滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-北近江支部-

11月24日 北近江支部BIG例会を開催しました。

北近江支部 例会レポート

北近江支部BIG例会を開催しました。

と き:2020年11月24日 18:00~20:30
ところ:北ビワコホテルグラッツィエ&Zoom
テーマ:コロナ禍でも業績を伸ばし続ける2ndサプライヤーの経営戦略とは
報告者:加藤 明彦氏 エイベックス株式会社 代表取締役会長 愛知同友会会長
参加者:60名

滋賀県中小企業家同友会 北近江支部のBIG例会が、北ビワコホテルグラッツィエ、Zoomによるハイブリット開催されました。

ご報告は、愛知県中小企業家同友会会長で、エイベックス株式会社代表取締役会長の加藤明彦氏です。『コロナ禍でもなお業績を伸ばし続けるセカンドサプライヤーの経営戦略とは』と題し、現地会場及びZoom参加者約60名の方々と熱い時間を共有することができました。

1.「経営者の姿勢」とは?

「コロナ禍の厳しい状況にあり、社員さんに経費節減を唱えている傍ら我々経営者の姿勢はどうですか?」

「経営者として成長しようと学ぼうとしている姿を社員はちゃんと見ていますよ。また社員さんにきちんと説明ができる状況をつくれているか、社員さんだけでなく経営者もまた姿勢を見直してみましょう。」

「私自身、例会やその他イベント・行事参加を事業のためだからと大義名分のように周りに振舞っていたことにハッと気づかせていただき、よりよい経営者となるにはと思い同友会に入会した当時の気持ちを思い起こさせていただきました。」

 

2.コロナ禍での加藤氏の取り組み

今回のコロナで加藤氏が意識されていることは、「リーマンショックの経験を生かし、書籍を読み返し、先人からの教訓を享受する(TTP)だそうです。

リーマンショックを経験されそれを乗り越えてこられた経験を伝える役割があること。

加藤氏自身、もう一度同友会の書籍を読み返し先人からの教訓を受け自分のものにすることが大切だとおっしゃいます。

自分ひとりの考えは小さなものです。真似をする、先人や他人から知恵を借りる、いわゆるTTP=徹底的にパクル。徹底的に同友会先人の経営者から学び実践すること、例会で報告を聞きグループ討論で討論することで、同じ報告を聞いても自分の受け取り方とは違う受け取り方(感じ方)をする人がいることを知る。このことが学び方を学ぶことだと、同友会活動の意味を再確認させていただきました。

 

 

3.「労使見解」の理解と展開が重要であること

今回のコロナに対応し加藤氏は同友会が発行している書籍「労使見解」に基づく展開・実践をされました。

まず社員とその関係者の安全確保、運転資金の確保、社員の雇用維持宣言、会社方針の策定と社内展開(直近方針と中間方針の展開)、活動の日常管理 この5つに取り組まれました。

 

4.経営者の責任とは

経営者の責任(人を生かす経営)の一番は「会社をつぶさず、残すこと」

リーマンショックのご自身の経験から早期の資金調達をしたそうです。管理計画をベースに資金繰り・キャッシュフローの計算に基づき、いくらのお金があればどこまで会社がもつかという計算をできるかどうかという点で、同友会らしい経営指針を中心とした経営ができているか大切で加藤氏自身意識してやっておられることだそうです。

 

5.経営者の覚悟とは

経営者の覚悟(人を生かす経営)とは「雇用を守ること」

資金を用意し、生活の保障をし、社員に安心感をもってもらうことで信頼関係を維持されています。

当時「人を生かす経営」を読み返すと、やはり、経営者と社員の信頼関係をきっちり築き、全社一丸体制で行うことが利益回復の近道であると書いてあり、それを信じようと確信されました。

今いてくれている社員をしっかり抱えて皆で乗る切ることを考えた方が利益を早く確保することができるし返済ができると考えると大切な存在であり、時間をかけて育った社員がいることが我が社の強みであるとおっしゃっていました。

時間をかけて力をつけてきた一人ひとりの個性、それぞれがそれぞれの能力に合わせた仕事に合わせて頑張ってくれる。誰が抜けても会社全体の利益貢献に現れてこない、「私は営業の一部、私は製造の一部やります」とあなたも私もいないと会社は成り立たない、と皆が理解しているからこそ、互いの助け合いが生まれる。ここが同友会の人を大事にする、人を生かす経営であると考えておられます。

6.リーマンショックとコロナ禍の違い。いかに対処したか。

三月下旬の段階で方針の策定とその社内展開を作成し、共有したことはとても大きく役立ったそうです。先に手を打っていたのでやるべきことが明確で慌てることはありませんした。仕事がなかったこの時期は教育・訓練に充てることができた。政府も前回のリーマンショックの時の反省もあり助成金などが役にたったとのことです。

直近方針は1月の初めに計画建てたものが全て狂ってしまったので、見直しながら中長期はどうするのか、計画を崩すのか否かという議論をした結果、計画を変えないということになり、コロナであろうが無かろうがやるべきことをやると方針をきめられました。

今回とリーマンを比較して、リーマン・ショックはバブルのはじけなので顧客は戻ってこないであろうから新規の顧客を獲得することが重要でした。他方で、コロナは移動の制限・禁止であり市場そのものが変化しているので、その変化に対応できるよう変化していかなければなりません。新規顧客の変化が読めない分既存の顧客がどう変化しているかの情報を取りながら会社も変化させてようやく新規顧客の動向が見えてきたそうです。

 

7.市場の変化に対応するために‐情勢分析と同友会運動-

どんなふうに変わって行くのか、我々は経営をどうすれば良いのか、どういう顧客をつかめばいいのか、情勢分析が必要になりどういう格好で分析をしたらいいのかと「経営指針成文化と実践の手引き」「企業変革支援プログラムSTEP2」を、幹部社員の方々と読み

どう分析するのかを学び顧客や仕入れ先の動向など分析し整理することができたとのことです。

今こそ、同友会から、危機を脱却するヒントを取る。同業者の中だけでの情報ではなく同友会だからこそ幅広い中からの情報が得られるということは自社の評価を上げることにも繋がっているとのことでした。

 

 

8.方針の策定と社内展開

加藤氏の会社でのポイントは、売上が70%操業でも黒字に転換できるよう「単年度計画の作り直し」と「見直し」をやっていたということです。そして7月には前年度同月売上30%減(7割操業で黒字転換した)、6月までが勝負だったと振り返っておられました。

更に重要なポイントとして次のことをおっしゃいました。

・三位一体活動[経営指針に基づく採用・共育]を展開していった

・新卒採用の落ち込みにより学校からの働きかけが増え、採用のチャンス、

・経営指針を共有することで役割に応じた方針展開ができたので自分のやるべき仕事が明確になったので自分で考え自主的に行動ができるようになった。

・就業規則の見直しや社員の10年後が見える姿を作っていかないと本当の働きやすい企業風土もできないし会社の10年ビジョンも到達できないと議論をされているそうです。

・経営指針を全社員と共有する過程(プロセス)が最大の共育である。

・理念で食べられる状態になったら利益もあがるし、社員中心の会社になったなと感じている。

 

9.「社員の幸せ」に対する考え方

数年前、滋賀同友会の研修会(「赤石塾」に参加した時、「生産条件」から「生存条件」という考え方を故・赤石義博前中同協会長から学び、自らの経営姿勢を変えられたそうです。

「生産条件」・・・会社が儲かれば社員は幸せになる

「生存条件」・・・社員の幸せを徹底的に考えれば会社は必ず発展する

研修後、自社の幹部社員と「幸せ」ってなんだろうと議論を重ねられました

「働く事に繋がる幸せ」とは、一つは生活保障だけどお金だけあれば良いわけではないなという議論に発展し、会社に入ってできることが増えてきた。成長している実感があるとやりがいに繋がる。これがないと働く元気が出てこないし幸せだと取れない、という意見を得ることができました。

そこで、加藤氏の会社では、皆が教え合いみんなが成長し「互いにあてにしあてにされる関係」すなわち「自主・民主・連帯の精神」が重要である。それが会社の風土にできてきたら、この成長がやりがいに繋がる、と加藤氏は確信しました。考えてみると一人ひとりが成長してくれれば発展するにきまっている、結果として売上や利益に繋がってきました。

いわゆるプロセスが大事である。QC的な物の見方考え方、PDCAをまわすことをしっかりやるということ、すなわちそれがレベルアップしてくると否応なしに無駄が無くなり、業務に対する目標が変わってくる。社員の幸せを一生懸命経営者として考えれば、社員達が自分で成長の中身を考えてくれるようになっていきました。

10.困難な時代を乗り越える‐ピンチをチャンスへ転換するためには

1999年の全国大会で「21世紀同友会企業づくり」が発表、確認されて以降、加藤氏は市場創造と人材育成の二本を深くやっていこうと決めそれから20年この二本だけで数字が表わす通り会社は発展してきたのです。

今ある仕事はなくなるかもしれない(取り扱い製品の消滅)ので市場を創造していく。

今いる社員は必ずいなくなる(人は歳をとり必ず死ぬ)ので5年10年単位の長期的視点を持って人材の採用と育成を行わないと生産活動ができなくなる。

現状に甘んじるのではなく常に危機感を持つこと、危険を感じればチャンスが見えてくるという認識が、会社が将来に向かって発展する秘訣であると加藤氏はおっしゃいました。

「自主・民主・連帯の精神」を理解したうえで、「労使見解に基づく経営指針」をよりどころとした「人を生かす経営」を実践した体質の強い企業づくりができるはずです、とご報告を締めくくられました。

 

11.ご報告から私たちが学んだこと

コロナ禍に於いては、数々のピンチを切り抜けた経験と学びのからの対処の仕方考え方と、過去との比較と分析をすることによっての経営戦略の違いを見つけ情報を集めることの大切さなど、今回ならずも今後起こり得るピンチに慌てることなく対処できる知恵を得ることができ、今後迷った時や悩んだ時に「労使見解」や「人を生かす経営」「経営指針成文化と実践の手引き」「企業変革プログラム」など同友会の書物が私達経営者の強い味方になってくれる事も改めてわかりました。
特に私は、人材育成の部分で見直さなければならないことを強く感じました。5年10年先の自社と人材を見据えた視点から今から準備が必要だと気付きました。

今の私の課題に気づきをいただきありがとうございました。