社の存在意義を再定義し、隣接異業種へ挑戦~」
講 師:久賀 きよ江氏 ㈱メガネマーケット 代表取締役
中小企業家同友会全国協議会 女性部連絡会代表
埼玉中小企業家同友会 会長

株式会社メガネマーケットは7店舗を経営しています。資本金は1000万円で、社員は30名です。
私は40歳の時、脱サラをして会社を始めました。それまで、メガネ業界で働いていました。一番最初に入ったところが百貨店に入っているメガネ販売店です。次に、大手ディスカウントのメガネ販売店にはいり、のちに望遠鏡や顕微鏡を扱う光学レンズ会
社に入りました。ところが、その会社が新規事業として、メガネ販売をはじめ、私も百貨店の中のメガネ販売店舗に配属されました。でも、それは私がしたい仕事ではなかったので、会社の経営にかかわる仕事に移り、仕入れや企画を担当して40歳を迎えました。
そのとき、会社を見わたしてみると、会社の上層部に女性の管理者がいませんでした。おそらく私も会社の本体に携わることができる期間もそう長くないのかなと予測しました。それまで一生懸命働いてきましたので、自分の人生をもう一度見直す、ひと呼吸おくということで、会社を退職しました。次の仕事が決まっているわけではなく、2か月くらい充電期間を置くつもりでした。
そのときに、一緒に働いていたスタッフが「次どうするんですか?何かやるんですか?」と聞いてきました。私は「そんなことはないです、充電したいので休んでるんです」と言いましたら、「実は何人かの人たちが辞めるという選択をして動いている人がいるんです、もし何かやるんでしたら一緒にやりましょうよ」、「久賀さんがやりたいってことがあったじゃないですか、それを実現しませんか」と声をかけてくれました。
私は百貨店やディスカウント店でメガネを販売するなかで、メガネ業界が低価格ラインと専門店ラインに分かれていることを知り、そしてそれぞれの良いところをとれば、お客様にとってよりよいメガネ屋さんができるのにな、と思っていましたが、ゆめゆめ自分がそれをやるとは思っていませんでした。でも、みんなに後押しされて、「じゃあやるか」という決意をしました。
経営者には、時期や運、人など良いタイミングの時があります。メガネ屋さんを始めようとすれば大きなお金が必要ですので、銀行へ2000万円貸してくれませんかとお願いしに行きました。その時は経営のド素人でしたから、経営計画もなく、ただやり
たいことを言ってお金を貸してくださいとお願いしました。すると銀行から「あなたには何があるのですか?」と聞かれましたが、何もありませんでした。ただ、その当時がバブルの時代でした。コツコツためて駅前のマンションを2400万円で買っていましたが、その時に評価額が倍くらいになっていました。銀行から、企業を立ち上げるという理由では貸せないが、別のことに投資するという名目なら貸せますと、とアドバイスをいただき自宅を担保に入れて2000万円を借りることができ、1店舗目をオープンすることができました。バブルという時代の流れが私の人生を変えてしまったんです。

経営をなにも知らないなかで始めましたから、経営を始めると3つの壁にぶつかりました。一つ目はお金の壁です。1店舗目を始めたとき、百貨店で売っている商品を相場より2割ほど安く販売するお店がなかったので、想定していた売上より多く売り上げがでました。予算が立ちましたので、4~5年くらいで3店舗をオープンしました。
しかし、一気に広げましたので店舗ごとの売り上げの偏りがあったりスタッフを育てるということができず、またバブル崩壊後の景気の波もあって、売り上げが一気に落ちました。そこに借入金の返済などが来て、お金の問題が出てきました。
2つ目の壁は、人の問題です。3店舗まで展開しましたから、人材を増やさなければならず、中途採用をしました。当然ながら、教育もできておらず、経営計画に基づく採用ではありませんでしたから募集してハローワークを介して採用して、店舗に配属するということをしておりましたら、いろいろ問題が生じてきました。お金の使い込みや商品の横流しなど、いろいろな問題が起きました。それらを追求するなかで、一度に6人が退職することもありました。
3つ目は後ほどお話しします業界の壁です。
経営を進めていくと、様々な問題にぶつかり、めげそうになりました。数値の管理や計画も立てられず、無いないづくしで悩んでいた時に、同友会に入りました。
入会したときに、新入会員さんが集まった会で、先輩経営者の方に、「銀行からお金を借りるときにペコペコ頭を下げてお金貸してください、ってやってるんじゃないよ。自分の経営を語って、自分の計画をたてて、この計画に銀行がのってくれるような魅力的な自分の経営をやり、それを自分で説明できるからこそお金が借りられるんだ。そういうしっかりした経営者になれ」とおっしゃった言葉が今でも頭に残っています。
それから、同友会で毎日のように勉強していました。まず経営革新にとりくみました。1年間一生懸命勉強して、経営計画をつくり、中期経営計画をたて、人材採用計画をたてて共同求人活動に参加しました。ほんとうに経営理念にのっとった経営をしたいのであれば、新卒をとったほうがいいといわれました。はじめは四大卒の新卒が来るとは思っていませんでしたが、「やってみたらいいじゃない」といわれてやっていましたら、本当に入ってくれました。でも、半年くらいでやめてしまいました。「この会社の将来がみえません」と言われました。頭をハンマーで撃たれたくらいの衝撃でした。この経験から、新卒の子は、会社の行き方、将来性をそういう視点でみているんだということを知りました。
新卒を採用するようになって、親御さんをご訪問するようにしました。中には、休みが自由に決められないから学生時代のほうがいいといってやめていく人もいましたので、親御さんに説明して将来ことを見据えて後押しをしてあげてください、社会に出るということはこういうことだとお話ししてくださいね、とおねがいすることを始めましたら定着率がよくなりました。

 創業したときの経営理念は、「お客様に最高のサービスと価値ある商品をお手頃価格で提供する企業をめざします」というものでした。これは、会社を立ち上げたときに自分がこういうところを目指していきたいなと想像しながら創った理念でした。しかし、新卒を採用し、みんながお客様によりそいお客様の抱えてらっしゃる問題をちゃんと聞き入れて、それに真剣に対応している姿をみるにつれて、社員がやっていることを言葉にした理念を創ろうと思い、現在の理念に変えました。それが、「豊かで明るい快適生活の提案で地域と共に歩み喜びを共有する文化的企業を目指します」という経営理念です。

メガネ業界では、大手のディスカウントチェーン店が全国展開してきました。販売している人は学生さんで、コンピューターを用い光の屈折から度数を出せますし、ファッション性を重視しており、素材は韓国や中国のものです。それで、一品単価が下がり、業界の売上高が8000億円から3900億円まで落ちました。その反響が大きくて、いままで2、3万円で買っていたメガネは何だったんだ、という否定になるわけです。私たちは困っている方の視力の矯正ということに重点を置いていましたのでスタンスが違っていたのですが、お客様がディスカウント店に流れてしまいました。ディスカウント店では人だかりができているのに私たちの店舗が閑散としているのをみて、「値段を下げましょう」という社員もいました。
しかし、大手と価格競争をして中小企業が勝てるわけがありません。それをみんなに理解してもらおうと、なぜお客様が自社を支持してくれていたのかを分析しました。SWOT分析をして、自社でメガネを買ってくれるお客様はなにを価値としてくれているのかを考えました。
メガネというモノでいえば、どこでも売っているものです。しかし、お客様が来店すれば相談をお聞きし、お悩みをお聞きし、少しでも快適になる提案をしてくれる。それに満足して買ってくださってファンになってくださっていました。その結論をもとに、店舗の中から低価格の商品を撤廃しました。自分たちの存在をきちんと伝えられるような商材だけにして、一人ひとりのお客様と向き合って問題解決をしていく、問題解決人を目指そうというスタンスで、モノからコトへということを目指しました。お客様がどういう状況でメガネを欲しておられるのか、今の生活の中で何が不便で、どういう状況を求めていらっしゃるのかをしっかり聞いて、それに一番いいと思えるものを推進していこうと決めました。ありたい姿ではなく、自社のスタッフが今やっている姿を言葉にして、理念として掲げています。

経営理念を創りましたが、売り上げは以前のようには戻りませんので、大学の先生が行う勉強会に参加していますと、「異業種」「新規性5パーセント」という言葉を聞ききました。市場を壁を乗り越えるカギはこれだと思い、隣接異業種に取り組むことにしました。隣接ということを、「お客様を快適にする」ことを軸に考えました。社員がお客様と接しているなかで、お耳が聞こえにくい方が多いのではと気づきました。それで、耳の快適も求めようということで、補聴器業界へ参入しました。単に音を大きくするものは、集音器や拡声器というもので、専門的な補聴器は高価です。70くらいある人間の聴力チャンネルを調整して、聞こえをよくするものが補聴器です。なので、それをやろうとすると社員教育が大変です。補聴器のスペシャリストをスカウトして入ってもらいました。そして社内で研修を積み重ねて実践してやっていました。すごく難しいので、ほかの社員は引いてしまうのですが、スペシャリストの方が調整するとすごく売れました。
一つのエピソードがあります。90歳くらいのご夫婦が、メガネの調整でご来店されました。いつもより元気がなかったので、どうしたんですかとおたずねしたら、ご病気をお持ちで余命何か月といわれてらっしゃいました。その方が「実はね、自分の人生は長くないから少しでも快適に暮らしたい。家内と話をしながら穏やかな生活を送ることができればそれで満足なんだ。でも、妻の声が細くてよく聞き取れない。耳鼻科に行ったが加齢による難聴だから治らないといわれた。」とのことです。それで帰ってくる途中に店舗に立ち寄られたそうです。ダメでもともとですから補聴器をつけてみませんかとおすすめてしてつけてもらいましたら、みるみる表情がかわって、「聞こえる」とおっしゃいました。奥様が、「それで聞こえるんだったら、いくらでもいいからこれを買って、自分たちの人生を楽しみましょう」とおっしゃいました。そのやり取りを社員が見ていて、自分たちのやっていることが人の人生に生き甲斐を与えるものなのかということがわかり、補聴器に対する社員の考え方が変わりました。


耳の快適は高齢の方に向けて取り組んでいますが、子どものメガネも取り組んでいます。生まれつき弱視を持っていたり、目に障がいをもっている子が多いんです。医者から処方をもらってメガネ屋さんに来るのですが、子どもはいやいや来るのです。分厚いレンズのメガネをかけていると、幼稚園とかでいじめられたりするんだそうです。そうして、心に傷をおうこともあります。親に手を引かれて泣きながらお店に入ってくる姿をみたときに、この子たちがもっと楽しく治療を受けられて、大人になってメガネが要らなくなる時期がきますのでその時まで治療を継続して受けられるようにと思い、「こども眼鏡館」を出店しました。全部、子ども専門です。キャラクターをデザインしたものや薄いレンズのメガネを扱っています。利益はそんなに出ませんので、他社はやりたくないところですが、社員はとてもやりがいをもってやってまいす。子どもが喜んでお店に来る様子をみて、私たちがやっていることが重要なことなんだというやりがいを感じ、それが若い社員にとって需要なことなんだと実感しています。
いまでは、埼玉で子育てを中心とした街づくりをしている吉川市からオファーがあり、出店させていただきました。先方からお願いされて出店しましたので、保証金もそんなに求められませんし、賃料も半分程度です。社会的背景のニーズに合わせてビジネスをすると、受け入れてくれるのだと実感しています。当然、利益を出すことも必要ですが、社会的に自社のお役立ちを提供できて、そこで利益をいただくということを事業として考えていく必要があると思います。

同友会で経営についてすべて学ばせていただきました。同友会で一つ一つの学びを着実に実践すれば、すべて身に付きます。経営のあり方もそうですし、理念の創り方、社員共育や経営計画もそうです。
意識してもっとやってほしいのは、時代背景が変わると自社の事業がなくなることがある、ということです。そういうことを見据えて戦略を立てて事業を進めていく必要があります。メガネ屋さんは今後、無くなっていくと思います。眼内レンズで遠近両用のものを目にいれてしまうと、ファッション的意味合いではのこるでしょうが、業界の売り上げは大きく下がっていくと思われます。
経営環境に適応してく、環境適応型経営が今後生き残っていくと考えていますが、そのために経営者として必要な能力は、4つあります。これらの能力は、まさに女性経営者の感性が活きると思っています。
一つは読む力。時代を読むとか、環境を読む、変化を読む力です。
二つ目は問う力。今はこれをやっているが、これで大丈夫か、危機感をもって問い続けることで少しずつ自分たちの立ち位置がわかってきます。
三つ目はつなぐ力。店舗がネット販売に逐われている中で、どこでつながるか。自社では病院や施設とつながっています。どうやって、だれとつながっていくか。必要とされていくところに出ていかないといけません。
四つ目は感じる力。何を求められているのか、喜んでもらえているのか、なぜ喜んでもらえているのかを感じて、ビジネスの中に落とし込んでいく。モノで満足するということはありません。モノは同じものが他社でも売っています。求められるのは時代の変化とともに、自分たちの事業をどこに当てはめていくかを考えていく必要があると思います。

3)賀詞交換会
新春例会に引き続き、賀詞交換会を開催いたしました。冒頭、大津支部会員のkirara音楽事務様より、お琴とバイオリンの演奏を披露していただきました。

乾杯のご挨拶では⽇本政策⾦融公庫⼤津⽀店の須崎様よりいただきました。