滋賀県中小企業家同友会と立命館大学経済学部との協力協定に基づいてスタートした同学部2回生対象の「キャリアデザイン講義」(担当:共育・求人委員会)第7講が11月7日(木)16:20~17:50まで立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催され、ゴッドはんだ㈱ 代表取締役 野瀬 昌治さん(滋賀県中小企業家同友会 東近江支部所属)より「大企業に入るか?YouTuberになるか?はんだ付け職人が伝える 生きる能力とは?」をテーマに概要以下の通り講義をしていただきました。
ゴッドはんだ㈱は、はんだ付けを中心として、ものつくりをしている会社で、難易度の高いはんだ付け(人工衛星、防衛、医療、試作、開発、一般の自動車など)を全国からWEBで集めたり、はんだ付けの共育教材の開発と販売(DVD、書籍、動画、はんだ付け練習用の基板やコネクタ・ケーブルなど)をされています。
はんだ付けとは、簡単に言うとはんだと呼ばれる合金を熱によって、溶かして固めることにより、電気的に接合する技術のことをいいます。
野瀬さんは、はんだ付けに対する誤解や錯覚を解消し、はんだ付けが誇るべき技術として広く世の中に認知されることを目的として「日本はんだ付け協会」を設立され、はんだ付け検定の認定や講習会、教育のサポートなどはんだ付けの楽しさを伝える活動もされています。
野瀬さんは、大学卒業後、超電導物質の流行に影響され大手電気会社に入社し、宇宙実験用の電気炉の開発に携わりますが、1年半で退職。その後、父の経営する会社ノセ精機(現ゴッドはんんだ㈱)に後継者として入社されます。当時、ノセ精機は典型的な下請け中小企業で、O社の100%下請けでした。バブル景気の真っ只中でやればやるほど儲かる時代。材料も設備も生産計画も全てO社任せで、言われた通りに品質、納期、コスト、効率の追求をしていれば右肩上がりに成長していけました。今思うと、経営しているつもりでしたが、お客様に言われた通りに仕事をしていただけで、頭を使っていませんでしたと振り返られ、バブル時代の経験で得たものは「品質管理、生産管理、納期管理、下請け製造業の心理」だと仰います。
バブルがはじけた2002年からは量産品はすべて新興国で生産されることになり、仕事量が10分の1へ減少。電話アポや飛び込み営業をしますが、みじめな思いを経験されます。やればやるほど赤字が大きくなり苦労されたそうです。
ここで得た教訓は企業も個人も、変化の予兆を察知するための情報収集と常に新しいことに取り組む必要があるということだそうです。
それでも、従業員さんたちの仕事を確保するためになんとか仕事を取ってこなければなりません。そこで、何か新しい事業をはじめなくてはとケヤキのオシャレ家具作り、焼きものつくり、骨董品集め、オオクワガタ・熱帯魚の養殖、マニアックなスピーカーの制作、フナムシほいほい、作家を目指すなど趣味を仕事にできないか?と模索していました。
こんなことを同時進行しつつ「うちには何も売るものが無いのか?」「O社から評価されていたのは何だろう?」と頭の中では常に考えていたそうです。O社との取引も完全になくなって数年、昔のクレーム対策書を処分しようと見てみると不良品のほとんどが“はんだ付け”が原因だと気付き、はんだ付けを教えるのは難しい、他社はどうやって教えているのかな?とパソコンで検索してみると、はんだ付けに関するホームページも教材もありません。これからはんだ付けを学ぼうとする人は困っているはずだと思い“はんだ付け職人”と名乗り、はんだ付け講座を無料公開されました。するとアクセス数が集まり、毎日のように問い合わせがきました。文章での説明に限界を感じ、DVDはんだ付け講座の制作を決心しました。周りの人からは「そんなもん売ったら仕事がなくなってしまう」と反対されましたが、テレビや雑誌に取り上げられ周囲の予想とは反してDVDは毎日売れたそうです。
新しいことに挑戦しようとすると、人は反対する。同じ状態が続くと、悪い状態でも人はその状態を心地よく感じてしまい変化する事を恐れてしまいます。ここで得た教訓は変化することを恐れてはいけないということです。
そして、ここからが本当の勉強です。
趣味の読書をやめて、WEBビジネス、TVに出る方法、セールスコピー、マーケティングなどビジネス本を読みまくります。
そして中小企業家同友会へ入会し、決算書を公開して異業種の社長からツッコミまくられる厳しい勉強会に参加。社長も真剣に勉強しているのです。
過去の経験は必ず役に立ちます。無駄な経験はありません。好きなことに打ち込むことは大事、趣味もとことんやったほうがいいです(10,000時間で専門家)
スティーブ・ジョブズも「点は、やがて線になり、面に変わる」と言っています。
「発信する力」「売る力」「企画する力」を身に着けると強いです。それらを、いくつかを組み合わせられると希少価値になります。
安定を求めると変化に対応できなくなります。自分の値打ちをいかに高められるか?で会社(仕事)を選んでください。
大企業で自分が思った通りに仕事ができるのはずいぶん後です。ただ、教育システムはしっかりしています。しかし、やらされ仕事では成長しません。
ベンチャー、中小企業は教育システムが脆弱ですが、自分で学ぶ意思があれば早期に多くのことが学べますと、ご子息・ご息女の就職活動でアドバイスしていたことをこれから就職活動をする皆さんへとお話いただきました。ありがとうございました。