湖南支部2月例会を開催いたしました。
2019年2月19日、クサツエストピアホテルにおいて、湖南支部2月例会を開催しました。22名が参加しました。
NRIデジタル株式会社 デジタルビジネス企画部長の寺田知太氏から、
「『誰が日本の労働力を支えるのか?』〜会社の存続のために、外国人とデジタルへ向き合う〜」をテーマに、
ワークショップも交えながらご講演いただきました。
1.労働力不足が技術導入を進める
労働者が不足することはわかっているので、それどう埋めるかが問題です。ある大手ゼネコンは、大規模建造物の土台を、現場で型枠を組み立てて作るのではなく、あらかじめ工場で製造した土台の部品を現場で組みあげるプレキャスト工法で実現しました。2000年ごろから技術はあったのですが、広まりませんでした。当時、型枠職人が現場で土台を建造したほうが、安くて良いものができていたからです。その後、東日本大震災後の復興にあたり、型枠職人の人手不足がより深刻になり、人手で実現したほうが「安くて良いもの」ができるという前提が崩れ、プレキャスト工法が注目されました。
2.外国人労働者で労働力不足は解決するのか?
人口予測をもとに、さらに女性や高齢者の労働参加がいまより進む前提をおいたとしても、労働人口が減少してしまうというシミュレーションがされています。その減少分を埋めるための外国人労働者に注目が集まっています。確かに在留外国人の方は増えてはいますが、せいぜい10~20万人増える程度です。では外国人の方にとって日本で働くことが魅力的かというとけしてそうではないです。長時間労働であるとか、俺の背中を見て学べ、という風土で、それは外国人にとっては非常識です。賃金水準をとってみても、日本の賃金水準はけして高いわけではないです。ジャパン・アズ・ナンバーワンといわれた時代を生きてこられた方の考える水準と、外国の方からみた水準とは、食い違いがあります。日本は賃金水準が高く、誰もが働きたい場所だというのは幻想です。
4.近い将来、中国の労働力不足も深刻に
これまでは、中国の内陸から沿岸に働き手が出て、さらに海外へという流れがありました。この流れも10年もすれば、変わってきます。中国自体が人口減少から労働力不足に陥り、労働力を輸入しなければならなくなります。そのような状況の中、海外の人にとって、日本で働くことの魅力は下がる一方です。日本語を学んでも、本国でその経験を生かしたキャリア形成ができるかというと難しいです。まもなく、頭を下げても日本に来てくれない、という厳しい時代がきます。これば皆さま経営者だけの努力の有無ではなく、外部の環境変化から避けられないことになります。
5.人工知能の歴史は古い
人工知能研究の歴史は古く、例えば、人工知能に画像データを入れて、何の画像かを当てさせるテストは昔から行われてきました。70パーセントの正答率で推移していましたが、2015年くらいから、人間の正答率よりも高い正答率を達成するようになりました。その技術を用いて、レントゲン画像の診断などに応用されています。
6.AIによって人間の仕事は減るか?
人工知能のような最新技術により、現在の日本の労働人口の49%が技術的に代替可能になる可能性がある、というシミュレーションを実施した。あくまでも技術的な代替可能性であり、技術的にできたとしてもコストの問題や、規制などにより、実際に代替されるとは限りません。それでは、AIが苦手で、人間が得意な仕事はどういったものでしょうか?非定型な仕事、創造性が求められる仕事、コミュニケーション能力が求められる仕事が、それにあたります。
7.今ある技術を活用していくことが優先
日本では、いまの技術でもできることを、導入していないのが現状です。新しい技術を求めなくても、今ある技術でも効率化できるところは多くあります。しかし、日本の雇用慣習により、効率化しても人だけが残ってしまい、その導入が難しくなっています。まずはこれを乗り越えることに挑戦することをお奨めします。あわせて、人と機械の分業が大事です。例えば、簡単なところは機械で行い、難易度の高い、精度の必要なところは人手でやる、といったような分業です。たとえば、農業で、大まかな刈り入れは機械がやって、細かいところは人手で刈り取る、といった具合です。
8.人に求められること
これからは、デジタルをビジネスに繋げる仕事が重要になってきます。人間の言葉と、デジタルの言葉の両方を理解し話せる仕事です。
たとえば、医者の診療は、コミュニケーションが重要です。症状から、病名や治療法を導くことはAIでもできますが、医者は、診察やコミュニケーションを通じて、テクノロジーだけでは得られない情報を得て、診断するのは人の仕事です。
また、意思決定をすること、責任をとることも人の仕事です。たとえば、新幹線は、ほぼ自動運転で運行していますが、今でも運転手が運転をしています。もし、運行の責任は運転手が取れるようにしているのは、経営判断だとおもいます。
今後、経営者自身がエンジニアになる必要はありませんが、エンジニアを理解する必要があります。そうでないと、何がテクノロジーで実現できて、何が実現できないのか、経営者として判断できないからです。合わせて、テクノロジー導入における費用対効果の判断も求められます。
9.自分自身が学びなおすこと
新しい技術がでてくると、人間はそれに対応し、徐々に当たり前になりながら社会に影響を及ぼしていきます。その影響は、プラスの影響、マイナスの影響いずれもあります。これまで、こういった社会への影響は、人間の世代をまたいで生じてきました。しかし、現在技術革新のスピードが上がり、人の寿命が伸びてきた結果、産業やテクノロジーの寿命は短くなります。スマホですら、どこまでつづくかわかりません。そうなると、20代で就いた仕事で、一生涯食べていけるかと言われると、厳しくなってきました。人生の中で、キャリアチェンジをしていく必要が出てくるのだと思います。
そのためには、自分自身が学びなおすこと、答えのないものに挑戦することが重要になります。例えば、AIついて学びなおすのなら、大学の偉い先生を呼んできて話をきくよりも、若い人に、日ごろどんなデジタルを使っているか聞いてみたり、触ってみることがより大事だと思います。