滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-北近江支部-

「社員を大切にすれば、社員は会社を大切にしてくれる!」北近江支部9月例会ご報告

北近江支部 例会レポート

滋賀県中小企業家同友会北近江支部9月例会ご報告

と き:9月11日(月)18:30~21:00
ところ:ホテルサンルート彦根
テーマ:「感謝を忘れなければ 共に歩んでくれる社員がいる~マイナスからスタートしたから 今の私がある~」
報告者:西川 恵美氏  株式会社 ワークプラン 代表取締役
参加人数:37人

青柳支部長挨拶
9月8日に彦根ビューホテルで大学生の「アイデアコンテスト2017」に審査員として参加しました。グランプリに輝いたのはびわこ学院大学短期大学部(びわ学MARUゼミ)の「お宝まちなみ、河五八(かごん)!」であり、女性3名のグループであった。女性の視点や女性ならではの気づきについて、今回報告者の西川恵美さんは非常に楽しみです。

西川さん報告概要
1 自己紹介
・滋賀県長浜市生まれ、中卒、美容師の道へ、自動車整備士へ転職、のちにガソリンスタンド勤務。
・寺田電子を設立、倒産、自己破産。
派遣会社へ勤務、ワークプラン設立(5年後、飲食、美容を始める)
44歳で美容専門学校卒業、29年2月workplanfactory設立

美容師時代は手取り78,000円であり非常に時間的にも生活的にも苦しかった。その後、運送業に入ったことがきっかけで自動車整備士に。
結婚後に寺田電子を設立した。

2 幼少期、バイタリティが生まれたワケ
・5歳の時両親が離婚。家庭内DV、祖母の介護、父親の死。父子家庭に対するイジメ。中学時代のアルバイト。
そんな環境で、漠然と『見返してやる』と思い『なにくそ根性生まれる』

父子家庭であったためいじめの対象となっていた。近所は周りの目もあり、あの子と遊んではいけませんというような親もいた。実兄も非常に荒れて時には骨折にいたるDVもあった。中学一年生の時に祖父母が倒れてしまい、中学二年生の終わりに父親が脳卒中で他界。中学三年生ですでに独り暮らしになった。生きていかなくてはいけないので年齢をごまかして中学でアルバイト。グレる暇もない状態であった。この時期に「見返してやる」のなにくそ根性が生まれた。

3 1992年会社設立 ~ 2002年倒産
・電子部品の組立・加工業を設立、基板検査・半田付け、ハーネス加工、発行ダイオードの検査、倒産。取引先の煽りを受け新工場建設直後、2億の借金、自己破産

21歳の時に主人と寺田電子を設立。自動車整備をやっていたので、電子部品もいけるのでは?という安易な発想でタウンページを見て片っ端から電話をして売り込みを図った。
内職やパートさんを使って、新種のアイテムの注文があり、工数がかさみ納期が遅れそうな時に、夜遅くに西川さんが作業をしていると夜に会社に来て手伝ってくれるパートさんもいた。深夜の内に作業を終え、朝方に納品しお客さんの8時の始業に間に合わせるとお客さんも喜んでもらえた。「何かあってもお前の会社は取引を残す」という言葉も頂けた。パートさん達が家庭もある中で夜遅くに手伝いに来てくれたのは、パートさん達に夕食のおかずを作ったり、できあいのものを買ったりして持って帰ってもらうなど気配りを欠かさなかったからだと思う。「社員さんは大事にすると返してくれる存在」だと気づかされた。
2000年に設備投資、工場設立をしたが、2001年にITバブルがはじけた結果、2億円の借金、そして破産してしまった。
夫婦の間では愛情がなくなった結果、信頼がなかったことに気づいて分かれることになった。

4 美容師アルバイト⇒D生命⇒派遣営業
・美容師のアルバイト、D生命(企業訪問営業)、派遣会社で営業(売上3カ月弱で1,000万以上役員に。新規開拓N電産本社・M電機など)
朝から晩まで働いても生活が良くならず、派遣会社では社長に対して、「月40万円のお給料をもらうためにはどうすればよいですか?」と質問し、「毎月1,000万円以上の売上があれば40万円のお給料が出せる」と教えてもらった。営業活動では京都エリアの大企業をターゲットにして飛び込み訪問。守衛さんからは当然担当者の情報開示は難しい状態であったが、1ヶ月間毎日訪問した結果、さすがに守衛さんにも情が生まれたのか担当者の名前を指さしてくれた。営業活動も実り、目標の1,000万円以上の売上達成し、お給料も40万円に3万円プラスしてもらい43万円となった。また、6ヵ月で月2200万円を売上ることになり、31~32歳で東京本社役員(営業部長)として抜擢された。しかし東京では、関西から得体のしれない女性が来たということもあり、男性社員からはほとんど口も聞いてもらえず孤立。どうしたら打ち解けられるか考えた結果、男性社員と飲み会を重ね、溝が埋まり始め成果が出始めた。その後専門分野派遣や提案型派遣がしたい想いもあり、また、人をモノ扱い(ダメだったら他のスタッフもいるので交換します)する会社も多いので、独立を決心した。

5 2005年ワークプラン設立 2017年workplanfactory設立
・人をモノ扱いしない派遣会社として独立、同時に内職さんで出来る電子関係の請負も始める。
飲食業(お惣菜)3年間、美容業継続(手技開発、知的財産権)
製造部門分割(家電の組立、自動機・省力機の製作 他)

自ら出荷検査や営業活動、夜は事務をこなしていた。
主婦の働き場として飲食業(デリカ)も頑張っていたが3年で辞めた。

6 workplanfactory稼働に向け銀行融資
・過去の破産から保証協会が使えず、滋賀中央信用金庫、大垣共立銀行、日本政策金融公庫、3行協調にてプロパーにて融資実行。熱意と誠実さを担保に。

工場立ち上げについては、日本政策金融公庫にお金を借りて、きちんと返すといった実績を積み上げていたこともあり相談に乗ってもらった。大垣共立銀行、商工会議所から滋賀中央信用金庫を紹介してもらい、「中小企業を支えられないのは地方銀行ではない」というお言葉や、担保もない中で社員を想う気持ちに共感してもらい3行からの協調融資が得られた。金融機関さんにもきちんと恩返しがしたい。

7 山田君の話 癌の話
・定時性に通う17歳の山田君の話。入社して1年半、無遅刻、無欠勤。
・3年前に癌を患う。感動秘話。
「お互い様の精神を大切に」経営理念が寝づいていると実感

山田君は今年の大雪の際に、工場まで遠いにも関わらず何とか出勤してきた。翌日は雪の影響も多いので休業日としようとしたが、「何かあって工程が遅れたら迷惑がかかるといけない」ということで出勤させて下さいと申し出があり、雪道になれた他のスタッフが彼を迎えに行って翌日も仕事をしたことに感動した。また、西川さんが癌を患った際にも、入院を伸ばしていたが、さすがに社員さんから「仕事ぐらいきちんとしておきます。入院して下さい。」と言ってもらった。今まで社員さんを大事に思う分、自分も大事にしてもらえる。きちんと感謝の気持ちを表すことが大事であると再度実感させられた。

8 感謝の気持ちを伝える
・言葉と形での感謝の気持ちを伝える。社員さん達への家族にも感謝。その結果、会社の成長、社員さんへの還元へと繋がる

365日24時間働き続けることは不可能。24時間働くということは、3人で8時間頑張ってもらえたらよい。社員さんには誕生日に似合う服(自らのカラーコーディネートによって)をプレゼント。派遣スタッフにもクリスマスには、女性が入浴剤、男性が靴下と温まるものをプレゼント。バレンタインには男性だけでなく女性にもチョコを。また、休日出勤者には、ポチ袋にお茶代を入れてあげている。従業員さんや派遣スタッフを大事にしていることで、人を集めにくい時代でもいろいろと紹介してもらえる、そして長く勤めてもらえる状態になっている。いい雰囲気の中で協力会社さんが来ると、「この会社で仕事がしたい」と言ってくれる。現場レベルでもあいさつを大切にしている。
感謝の気持ちは態度に必ずでる。

9 キャリアコンサルタントからの人の大切さ
・キャリアコンサルタントの国家資格に向け学校へ。今後のキャリア支援やメンタルヘルスケアが人材育成となり、人を大切に思う気持ちと感謝が社員さんの自己成長へ、会社の成長へと向かう

働きやすい環境づくりと人を大切にするということで、メンタルヘルスにも力を入れている。これはお互いに気持ちよく働ける環境づくりには必要である。キャリアコンサルタントでは、社員さんの将来の方向性を示すための一助であり、方向性をきちんと示すことは重要であり、これをきちんと回答できない経営ではいけない。自分の人生の棚卸、ロードマップの明確化、自分のモチベーションアップ、仕事のやりがいがアップ、その結果、利益もアップし給料もアップしていくという流れになる。

10 今後の取り組み
・人材育成、母子家庭雇用と支援、若年者雇用と教育、高齢者技術指導員としての雇用、動物愛護支援の活動。

地域貢献や社会貢献に力を入れていきたい。自分自身がおかれた境遇が厳しかったためであり、社会的な弱者をサポートできるような夢がある。また、動物愛護については、寂しい時に心の支えとなったのは動物であったから。母子家庭、高齢者、若年者、保育所、動物保護施設などの総合的な複合型マンションをつくってみたい。

11 同友会との関わり
アド・プランニングの川邉社長のご紹介。
前だけ向いて突き進んだ10年、横からの話や後ろを振り返り確認することも必要と感じ同友会へ
もっと女性が活躍する場、活動する場を広げていきたい。

12 最後に…気づき
感謝を忘れなければ共に歩んでくれる社員がいる。
熱意は人に感染する。
スピードとは⇒行動力。一歩踏み出す勇気とは⇒決断力。挨拶の重要性

感謝の言葉は女性だからできるものではない。人として誰でもできるものである。従業員さんも「自分を見てくれているんだ」と感じるとうれしいと思うし、みんなが幸せになる。
スピードが大事な時代なので、意思を明確に伝える必要がある。
「GO」と言えばすぐに動く組織。
相談や要求に対して「YES」「NO」も含めた回答をいつまでにするかが重要。
一歩踏み出す勇気が必要なのは、踏み出さなければ良くも悪くも何も起こらなくなってしまうから。
ほとんどの人間は好きな仕事につくことは難しい。しかしやっている仕事を好きになることはできる。

【8.補足の報告と例会まとめ】
・コミュニケーションが取りづらい時代となっている。多くの人がスマホと向き合っている時代なので、自分の方向性と同じタイプの人間からコミュニケーションを取る。
・感謝が伝わっているか、そうでないかは分からないので感謝し続けること。
・いつまでも落ち込まない。これ以上落ち込むことはない、落ち込んでも仕方がないとその日のうちに切り替えて翌日に持ち越さない。コミュニケーションを取ることで周りのSOSに気が付かないということが無いように。
・昔持っていた「周りを見返したい」という感情は、従業員さん、取引先さん、金融機関さんの優しい気持ちによって薄れてしまった。
・人が長く定着してくれるような心のメンテナンスを行っていく必要がある。
・睡眠時間は5~6時間あればOK。
・モチベーションは社員さんの熱い協力が原動力。

【グループ討論】
討論テーマ
①『あなたは社員とどのような形で向き合っていますか』
②『よりよい関係性を築いていくために、今後は何が必要でしょうか?』
グループ3つの意見
・「従業員さんを大切にする」ことと「辞めないで欲しい」が似て非なるものということは理解しておく。
・自分の子どもが働くという想いを従業員さんにも当てはめられるのか。お給料や環境、将来性など。つまり自分の子どもをそこで働かせてあげたいか。自分の家族と従業員さんが同じ平等で同じ関係性として問題なければよいが、これが「NO」であればその部分を改善しなくてはいけない。
・仕事のやりがいは「役に立っているのか」「貢献できているのか」である。仮に待遇を上げるという判断だけでは一過性のものとなってしまい、いずれ慣れてしまう。やりがいは感謝でなければいけない。
・「社員を大切に思う気持ち」と「社員のため、厳しくしかる気持ち」も似て非なるものである。社員さんのためと思ってしかっても、受け手にとってはいろいろな受け止め方である。薬と同じで、全ての物事に対しての完璧な薬はない。主作用できちんと効果があっても、副作用も出てしまうこともあるが、主作用に効果があればとりあえずは良いと思う。完全ないい所取りは難しい。
・誕生日に花束を贈る。社員さんもお客さんとの飲みにケーションに同席。毎日おはようとあいさつ。
・コミュニケーションの取り方を学んでいかなくてはいけない。

【所感】
西川さんのバイタリティの源が何なのか非常に興味がありましたが、今回の報告で理解できました。当初のモチベーションが「見返してやる」という部分から、「お互い様の精神」で社員さんを大切に思う気持ちが、社員さんのモチベーションを高めてみんなが幸せになっていくという良い循環に支えられているという点に大変感動しました。ありがとうございます。