滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-北近江支部-

北近江支部11月BIG例会を開催しました~「激変する経営環境に対応する黒字企業づくり」~

北近江支部 例会レポート


11月北近江支部BIG例会(2025年11月26日(水)18時から20時30分)は、愛知中小企業家同友会より、エイベックス株式会社 加藤明彦会長をお招きして実践報告をしていただきました。
加藤明彦会長は、現在、愛知同友会相談役理事、中同協副会長、中同協人を生かす経営推進協議会代表に就任されています。今回の例会では、同友会の基本理念に立ち返り、それをいかに企業実践に結びつけるかが報告の中心となりました。

以下が報告の内容です。

テーマ「激変する経営環境に対応する黒字企業づくり~一人ひとりの成長が、会社発展の原動力~」


まず、同友会の労使見解が1975年に制定されてから50年を迎えようとしているこの節目に、私たちは改めてその基本理念の根幹を確認しました。ここで重要なのは、私たちが大切にしてきた4つの要素の全てに「自主的な努力」という言葉が共通して含まれている点です。この自主的な努力こそが、同友会活動の揺るぎない根幹であると再認識すべきです。

自主的な努力を支えるのが「学習姿勢」です。私たちが陥りがちなのは、「自分が正しい」という自信過剰な態度です。そうではなく、基本的な事項を謙虚に、きちんと学ぶ姿勢が極めて重要になります。そして、同友会で学んだ知識は、単にインプットで終わらせてはいけません。それを自分の言葉として社員に伝え、企業実践に結びつけること、つまり「実践への転換」こそが求められています。学んだことを自分の腹に吸収し、自分の言葉として表現し、会社や自分自身が周囲に変化を認識してもらえるレベルまで到達しなければ、本当の実践とは言えません。

経営指針の「確立」と社員教育

そして、同友会活動の中核である経営指針の策定と実践について、今回は特に「確立」することの重要性が強調されました。単に立派な指針を作るだけでは不十分で、それを確固たるものにするための行動が必要です。具体的には、経営指針発表会を開催し、同友会会員を招いて客観的な感想をもらうことが有効です。社員が外部の評価を受けることで、彼らの成長につながりますし、お互いの会社を見学し合い、学び合う関係を構築できるメリットもあります。

この経営指針を全社員と共有するプロセスこそが、最大の社員教育です。「共に育ち、共に高め合う」という同友会の理念の実践であり、経営者自身が成長することが、結果として社員のレベルをも向上させる鍵となります。

危機感の共有と市場創造への挑戦

さらに、1993年に制定された「市場創造と人材育成」の理念に基づき、変化の激しい経営環境への具体的な対応が話し合われました。私たちは、「現在の仕事は必ずなくなる」「現在の人材は必ずいなくなる」という極めて強い危機感を全社員で共有する必要があります。この危機感をネガティブに捉えるのではなく、むしろ新たなチャンスに変える発想が重要になります。

例えば、自動車業界のEV化によって10年後に仕事が半分に減るという予測に対し、ある企業は売上の30%を自動車以外の分野に拡大する戦略を立て、関東地域への営業展開や医療機器分野への参入を推進しています。

 

また、現場の平均年齢が高い企業での技術承継は喫緊の課題です。これに対し、20歳ごとに教える・教わる関係を構築する人員配置を工夫したり、機械の保全技術を内製化することでコスト削減と技術蓄積を実現したりといった具体的な取り組みが紹介されました。

企業変革と人間尊重経営

企業変革は継続的な改善活動であり、そのためにPDCAサイクルを活用したプログラム実践が不可欠です。大きなPDCAとして年1回の決算に基づく経営方針の策定と、企業変革プログラムを活用した経営課題の発見、そして自社の弱点の客観的な把握と改善策の検討を行います。これと並行して、小さなPDCAとして月次の予算と実績の比較分析を行い、具体的な行動計画の策定と実行を繰り返します。これを5年から10年継続することで、予算の精度が飛躍的に向上するのです。

最後に、同友会の根幹である人間尊重の経営理念についてです。これは「自主・民主・連帯」の精神、すなわち「生きる」「暮らしを守る」「人間らしく生きる」を体現することです。社員の成長支援においては、相対評価ではなく絶対評価を用い、個性を生かし、それぞれの持ち味を最大限に発揮させる環境づくりが求められます。

温かい人間関係と危機感を共有する信頼できるパートナーシップを築くために、社員との目標設定における双方向のコミュニケーションを重視し、2日間の合宿研修を通じて理念とビジョンを深く共有するといった実践事例も示されました。

私たちは、同友会で学んだ内容を自社の社員に分かりやすく伝え、経営指針発表会を検討し、自社の危機感を全社員で共有して新たなチャンスを見つける議論を開始しなければなりません。そして、月次の予算と実績の比較分析システムを構築し、技術承継のための人員配置を真剣に検討していくことが、今後の重要な対応事項となります。