

テーマ:眠っている地域資源をまちの力に変える
講 師:御子柴 北斗氏 株式会社まちづくり小浜 代表取締役専務
と き:2025年10月28日(火)18時30分~21時
ところ:ホテルニューオウミ 参加人数:69名
御子柴氏は長野県伊那市で生まれ、京都大学農学部に進学し、農林水産省に勤務。その後福井県小浜市に出向し3年間勤務。街づくりに携わるなかで小浜に魅力を感じ、農林水産省を退職して移住しました。小浜には古くからの街並みや伝統工芸、海の幸など豊富な地域資源があり、それらを活かした街づくりを進めています。
御子柴氏の取り組みは、地域に存在する固有の資源を深く掘り起こし、現代のニーズに合った新しい価値として再構築する点に特徴があります。具体的な成功事例として、道の駅「若狭おばま」の全面改装や、空き家を魅力的な宿泊体験へ昇華させた「町家ステイ事業」、小浜の食材を広く観光客に届けるレストラン「濱の四季」の運営をご紹介いただきました。これらの事業は、外部からの観光客誘致に留まらず、地域住民が自らのまちに誇りを持てるよう、生活圏そのものを観光の魅力として捉え直すという明確な視点に基づいております。

講演の中で御子柴氏は、持続可能な地域活性化を実現するための鍵として、三つの重要な要素を提示されました。
第一に「観光資源の磨き上げ」です。資源を現状維持するのではなく、観光客の視点に合わせて常に洗練させ、話題性を狙った一度きりの施策ではなく、唯一無二の体験価値へと高める継続的な努力と投資の重要性が強調されました。
第二に「地域事業者との協働」です。まちづくりは一企業だけでは成し得ません。旅館、飲食店、農家など多様な事業者が共通のビジョンを持ち連携することで、質の高いサービス提供の基盤となります。
第三に「質を重視した観光戦略」への転換です。量的な指標ではなく、お客様の滞在満足度や地域経済への貢献度といった「質」を追求する戦略が、結果として持続可能で安定した収益を生み出す道であると力説されました。高い付加価値を提供することの重要性が示唆されました。

御子柴氏のご講演は、地域資源が「眠っている」状態から「まちの力」へと覚醒するプロセスを、具体的な成功体験を通じて明快に示してくださいました。我々中小企業家にとりましても、自社の「眠っている資源」を見つめ直し、地域社会との関わりの中でその価値を最大化していくための、多くのヒントと経営者としての覚悟を与えてくれる貴重な機会となりました。この学びを、今後のそれぞれの事業と地域活性化の取り組みに活かして参りたいと存じます。(記 田中 彦嗣)