滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-北近江支部-

経営指針を創る会で自社の強みが見え新たな事業展開にチャレンジ!~9月彦根地区例会~

北近江支部 例会レポート

滋賀県中小企業家同友会北近江支部:彦根地区9月例会が9月19日(水)18:30~21:00まで、ホテルサンルート彦根で12名にて開催されました。


彦根市平田町にある、株式会社ファイバー代表取締役 磯島裕之さんに“経営指針を創る会の受講で生まれた「成長」~経営者の変化が、企業の成長につながる~と題して、会社概要とご本人の生い立ちを含め会社設立や市場背景、競合他社の状況、また第40期の経営指針を創る会の受講を経て経営者として気持ちや態度がどう変化していったのかを報告していただきました。


株式会社ファイバー。法人設立平成16年(創業平成14年)は彦根の地場産業3B(バルブ・仏壇・ボディーファンデーション)の内のボディーファンデーション関連業を経営されています。
現在、従業員は22名(実習生9名・パート従業員7名・家族従業員6名)でスポーツウェア(サイクルジャージ、ヨガウェア、水着等)Tシャツ、カットソー、インナーなどの製造、その他繊維製品製造販売をされています。
ご本人幼少期は運動音痴で病弱でもやしっ子だったそうですが、中学高校と部活動のバレーボールと出会い、得意のスポーツで鍛えられ自信をつけていったそうです。平成元年に事務机・書庫、ロッカーなどの製造をしている会社の設備管理課で生産機械の製造やメンテナンスをしていて、現在の基礎になるような知識を学ばれました。
プライベートでは、スポーツ少年団でバレーボールの指導を色々な資格を取りつつしておられ、遠征や練習試合に休みの日のほとんどを費やしていたそうです。
平成8年に父親と兄さんがされていた縫製会社、有限会社磯島に入社。二人とは違う分野の製品(水着・カットソー・ウェアーなど)を、今ある設備を活かしてできることとしてチャレンジしていたそうです。それでも主流は大手メーカーの下着の製造でしたが、平成13年そのメーカーの破綻により経営は大きく変化。その時助けてもらった得意先が水着のメーカーで、それまで同じものを大量に生産していた単能工から色々な商品が流れる多能工の労働者が要求されるようになり、今まで居てもらったパート従業員や内職者の方では対応できず、やむなく退職者を出すこととなり、心を痛められたそうです。
この頃から、多能工の人材を確保するために、中国人の技能実習生を採用し始めました。
翌14年にファイバーを創業。フィットネスウェアーの水着のトップメーカーから大量の依頼を受け、持ちこたえることができたそうです。しかし、当時ニッチな市場であったものがフィットネスブームで市場が拡大し、競合する大手メーカーの参入が起こり、ブランドに負けてしまい、かつ価格競争も激しくなり、海外生産に踏み切られ、国内工場の生産縮小によりトップメーカーとの契約も辞めざるを得なくなってしまったそうです。
ちょうどそのころサイクルジャージメーカー(自転車ウェアー)のウェアを創業当時からしていて、それがだんだん伸びてきて、サイクルジャージの製造へ中心を移行して行きます。
サイクルジャージメーカーから、チームジャージの発注を受けていましたが、当時サイクル業界も小さい市場だったそうですが、健康ブームとか東日本大震災の時帰宅できない人などから右肩上がりで前年度比150~200%を記録するような伸びだったそうです。
チームオーダーなので、5人~30人のオーダーの中に色々なサイズの、しかも少数のオーダーで、究極の小ロット生産をすることになったそうです。それが逆にファイバーの強みになり、小ロット生産の体制ノウハウが身に付いたとおっしゃいました。


そんな中、健康ブーム、自転車ブームが起こってくるとやはり次にくるのはフィットネスウェアーと同じく競合メーカーが多く出てきて、平成20年頃3~5社だったのが平成26、27年になると9社に。後発メーカーは価格と短納期で攻めてきたそうです。メーカーは価格競争よりもクオリティーを重視した方針で一致して業績を伸ばしていたが、競合各社の厳しい追撃にあい応戦せざるを得なくなりメ-カーの方針が真逆にかわり、磯島さんの考えとすれ違いが。
今までは「クオリティー重視です」と「良い商品をお客さんに納めて喜んでもらいましょう」と言っていたメーカーが、100点満点の商品の生産体制をしてきたが他社の追撃にあって「これからは能率重視です。平均点60~70点の商品でいいからその分早く安く作れる体制を整えるように」と言われたのを従業員に説明するのが一番苦しかったそうです。
同友会へは、滋賀中央信用金庫さんからの紹介で入会。入会の説明を聞いているうちに“自分が変わる、会社が変わるきっかけになるんじゃないか”という思いになり、経営指針を創る会に参加をされました。
メーカーや取引先からの指示は絶対で、無理難題も受け入れなければならないと思っていた磯島さん。「会社の命令は絶対です。従業員の皆さん言うことをきいてください。」とそのまま従業員さんに押しつけていて、自分が居ないときは手を抜いているんじゃないかと不信感まで持ってしまっていたそうですが、経営指針を創る会を受講してからは、このような考え方は間違っていることが1番に分かったそうです。
社員を信頼していないことが影響し、外国人研修生との間で労働問題(実際は意見の相違であることが判明)が発生。対応のために経営指針を創る会をリタイアするも、解決後再び次期創る会を受講し修了されました。
同時期にサイクルジャージメーカーとの方針の違いから、受注を継続をするか否かも決めなければいけない状況になりました。判断基準はこれ以上従業員に大きな負担をかけてはいけないということで、20年近く続いた取引に一線を引く決断に至ります。
しかしながらサイクルジャージメーカーが売り上げの8割以上という一極集中の状態になっていたため、信頼のある得意先と下請け工場を大事にしてくれる得意先2社の支援を受けながら、新しく営業を展開。想像以上に小ロット生産の商品に困っておられるメーカーが多いことに気づきます。
インターネットやSNSの広がりで自分のブランドを持ったデザイナーが、FacebookやInstagramを活用して販売する「お一人様メーカー」の小ロットで高品質な商品づくりとタッグを組んで、お互いに楽しみながら理想の関係ができるのではないか。作業者とデザイナーと直接やり取り事ができるので作業者のモチベーションアップにもつながるのではないかと考えているそうです。
色々と問題は起こったが、経営指針を創る会を必ず修了しよう、経営指針書を作り上げようと決めて何とか創ることができたこのタイミングが、自分にとって経営指針を創る会に参加する一番いいタイミングだったと感じておられるそうです。
経営指針を創る会を受講してからの変化は、指針書で単年度事業目標にあげた、自社の強みである伸縮性素材の製造や、小ロット高品質商品の新規取引先の開拓などのいくつかの目標を軸にして、そのためにはどのような取引先に営業をかけて発注していくのか行動出来たこと。経営指針を創る会で自分の強みを考える事によって自社の強みが明確になり、「うちの強みはここです。」と自信を持ってアピールすることができるようになったそうです。
今の強みというのは、過去の外国人技能実習生や従業員から今の人達が受け継いでくれているからこそで、自分自身その技術はできないけれど、それをやっていてくれる従業員の人達に感謝できるようになったとも。
そう思えるようになった事は同友会に入会し経営指針を創る会を受講したことが大きい、と確信を持って言っておられました。


不思議なことに動きだしてみるとその頃あった不整脈も無くなり、自分がこうすると決めて動くだけで自分の体にストレスを与えていたものが楽になったそうです。
従業員さんに後で聞いてみると、サイクルジャージメーカーとの決別は大きな不安になっていたそうですが、「厳しい状況になるかも知れません。でも頑張って仕事を集めてきて皆さんに辞めていただくという状況にならないように頑張ります。」と体制や目標を説明し伝えることで、それから3ヶ月一人の退職者も出さず、8月の売り上げは今期最高をあげられ、従業員の皆さんに感謝しておられました。
今後の目標は、初めて例会に参加した時の“社長の仕事は?社長が居なくても大丈夫な会社を作る”ということで、まだまだその域に達していないし、やることがたくさんあると感じておられます。その前に、従業員さんを信頼して任せるということがまだまだできていないと感じていて、自分では任せているつもりだけども、細かい所を指示したり出張で会社をあけると確認の電話がかかってきたり、ちょっとした事を確認してきたりする所を見ると、まだまだ任せることができてないんだと反省しているそうです。
得意先ともうまく行かなかった事も、自分が不信感を前面に出してしまうことで先方に不信感を持たれてしまったのではないかと反省しているそうです。
経営指針書を作って今までの何十倍、もしかしたら何百倍も、自分の事あるいは会社の事を深く考えていろんな事に気づかせてもらった。経営指針を創る会を受講して勉強になったというよりは、色々なことに気づかせてもらった。今までから従業員の事を考えなければならないとか得意先との関係を良くするとか、自分の会社の強みや弱みのこととは解っていたはずだったが、経営指針を創る会で何度も何度も考えることで本当に明確になり、新たな仕事を得ることが出来るようになったと報告されました。


グループ討論テーマ ①「経営者としての変化はありましたか?」
②「変化はどういうタイミングでやってきましたか?」

討論の中で出てきた意見
・経営指針を創る会を受講する前は、忙しくてひたすら考えている時間なんて無いと思っていたが受講してみて自分にもできるのだと感じた。
・衰退していく会社を見ていたので自分が経営者になった時、それまでとは真反対の事をしたその時が変化と言えると思う。
・同友会に入会して変化があった。仕事上、労働者側の労働問題の話を聞く事が多く、会社ってこんなものかと先入観で見ていたが、会社はだれのためにあるのか。“日本一大切にしたい会社”などを見ることでそんな会社ばかりではないと経営者への見方がかわった。
・社長である自分の言うことが間違っていると解った。自分を律するために理念や指針書が必要だと感じ経営指針を創る会を受講した。そうして社員がちゃんと仕事をしたいと思っていることがわかった。自身は変ったと思っていないが周りから変わったと言われる。
・中小企業が価格決定権を持ち、価格競争に巻き込まれないでお客様を選べる側になって行くべきであり時代はなりつつあるのではないか。


質問:任せるために何を実行しますか?
・“お願いをしていく”家族従業員も居るので、実習生の勉強面や給与のことなど今、自分がしていることを少しずつ任せていくようにすること。

:今後のイメージは?
・下請けだけでなく、一歩でもお客さんに近い所にいきたい。
・良いことも悪いこともお客さんの声が聞きたい。
・会社を発展させるために人を入れていきたい。
・右腕となる人を作っていきたい。「僕の右腕です。」と紹介できる人を。
・プライベートでは、今活動が止まっている、スポーツ少年団のバレーボールの指導者をまたやりたい。指導者の後継者も育てたい。

(記 古澤)