
12月25日㈭18時半~21時に魚繁大王殿にて東近江支部12月望年例会を開催し、支部会員17名が参加しました。経営体験報告では「日本食・嚥下食を世界へ」をテーマに、岩崎 勝さん(魚繫大王殿 料理長)よりお話しいただきました。
以下は岩崎さんご報告の要旨になります。

私が経営している「日本料理 魚繁大王殿」は1970年に父が「すし屋・魚繁」として創業し、私で二代目になります。企業理念は先代から事業承継の際に制定し、「楽食生活の提供により、地域と共に歩み、喜びを共有する文化的及び社会的な企業を目指します」としています。企業理念をもとに3つの事業を展開しており、会席料理を提供する魚繁大王殿と、琵琶湖の魚を使用した商品開発、そして嚥下食事業です。本日は嚥下食事業についてお話しいたします。
嚥下食事業を始めたきっかけは、77歳になる父が食事のときにせき込んでいたことからでした。心配になり症状について調べていくうちに、嚥下障害という病気と嚥下食の現状にたどり着きました。以前からお客様より、車椅子での入店についてのお問合せなどもいただいており、お客様のお困り事と辛そうに咳き込む父の姿が重なり、嚥下食事業を始めようと決意しました。当時はコロナ禍で仕事が全くなく、店を畳もうかとも考えていた時期でした。「どうせこのまま店を廃業させるくらいなら、料理人として気になっていることを全力でやって勝負しよう」と考えたことも私を動かす原動力になりました。

車椅子でも食事を楽しんでいただけるように店の改修工事を行い、工事で店を開けられない期間は病院で嚥下食の勉強をさせていただきました。栄養管理や衛生管理、仕入れなど、今までとは桁違いに厳しい内容は大変勉強になったのですが、どうしても料理人として引っかかる部分がありました。それは「美味しくない」ということでした。嚥下食は多忙を極める病院内で、厳しい栄養管理のもと作られているので仕方がない部分もあるのですが、私はどうしても「飲み込めるようにした何か」というイメージをぬぐい切れませんでした。ここから一人の料理人として「もっと人を幸せにする嚥下食を創りたい」と強く思うようになりました。

2022年の9月より、「嚥下食 叶和」をスタートさせました。ただただ細かく刻み、飲み込みやすくするだけではなく、伝統的な和食の技法を取り入れつつ、しっかりと料理として楽しんでいただくことを何よりも大切にしています。反響は大きく、県外からご来店されるお客様やお弁当としての注文も多く、医療・介護関係者の研修にもお呼びいただいております。ご来店いただいたお客様から、後日に「家族揃って最後にとても楽しい思い出が出来ました」と涙ながらに感謝のお電話をいただくこともあり、食を通して人の心に豊かさを届けられていると感じています。

まだまだ課題も多く、特に初めから「美味しい嚥下食など無理」と諦めてしまうお客様も多いです。嬉しそうに食事をするお客様、それを見守るご家族の笑顔をもっと増やしていきたいと考えています。各都道県に一軒ずつでも嚥下食のお店が増えればとの思いで、今は料理人仲間を集めて嚥下食の勉強をしています。まずは世間に嚥下障害について知ってもらうこと、必要としている人に届くように、食を通してのお役立ちを続けていこうと思います。