滋賀県中小企業家同友会

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高島ブロック3月オープン例会ご報告

高島支部 例会レポート

高島ブロック3月オープン例会が、3月16日(水)18:00~21:40まで可以登楼別館で開催され、39名が参加しました。

報告者は高島ブロック会員の(株)トリイ 代表取締役社長の鳥居保典さんで、「ピアノは黒じゃなくていい!もっと自由に、鮮やかに変えられる~危機に打ち勝つ常識を疑う経営~」をテーマにご報告をいただきました。

鳥居さんは大学卒業後に大手カード会社へ就職し、営業と債権管理の仕事を経験されました。その後、金融事業を海外進出する現地調査に配属され、中国や東南アジアに進出するための法的規制への対応調査をワクワクしながら取り組まれ、会社の財務や経理の知識も身に付けられました。営業ではカスタマー・リレーションシップ・マネジメントというマーケティング手法を学んだことが、現在でも顧客に個別対応した情報提供の手法を取り組んでいることにいかされているそうです。

音楽業界では子どもをグループでレッスンする音楽教室が事業の柱ですが、少子化と習い事の多様化で生徒が減少し、競争が激化しています。そこで安易に大人向けの音楽教室を始めたものの、グループレッスンができず習える時間も一律にはならないなど、これまでの成功神話では成り立たない状況なのに、同じことにしがみついてやってきたと辛口に仰います。

そして、コロナ禍が始まりました。
2020年3~5月はレッスンがすべて停止。ホールイベントもすべて中止。発表会が出来ないので、音響や照明の仕事もなくなりました。家庭を訪問する調律も自粛せざるを得ず、損失のピーク時は昨対売上げ80%減という厳しさでした。

そんな時、鳥居さんを救ってくれたのは、同じ同友会高島ブロックの会員である可以登楼別館の田下支配人だったそうです。毎日のように鳥居さんのお店に来ては、補助金情報を教えてくれたそうです。飲食も大打撃を受けているのにもかかわらず、前向きな田下さん姿に励まされ、仲間がいることに支えられたと仰います。

「何か新しことが出来ないか」と社内で話し合っていたときです。女性スタッフから「電子ピアノのように、生ピアノもいろんなカラーバリエーションがあればいいのに」という発言が出ました。市販ピアノは95%が黒。5%が木目だったのです。そこで鳥居さんの奥さんから、シートにデータを印刷してピアノに張ってはどうだろうという案が出され、ラッピング×ピアノ サービス Wrapi(ラピ)の開発がスタートしました。ラッピングの技術者とピアノを知り尽くした技術者がコラボして、これまでの常識を越えた新しい価値の創造をめざされました。

簡単ではありませんでした。ピアノという特殊な形状へのラッピング方法、とりわけ複数のパーツにまたがるデザインのラッピングは困難でした。ラッピングの耐久性は?音への影響は大丈夫か?など、クリアする課題は多々ありました。

「中小企業等新事業創出連携推進事業補助金」に応募・採択され資金を獲得されます。でもそれ以上に役立ったのは、補助金の申請を通じて事業計画や営業戦略を作り込むことが出来たことだと強調されました。

そして、これまでの1年間に、ストリートピアノとして行政や企業のイベント向けに制作・販売する実績が生まれています。

今後のビジョンは、ネットを活用したWrapi(ラピ)の認知度向上と、行政・企業・保育園に加え、個人に対する営業戦略を明確化して取り組んで行くこと。そのためにも、全国に協力店・提携店のネットワークを作ることだそうです。

Wrapi(ラピ)を通じての学びは、音楽は不変だという固定概念から半歩脱却できたこと。見た目は綺麗でも、良い音が出なければダメだというピアノ技術者としての本質に気づいたこと。眠っているピアノにラッピングして光を当てることは、有形文化財としての日本のピアノを守ることだという使命感を持てたことだと仰います。

さごに、「本物は続く。続くと本物になる」という座右の銘を紹介し、Wrapi(ラピ)を本物にして行きたいと報告を締めくくられました。

報告のあとは、「あなたにとって理想の仕事・ありたい姿は何ですか?」をテーマに、自社の本当の役割は何かを深めるディスカッションを行いました。(M・H)