滋賀県中小企業家同友会と立命館大学経済学部との協力協定に基づいて大津市、草津市とも連携してスタートした同学部2回生対象の「キャリアデザイン講義」(担当:共育・求人委員会)第14講が7月12日(木)16:20~17:50、立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催され、宮川草平さん(宮川バネ工業㈱代表取締役)にご講義いただきました。
テーマは「後悔しない就職活動のために-大企業と中小企業の違いを知る-」です。
1.「懲役40年」の仕事から、幸せになるための仕事へ
みなさんは「懲役40年」という言葉をご存知でしょうか?学校を卒業してから定年までの40年間、仕事をすることが「苦役」だということを表現した言葉です。
人生のなかで、仕事をしている時間が圧倒的に長いのに、仕事をすることが苦役になっている。なぜそうなるのでしょうか?それは、仕事は人生を幸せにするための手段であるのに、手段自体に縛られているからです。なので、単に「ブラック企業」に入った場合のみならず、「ホワイト企業」に就職した場合でも、「懲役40年」になることは十分にありえます。
就職活動では自己分析を通じて「自分が何をしたいのか」を自覚し、行動すること、「一度しかない人生を最大限幸福にするためには何が必要か」を目的として据え、行動を起こしていくことが重要です。
2.就職活動で大企業に絞り込むことはハイリスク
昨今の経済情勢では、有効求人倍率が高く売り手市場のため、大丈夫とたかをくくっている人もいるかもしれません。しかし、大企業の求人倍率はむしろ毎年減っており、より狭き門となっています。ですので、就職活動では、大企業を目指しつつも、中小企業も視野に入れないと、乗り遅れてしまうことになります。よい中小企業を知っておくことが就職活動を有利に進めていくうえで重要です。
3.中小企業で働くことの魅力
大企業に対するイメージのほうが、中小企業に対するイメージより良いでしょう。しかし、一見大企業が出店していると思われている店舗(ハンバーガーや通信会社など)でも、実際は中小企業がフランチャイズ契約などで経営を担っている場合が多いのです。企業間取引でも、たとえば自動車部品の多くは中小企業が製造するなどしています。
大企業か中小企業かといった基準で、はじめから中小企業を就職活動の選択肢からはずしてしまうのではなく、企業の事業内容などを考慮しないと損をします。
中小企業で働くことの魅力を挙げます。
①地域密着企業が多く、遠方への転勤がありません。転勤自体もない企業もあるので、家族や友人とはなれず、地域貢献して生きて生きたい人には有力な選択肢となります。仕事内容も地域に密着しています。
②中小企業は、従業員と経営者との距離が近く、採用も経営者や採用後に上司になる幹部が行うので、実際にどのような上司についてはたらくのかが見えやすいです。大企業だと、人事担当者が採用を行うので、入社後にどんな上司につくかわかりづらいでしょう。
③ 会社の経営者の地位を狙いやすいです。身内への事業承継をする人が減っています。事業を承継してもらう人が身内にいない中で、地域の必要にこたえる中小企業を存続させるには、従業員から承継者を探す必要があります。大企業では、取締役になれるのはほんの一握りで、部長など役職につけば、55歳で役職定年をむかえてしまうこともあります。
④ 大企業と違い、少人数で事業を行いますので、商売の全体が見える、という点があります。仕入れから販売までの過程をひととおりこなすので、企業がどのように利益をだしているのかわかりやすいのです。
4.どうすれば優良企業を見つけられるか
① 「経営理念」があるかどうかです。経営理念がない会社は、場当たり的に経営判断をするので、一貫性がなく、方針がぶれてしまいます。特に、経営者が創業者でない場合、前経営者から経営を引き継いだ後に経営方針がぶれてしまうことがあります。
また、戦略、設備投資、採用、研修などが明記されていることを確認してください。面接で経営理念の有無、人事担当社員が経営理念を答えられるかがポイントです。
② 経営理念はあるだけではだめで、その実践がなされていないといけません。経営理念がどのように実践されているのか、具体的に質問してください。
③ 従業員に対してどのような姿勢をとっているかも重要です。どうして採用するのか、採用された後、人を育てることが会社の責任だと考えているのか、従業員の意見を汲み取る制度があるのかがポイントです。売り上げを伸ばして利益をあげることが採用の動機であれば、従業員を金儲けのために採用しているということで、ひっくり返して言うと、景気が悪くなると従業員を整理してしまうといとです。自分の会社で、学校を出たばかりで右も左もわからない人を採用し、その人が自分の力で生きていけるだけの能力をつけ、社会に還元していく。そういう人を育てることが企業の責任だと思います。
④ 経営が安定しているかどうかも重要です。これから5年、10年安定しているかどうか見極めなければなりません。そのためには、営業利益等の数字よりも自己資本比率を参考に企業の経営基盤がしっかりしているのかチェックしてください。
⑤多くの取引先をもっていることも企業が安定しているかどうかを見極める材料になります。特定の企業としか取引をしていない会社は不安定です。
⑥ 若い経営者、もしくは後継者がいるかどうか。中小企業は社長次第でよくもわるくもなります。若い経営者がいて、ビジョンをしっかり持っているかどうか。社会環境の変化に応じたビジョンを持っているか確認して下さい。
5.不採用通知をもらっても自信をなくす必要はない
日本の労働人口は今後、大規模な減少が見込まれます。高齢者人口が今後増えていくのに比べて、就労人口はどんどん減少しています。今、20歳前後の皆さんは社会の宝だといえます。いるだけで価値があります。
就職活動には企業とのマッチングが重要です。私の会社で採用をしたときも、優秀かどうか以上に、会社と考え方があっているか、将来がみえるかで選びました。むろん、会社に体力があれば、応募した人全員を採用したかったのですが。
これから就職活動が本格化するなかで、不採用通知を受け取ることになるかもしれません。しかし、不採用通知は皆さんの存在を全否定したものではありません。応募した企業とのマッチが良くなかっただけです。だから、自信をなくさないでがんばってください。
☆☆ 感想 ☆☆
就職活動に直接結びつくお話とあって、学生さんも熱心に聞いておられました。理路整然と、しかも学生の将来がよりよいものになるよう熱くお話された宮川さん。勇気と感動をいただきました。ありがとうございました。