滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-高島支部-

社員を信頼し任せる経営が企業成長のカギ!~高島ブロック10月例会~

高島支部 例会レポート

滋賀県中小企業家同友会高島ブロック10月例会が15日(月)午後6時半から9時まで安曇川公民館で行われ、21人が参加しました。
報告者の荒木順平氏((株) エース産業機器 代表取締役)より「社員を信頼し、任せる経営で会社を成長させる~大切な人をあなたの会社で働かせることができますか?~」をテーマに赤裸々な経営体験報告をしていただき、その教訓からから得た企業発展の法則性と経営者の役割を学び合いました。


==荒木さんの報告概要==

はじめに、「大切な人をあなたの会社で働かせることができますか?」とお伺いします。もちろん中小企業なので、家族で経営している方が多いとは思いますが、考えてみてください。
エース産業機器は、主に製造業を対象にして、測定機器や工具、部品を取り扱っている工具屋です。エース物産は、地元、湖北産のお米だけを取り扱っているお米屋さんです。

経営理念は以下の通りです。
「エース産業機器は、私達に関わるすべての人々の幸せを追求することを使命とし、
一、常に考え、行動し、お客様へ「最高のサービス」をお届けし続けます。
一、常に変化し続け、「ものづくりの発展」に必要とされる企業になります。
一、社会・自然環境に対し、「感謝の心」を持ち、永続的に大切に致します。
一、一人ひとりがやりがいを感じ、「自己実現」の為に最大限成長できる笑顔の絶えない企業に致します。」

会社の遠隔は、以下の通りです。
1997年12月 ナショナルショップの次男として枚方市に生まれる
1987年11月 父親が荒木工業創業(滋賀県の高月)
2001年01月 ㈲エース産業機器を設立
2004年12月 会社を退社し、兼ねてよりの夢だった留学をする
2007年10月 他社を経て、㈲エース産業機器に再入社
2008年06月 滋賀県中小企業同友会に入会(当時はプレイングマネージャーとして忙しく、幽霊会員だったそうです。)
2009年 リーマンショックで売り上げが激減
2011年 私を変えるきっかけの、ある事が起こる
2013年 私を変えるきっかけの、ある事が起こる
2014年12月 「経営理念を創る会」を受講
2016年01月 経営理念を確立
エース物産を設立したのは、BtoBの仕事だけでなく、BtoCの仕事がしたかったのと、地元への貢献、自分で会社を興してみたかったからです。

エース産業機器の売上高は6期連続過去最高を記録しています。
私が社員に任せるようになったきっかけと事件をお話しします。
2011年、急に弟から退社の申し出がありました。「ついていけへんわ。やめさせてもらうわ」です。
私は結果に拘るあまり、数字に追われて周りが見えなくなっていた上に、お客様だけを見て、お客様の存在が大きくて、社員のことは小さな事だと感じていました。
その頃の私は、
1.最前線で社長が頑張る
2.結果が出る
3.社長が頑張れば会社はうまくいく
4.従業員はお手伝いさん化してくる
5.自分は主役
という12345が負のスパイラルとしてまわり続けていました。
そして、部下には「そんなことも出来へんのか!」「やってあたりまえやろ!」と暴言の嵐でした。私も社員を信頼しようとは試みましたが、社員にもガソリンカードの不正利用(自家用車への給油)、公園で昼寝、会社のカードで彼女へのプレゼントを購入、車の事故、就業時間内にパチンコ屋に行くなど信用できない行動があったからです。
でも、唯一の身内の弟が辞めたことをきっかけに、売り上げを増やすだけの会社ではなく、社員が辞めたくない会社を作ろうと本気で考えるようになりました。

社員が辞めたくない会社作りに取り組んで2年後、さらなる事件が起こりました。
2013年、充実して働いてくれていると思っていたパートさんから、退職届が出てきました。弟がやめて自分なりに社員のことを気にかけて頑張っていたつもりでしたが、事実はそうではなかったと気づかされました。
母子家庭で小さいお子さんがいて、ある土曜日に会社に来られて「生活がとても苦しいので辞めさせて下さい」と言われたのです。私は充実して働いてくれていると思っていたのに、実は生活が苦しかったというのを聞いて、悔しくて仕方がありませんでした。慰留しましたが、次の仕事も決まっているからと断られました。
よく考えてみると
経営計画はありましたが、年度目標は我流で、経営理念もなにもなく、社員にはやらされ感が強い目標な上に、一方よし(客よし)だけで他になにもない。
目標を達成するための具体的な方法も書いていないし、目標もブレブレで「この会社はどこに向かっているの?」「どこを目指しているの?」と問われても、漂流船のような経営理念と経営計画だった事に気づきました。
このことをきっかけに、みんなは幸せになる為にこの船(会社)に乗っているのだと、考えを改めることになりました。

滋賀県中小企業家同友会の「経営指針を創る会」を受講して、経営指針書を作成しました。
社員に発表した経営指針書の表紙には「チャレンジャー精神 俺の人生、俺がやらねば誰がやる。今やらねばいつできる。俺はやる。いつ。いま。」と書いています。
経営指針書を発表してから、少しずつ任せる経営が出来始めました。
まずは、自分自身がプレイングマネージャーをやめて、社員を信じる事から始めました。
お金の事も任せて、私のお客さんも任せて、研修、営業会議、改善会議、売値、ISOも、各グループの責任者に任せて行きました。そういった事を経営指針書に盛り込んでいくと、すぐにはうまく行きませんでしたが、次のことの積み重ねで変化が生まれました。

1.「まず、やる」率先垂範です。同友会の例会に参加して、学んだことを一つ自社で真似て実践しました。経営指針書に書いた事は、成功失敗に関わらず、必ず取り組んできました。いまでは、経営指針書発表会にも参加同友会の仲間に参加してもらっています。
2.振り返る
社員には目標シートを作成してもらい、毎月個人面談で歩み寄るようにしています。自分自身も目標シートを社員に提出し、社員から指摘を受ける事もあります。半期ごとの振り返りで問題点を洗い出し修正しています。
3.またやる
年始の目標等はだんだんと薄れていってしまうので、何度も命を吹き込んであげます。

私は、滋賀県中小企業家同友会で学んだことを実践しています。
経営指針書の成文化はゴールではなく、スタートです。経営指針書を机の中にいれたままにしては、何も変わりません。
そして、同友会に参加して学び続ける事が大事だと思っていいます。
同友会の価値は、参加している人自身がどう行動するかで大きく変わると思っています。例えば、同友会で学びTTP(徹底的にパクる)する。改善提案買取制度(岐阜県の未来工業)の導入(改善案を500円で買い取る、最多提案賞、最優秀提案賞を贈る)、誕生日有給休暇、永年勤続表彰退職金制度、個人面談(おすすめ)を毎月日を決めて全員と行い社員の声を聴く。産・育児休暇制度、誕生日会(勉強会を月に1回行うのだが、始まる前に恥ずかしがりながらも、歌を歌ってケーキを食べるようにしている)、共育ち研修(金曜日にグループに別れして、ディスカッション。テーマは「働く事とは」「助け合うとは」など、同友会の月刊共育ちを活用)などなど。

滋賀県中小企業家同友会で経営指針を創る会に参加し、経営指針書を成文化して、社員と共有し、さらに同友会で学び続け、具体的な課題を実践することで社員との共育ちが進み信頼関係が構築され、6期連続売上高最高を記録し、2020年からは無借金経営になる見込みです。
既製品の販売を行っている我が社にとっては、社員のお客様への対応で無限に他社との差別化が出来ると考えています。

社員に任せて失敗を恐れる人がいますが、任せて失敗されることより、任せないで失敗すること、有能な社員が会社を去って行くことの方が大きな問題だと思います。

最後に、最初の質問「大切な人をあなたの会社で働かせる事ができますか?」を思い出してください。いま働いている社員と同じ条件で、自分の家族を働かせる事が出来るかを考えてみて、Noであれば給与、待遇、退職金、その他いろいろな面で改善すれば、会社が伸びる余地があると考えて下さい。
あなたが一緒に幸せになりたいのは家族だけですか?
社員は幸せになるために我が社で働いてくれているのですから。

補足報告
ノミのお話し
ノミの身体能力はすごい。体調2mmに対して40cm程度飛ぶことが出来る。人間の大きさで考えると数百m飛べる計算になります。
そんなノミにコップをかぶせて置いておくと。。。コップの天井にぶつかるのが嫌で、コップの高さまでしか飛ばなくなります。
そして、コップを裏返してやったとしても、コップの高さ以上飛べなくなったノミはコップから一生出られなくなってしまいます。
このノミを、もう一度高く飛ばせる為の解決法は・・・飛べるノミと一緒にしてやる事だけです。これは同友会と同じです。周りによい会社を作っている経営者がいるのだから、自分にもそれが出来るはずと考えることができます。