滋賀県中小企業家同友会

委員会活動について-共育委員会-

2018年度 立命館大学経済学部キャリアデザイン講義第13講 ㈱ローカライズ 代表取締役 河村 剛さんが講演!

共育・求人委員会 その他活動

滋賀県中小企業家同友会と立命館大学経済学部との協力協定に基づいて大津市、草津市とも連携してスタートした同学部2回生対象の「キャリアデザイン講義」(担当:共育・求人委員会)第13講の補講が7月19日(木)16:20~17:50まで立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催され、㈱ローカライズ 代表取締役 河村 剛さん(滋賀県中小企業家同友会 大津支部所属)より「堅田3丁目から地球の裏までわが社の領域」~創業3年、現役ヒッチハイカー社長が創る付加価値とは~をテーマに概要以下の通り講義をしていただきました。

河村さんは45歳の大津市出身で、比叡山高校、日本自動車工業学校出身です。

学生時代、成田空港でバイトをされていた河村さん、レストランでウェイターをやっていたのですが、お客さんは外国人だらけ。もちろんやり取りは全て英語。この時に初めて人生で英語が勉強したいと思い、英語の魅力に引き込まれます。

大学卒業後、23歳の頃にワーキングホリデーでニュージーランドへ行かれます。

しかし、ニュージーランド2ヶ月目の滞在で全財産をなくすという事件に遭遇します。

元々1年間の滞在予定であった河村さん。日本に電話したいと電話ボックスに入ったのですが、繋がらず、しばらく経ってから電話しようと、電話ボックスを離れた隙にお金を盗まれました。

この出来事が河村さんの人生を大きく変えます。お金がないので、牧場の住み込みで働くことになった河村さんですが、牧場まで行くお金はありません。しょうがなくヒッチハイクをすることとなり、それが今のヒッチハイク好きのキッカケになります。

今までで約400台のヒッチハイクをしたという河村さん。ヒッチハイクに没頭するキッカケはこのような出来事からでした。

帰国後、㈱JACに入社。丁度、ホリエモンが退社をした時に入社しました。

そこで4年間働き、父の経営する自動車整備工場に就職。その後平成27年に㈱ローカライズを設立。

3年前に、突如創業することになった河村さん。それは、経営方針の違いから父と対立し、社長でありながら解雇されてしまうということが起こったからでした。

そして、㈱ローカライズを創業するのですが、当初は軽トラ1台、マクドナルドがオフィスという過酷な環境の中で仕事を行わなければなりませんでした。

ずっとこのような環境で働くわけにもいかず、守山市にある違法建築の元バイク屋のボロ倉庫を借りられます。バイク屋の社長が夜逃げをし、家主は安くても良いから借りて欲しいという中で借りた倉庫でした。

しかしそのような中、前の会社の社員で、「僕も一緒に連いていきます、社長を助けます」と言ってくれる社員がおり、その社員と河村さんは2人で仕事をすることになります。

ところが、このようなボロ倉庫ではなかなか車は買ってもらえず、自分に付いてきてくれた社員には家族もいたこともあり、お給料をしっかり払わなくてならないので、当時河村さん自身の給料は10万円程度でした。

トイレは近くのツタヤ、夏はエアコンがないので40度を越える暑さ、冬は凍えるような寒さの環境で、経営者仲間からはアジトと弄られる環境でした。

その後ボロ倉庫の時から車を買ってくれていたお客さんや銀行の協力もあり、大津市の堅田で、車買取店のユーポスを開業されます。

当時は、買い取った車をオークションで販売していただけだったのですが、今では事業内容も変わっており、売り上げと経常利益は創業当社に比べて順調に伸びていっております。

その要因は付加価値の創造です。

河村さんの会社では、買い取った車両の販売先の74%を車屋さんだけが取引するオークションで販売し、残りの25%は直販でお客様に販売されております。通常、買取専門店というのは、オークションの販売する車が90%を占めます。ほとんど市場に出して売ってしまうのです。なので利益は少ないものです。

しかし河村さんは25%の車をオークションに出さず、直接お客様に販売をしています。その分、他の買取専門店より利益が出やすく、これが付加価値の一つです。

“ボートオークション”という中古車最大の流通オークションサイトがあります。これは世界中の人が日本の中古車を入札できるものです。

車1台、約10秒で取引され、1日に4万、5万台が販売されます。

元々、河村さんは、このオークションに車を供給するだけでした。

これをお客さんとお客さんとを直接繋ぎ、オークションに供給しない、ダイレクトでお客さんに繋ぐという仕組みを作りはじめられました。

ある70代のご夫婦の話で、昭和63年式のマツダのルーチェという車を河村さんに売りに来られました。そのルーチェは雨の日は絶対に乗らず、毎日お父さんが手入れをして、大事に大事に乗られてきた車でした。本来、買取で査定をすると0円、スクラップして鉄くずにするものなのですが、ここまで大事に乗られてきた、思い出のぎっしり詰まった車です。河村さんは「何とかこの車を欲しい人を見つけるからちょっと待って」と言い、半年かけて、とても良い値段で買い取って頂ける人を見つけました。

その方が「日本中探してもこんな良い車はない、ここまで愛着を持って丁寧に乗られた車はない。80万で買ったけど安いです。」と言われます。

オークションは便利です。どんな場所でも一瞬で取引ができ、手間も時間もかかりません。しかし、このルーチェの車のように、愛情を持って、大切にされてきたものを受け継ぐことはできません。河村さんは、必ず自動車を売りに来られる方は、どんな人でどんな想いで乗って来られたかを聞き出し、次に買う人に引継ぐことを大事にされております。これが2つ目の付加価値です。

こういったところに商売のおもしろさがあると河村さんは仰います。単に物を右から左へ流すのではなく、その物に対していかに価値を見出せるかが重要なのです。

ルーチェを渡す前日、車を見に来られたご夫婦は涙を流しながら喜ばれました。

スクラップになると思っていた車が、自分たちの想いを引き継いで大切乗ってくれることが嬉しかったのです。

こんなことは大企業にはできません。ここまで一人の人に寄り添って経営をすることはできません。

しかし中小企業はこういったことができるのです。ここが中小企業のおもしろいところでもあります。

河村さんは日本だけでなく、イタリア、イギリス、ドイツにも車を買い付けに行きます。日本に売っていない外国車を輸入しに行きます。こういった外国車を欲しがる人は日本中で100人前後です。大企業はこの100人のマーケットの為に経営をすることはありません。これも100人という小さいマーケットを対象にできる中小企業だからこそできることなのです。

また何年か前に、河村さんはミャンマーのある地域を訪れられます。

ミャンマーの部族が支配し、砲弾が飛んでくるような地域とは知らず5歳の子どもを連れて行かれます。

すると、その地域に住んでいたミャンマー人から「こんな危険な地域に子ども連れて訪れる外人はいない、お前は信用できる」と言い、取引がはじまります。今では約400台程、車を販売されます。

現地の人からは「お前じゃないとダメだ、お前からじゃないと車を買いたくない」と言われます。

付加価値とはこういって掘り起こしていくものです。その為には損得抜きでその人のために能力をアウトプットすることが大事だと河村さんは仰います。

今日出逢った皆さんにも何かできないかを常に考えている河村さん。こういった誰かの為にという意識や行動が、最終的に自分の幸せや、楽しさに繋がって来るのです。

もう一つ大事なのは、既成概念を外し、違う自分になるための一歩を踏み出すことです。

河村さんが今でもヒッチハイクをする理由がここにあります。車が来たら手を出す瞬間、知らぬ人にお願いをする瞬間というのは怖いものです。しかし、こういったことをすることで、新しい自分に出会え、今まで出来ないと思っていた既成概念を壊し成長に繋がるのです。

河村さんが経営をしていて一番嬉しいときは、近所のおじいさんおばあちゃんが3日に1回野菜を届けてくれる瞬間です。これは河村さんが地域で経営し、地域の為に何かできないかを考えて行動しているからであり、これも大企業ができることではありません。地域に根付いた中小企業だからできることなのです。

いくら儲かったではなく、いくら利益が出たかではなく、野菜をくれるような人が自分の周りに何人いるか?自分自身を応援しようと思う人がどれだけいてくれるかが僕の喜びであると河村さんは仰います。

別に世界中の人を幸せにするとかは考えていない、ただ、出会った人達に、この人の為に何ができるか?この人が喜んでくれることはどんなことかを常に思うことが自分の喜びに繋がっているのです。

近年、河村さんは北大津養護学校に講師として“仕事とは何か”を実演している活動をされております。

障害を抱えている子は自己肯定感が低く、河村さんは、仕事を通じてこの子達に自己肯定感を高め、夢を持ってもらいたいと、養護学校の子を洗車のアルバイトとして雇い、働いてもらっています。

アルバイトの子は仕事ができるようになってくるにつれ、自己肯定感が高くなり、とても成長をされます。

そういった姿を見た、他の障害のある子達も自分から「~がしたい!」と言うようになり、ある子どもの両親が河村さんに泣きながらお礼を言いに来られます。

どうしても大企業は利益重視をせざるおえないこともあり、こういった子ども達に夢を与える活動ができるのも中小企業の魅力です。

 

最後にすごく貧困なミャンマーの地域に住む、20歳の女の子の話があります。

仕事でミャンマーに行かれた河村さんは、その子と出逢い、いろいろと案内をしてもらいます。

しばらくすると、彼女の話し方や仕草が少しぎこちないことに気付き、不思議に思っていたら、実は彼女は耳が聞こえない方でした。

将来は学校の先生になりたいと言う彼女、河村さんは放っとけず、今度行く時に補聴器を持ってくると約束されます。

何とか、もう一度、その女の子と会うことができ、補聴器を渡し、今彼女は無事仕事を見つけ働いています。

 

仕事は手段です。目的は自分の周りをHAPPYにする為に仕事をするのです。自分が儲かる為とか、ご飯を食べる為だけに仕事をするものではありません。そうじゃないと、3年で辞めます。何故か?楽しくないからです。人の役に立っているという充実感がないからです。

その充実感というのは、自分の周りをHAPPYにすることで感じられます。

これが河村さんの生きていく上で一番大切にしている考え方です。

 

河村さんからは、大企業にはない中小企業の魅力。人の為に何かを成すことの大切さ。仕事とは何の為にするものなのか?そういった大切なことを学ぶことができた講演でした。