滋賀県中小企業家同友会・湖南支部では、2018年9月18日、クサツエストピアホテルにおいて
9月例会を開催いたしましたので、ご報告いたします。
ご報告者は、遠城孝幸氏(認定NPO法人四つ葉のクローバー代表補佐)で、報告テーマは
「埋もれた原石を輝かせたい~企業の戦力という視点から考える社会的養護の実際と今後~」
です。
遠城さんは、学校を卒業後、児童相談所での1年間の勤務をし、彦根で情緒障害児短期治療施設(現在の児童心理治療施設)で19年間、子どもたちと寄り添ってきました。
遠城さんが勤めておられる認定NPO法人四つ葉のクローバーは、児童養護施設等を原則18才で社会に巣立つ若者たちや社会的養護の必要な若者たちの自立支援を目的とするNPO法人で、福祉施設や里親のもとを出た子どもたちが社会的に自立することを支援するシェアハウスの運営などをされています。
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「社会的養護」は、「さまざまな事情を抱えて家庭で養育されることが不適切だと判断された子どもたちを、福祉施設や里親のもとで養護すること」です。滋賀県下では、約350名の子どもが養護されています。
「家庭で養育されることが不適切」な場合とは、DV(家庭内暴力)、貧困、シングルマザー・シングルファザー、養育者が病気である、親との死別などが該当します。
特に多いのがDVで、身体への暴力のほか、言葉での暴力(「生まれてこなかったら良かったのに」、「死んでしまえ」など)、性的暴力があります。特に増加傾向にある暴力が「ネグレクト」で、親が子どもの養育をしない、あるいは子どもに関心がない家庭が増えています。
福祉施設や里親のもとで養育される子どもは、18歳から20歳になると、その年齢になったというだけで、福祉の支援から外されて、自立しなければなりません。四つ葉のクローバーでは、年齢がきたからという理由で養護から外れてしまったが、社会的に自立するためにはなお支援が必要な子どもたちの支援をしておられます。たとえば、子どもたちがシェアハウスで生活しながら貯蓄をし、経済的に自立をして独り立ちをしていくことを目指しています。
子どもたちが自立して社会生活をするには、主に生活面で支援が必要です。福祉施設内で支援を受けている間は、支援されているという立場でそれぞれ生活観を形成していきますが、一歩社会にでると、施設で培った生活観と現実社会における生活観との食い違いを感じ、人生の壁にぶち当たることがあるのです。
マズローの欲求5段階説でいうと、社会的養護を受けている子どもたちは「欠乏欲求」とされる生理的欲求、安全欲求、所属欲求、承認欲求が満足されていない状況にあります。福祉施設や里親の下で生活していると、衣食住や身の安全を守る、承認されるという欲求はある程度充足されて成長しますが、18歳~20歳になり支援が終わると、再び衣食住や身の安全を守るという基本的な欲求の充足を一段一段やり直さなければならない、ということになるのです。
社会的養護の下にある子どもたちの社会観・会社観は、ネガティブなものが多いです。たとえば、「社会は怖いところ」「自分が通用しない」、「馬鹿にされる」といったものです。そのネガティブなことに向けられているエネルギーを、ポジティブな方向へ向けることが出来れば、社会でうまく生きることが出来るのでしょうが、残念ながらそのエネルギーは「いかにうまく働かずに生きていくか」に向けられています。周りの人たちを、漠然と自分よりもすごい存在なんだと思い込んでいます。
彼・彼女らは、「何よりもお金が大事」という価値観を持っている場合が多いです。お金があれば自立して、社会で働いている人たちみたいな生活が出来るのではないかと思っています。なぜそうなるのかというと、実際の社会、会社ではたらく人間や、働く場(会社)のイメージが無いことと、育ちのなかで身につけた人に対する基礎的な信頼感が大きく作用しているからです。基礎的な信頼感(自分に対するネガティブな信頼感)から来る不安を解消するために、あるいは他者に対して挑発的な行為となることもありますし、あるいは引きこもる、働かないで生活する手段へ注力する、ということになることもあります。
福祉施設や里親では、彼・彼女らが持つ価値観を変えさせるところまではできません。いくら施設の人や里親が、社会や会社のイメージを伝えても、子どもたちに実体験が乏しいために、素直に受け止められず、「そうは言っても社会に出たら攻撃されるんだろう」という思考になってしまうのです。
ですから、福祉の立場から企業経営者の皆さんにご支援をお願いしたいことは、次のことです。
○会社が子どもたちの居場所になって欲しい
○人生を変えるような居場所となって欲しい
○その子の力をみとめて可能性を伸ばして欲しい
○生活をしていく中で幸せを感じられる場であって欲しい
○失敗しても臆せず挑戦できるところ、人間として学ぶところであって欲しい
直接的には雇用をしていただきたいと思っています。障害をお持ちの方とか、働きにくさを感じている方の雇用を考えるときに、念頭において欲しいのは、若者を単に雇用するのではなく、生活の支援もセットにして考えてもらえれば、ということです。
私たち支援側としても、企業の皆さんに丸投げをすることではなくて、子どもたちが一人で解決することが難しい事柄にであったときに、必要な範囲で協力支援したいと考えています。そうすれば、就労に影響を及ぼしてしまうようなマイナス要因を防ぎ、そして企業と支援者が共に就労定着を目指していくことができます。ですので、雇用して後は企業にお任せではなくて、企業と支援者がセットになって若者を支援していければと考えています。
また、雇用までいかなくとも、子どもたちが福祉施設や里親の下にいある間に、職場見学、実習をさせてもらうという形でご協力していただきたいと考えています。そういう機会があればと強く思っています。
子どもたちのもつ社会観・仕事観はネガティブなものです。福祉施設や里親の基に居る間に、職場見学とか職場実習をさせてもらうと、実際の社会を知ることができ、思っていた社会や仕事と違うのだと、福祉施設や里親さんが言っていたことが本当にそうやったんやと、気づきの機会にもなると思います。
↓↓↓遠城さんは、北近江支部でもご報告いただきます。↓↓↓