滋賀県中小企業家同友会

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2025年新春例会開催される!~フィンランド・オウル市の産業再生施策を学ぶ~

例会委員会 その他活動

(一社)滋賀県中小企業家同友会の2025年新春例会が、1月30日(木)の午後4時から7時30分まで、クサツエストピアホテル瑞祥の間に於いて総勢119名の参加で開催されました。

水野透代表理事より「国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準でこたえられる企業、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業づくりで、同友会運動の新たなステージを担いましょう」と開会挨拶が行われた後、商工観光労働部長代理の住羽地正浩中小企業支援課長よりご挨拶を頂戴し、基調講演が行われました。

その後の賀詞交換会は青柳孝幸副代表理事より「同友会運動の大きな目的はよい地域づくりです。元気な地域を担う企業づくりめざして今年も学びと実践を」高らかに乾杯の発声が行われ、大盛況のうちに開催されました。

司会の中島 祥子さん(Daisy flowers代表)

◆ご来賓の皆さま(敬称略 順不同)
住羽地 正浩 滋賀県商工観光労働部 中小企業支援課 課長
藤居 耕次郎 (株)商工組合中央金庫大津支店 支店長
山本  学  (株)滋賀銀行営業統轄部ソリューション営業室 地域振興グループ長
平元 俊明  京都銀行草津支店 支店長
佐藤  隆  立命館大学経済学部 学部長(2025年度~)
河音 琢郎   立命館大学経済学部 教授
橋本 貴彦  立命館大学経済学部 教授
中井  徹   龍谷大学龍谷エクステンションセンターリサーチ・アドミニストレーター
中村 治重   滋賀短期大学 次長兼キャリア支援課長
駒井 千代   さざなみ倶楽部 滋賀県議会議員
田中  誠   滋賀維新の会 滋賀県議会議員
清水 ひとみ 公明党 滋賀県議団 代表
節木 三千代 日本共産党 滋賀県議会議員
白木 宏司  日本労働組合総連合会 滋賀県連合会 会長
佐賀 春樹  日本労働組合総連合会 滋賀県連合会 副会長
衛藤 浩司  滋賀県労働組合総連合 議長

◆ 基調講演(要旨)

テーマ「地域の産業・経済は大産業転換をどう乗り切ったか?~フィンランド・オウル市の経験から学べるもの~」
講演者:徳丸宜穂氏 関西大学政策創造学部教授 高水準のウェルビーイングを保証し、なおかつ、効率性・革新性・レジリエンスを兼ね備えた社会経済システムのありうる制度と政策について、北欧諸国と日本との比較を軸に探究 名古屋市在住/埼玉県浦和市出身(53歳)(レジリエンス:落ち込んだときにどう盛り返していくか。)

Ⅰ.背景の構図:構造変化が早いフィンランド(世界経済・産業の背景とフィンランド経済の紹介)
フィンランドという国は産業構造の変化が早く、イノベーションや起業、生産性が高いというのが一方でありながら、高福祉国家という面も持ち合わせている。しかし、ここでは、考え方として「困ったときにどう変化するのか」という点に着目したい。
今日、日本の経済は良くないと言われているが、先進国ではGDPや労働生産性の伸び率が、どこも同じように落ち込んでいる。すなわち先進国の課題はどこも似ていると言える。こういう状況になると「政府主導」で問題解決を、という意見になるが、素朴にそのように進めていいのか?というところに着目したい。
北欧は新しい産業を生み出していくスピードが速いのか特徴。(コーポラティズム:業界、労働組合、行政が合意形成して進めていく)北欧は地方分権が進んでいる。財源も人材も地方が持っている。ここで注目すべき点は「部門間協議」が進んでいること。まずは、世の中で必要とされている需要を生み出す。これを産業振興の起爆剤にする(社会的需要の創出)。そして、社会全体で変わっていくことの合意を形成する必要にせまられる。(社会的合意の形成能力)北欧はこの点が優れている。日本にとっては、ここが学ぶべき点である。

Ⅱ.ノキア社とオウル市(ノキア社:2011年までは世界最大の携帯電話端末メーカーであったが、スマートフォンの登場によりシェアが激減。2014年からマイクロソフトの傘下)
ノキア社の低迷から、オウル市(人口20万人)は失業者が激増した。高い失業率から、フィンランドはどのように復活したのか。
産業はどのように変わってきたのか。フィンランド(北欧)は、産業が廃れるのが早く、新しい産業が生まれるのも速いという特徴がある。通信産業の衰退(ノキア社ショック)のあと、ノキア社の技術者がデジタルヘルスケア産業や環境関連産業に移っていく。(ノキア社ショック:携帯電話機の世界シェア2012年40%→2013年13% オウル地区従業員数2012年1200人→2013年500人 2009~14年で3500人のレイオフ/2014年末2000人の技術者が失職)つまり、ノキア社の技術者たちは、他社へ転職するのみならず、「起業」することで、技術の継承と生活を守った。

Ⅲ.産業構造転換への対応施策
日本の場合と比較するとわかりやすい。日本は、産業の調子が悪くなると、調子の悪い企業を大企業が合併して、そこに公的資金を投入、スケールメリットを出して競争力をあげようとする。基本方針立案と施策は、中央政府と官民ファンド、新会社で行う。
オウル市の場合は、基本方針立案と施策は、地域の産官学によるインフォーマル(非公式)な協議体(自治体、産業振興公社、大学、商工会議所など)で行った。産業(影響を及ぼす大企業)の調子が悪くなると、その産業(企業)に、ではなく、新しい産業(産業転換)と労働者に政策資金を投入する。ノキア社、関連企業はこの協議体には参加しない。古い産業(企業)を切り捨てていく。さらに「新しい産業を作る」という掛け声だけでなく、現実に資金を投入していく。

Ⅳ.新産業創造の施策
政策資金を新産業の基盤作りに使うのが特徴。技術者のスキルを活かして「起業」させていくことが、オウル市/フィンランドのやり方。レイオフされた技術者向けに、起業のためのトレーニングプログラム「ブリッジ・プログラム」をノキア社が実施したというのはその典型事例である。この後起業した業界/技術者は必ずしもノキアとの取引はしていない。
つまり、オウル市/フィンランドの場合は、労働者に〝お金〟を使って産業構造変換を促した。一方で、同じような衰退に見舞われた、日本の半導体メモリとか液晶ディスプレイの場合は、企業に〝お金〟を使って業構造変換を抑制した。このことが、両国の違いを現しているのではないか。
フィンランドは福祉国家なので、政治家は「福祉予算を下げる」とは言えない。しかし結果として福祉予算の高騰を抑えざるを得ない。「人への投資」は新たな人材の創出だけではダメで、人材・技術・技能などの「使い道」を作ることがオウルの場合のポイントである。
オウル市の事例がそのまま日本に導入できることは難しいが、成功事例もある。
長野県飯田市の「多摩川精機」が海外に進出して、地元の下請け企業の仕事が激減する。この下請け会社同士はお互いを知らず、取引関係もなく営業要員もいなかった。そこで、元多摩川精機の下請け企業を中心に126社が「ネスク飯田」という共同受注の組織を作り、新たな市場を開拓している。

Ⅴ.まとめ:オウル市の事例から学べること
本日は、フィンランドの産業構造の転換についてのご講演でした。私たち中小企業家に当てはめますと、世界に負けない「高い生産性」を実現し、働く人たちの生活を守っていくために「賃金」も上げ続けることが出来る会社になるために、事業構造の転換を求められているということです。中小企業家同友会の3つの目的「よい会社、よい経営者、よい経営環境」を実現するには、自社の産業構造、事業構造を変えていく努力を続けるとともに、同友会で学び合う仲間や従業員、行政、教育機関ともタッグを組んで地域振興に取組んでいくことが必要だということではないでしょうか。(記 川邉和人)

懇親会風景
司会の八谷 香央梨さん((株)八谷代表取締役)と須戸 廉俊さん((有)須戸電設取締役)