滋賀県中小企業家同友会

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第2回アジア視察研修会4日目その2「開発途上ゆえに可能性は大きい。でもそんなに甘くはないぞ~!」

新産業委員会 その他活動

○第2回アジア視察研修会4日目その2「開発途上ゆえに可能性は大きい。でもそんなに甘くはないぞ~!」

2013年9月11日(水)、チャーターバスにてホテルを9時に出発。10時のアポイントでカンボジア日本人材開発センターへ向かいました。少し早めの出発で移動時間に余裕があり、プノンペン中心部を車窓見学。カンボジアのフンセン首相のご自宅を拝見しましたが、何とこれが大邸宅。ガイドさんからは「首相官邸ではありませんよ、自宅ですよ」と念を押され、あらためてびっくりです。その首相宅の隣が北朝鮮大使館。両国の関係が何となくうかがい知れます。
2014年の春に竣工の、イオンモールの建設場所(これまた広大な敷地)も見学。ガイドさんは「いろんな買い物が出来るので、期待しています」と言いますが、こんな大型ショッピングセンターが出来ることで、地元の小規模小売店がどうなることやら・・・と。イオンは社会貢献と言うことで、小学校に設備を寄付したり、植樹を行っているそうですが・・・。

カンボジア日本人材開発センター(Canbodia-Japan Cooperation Center 略CJCC)は王立プノンペン大学外国語学部の敷地内に併設されています。「日本とカンボジアをつなぐ人材を育成する」事を目的に、JICAの支援を得て運営されています。こちらでは、ジャパンデスク コンサルタントの大野晴生氏にご案内をしていただきました。
CJCCは9年前(2004年)にJICAのプロジェクトとして以下の事業を行いためにカンボジアに設置されました。
1)カンボジアで日本語を学ぶ人の拠点。10$で週3回の学習コースを設定。
2)ビジネストレーニング。6ヶ月間のアントレプレナー教育を行っています。
3)カンボジアと日本の理解促進を図る。絆フェスティバル、ジャパンフェスティバルを行い、毎回7~8千人が集まっているそうです。
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※写真はCJCC受付の職員さん。何と浴衣姿。
留学に関する情報発信(図書室には日本の図書、大学紹介資料が常設されています)、日系企業を訪問し求人の案内、年数回日系企業が集まるイベントを行っています。
カンボジアでは日本語を学んでも活用する場がありません(企業が進出していない)でした。プノンペン大学の学生は全体で1万人を超え、外国語学部には3,000人が在学。殆どが英語を学び、日本語はわずかに80人。それでも2007年から日系企業の進出が始まり、ここ2年で人気が高まってきたそうです。
カンボジアでは大学進学率は3~4パーセント。恵まれた存在だそうです。

カンボジアの経済は80%が一次産業。製造と言えば縫製ぐらいで、とても世界の工場は目指せませんが、外資の入りやすい工夫はしているそうです。
韓国の人気が高く、これは企業の雇用と、韓国ドラマがテレビ放映されイメージアップに繋がっているとか。日本のドラマは放映権が高くてカンボジアでは流れていないそうです。
でも、イオンの出店を通じて日本人気が高のでは・・とも。
タイ、ベトナムよりも人件費が安く、カンボジアで加工し、タイ、ベトナムへ卸すという流通経路が多いとも。
人口は1,350万人、ミャンマーは5,000万人なので、労働力と市場の面ではミャンマーに及んでいないそうです。

30年前のポルポトによる虐殺で、知識人が殆ど殺され教師が全く足らないそうです。虐殺ではカンボジア人800万人の内300万人とも言われる人が殺された(正しい数字はわからないようですが)のですから、その後の出発は大変なものだったでしょう。
CJCCの事業で、カンボジアの若者と日本がさらに交流を深めることで、地元経済の自立的発展を担う若者が一人でも多く育ってくれることに期待をふくらませました。
有り難うございました。

このあとトンレサップ川沿いまで戻って、クメール料理のタイタニックにて昼食。ここのカレーは最高!との声が思わず飛び出す美味。食べ過ぎ注意です。
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午後は一路プノンペン経済特区へ。特区内に進出する日系企業の先達、タイガーウィング社(TIGER WING Co.,LTD)を訪問し、Dirctorの五影堂 勉(ごえいどうつとむ)さんにご案内をしていただきました。
タイガーウィング社はレディース用の革靴を小ロットでOEM生産しています。本社は神戸市長田。カンボジアへの進出は2008年7月から。それまでに中国へ進出していましたが、2005年頃から人件費の上昇に悩み、カンボジア進出を決定。誰も進出したことがない国で、銀行も融資を渋ったそうです。
カンボジア工場は日本人4人が常駐。本社から月1人生産管理の技術者が来ます。カンボジア人従業員は830人、加えて中国人スタッフが13人です。
なぜ中国人?
この業界は世界市場の60%を台湾人が押さえているそうで、上手く流通させるために、中国人スタッフが必要なのだとか。
靴の皮は90%をタイから仕入れ、底は中国、他に日本、イタリアから材料を仕入れています。
大量生産ではなく、多品種小ロット生産が特徴。1日で10~20種をラインで流していて、これが強み。中国とカンボジアなら、カンボジアの方が生産コストで絶対に有利。日産1,500足(ピーク)。デザインはメーカー仕様。靴1足を作るには100のパーツがあり、これをカンボジア人のワーカーが手作業で仕上げます。大切なことは異物検査。中国の材料にはピンが入っていることがあり、要注意。一足一足を検査機を通し、バーコードを付けて出荷するという徹底管理です。
「カンボジアの人は飽き性なので、小ロットの生産が向いているかも」と笑いながら。
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勤務時間は7時~16時まで。残業があっても4時間で20時まで。
カンボジア工場は2年間赤。全くモノにならない生産。仕上げの技術が無く、専門技術者を引き抜いて1年かけて立て直し、今では黒字です。
「仕上げ技術が必要なことがわかっていましたが、日本人がカンボジア人に上手く教えることが出来ませんでした。カンボジアの技術者から教えてもらって、やっと出来るようになったのです」と。現地の人は現地の人が教育する。ここでも、はじめにコアとなる現地人材の必要性が強調されました。
現在の悩みは・・・賃金の上昇(3年前の基本給 月61$→80$、20~30%のアップ、)高い電気料金、日本よりも多い休日(連休が3日あったら前後も休みになる。5月10月11月は半分休み)。素直な人柄だが、労働意欲はそう高くないと辛口の評価も。
労働コストだけを基準にカンボジアへ進出すると言うことは、あまりおすすめ出来ないと言うことでした。
五影堂さん、本音のお話しを、有り難うございました。
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このあと、プノンペン経済特区を経営する経済特区会社、Phnom Penh SEZ Co.,LTDを訪問し、社長代理の貞谷季規(さだたにとしき)さんからご説明をしていただきました。
経済特区とは工業団地のこと。1994年からフンセン首相を会長にしたカンボジア開発評議会によって、外資の投入をカンボジア経済発展の起爆剤にしようとすすめられますが頓挫。そこで、2005年に制令を出し、全国的に経済特区が作られることとなりました。2011年は日本によるタイとカンボジアへの投資元年となり、経済特区は活況を呈していると言うことです。
経済特区ではワンストップサービスで進出企業をサポート。投資家にとって不利な事が起こると、最後はフンセン首相が解決することになるという組織ですからスゴイ。カンボジアはチャイナプラスワンに続く、ベトナムプラスワンだとも。ここは日系の経済特区ですが。資本の78%は華僑が持ち、22%は日本のデベロッパーが所有しています。東京ドーム77個分のインフラが整備されており、発電施設を独自に設けています。電機は他国よりも高く付きますが、電機不足になることは無いとも。(それでも月1~3分ほど停電はあるそうですが)
河川の水を浄水する設備も下水設備もあります。
入居は日本企業がトップで35社。最近は欧米の引き合いが多いそうです。
特区で働くワーカーは15,000人で、90%が地方から出てきています。
離職率は月10~20%と高い。これは工場で働くことに慣れていないためではないかと推測されます。
午前7時から16時までの勤務で、政府は企業に皆勤手当を付けるように義務付けています。特区内にはレストラン、コンビニ、寮、食堂があり、特区近辺にも民間の寮が出来ています。寮は4人一部屋とかで企業が借り上げ、一部屋当たり月30$程度。
日系企業は労資協調で、ストライキも起こっていません。非日系は簡単に解雇をして、労使問題が起こるケースがしばしばあるともお話しいただきました。
貞谷さん、有り難うございました。
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地方から出てきた人たちにとって、働く場とはイコール生きる場であり、暮らしを守る場でしょう。そういう「場」を働く人にとって働きがいがあり、魅力があり、自己成長出来て自分の未来を確かなものにする「場」へと高めていく努力を重ねませんと、離職率10~20%と言いますから、これは企業にとっても大きな負担となるでしょう。

産業らしい産業が無い国だけに、可能性は大きいと言えます。かといって世界の工場のように外資から選ばれ、工業が発展する条件があるようにも思えません。それは、労働コストだけを見て進出する企業にとっては、既に魅力が薄れているという声に代表されます。また、人口からして市場としても他国に比べて見劣りするカンボジア。この国がそのようなカジを切り、東アジアの中で存在し続けていくのか。とても興味・関心を持ちました。あらためて、カンボジアそのものの持つ地域力、ローカルの中にあるその国らしい文化的な産業に光を当て、そこから世界に発信できるものを生み出すために、私たちが出来ることはないのだろうかという思いが強まりました。
(廣瀬元行@滋賀同友会専務理事)