滋賀県中小企業家同友会

インフォメーション

2022年新春例会を開催しました~企業経営の使命は 社員とその家族を幸せにすること~

例会委員会 委員会レポート

滋賀県中小企業家同友会2022年新春例会を開催いたしました。

と き:2022年1月27日13:30~15:30
ところ:クサツエストピアホテル
テーマ:ポスト・コロナ時代の企業経営とは~社員と地域を生かす五方よし経営のススメ~
講 師:坂本光司氏 人を大切にする経営学会会長 元法政大学教授
参加者:114名

1月27日、クサツエストピアホテルおよびZoomにて滋賀同友会2022年新春例会賀詞交換会を開催しました。
冒頭、水野透代表理事より「今年はさらなる発展に向けて活動したい、地域になくてはならない企業として強い企業づくりを進めましょう」とあいさつ。来賓を代表して水上敏彦・滋賀県商工観光労働部長より「コロナ禍にあっても互いに学び合う姿勢を大切にしながら、活発に活動を続けていることに敬意を表します」とご挨拶をいただきました。

ご来賓の皆さま《順不同》
水上 敏彦 様 滋賀県商工観光労働部 部長
川戸 良幸 様 (公社)びわこビジターズビューロー 会長
髙橋 滝治郎 様 (大)滋賀県立大学 地域連携担当理事
河音 琢郎 様 立命館大学 経済学部長
高屋 和子 様 立命館大学 大学院経済学研究科長
津秋 博之 様 龍谷大学エクステンションセンター 次長
田中 克利 様 (株)滋賀銀行 営業統轄部長
加藤まなみ 様 京都信用金庫 滋賀本部長
浅井 龍 様 衆議院議員上野賢一郎 秘書
饗場 貴子 様 衆議院議員武村展英 秘書
岸田 郁子 様 衆議院議員大岡敏孝 秘書
小寺 赳史 様 衆議院議員小寺裕雄 秘書
田中 里佳子 様 参議院議員小鑓隆史 秘書
坂田 広志 様 日本労働組合総連合会滋賀県連合会 オルガナイザー
岡本 恭治 様 滋賀県労働組合総連合 議長
井上 博人 様 滋賀県労働組合総連合

記念講演では、坂本光司氏(元法政大学大学院教授)より「ポスト・コロナ時代の企業経営とは~社員と地域を生かす五方よし経営のススメ~」と題してご講演いただきました。

【ご講演要旨】
私は、“五方よし”という言葉を使います。“三方よし”も間違いではありませんが、売り手よし・買い手よし・世間よしといったのでは、陽に当たらない人たちがいて、実はそういう人たちを大切にしなければならないという思いを明確に示すために、“五方よし”としています。

“五方よし”のうちの一つは、“社員とその家族よし”です。社員が一生懸命に働けるかは、その家族の支援があるかどうかで雲泥の差となります。私は8000社ほど会社を見てきましたが、よい会社の共通点は、社員とその家族を大切にしていることです。福利厚生は当然として、心から彼らに手を差し伸べているか、思いを馳せているかです。「経営者は社員と家族を大切にしなさい。顧客ではない。株主なんてどうでもいい。」と本に書きました。一言で言えば、上司に不平不満や不信感を持った社員が組織の業績や、上司の出世を手伝う馬鹿な真似はしないということです。あなたが持っている一番大きな時間を、社員とその家族のために使ってください。

次に“社外社員とその家族よし”です。社外社員とは、社員ではないけれど、社員と同じようなことをしている人です。仕入れ先・外注先・協力会社・下請会社で働いている社員と、その家族を幸せにするということです。社外社員とその家族に嫌われた会社に、未来はありません。これからは有効需要の法則の時代は終わり、有効供給の時代になります。喉から手が出るほど欲しい価値を供給し続ける限り、その会社は発展するかもしれませんが、供給する人がいるか否かが大きな問題です。統計を見ると、日本は工場が最も多く、昭和56-7年の日本には78万の工場がありました。現在では35万、30数年で半分以下になりました。これは発注者が、倒産しろと言わんばかりの理不尽な発注をしているからなのです。もっと私たちができない・やれない・やりたくない仕事をしている人たちに心を馳せ、協力会社を大切にしてください。彼らをコストや、材料とみてはいけません。あなた方がやりたくない仕事をしている人たちだからです。

三つめは、“顧客よし”です。私は顧客を未来顧客と現在顧客の二つに分類しました。未来顧客とは「今日はトイレを貸してくれ、休ましてくれ」とお願いばかり言ってくる人です。しかし翌日になると、「貴社の商品を買わせてください。」と言ってきます。決して現在顧客と未来顧客に差をつけてはいけないということです。

四つめは、“地域住民、とりわけ障がい者、高齢者など社会的弱者、その方々よし”ということです。地域にいらっしゃる障がい者、あるいは障害社を家族に持つ家庭、あるいは独居老人世帯、高齢者世帯です。そういう人たちに「この町で住んでいてよかった、今日も生きていてよかった。」と思っていただけるような地域づくりに貢献しなくてはなりません。彼らを企業という舞台で幸せにするのは、経営者の使命だからです。

最後は“株主よし”。これは言わなくてもわかると思います。

“五方よし”は、つまり「誰も犠牲にしない」ということです。


“次に企業経営の話に移ります。

これからの企業経営に必要なポイントを三つあげます。

一つは、“時代変化とともに変えるべきもの、変えてはいけないもの”を理解すること。変えてはならないものは、正しい経営をすること。変えるべきものは経営戦略、つまり手法や手段です。特に、人の採用や教育は時代と共に変えていかなくてはなりません。これからの時代は、高齢者、障がい者、女性、外国人たちに雇用を広げていくべきなのです。これまでの採用が高卒中心だったら、大卒を重視するとか。男性と女性の割合が均等で当たり前の時代なのですから。

二つに、“ぶれない経営”です。コロナ禍では、時代の不透明さ・不確実さが明確となりました。フル操業を中心にした経営は通用しないのです。つまり腹七部経営がよい。3割仕事がふえても残業ゼロ、減っても赤字にならない経営です。会社が利益をだすとボーナスを吐き出す会社がある。設備投資も、多く利益が出たからやろうという会社がある。ボーナスも設備投資ももちろん大事ですが、社員のための内部留保をしなければなりません。コロナは平時の不況ではなく、乱世の不況です。少なくとも3年は内部留保するべきでしょう。

三つに、“価格競争をやめなさい”ということです。データを見ると、赤字を出している企業は70%、価格競争をしている企業が81%でした。つまり、価格競争をすると赤字になるということです。高いけど安心できる、納期を守ってくれるし万が一の時は飛んできてくれるし、そこでしか作れない商品を作っている会社になろうということです。

経営者の仕事を一言でいえば、社員のモチベーションを高めることです。売上とか原価を下げるのは経営者の仕事ではありません。企業経営の使命は社員とその家族を幸せにすることです。原資としての業績は必要ですが、それはあくまで手段です。もう一度生まれ変わってもこの会社で働きたいとか、棺の中にユニフォームを入れてくれと言われるのが、“よい会社”。家族みんなが働きたいという会社が“よい会社”です。