滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-高島支部-

ビジョンがあるから仲間と共に歩んで行ける~高島ブロック10月例会~

高島支部 例会レポート

滋賀県中小企業家同友会高島ブロック10月例会が21日(水)19:00-21:00まで可以登楼別館で開催され、24人が参加しました。
「YOU`LL NEVER WALK ALONE ~ひとりじゃない~」 をテーマに、高島市でリハビリ訪問看護ステーションを、令和元年5月7日(多分滋賀県では令和初の企業ではないかとおっしゃいました)から 創業された大森健一氏に、この一年の振り返りも兼ねて、現在の悩みや、改善策、これからのビジョンなどを熱く報告して頂きました。

始めに自己紹介、会社概要と、今回のテーマについての部分も兼ねて訪問看護とはなんなのかという、ご説明を頂きました。
大森氏は、看護師、理学療法士、介護支援専門員、呼吸療法認定士と「象使い」(ネパールで取得)の資格を持ち、現在の会社を運営しておられます。 「象使い」の資格のおかげで、名刺にインパクトが出来るとおっしゃってました。
会社としては、現在2期目となり、常勤2名、パート職員2名で運営されておられます。
今回のテーマである「YOU`LL NEVER WALK ALONE ~ ひとりじゃない ~」というのは会社のスローガンにもなっており、介護にしても、会社を立ち上げるにしても、1人ではないんだよ、寄り添って頑張って行こうという意図を持っておられました。
そして、自社の事業である訪問看護のお仕事のご説明を頂くのですが 、一言で申し上げますと「患者様の日常生活の準備をする仕事」とおっしゃいました。
これは、たくさんある薬の準備であったり、お医者様と病状のやりとりや表現の準備であったりと、様々な準備をすることが仕事であるとのことでした。
また、一人で生活が出来るかどうかの基準になる排せつのお手伝いや、自立支援を行う、大事な仕事だと考えておられました。

起業して訪問看護という仕事を経営するにあたって、色々な壁にぶち当たって来られました。
訪問看護ステーションの立上げ条件として「常勤換算2.5人」が必要となり、「一人では出来ない」ところからスタートしました。
開始当初は、利用者ゼロ、収入もゼロながら、常勤看護師は4人といった状態。広告宣伝を行い、他の医療職スタッフに訪問看護を知ってもらう為の勉強会を自主開催し、 融資の相談をし、事業計画を練り込み、なんとか半年で損益分岐点を突破したそうです。
しかしながら、忙しくなればなるほどスタッフは離れていき、大森氏とスタッフの間で、想いの食い違いが起こってきます。
利用者が増えるという事はスタッフ一人一人の責任が増えるという事。そこに不安や不満が生まれていき、ついに退職者が出てしまいました。
緊急対応でしか培われない経験がある看護の仕事で、そのほとんどを大森氏自身が対応してこられ、自分自身が頑張ってやっていたつもり…だったのですが結果が出ず、頑張ってやっていた。という所がそもそもの間違いだという気づきをされておられました
そんな中での自社の問題点としては
1.資金面の問題 ⇒ 借り入れを最小限に抑えてリスク回避したことで、逆に余裕の無い資金繰りになってしまった。
2.スタッフへの信頼 ⇒ 経験の浅いスタッフに任せるよりも自分自身が現場に出る事が多く、従業員マネジメントの余裕が無かった。
3.体制、教育の不備、見切り発車営業 ⇒ 仕事をこなしていくなかで体制を整えていった経験から仕事が増える中で、スタッフにも役割を与える事で経験をさせていく体制になってしまった。(ぶっつけ本番の現場業務)
現場のノウハウの周知、研修体制の脆弱さ、訪問体制の不備。
といった問題点が浮上してきたと、一期目を反省し振り返っておられました。

初年度の反省点、挫折感を変えるきっかけとなったのは
一つ目は、起業へのチャレンジは誰しもが出来るわけではなく、自分が環境に恵まれているというポジティブな思考
二つ目に、残ったスタッフとの話し合いの場を持ち、スタッフ自身が前を向いてくれた事。また起業し「仕事」に変えた実績を評価してくれた事
三つ目が、妻というパートナーの存在。アドバイスをくれたり、共に悩んでくれる存在のありがたみを感じたとおっしゃいました。

大森氏自身、現在も立ち直れたわけではないけれど、やりたいことはごまんとある!
落ち込んでいる暇はない!
患者さんからも「お前の悩みは、悩みのうちに入らない」と檄を頂き、前を向けるようになられたそうです。
大森氏自身も、もちろん「ひとりではなかった」と痛感しておられる印象を受けました。

さらに切り替えるきっかけとなったのは
目指すべきところ、改善すべきところがはっきりとしているという事でした。
自社がターゲットにすべき利用者様であったり、目指すサービスであったり、業務の改善を行うべきところをしっかりと考えておられました。

また、この地域だから出来る事、将来的にやっていきたいビジョンをお持ちで
全国より高齢化率の高い地域だからこそ、今後進んでいく高齢化社会のありかたを考える先駆者となれるチャンスだ!と捉え、自社を利用して下さる患者様の社会的欲求(一人で歩いて出かけたいなど)の実現に向けてたくさんのアイデアも考えておられました。

そのアイデアというのが
介護予防に視点をおいたデイサービス事業で、歩いて出かられるように体を鍛えてもらうようにする事だったり、 歩いて出かけられたとしても目的地がないのでは楽しみが無いということで、車が乗れる環境を作り、運転免許返納をストップするためにドライブシュミレーターのあるデイサービスを考えておられたりなど、本当にやりたいことはごまんとある!と未来志向でお話しをされておられました
また、自身の趣味が旅行という事で、看護師が道案内を出来る旅行サービスがあるのでは?とも考えを巡らせておられました。

最後に
大森氏自身、経営はど素人でも、やりたいことは山ほどあるので、初年度の反省と振り返りを活かして、今季の目標と将来ビジョンで前を向いていくきっかにして、自分のビジョンは一人では実現できない事も示していると考え、社員と歩幅をあわせて、ゆっくりと前に進んでいこうと考えています。
いつか振り返った時に、足跡があんなにたくさん!と思えるような経営と地域貢献ができるような会社にしたい!
と、締めくくりをされました。

このあと4つのグループに分かれて「危機をチャンスに切り替える」経験や考え方についてディスカッションし、コロナ禍をのりこえる前向きな経営実践を誓い合いました。
(記 出口)