滋賀県中小企業家同友会北近江支部では2018年度より彦根と長浜・米原に分かれた地区例会を開催し、地域密着で身近な課題で学び合いを進めます。
6月は彦根地区例会を19日(火)18:30~21:00まで、彦根勤労福祉会館たちばなで開催し、13人が参加しました。
今回のテーマは、「就業規則の新しいかたち ~従業員さん目線を取り入れる時代へ~」で、北近江支部副支部長で経営労働委員の川邉和明氏(株式会社アド・プランニング 代表取締役)に報告頂きました。
以下:報告の概要(古澤 記)
○初めての「就業規則」の作成
・最初の会社を持った時、ハローワークより「就業規則はあるのか?」と尋ねられ必要に迫られて作ることになり、ホームページ等のPDFをダウンロードし作成した。
☆いい加減な社員の搾取から、会社とまじめに仕事をしている社員を守る規則。
いい加減な社員には罰則を与え、社員から会社を守る規則であるという考え方だった。
*川邉氏は、あって無いような就業規則であったと振り返っておられた。
○就業規則全面改定に向けて
きっかけ
中同協経営労働委員会が2016年に、“経営指針成文化と実践の手引き”が完成した。次なる課題として、『人を生かす経営のためには働く環境にも指針が必要である』ということで勉強会に参加した。
その中で、「先輩社労士やクライアントから就業規則は社員から会社を守るための道具であると聞いています。人を生かす就業規則のありかたとはどう考えたらいいですか?」と質問があった。世の中も川邉氏もまた“就業規則とは社員から会社を守るための規則”と考えていたが、それではいけないのではないかということになった。
川邉氏は、人を大切にしましょう、人を生かしましょうと言いながら人を信じないような内容の就業規則ではいけないのではないかと考えた。
アド・プランニングにとって、経営理念同様、就業規則も法律であるとひらめいた。
アド・プランニングの憲法である経営理念は、経営者自身(川邉氏自身)が守るべきものとするならば、就業規則は会社(経営者)から社員(働く者)を守るための法律ではないか。という考え方に切り替えた。
そこで、経営者が覚悟をもって改正し自らを律しない限り社員からの信頼は得られない。という結論に達し、就業規則を改正をすることになった。
・社員に真のパートナーとなってもらうために、会社と社員とのお約束として就業規則を改正し施行しようという思いになった。
・全面改定に向けて、労使見解において経営理念や経営指針は経営者の覚悟が必要であるとある。ならば社員との関係も覚悟を持って成文化しようということで、社員が安心して働ける いつまでも居てくれる 辞めない(求人活動の費用と手間が省ける)。就業規則を1から作り直そうという思いになった。
◎就業規則の考え方と、改定の内容
○就業規則は「会社(経営者)」と「社員」とのお約束・ルール
・すなわち、就業規則は双方が守るものである。
就業規則は社員だけでなく経営者側も守らなければならない
就業規則は会社(暴君)から社員(働く者)を守る法律である
・この規則を経営者自身が守らなければ就業規則は形骸化し、会社と社員の信頼関係は崩れ、社員は会社との約束を守らなくなる。
○改定後の就業規則はいくつかの規定からできています
・アド・プランニングの就業規則には
総則・人事規定・勤務規定(服務規程・業務規定・福利規定)休日規定・報酬規定 がある。
特徴は、“福利規定”である。
“福利規定”とは、会社が全ての社員に対し人間らしく生きることを保証し、平等に各々の幸福追求できうる限り協力することを約束する。という条項を規定した。
*川邉氏は、これを書くことにものすごく勇気と覚悟がいったそうである。
◎社員採用にあたって○会社説明と面接・試験
・アド・プランニングの採用面接は2段階
1回目は会社・事業説明の日 応募者に会社を知ってもらう(応募者がアド・プランニングを面接する)、会社の概要、仕事内容など採用に関する全てを書面で示し口頭で説明をする。
“わが社があなたのお眼鏡にかなったら面接にきてください”
2回目は面接・試験の日 1週間内に回答する。
クールダウンと複数の応募者があった場合の機会均等のため面接当日には内定を出さない。
○労働条件通知書
同友会の経営指針書を創る会テーマ勉強会でヒントをもらい、経営理念と経営者の一言を添えて、労働条件通知書を2部作成し経営者と社員双方が毎年交換する。
◎就業規則を更新するということ
○就業規則を改定してわかったこと・アド・プランニングの社員は、就業規則をよく読んで分析している。
当社が、規定をいくつも設けて社員と一緒にするためのものだと知らせているからかもしれないが、よく分析していて修正や追加を要請してきている。(健康診断や予防注射についてなど口頭で伝えていることが書かれていないから書いてほしいなど)
・就労規則を改定したからといって、すぐに機能するものではないということ。就業規則が機能するようにさらなる改定が必要だということである。
○次の改定項目
・法廷遵守の内容の中でできること。
有給休暇の前倒しやリフレッシュ休暇の有給化を考えている
・課題 できる社員だけでなくできない社員のためにできること
例えば、障がい者、母子・父子家庭、介護をしてる人や高齢者、ひきこもりなど就労困難者雇用のためにどうやっていくのか。
○就業規則を更新するということ
・会社は成長する成長させなければならない、会社の成長と共に経営者も成長しなければならない、会社の成長と共に経営理念も成長する必要がある経営理念が成長すれば経営指針も更新していかなければならない、会社が成長するとやることも増え社員も増える。
やることが増え、社員が増えれば就業規則も成長する必要がある。
就業規則も会社の成長に合わせて更新する必要がある。
◎中同協の経営労働委員会「働く環境のガイドライン」
・経営指針に成文化の副読本として捉える方向にある
・就業規則は社員と一緒に相談しながら作って行くのが理想である
◎まとめとして
・経営理念の追求も経営指針の実践も、就業規則を守ることも会社の約束したことを実行しないと、社員はがっかりする。ところが経営者は内部要因や外部要因の影響でなかなか完遂できない。もしできなかったら社員に謝る、社長が謝っても社員はがっかりしない。できないときには謝る、就業規則に不具合が出てきたら躊躇なく修正する。
何事も初めから上手くはいかないから、上手くいくまで試行錯誤をくりかえす。社員はそんな経営者にこそついていくのではないかと考える。
・社員を大事にするということは媚びるのではなく、いかに社員に寄り添うのか。アド・プランニングには配布スタッフさんも居り、その配布スタッフさん一人ひとりにいかに寄り添うか、たくさん社員やスタッフさんが居る中で社長が一人ひとりの暮らしや環境に心を砕くことが社長が思う事を社員が思ってくれることに繋がるのではないかと思う。
5、グループ討論 グループ長:小田柿さん・西川さん
討論テーマ「あなたの会社に就業規則はありますか?就業規則を今後どのように変化させていきたいですか?」