滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-北近江支部-

北近江支部11月例会を開催しました~経営理念は 企業文化だ!! ~社内の理念浸透が会社を成長させる~

北近江支部 例会レポート

北近江支部11月例会を開催しました。

と き 2021年11月24日18:00~20:30

ところ ホテルサンルート彦根&ZOOM

テーマ 経営理念は 企業文化だ!!~社内の理念浸透が会社を成長させる~

報告者 川勝健太氏 株式会社カワカツ 代表取締役

参加者 23名

1.会社紹介

株式会社カワカツは大津市本宮にあります。創業は昭和34年で、60年の歴史があります。自動車整備(車検・点検・鈑金など)がメインで、保険も取り扱っています。販売は川勝さんが担当。60年間培ってきた技術が強みです。

 

2.川勝さんが社長になるまで

川勝さんは幼少のころから、創業者である祖父から経営者になれといわれて育ちました。祖父がおっしゃるには「川勝は経営者の血や。一般の会社で働くことは許されん、会社を継ぐんや」と言われていたそうです。しかし、川勝さんはお父様からは「自分の道を歩め」といわれていました。お父様は、会社から帰ってきたらため息をつく、ご飯を食べているときも仕事の話ばかりされていて、その姿をみていた川勝さんは仕事が面白そうだと感じなかったとのことです。

大学では会計を学び、金融機関で働こうと内定ももらっていました。しかし、自己分析をするなかで、お父様が受け継いだ会社を守るために自己犠牲で必死に頑張ってきたことを知りました。また、祖父も戦後の混乱期のなかで腕一本で会社を立ち上げて苦労されていたことを知りました。祖父、父と受け継がれてきた「命のバトン」を自分が絶やすわけにはいかないと、会社を継ぐ決意をされ、車の販売を学ぶためにディーラーに就職されます。

そこで5年間、修行をされますが、ある日、お父様から電話があり、病気になったから帰ってこい、といわれました。それで川勝さんは会社に戻り、販売担当の専務として働きはじめました。

カワカツに入ってからいろいろな団体に参加して人脈を広げていましたが、ある時、セミナーで一緒になった丸栄製パンの辻井社長から「勉強するんやったら中小企業家同友会にはいれ」とすすめられ、同友会に入会。経営指針を創る会を受講され、経営指針書を作成されます。

創る会でいろいろ自社の状況を調べる中で、財務状況が非常に良いことに気づかれました。資金の積み立てが多く、売上がなくても4年ほど続けられるほどでした。それは、祖父とお父様が石橋をたたきまくって渡るほど慎重に経営をしてこられた結果でした。

さらに、素晴らしい宝物もありました。それは、カワカツのスタンスです。1号線沿いで多くのカーディーラーや整備工場があるなかで、目立った宣伝もせず、地域のお客様の「安くはないけど安心できる」という口コミで支えられていました。60年の間に培われた技術もさることながら、お客様のお出迎・お見送りを丁寧にする、お預かりした車は徹底的にきれいにしてお返しする、工場も時間をかけてきれいにする、という文化が根付いていました。

しかし、川勝さんが会社に戻られたころには、会社の売上はピーク時の半分にまで落ちていました。経営者の影響力が落ちていました。お父様はご病気をされ、会社を引っ張る気力が落ちておられました。会社はリーダーがおらず、いわば羅針盤を喪った船のような状態だったそうです。その中で川勝さんは、売上を回復させようと必死に動きまわり、人脈を構築していくなかで売り上げは徐々に回復していきました。とにかく仕事をとってきて、利益や実績を上げていくことに集中されておられたそうです。しかし、本当の問題は解決されないままでした。

3.経営者になってからの気づきと闘い

平成24年12月、お父様がお亡くなりになられます。そして、川勝さんが突然、社長になられたのですが、これまでも専務として社長の代わりに動いておられたので、そのままのスタンスでいいだろうと考えておられました。しかし、それが勘違いでした。

ある日、川勝さんが新規の車検整備をもらい、それを整備担当者に伝えました。川勝さんとしては新しい仕事をとってきたのだから社員は喜ぶだろうと思っておられたのですが、しかし反応は真逆でした。川勝さんとしては、仕事が増えると売り上げが増え、利益が増え、お給料も増えるだろうというお考えでしたが、社員からすると、急な仕事で段取りがくるい、慢性的な整備士不足でしたから夜遅くまで仕事をしなければならなくなります。

川勝さんはそこで、「カワカツにはお客様を幸せにする文化はあっても社員を幸せにする文化がない」ことに気づかれます。そして、これまでしてきた仕事は営業マンの仕事であって、経営者としての仕事をしていないことに気づかれました。

その気づきから、売上至上主義をやめて、社員の幸せを向上させるために、働く環境の改善をはじめられました。具体的な取り組みとしては、

① 経営指針書の発表・全社での振り返りと計画づくり

1年に1回、会社をしめて1日を使って1年を振り返り、次の1年間をどうするかを考える時間をつくりました。また、川勝さんも社長の行動計画を作成し、社長が率先して計画を実行するしくみをつくりました。経営指針書の形状も工夫し、社員が進捗度合いを書き込みフィードバックができるよう、毎年改善をしていきました。

② 社員の働いている姿を撮り貯め、アルバムにする
自動車整備の仕事はかっこいいのですが、働いている姿を家族は知りません。そこで、写真屋さんにきてもらい、働いている姿を撮影してためておき、社員の勤続の節目にアルバムにして贈るようにしました。

③ 働く環境の改善

年間休日が少なかったので、徐々にではありますが増やすようにされています。また、有給休暇の消化を義務付けるようにしました。その他、年3回の社員面談で社員の声を聴き、幹部社員との食事会で社長の思いを幹部にもわかってもらい行動してもらえるようにしました。

また、お客様からお褒めをいただいたときはそれを社員にフィードバックすることで、カワカツの誇れる文化にプライドを持ってもらえるようにされています。

4.現在地

10年間、なんとかしないと、ひたすら走り続けてこられました。「自分がしないと」と思い込んで自分ばかり動き回っておられたと述懐されます。同友会青年部の幹事長を歴任されましたが、トップとはかくあるべしという観念にとらわれて追い込まれ、一時体調を悪くされたこともあったそうです。そういうときでも、救ってくれたのは家族や社員、同友会の仲間でした。そして、一人でなんでもやるのではなく、皆に頼ったらいいと気づき、困難を乗り越えることができました。

 

5.まとめ

経営理念を考えるにあたって、事業承継を受けた方にとっては創業者の思いが一番大事で、「なんでこの会社があるのか」を創業者に聞いたり、社員さんに聞くなどして、しっかり思いを聞き取って把握し、背中で見せることがい大事だと川勝さんはおっしゃいます。それでも、伝わりきらないことがたくさんありますし、やっていてもピンとこない、うまくいかないことがたくさんあります。だからこそ、学び続ける必要がある。また、経営者の器以上に会社は大きくなりません。目の前の仕事に追われるのではなく、トップはどんどん外に出て、様々な情報を得て分析し、それを会社に落とし込んでいくことが大切とおっしゃいます。

最後に、事業承継は絶対に早い方がいい、若いうちに苦労されたほうがよい結果を出せると締めくくりました。