滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-高島支部-

「あって“”ありがたい!”」と言われる店を目指し続ける~高島ブロック9月例会~

高島支部 例会レポート

滋賀県中小企業家同友会高島ブロック9月例会が16日(水)19:00~21:00まで可以登楼別館(JR今津駅前)様にご協力をしていただき、新常態に対応した会場設営で開催され36人が参加しました。
報告者の大辻ひかりさん(大辻 ひかりさん NAIL+CAFE eclat 代表者)より「母子(おやこ)でつかんだ奇跡の化学反応!」をテーマに経営体験報告が行われました。
その後、「あなたの初心(創業・承継時)は何ですか?その初心は形になって表れていますか?」をテーマにグループ討論を行い、同友会らしく変化球2回ひねりの学び合いを満喫しました。

【以下報告概要】

始めに、高島ブロックの9月例会では、たくさんの方にご参加頂き、大盛況の例会を作り上げられたこと、皆さんのお力があっての事だと思いますので、お礼申し上げます。
そんな、大盛況であった、NAIL+CAFÉ eclatの代表、大辻ひかり氏の経営体験報告をご紹介いたします。
はじめに、NAIL+CAFÉ eclatのコンセプトのご説明を頂きました。
Eclatとはフランス語で「光り輝く」といった意味を持ち、自分の名前とも共鳴するところからこの店名を決められました。
コンセプトは、疲れやストレスをするっと脱ぎ、心と体をリセットした時に瞬く光、静かでありながら力強い光をイメージし、全てのお客様がリラックスして心身ともに元気になれるレシピをネイルとカフェでご提供するということでした。
大辻さんがネイリストを志したきっかけは、幼いころ浜崎あゆみが大流行しており、手に取った雑誌に記載されていた「ネイリスト」という言葉にすごく惹かれて、その点から「将来の夢はカリスマネイリスト!」と決めていたそうです。
カリスマネイリストになるために、憧れの先生がいるネイルスクールに通い、ネイリスト試験を、なんと全てストレートで合格します。
更には、香港のネイルコンペティションというコンクールに2年連続で入賞。20歳になり、大阪の心斎橋で有名人がくるようなサロンに就職しました。
入社の際に、サロンの社長に「1年後、友人と会う約束をしていて、ハワイに行くための休暇が欲しい」と伝えたところ、社長はあっさりと了承。そして、1年後ハワイに行く事になるのですが、そこでの経験が大辻さんのネイリストとしての人生に大きな影響を与えます。
ハワイでは、友人と楽しく遊び、その雰囲気をたっぷりと感じられたそうですが、楽しい思い出だけではなく、バックのひったくりに合い悲惨な思いもされました。
そしてハワイから帰国し、しばらくしてヘアー雑誌の特集の話が舞い込んできたのですが、
その特集の内容が、なんと「ハワイ」だったのです。
自分が感じてきた雰囲気や経験を活かして、ネイルに想いを乗せて提出したところ、見開きページに掲載されることになりました。そのことで、大辻さん自身の売り上げもグンと伸び、ネイルとアイラッシュ専門店の立上げメンバーとして選出され、新店舗のプロデュースを任される程になりました。

そんな刺激的な毎日を送っていた大辻さんに、ある日、母親から「飲食店がしたい」、という連絡が来ます。
急な母からの連絡に、すごく戸惑い、すごく葛藤されましたが、「今の自分が成り立っているのは、これまで背中を押してくれた母親の理解のおかげ」なのだから今の華やかなネイリストとしての生活を諦めて、親孝行が出来る今、実家での起業を覚悟したそうです。
覚悟はできていたものの、帰路につくJR湖西線の中では、全ての事がフラッシュバックし、ネイルが出来なくなるんじゃないかという不安で大泣きされたそうです

ここから開店させるまでのお話しに移ります。
開業資金は保証も何もなく、親族に保証人になってもらい400万円を借り入れ。自分の貯金や積み立ても全て取り崩しての企業だったそうです。
今、振り返るとすごく恐ろしい事をしたと感じるそうですが「やってやろう」という情熱があったんだなと振り返っておられました。

そして2016年6月29日NAIL+CAFÉ eclatをオープン後、たくさんの人に励まされる反面「1年後にはスナックになってるやろ」だとか多くの批判もあったそうです。でも、そういった言葉に負けない為にもと、反骨精神で頑張っておられたそうです。

その後、3つのコンセプトをたて経営に励んでこられました。
ここからはどういった戦略でお店を盛り上げて来たのかというお話しに移ります。
まずは集客。ITの活用、口コミ、メディアのへの出演に力を入れ、ITに関してはホットペッパーや、SNS、LINE配信を積極的に活用しました。
口コミは、口コミが広がりやすいという地域の特色を活かすためにも、接客には特に力をいれて来ました。ネイルをしている間に、お客様の不安や疑問を解いていくように心がけ、同じ目線で感じ、受け取る。極力、専門用語などは使わずに、丁寧にわかりやすい言葉でお伝えする。
また、家事、育児、仕事などの生活に寄り添ったネイルの提案を心掛けて、接客に取り組まれました。
そんな努力の成果もあり「ネイルが上手で、話がおもろい」といった評価と口コミが広がったそうです。
さらに、メディアに出る事で、地元地域だけではなく、他所からのお客様も来るようになり、地域のお客様からも、「自分の通っているサロンがメディアに出ている事が嬉しい」と喜びの声が寄せられ、励みになったそうです。
カフェスタッフは、現在主婦の方を雇用されていて、主婦ならではの気配りや目配りに助けられているとおっしゃいました。
また、スタッフ間での共有ノートを作成し、意識の漏れがないようにしてきました。

このように、会社が順調に成長し、ネイリストの人手不足を感じ、初めてネイリストの雇用を試みましが、わずか半年で退職。その時、雇用していたネイリストは主婦の方で、サロンで働いた経験も無かったそうです。その為、大辻さん自身がレッスンを行い、ネイルの方向性を熱く伝えましたが、ネイルに対する熱量や方向性の違いで泣かせてしまうこともあったそうです。
その事を教訓に、人手不足だから募集するのではなく、NAIL+CAFÉ eclaだから働きたいと思ってもらえるような店にしたいと決心したそうです。
そして、3年目に突入。補助金を利用し、店舗の改装を行いました。もともと、隣に店舗を構えていた親族が経営する靴屋さんと自社店舗を共有してオープンしたネイルスペースを個室化し、カフェスペースも広くしました。
改装をするにあたって自社顧客のパターンも分析しました。
パターン1は家族で来られて、カフェでお食事をされている間にお母さんがネイルをする。
パターン2、友達とカフェで食事を楽しみ、ネイルも楽しむ。
パターン3、服や靴を購入されたお客様が、服や靴にあったネイルをする。
そういった努力の成果がリピート率90%という数字を生み、お客様に価値あるライフスタイルを提供できているのではないかと語りました。

お母様と共同で経営されているカフェについてもお話し頂きました。
カフェで提供している料理はお母様に一任されていて、味やセンスに自信をもっている印象を受けました。
というのも、大辻代表が学生の頃、母親のお弁当を見た友人から褒められることが多々あり、母親の料理のセンスは間違いない!と確信しているからです。


最後に夢と今後の展開について語られました。
高島市という地域で初のネイルとカフェを融合した店舗を開設し、地域のお客様と親交を深めていったなかで、あるお客様から「このお店が高島市にあって、ありがたい。」と言って頂けた事に感銘を受けてたそうです。「ありがとう」ではなく「ありがたい」と言われたことに、自分自身も驚き、その言葉が心に響いたと。
その言葉を胸に、今後もお客様にそう思って頂ける店舗を目指して、常に改善と改革をすること。チャレンジして行動する事。
自分と人が幸せになれる方法を探し、続ける事を心掛けて行きたいと考えておられます。
そして、自身が裏千家の茶道の中で教わった一期一会を大切に、愛のある言葉で、勇気ある行動で、生かされている事に感謝して頑張って行きたい。とお話しを締めくくられました。
(記録 出口)