◇「シベリア鉄道」
視察団 団長 小林 清
そう、鉄道ファンや旅好きの人間にとって、この6文字は見た瞬間に心がときめく、憧れのマジックワードだ。
そして今回、区間は北京―ウランバードル間の小区間ではあるが、シベリア鉄道の1等寝台という超絶贅沢な空間で、その非日常的な時を1昼夜過ごすという、私のような鉄道ヲタクには垂涎モノのドリーム企画が実現した。
8月25日。午前10時過ぎの北京中央駅。
私たちの贅沢な旅の始まりを待ち受けていたのは、無情にも中国式の手厳しいお出迎え。
平日の午前だというのに、駅構内は旧正月の帰省ラッシュかと見間違うような人、人、人の渦。
割り込み旅行者に押され、スリや置き引きに気を配り、大きいスーツケースを引っ張りながら人の波をくぐり抜け、何とか我々のプラットフォームに到着。
そこは、数分前の雑踏が嘘のような、異次元の空間。そして左手には、深緑を基調とした、優雅なフォルムのモスクワ行き列車が私たちをお出迎え。
「おっ~お!」
童心に返った15人の大人たち。誰もが目を爛々と輝かせながら、列車の先頭を一目見ようと走り出す者、列車のロゴや行き先のパネルを写真に収める者、車掌さんと記念写真を撮る者などなど、各々が思い描いていた「シベリア鉄道」の、最高の旅の始まりを演出し始めた。
午前11時22分。我々を乗せたモスクワ行きシベリア鉄道は、定時に北京中央駅を出発。
さあ、これからの28時間、どんなスペシャルな“時”が、我々を待ち迎えているのだろう。
果てしなく続く平原に沈む、真っ赤な夕陽。
旅番組の中の世界でしかないと思っていた、食堂車で味わう鉄道ディナー。
列車の中で迎える国境越え。
宝石箱をひっくり返したような、満天の星空。
誰もが言葉を失った、地平線から昇る朝日の光景。
私の拙い文章力ではとても表現できない、数々の異次元な体験を経たのち、車窓からは多くのゲルと低層ビルが見え始めた。この街が、どうやら私たちが下車するウランバードルだ。
楽しかったお祭りが、フィナーレを迎えてしまった空虚感。そして、いよいよこれから始まるモンゴル大草原の旅。
寂しさとワクワク感を併せ持ちながら、28時間のシベリア鉄道の旅を終え、私たち15人は遂にモンゴルの大地に足を踏み入れた。
小林団長のポエジーな記事のあとですが、国際列車をもう少し写真にてご紹介します。
○トイレは懐かしのタンクレス!排泄物はそのまま線路へGO。大自然のなせる技です。
○食堂車 最初は中華料理。お味は・・程々です。モンゴルに入る前に車両の入れ替えがあり(中国からモンゴルへの国境沿いの駅では、それぞれの国の鉄道の線路幅が異なるので車輪台車を交換します)、その時に食堂車も中国風からモンゴル風に(料理も)がらっと変わります。
8月25日は中国風 料理も中華
翌26日朝にはモンゴル風 料理もUB仕様