滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-高島支部-

永続的な企業を目指すために~高島ブロック11月例会ご報告~

高島支部 例会レポート

2018年11月12日(月)18:30~21:00まで安曇川公民館にて、高島ブロック11月例会が開催されました。
(参加者20名)ご報告者は、近江化成工業㈱小林清社長です。


テーマは、「危機は突然訪れる。その時あなたは~廃業寸前のスレスレ経営で事業継承し、12年で売上12倍にしたその極意とは~」12年で売上12倍に・・・という言葉に、期待に胸膨らませ、小林社長のご報告は始まりました。
しかし、スライドの1枚目には、
「12年間で売り上げが12倍になり、12か月で売り上げが1/12にするその極意とは?」
最初のテーマとは間逆のショッキングとも言えるフレーズが並びます。
実は、近江化成工業さんは、今年の9月6日、素材供給元の工場火災により、大打撃を受け、現在その危機の真っ最中であるとのこと。
それが原因で、この先1年間で、売上が1/12になる可能性を秘めておられるとの説明がありました。
冒頭数分で、参加者は引き込まれるように、小林社長の言葉に耳を傾けます。
しかし小林社長は、淡々と自社の現状を説明し、まるで先の未来が見えているのかとも思えるような口ぶりで今後の展望を話してくださいました。


この危機を経験し、小林社長は沢山の著書を読まれたそうです。
その中で、「成功している経営者タイプから学ぶ、3つの危機の対処法」をお教えくださいました。
①ストイック系・・・「私は人生の岐路に立った時、いつも困難な方を選んできた」~岡本太郎~
常に挑戦し続ける対処法
②オールマイティ系・・・「よい工場は、見た目には退屈だった。混乱は予想され、対処の方法はルーティン化されている。そのため、劇的なことは何も起こらない」~P.F.ドラッカー~
危機を未然回避する方法
③バカボンのパパ系・・・逆境を受け入れる。そして楽しむ
「これでいいのだ!」の精神

続いて、ご自身のサラリーマン時代からの年表を用いて、幾度となく訪れた危機、そして対処方法について、ご指南いただきました。

サラリーマン時代は、海外志向が強く、その念願かなって、長く海外勤務を経験されます。
そんな中、上司との対立、人との出会い、様々な経験を積み、家業を継ぐべく帰国。
しかしそこにおいても、事業の難しさや姉との確執など、浮き沈みを経験。
そんな苦労の甲斐もあって、2016年には最高益をたたき出します。

その後、まさかの素材供給停止・・・

この素材供給元の火災は「必然的だった」と小林社長は言います。
ハインリッヒの法則にあるように、1件の重大な事故は、29件の軽微な事故、そして300件の非ヤリ・ハットがあります。

では、どうするのか?
この時こそ、バカボンのパパ「これでいいのだ!」と小林社長は考えられました。
・受け入れる ・超前向き人間を演じる ・行動、行動、行動!失うものは何もない!


そして、危機だからこそ、沢山の著書を読んで学ばれました。
その中で、心に刻んだ3つの教えがあります。
①似て非なるものには手を出さない
これは吉野家の会長の言葉です。吉野家も、牛肉問題で大きな打撃を受けながら、見事に立ち直りました。多くの牛丼チェーンが、産地を変えて牛丼を提供する中、吉野家はこれまでの産地にこだわり続けます。それは今までの吉野家の牛丼ファンのため。
「今のダメージより未来のダメージのほうが、リスクが大きい」
この考えの下、これまでの牛丼を変えることなく、危機を乗り越えました。

②よいことも悪いことも、解釈の仕方次第
これはユダヤの格言だそうですが、「過去は変わるし、変えられる。未来はその変え方次第で決まっている」という考え方です。
過去は変えられない、と良く言いますが、過去のマイナスは解釈次第でポジティブなものにできると小林社長はおっしゃいました。

③お金で解決できることは、容易な問題だ
これは華僑の教えだそうです。

これらの教えから、小林社長は、「最大の危機は、再開後に以前と変わらないこと」と考えます。
そして、「新生近江化成宣言」を作られます。

新生近江化成宣言の骨子
「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」(孟子)
(人の和)とは
・次期リーダーの育成
・教育の充実
・他部門研修
(地の利)とは
・顧客との強固な関係
・爽快潔しかできない商品&サービス展開
・私がワクワクする新規事業の立ち上げ(海外・教育・ネット)
※零細企業の成功は、社長の行動距離に比例する

素材供給がストップし、在庫の販売しかできなくなった現状で、それでも銀行の融資を取り付け、従業員を解雇しない決断をされた小林社長。
そして、素材供給が再開するまでを、決して無駄にせず、「再開後に以前と変わらない」とならないために、近江化成宣言を作り、実践を進めておられます。

危機は必然的に起こるのだとすれば、今我々は何をすべきなのか・・・
危機が起こったとき、その事実(過去)をどう解釈し、未来につなげるのか・・・
危機を乗り越えたとき、どのように生まれ変わるのか・・・

そういった、危機に対する教えを学ばせていただきました。

その後、グループ討議が行われ、個々の現在の危機を共有し、それを小林社長の教えに照らし合わせて、自社のシミュレーションを行いました。
非常に活発な意見が飛び交い、小林社長にも沢山の質問が集まりました。

誰しもに起こりうる可能性のある危機、これをどう対処するか、今我々にはそこが求められていると思います。
永続的な企業を目指すためにも、今一度自社の危機を潜在的な部分から洗い出し、未来をより明るいものにしていきたいと強く感じる、そんな報告となりました。(記 鳥居)