北近江支部
例会レポート
滋賀県中小企業家同友会北近江支部8月例会
日 時:8月22日(月)18:30~開会(受付18:00~開始) 21:00閉会
場 所:北ビワコホテル グラツィエ
テーマ:金融機関がみる経営者の責任
報告者:鍋山明嗣 氏 日本政策金融公庫 大津支店 中小企業事業統轄
参加者:31人
支部長挨拶(青柳支部長)
リオオリンピックの陸上100m×4リレーの銀メダル獲得について、100m9秒代を出している選手がひとりもいないのに、自分たちのストロングポイントであるバトンパスを磨きに磨いて、0.01秒を削って、無理と思われたまさかのアメリカを破って獲得した銀メダルです。私たち中小企業が学ぶべき戦い方ではないかと思います。資金力であったり知名度であったり大企業には勝てません。しかし戦い方によっては勝てるんだという事を知らしめてくれた素晴らしいレースでした。
我々中小企業にも大企業に負けないストロングポイントがあるはず。それを磨いて大企業に伍していくという意味では、大変参考になる事だと思います。日本人初の9秒代を期待されている走者の桐生くんは滋賀県彦根の出身です。我々に身近な存在です。彼の活躍で地元が活性化し滋賀が彦根が陸上王国になったりと期待するところは大であります。
次は東京オリンピックです。次のオリンピックはボルトもいない、タイソン・ゲイもいない大会です。もしかしたら金メダルが取れるかもしれないという声もあります。しかし、このリオ大会で「バトンパス」の重要性が世界に知らしめられてしまいました。世界の陸上のアスリートはこのバトンパスを研究してきて、同じようには勝てないかもしれません。しかし、だとしてもさらに新たな技術を磨き世界と戦ってくれると思います。
このところは我々のビジネスも同じで、一度は勝ったからと油断しているとすぐに真似され研究されてしまいます。そうならないためにも我々のビジネスにおいてもさらなる技術開発が求められると思います。私に取っても大変学びの多い大会でした。
報告者:鍋山明嗣氏 日本政策金融公庫大津支店中小企業事業統轄
報告テーマ「金融機関が見る経営者の責任」
◎(渡辺工業:水野社長)鍋山さんは、ご出身は福岡県北九州市。昭和61年熊本大学法学部を卒業され、中小企業金融公庫(現在の日本政策金融公庫)に入行されました。福岡支店、熊本支店などを経られまして、平成27年、滋賀県大津支店の中小企業事業統轄に着任されました。
◎鍋山事業統轄の報告概要 「金融機関が見る経営者の責任」
講演の内容は、常日頃様々な経営者の方々より教えを受けたことや、仕事を通して経験したことなどがベースとなっています。
1)報告者プロフィール
日本政策金融公庫とは・・・通称、日本公庫。100%政府出資の金融機関。
政策金融改革の時に当初「国民生活金融公庫」「農林漁業金融公庫」「中小企業金融公庫」「国際協力銀行」(その後分離)の4つがひとつになって平成20年10月に日本政策金融公庫に改編。
国民生活金融公庫は、小規模事業資金等を取り扱う。
農林漁業金融公庫は、農林水産事業資金等を取り扱う。
中小企業金融公庫は、中小企業事業資金等を取り扱う。
「国民生活金融公庫」「農林漁業金融公庫」「中小企業金融公庫」の3つの公庫が一つとなり、それぞれは現在「事業」という形。
滋賀県の場合「農林事業」と「中小事業」分野は全て大津の支店で担当し、国民事業については、大津支店と彦根支店で地域を分担して担当。
鍋山氏は、滋賀に来て1年半足らずですが、公庫勤務歴は30年以上。
事業統轄は元各公庫の支店長職、事業を代表するという意味で「事業統轄」。
2)経営者の責任
経営者の責任を語ることができるのは、経営者(または経営者だった方)が持論。新人1年目の頃のエピソードで、企業の社長から経営判断に対する苦悩を語られたことが、経営者に対する考えの基本になっている。ただし今回あえて外部から見た経営者の責任というテーマで語ってもらいました。
3)経営とは何か? 経営者の責任とは?
「経営」とは「規模方針を定めて事業を行う」「責任」とは「自分の分担する任務」。「経営」の語源は「経之営之」(これを経しこれを営す) 紀元前八世紀、周の国の詩人が、「祭壇を築いて、建国のシンボルとしたことに由来し、これを経しこれを営す。庶民これをおさめ、日ならずして成る」と謳っていることが一般的に言われている。つまり経営とは建物を建てる時に行う、設計して基礎を作るような事を言う。まさに同友会でいう、理念を定め、方針を策定し、計画を立てる事、そのものが「経営」ではないか。
事業というものは、より良いものやサービスを世の中に出す。さらに雇用を生み出し地域に貢献すること。そういう事が事業の責任。
(「真田丸」で真田家を存続させた事になぞらえて、)事業は存続が一番大切。経営者の最大の責任は「事業の存続」。存続するためには「利益を出すこと」が必要。
4)経営者に求めるもの
事業を続けるためには、あらゆる手段や方法を使って利益を出していくように努力・工夫が必要。ただし、「法令違反」や「粉飾」は、絶対やってはいけないこと。
金融機関が経営者に求めるもののひとつとして「正直さ」がある、正直でない行為は信用を失う事になる。
5)経営に対しての金融機関の役割
金融機関の役割は、経営者とのディスカッションを通じて問題点や疑問点を浮き彫りにすることや助言を行うこと。例えて言えば〝人間ドック〟でいう検査技師のようなもの。
主治医はズバリ「経営者」自身。自分の事業を改善指導できるのは、その事業の経営者。
6)先を見据えた経営
将来に亘って儲かり続ける仕組みづくりを行うこと。そのため「先を見据えた」経営が必要。経営者自らがアンテナを高くして様々な情報を収集し、自分の得意な分野だけでなく不得意な分野にも視野を広げていく事が大切。他の経営者と意見交換することも大切。同友会の例会の場は、異業種の経営者がグループ討論も行うので、大変良い勉強の機会。
7)経営者の様々な責任
経営者の責任は、社内体制構築、計数管理、金融機関選択、設備投資や新規事業進出等の取り組みなど多岐にわたる。人に対しても、採用、教育、後継者の選定・育成の責任等がある。
リスク管理についてみれば、コンプライアンスに係る経営者の意識も大切だが社員の意識も大切。重大な事故が起こった場合、結果的に会社の責任問われることがあり、多額の損害賠償請求発生や業務停止の怖れがある。業務停止となれば事業活動が止まって資金繰りが厳しくなる。法令違反を犯した場合、金融機関で融資してもらえないこともあるので注意。
災害の発生を想定して考えることは、「社員の安全確保」、「水・トイレ・食料の確保」、「早期復旧」等で、早く事業を再開できるように努力すること。そのためにも「BCP対策(事業継続化計画)」も必要。
9)最後に
経営者の責任とは事業の存続であり、そのため経営者に求めることは、どこでもだれでもできる仕事を、どこでもだれでもできないくらい優れた仕事にすること、「あそこの製品は一味違うよ」と言われるくらいのしっかりとした事業基盤を作ること。加えて、経営とは経営者の日々の判断の蓄積したもので、判断を誤らないために高い志を持つことが大切。これが最後にまとめられたお話でした。
グループ討論
テーマ~あなたは“経営者の責任”をどのように考えていますか?その責任を果たすためにどうしていますか?~
各グループ討論報告
第1グループ(ハートコンピュータの田中さん)
「リスク」について討論しました。会社でのトラブルとの向き合い方、捉え方。発生したことの後の対応が大切である。謝罪に行くのもいきなり社長が行くのではなく幹部がまず出向くなどコンビネーションが大切。
リスク回避のためにはどうするのか。「勉強」する。本を読んだりするのもいいかもしれないが身の回りのあらゆるものを題材に自らの学びにしていくこと。単に結果を受け止めるのではなく因果関係を探って見えない繋がりを見つけてクリアにしていく姿勢が経営者の責任。
第2グループ(吉田農園の吉田さん)
・社員の達成感、社員に愛される会社を作る。
・結果を出し続け継続できる会社を作る。
・5年先10年先を常に考えている。
第3グループ(クリーンびわの伊藤さん)
働いている人の努力していける環境を守っていく。そのためには、経営の継続。新事業の展開。
社員の困っている状況を助けていこう。
第4グループ(公認会計士の梅本さん)
一番大事なのは、企業継続。中小企業の場合トラブル一つで命を取られるようなこともあり得る。その中でどのようにして企業継続していくのか? 自分たちは頑張っているのに金融機関はわかってくれないこともある。なんとかわかってほしい。
第5グループ(弁護士の高橋さん)
経営者にとって一番大事な責任は、会社を維持・継続・成長させること。そのためには、利益を出す。人材不足の中、今いる人材の研修などをして乗り切っていく。値下げ要請については、質のよい仕事をして、信用してもらう、リピータを増やす。ということが大切。
社員を刺激して現場を活性化する。後継者育成。
以上(川邉 記)