滋賀県中小企業家同友会

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「社会に出て必要な力」を身に付ける~長浜北星高等養護学校見学会を開催~

ユニバーサル委員会 委員会レポート

長浜北星高等養護学校見学会報告
報告:松下 佑太(滋賀県中小企業家同友会ユニバーサル委員会副委員長)

6月17日(木)ユニバーサル委員会主催で滋賀県立長浜北星高等養護学校を見学にうかがいました。参加者は7名。最初に目的として「まずは知ること気づくこと。それを自社と会員にどう広げていくかを考えること」を共有してスタートです。

長浜北星高等養護学校では「しごと総合科」を設置されておられ、生徒のみなさんは卒業後に障害者雇用枠での就職を目指して日々学ばれている学校です。一学年の定員は16名と普通の高校と比べると少人数な分、一人ひとりに合わせた指導を行ってらっしゃいます。長浜北星高校と同じ敷地内にあり、普通高校と高等養護学校の別なく生徒が一緒に取り組む活動もあるそうです。

この日は生徒のみなさんのものづくり教科の授業を見学させていただきました。
まずは縫工の授業です。

みなさんは障害がある人がミシンを使うと聞くとどう思われますか?
私は正直「それって危ないんじゃないの?大丈夫?」と思いました。しかし、社会に出て仕事ともなればまず求められることは安全第一です。100%安全というものは存在しないからこそ、授業を通じて安全に作業することの大切さと責任を学ばれるそうです。
また、写真や図を使った手順書を用意されていたのですが、授業の一環ということで、これさえ見れば全部できるというものではなく意図的に「自分で考える部分」を作っているというお話が印象的でした。

次に木工です。19日(土)に販売のイベントがあるとのことで、この日は最後の仕上げをされていました。綺麗なイスですが、もちろん最初からこうしたものが作れるわけではなく、失敗をしながら繰り返し進めていくことで少しずつ慣れていかれるのだそうです。その過程で忍耐力、集中力、投げ出さずにやり抜く力を身につけていくとのことでした。
写真は撮り忘れてしまいましたが、お馴染みの5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)も貼っていました。


残すところは園芸と陶芸です。チームで協力しながら進める作業があり、先生が説明を終えるたびに「よろしいですか?」と確認し、生徒のみなさんは都度「はい!」と大きな声で返答をされている姿が印象的でした。声出しは指差し確認と同じですね。チームで進めるからこそみんなで確認をしていくことの大切さを学ばれているのだと思いました。
こちらも販売会が近いこともあり、白板に接客の手順が書いてありました。園芸の授業だからといって植え付けや栽培のことだけをする訳ではないんですね。


今回「しごと総合科」の授業を見て、学科に「しごと」とつくくらいだから、みなさん木工なら木工の、縫い物なら縫製のお仕事を目指されているのかなと思いましたが、実はそうではないそうです。
こうしたものづくりの体験を通じて、「社会に出て必要な力」を養い、学ぶのだそうです。では社会に出て必要な力ってなんでしょう?
自分で考える力、仲間と協力して物事を進める力、諦めずにやり切る力、集中して取り組む力、報告・連絡・相談する力、安全を理解する力、自分なりに工夫する力などなど。
たくさんあると思います。
これって私たちも学生時代に同じようなことを学んできたのではないでしょうか。学科は彼らとは違ったでしょう。それでも学ぶことの意義や、あるいは教育というものの目指すところというのは障害のあるなしに関係のない話なのかもしれないと感じました。

見学の後は意見交換会を実施しました。障害という話題は普段はなかなか人に聞く機会がありません。しかし、今回の目的の「知ること、気づくこと」のために、先生方にはざっくばらんなお話にご協力をいただきました。


いくつか意見を抜粋してご紹介します。質問は参加者から回答は先生方からいただきました。
・ 生徒が木工や園芸の科目を選択しても、やっぱりやってみたらちょっと難しかったということもあるのではないか。
 基本的には途中で科目を変えることはしない。自分が選んだことをやり切ること、やり切る力を身につけて欲しいためである。時間がかかっても彼らができるように学校はサポートをしている。
・ 生徒さんをみていると、いわゆる障害者という風には見えない。どういったところが障害になっているのか。
 一場面だけをみていると普通の高校生と変わりないかもしれない。しかし、一週間一緒にいていただければ、やはり難しいところもあると気づかれると思う。複数の指示の理解や、臨機応変な対応というところは苦手な生徒も多い。
 職場では最初からあれもこれも覚えてもらうという形ではなく、「まずはこれだけやってほしい」から始めて、一つずつできることを増やしていく形が良い。

見学と意見交換を経ての私の所感ですが、人の成長、人の育ちということを考えさせられた1日でした。自分は高校時代に何を学び、何が成長したのだろう。そして今、学校に通う生徒さん、ひいては自社の若手社員に何を学び、どう成長してほしいのだろうというところです。一業務がどうこうという話ではなく、人間としての成長を考えると、いや、そもそも人間としての成長ってなんだろう、何をもって成長と呼ぶのだろうと頭の中でぐるぐると回ります。
そう思うと、私自身がまだまだ多くのことを学ばなければなりません。言葉だけの社員共育にならないよう、一つひとつの言葉の意味を深く問うていきます。

長浜北星高等養護学校のみなさん、先生方、ご参加のみなさん、ありがとうございました。