滋賀県中小企業家同友会

委員会活動について-共育委員会-

インターンシップを軸にした未来の見える地域創造~共育・求人委員会オープン例会~

共育・求人委員会 委員会レポート

地域の未来を創るインターンシップ

共育・求人委員会オープン例会が11月12日(火) 14:00~17:00まで草津市立市民交流プラザ 大会議室で開催され、57名(同友会会員・大学等のキャリア教育ご担当者)が参加しました。
例会のテーマは、「文部科学省“大学等におけるインターンシップ表彰”全国最優秀賞受賞の実践から学ぶ!~地域の未来を創るインターンシップ~」で、山形大学学術研究院 (学士課程基盤教育機構)小白川キャンパス キャリアサポー トセンター 准教授の松坂 暢浩 氏よりご講演をいただき、グループ討論では企業・大学等・教育機関での課題を共有しました。


開会にあたり、宮川草平 滋賀同友会 共育求人副委員長(共同求人活動担当)より「中小企業家同友会の学びとは、HOW(どのように)ではなくWHY(なぜ)を追求することです。インターンシップをどのように実施するかは個々の企業課題として重要なことですが、なぜインターンシップを行うのかをしっかり学ばなければ、厳しい経営環境のもとで継続して実施することができません。会員さんも担当者の方も、本日はキャリアセンターの皆さんもお越しですので、なぜ行うのか、何が課題なのかを持って帰っていただき、新しい地域連携の構築を目指していただきたい」と学び合う目的の共有を兼ねて開会挨拶が行われました。

この後、講師の松坂暢浩氏より、80分間にわたって概要以下の通りご講演をいただきました。

○低学年次からのインターンシップに取り組んだ理由

文部科学省では、「採用」ではなく「教育」の観点から、教育的効果の高いインターンシップの推進を目指しています。本学では、その方針を踏まえつつ、3年次からではなく、学修へのつながりや気づきを得られる点から大学1、2年生の低学年次から取り組めないかと考えました。また、中小企業への理解促進のために、受入先を中小企業に限定して実施したいと考えていました。

しかし、県内の中小企業からは、採用に結びつかない1年生対象のインターンシップは、あまり歓迎をされず、「プログラム作りが大変」「忙しくて対応できない」というインターンシップに対する負担感もあり、受入が進まない状況にありました。また学内からは、まだ入学間もない1年生を学外に出すことに対する不安の声がありました。そして学生は、インターンシップ先として地元の金融機関や官公庁を希望する者が多く、中小企業のインターンシップに申し込まないという状況でした。
本学の内定者調査を見ると、県内に就職する学生うち4割が民間企業に就職しますが、ほとんどが、県内で名前が知られている中堅企業に就職し、中小企業への就職は少ない状況でした。その原因には、就職活動時に、県内の中小企業を知らないからだと思いました。そこで、早期から知る機会を提供する方法の1つとしてインターンシップに注目しました。

○経営指針・共同求人・社員教育に取り組んでいる同友会会員と共に

インターンシップの受入先を探すなかで、「採用」と切り離し、「教育」の一環として、県内中小企業の魅力を知ってもらう機会となるインターンシップを「一緒にやりましょう」と、唯一応えてくれた経済団体が、山形県中小企業家同友会(以下 山形同友会という)でした。
本インターンシップは、スタートして今年で6年目になります。全学部の一年生を対象に、中小企業団体(山形同友会)と連携し、選択必修科目(卒業に必要な科目として選ぶことができる)の授業として開講しています。また、履修学生に対する教育的効果を検証するために、インターンシップ参加前後の調査と併せて追跡調査も行っています。このような取組みが評価され、文部科学省「大学等におけるインターンシップ表彰」で文部科学大臣賞最優秀賞(全国一位)を受賞しました。

初年度は、受入企業13社、履修学生20名からスタートし、2019年度は、受入企業37社、履修学生66名になりました。本学は、1学年が1700人います。そのため、1学年の学生数に占める履修学生の割合が低いようのでは?と思われるかもしれません。しかし、そもそも県内の中小企業は、大学生のインターンシップを受入れてもらえる環境にありませんでした。継続して取り組み、やっと66名の受入れができる体制が出来てきたという背景があります。これからは、これまでの蓄積したノウハウを生かし、県内だけでなく、近隣県の同友会とも協力して受入れを広げたいと思っています。
本インターンシップの実施当初は、受入企業の条件を設けず、また充分に打合せができないままに実施したことで、履修学生や受入企業の間で混乱がありました。そこで、同友会事務局と相談し、経営指針づくりや共同求人活動、社員教育に取り組んでいる企業に受入れてもらうようにしました。事務局から推薦いただいた企業には、同友会の事務局と私が訪問し、受入れのお願いとプログラムの打ち合わせを行っています。特に、経営指針を成文化している企業の社長には、「社員の皆さんが、インターンシップで学生を指導するなかで、自社の理念をしっかり説明できるかどうかで、社員への経営指針の浸透度合いが分かります。是非受入れをお願いします」と依頼しています。このように、同友会の委員会で取組んでいる内容とインターンシップ・プログラムをうまく絡めることで、受入企業にメリットのある形を作っていくことが重要だと考えています。

○3日間の現場実習でも充分な教育効果がでます

文部科学省では、インターンシップの実施期間の目安を「5日」としています。しかし、私が本インターンシップ実施前の事前調査では、学生も受入企業も「3日が最適」だとの回答がありました。そこで、事前訪問1日+現場実習3日+振り返り(成果報告会)1日の計5日間と設定しました。
また本インターンシップは、就職活動のための取り組みではなく、働くことについて考える、就業観の醸成を目指した取り組みになります。そのため、受入企業と学生とのマッチングは、学生の希望は取らず、学生が住んでいる場所をもとに、通勤できる範囲にある企業へランダムにマッチングしています。あくまでも、本インターンシップの目的は「教育」です。履修者のなかには、医学部の学生や留学生もいます。3年生を対象とした就職前提のインターンシップでは、このような学生と出会うことは難しいと考えます。受入企業からは、これまであったことの無いタイプの優秀な学生と出会え、大変刺激になったという声がありました。

ここで、履修学生の調査結果についてご紹介します。まずインターンシップ参加後調査の結果、満足度89.7%、参加後の中小企業に対するイメージがポジティブに変化した割合が89.8%でした。またインターンシップ参加学生は、不参加学生と比べて、キャリア意識が向上し、社会人基礎力が伸長していたことが確認できました。そして、働く意味や中小企業の魅力について言語化できており、3日間でも充分に教育的効果があることが分かりました。次に、履修学生を追跡調査した結果、初年度参加した20名のうち就職した学生は11名(55%)でした。就職した学生のうち中小企業への就職は5名(45%)でした。この割合は高いと思います。本インターンシップを通して、中小企業のイメージが良くなった結果ではないかと考えています。しかし、山形県内への就職者は3人(27%)でした。県内定着につなげるためには、他の工夫も必要だと思います。そこで、インターンシップ受入企業を中心に、本学と共同求人委員会との共催で、4年生対象の学内合同企業説明会(他大学の学生参加もOK)を行っています。おかげさまで、毎年数名ですが、採用につながっています。

○既存社員の定着にも繋がります

本インターンシップでは、山形同友会と協働でインターンシップ受入プログラムの「基本フォーマット」を作成しています。しかし、型にはめてはいません。企業の状況に応じて、幅を持たせる自由度が大切です。何よりも、社員教育の観点から、プログラムを社員に考えてもらうことが重要だと思っています。他社の事例を参考にして、社長と社員が一緒にプログラムを作り、対話を通して自社の魅力を言語化することが重要です。このような取り組みを通じて、既存社員に対して、自社で働くことの意識づけができ、帰属意識が高まり、離職予防になると考えています。「基本フォーマット」を活用した企業からは「人材育成に繋がった」「組織活性化に繋がった」という声をいただいています。

○新卒採用に取り組む企業も増えました

受入企業に対する調査の結果、受入満足度が92.3%でした。また受入理由の多くは「社員教育の一環」というものでした。そして、社内に変化があった企業が50%で、社員の意識変化、新卒を受入れる土壌作りに繋がっていることが分かりました。受入企業のなかには、インターンシップ受入れ後に、社員から「社長、うちも新卒採用を始めませんか?」といった話が出たという事例がありました。学生の意識が変わり、会社も社員も変わる、共に育つ共育型のインターンシップができてきていると感じています。また、インターンシップ受入れを通し、中途中心や高卒中心の採用であった企業が、大卒を採用したいと言ってもらえるようになりました。いまでは「山大生が採用できる企業になろう!」が合い言葉になっています。このような変化が生まれるまで5年かかりました。インターンシップの受入れを1回やっただけでは生まれないと思います。やはり継続して取り組むことが重要だと考えます。

○人が育つ地域づくりをインターンシップで

私がインターンシップの企画・運営した経験から、教育的効果の高いインターンシップを行う上でのポイントが3つあります。
1.Communication(コミュニケーション):受入先、学生、学内との「信頼関係」が重要です。
2.Collaboration(協同):一人で抱えず、学内外と「一体感」を持って連携することが重要です。一教員だけでやるのでは駄目で、組織的に取組み、担当者が変わっても継続する体制をつくる必要があります。
3.Coordination(調整):「お互い様の精神」で、うまく全体を調整していくことが重要です。
地域で人を共に育てていく。企業も学生も社員もハッピーになるような取り組みでないと長続きしません。「魅力ある地域づくり」には、インターンシップが必要だと確信しています。


最後に小田柿共育・求人委員長より「インターンシップを軸にした元気な地域づくり、若者が残りいきいきと働くことができる未来の見える地域創造という、壮大かつ現実的な実践を問題提起していただきました。滋賀同友会でも大学や教育機関との新しいキャリア連携として、具体化し推進して行きたいと思っています。また、滋賀で学ぶ学生が滋賀でなくとも地元に帰り、地元の企業で働くことで地域に貢献していく良い循環ができれば素晴らしいことです。そのときに、地域には同友会が目指している人を生かす経営に取り組む魅力的な企業がたくさんあって欲しいし、そういう企業に就職してもらう条件と環境作りが大切だと思います。同友会の仲間をもっともっと地域に広げてまいりましょう」と閉会の挨拶が行われました。

この後、懇親会を南草津駅前で開催。共育・求人委員会オープン例会を成功裡に終えました。
滋賀県中小企業家同友会共育・求人委員会では活動に参加する企業を募集していますので、ご関心をお持ちの会員さん、会員外の経営者の方も、お問合せはホームページまたはお電話にて友会事務局までお寄せ下さい。ご案内にお伺いさせていただきます。

同友会紹介ページ⇒https://shiga.doyu.jp/admission
同友会事務局 TEL 077(561)5333 FAX 077(561)5334

(記:廣瀬元行)