[自社・自己紹介]
宮川バネ工業株式会社はバネの中でも板バネを専門に製造している会社です。板バネはバネ業界の中でも非常にニッチなバネで、自動車・家電・発電関係の板バネを製造・供給しています。社員数は39名で、宮川バネの特徴はなんといってもホワイトな労働環境です。2017年にはユースエール認定を受けました。
宮川さんは現在44歳、宮川バネ工業㈱の3代目社長になります。宮川さんは35歳で事業継承をしましたが、社長になるまでは働くことがあまり好きではありませんでした。先代の社長であるお父様も、宮川さんがあまり仕事好きではないことを考慮し、会社を売ることに決めていました。しかし、会社売却がまとまる直前になって先方から「宮川さんは本当にこの会社のことが好きなのですね」と言われたことが引っ掛かります。脳裏に浮かんだのは社員と創業者である祖父のことでした。会社のことが嫌だ嫌だと思いながらも心の底では宮川バネという会社が好きだったことに気が付きます。半年間悩みに悩んで、売却を取りやめて自分が継ぐことを決断します。自分で決めて行動することで、あんなに嫌だった仕事もいつしか苦しくなくなっていました。
[中小企業の経営戦略を就活に活かす]
宮川さんの考える“良い会社の条件”とは、
①事業に独自性があること。
②やるべきことを実現するために経営計画が練られ、教育や設備投資が行われていること。
③やるべきことに対して社員が主体的に行動を起こしていること。
の3つです。
この3つの条件を達成するために、経営者のすべきことは大きく2つ。1つは経営指針を作成して、社員に会社の方向性を示すこと。2つに経営者が自社の強みと弱みを把握することです。
宮川さんが会社を継いだ当時、売上が下がっている真っ只中で、社内の組織体制も複雑な状態でした。会社を立て直していこうと、宮川バネ工業㈱をSWOT分析すると、弱みは板バネ製造が斜陽産業であることと人材不足と技術力が年々落ちていることで、対して強みは板バネ業界に新規参入が少ないことと板バネ製造の設備が揃っていることのみでした。これは客観的に見て、かなり厳しい状況でした。
宮川さんはとにかく弱みである人材不足を解消するために、新卒採用と社内環境の整備に取り掛かりました。社員たちのことをもっとよく知るために、全社員と1対1の個人面談を行いました。社員たちの多くは会社に対する不満を持っていて、宮川さんはこれを苦しみながら1つ1つ受け止めていきました。面談を続けるうちに、社長の立場からは気づくことができない会社の良さに気づくことができました。宮川バネの良さとして、社員たちが口をそろえて挙げたのは労働環境の良さでした。これをSWOT分析に当てはめると自社の強みに労働環境の良さが加わりました。面談で社員たちに向き合っていくごとに社内の雰囲気も次第に良くなっていきました。
社内に良い変化が見えだした頃、大手のお客様が省人化・無人化を進めるということで仕事と機材をまとめて渡してくれるような引き合いが増えてきました。つまり人手さえあれば、独自性と利益の両立した仕事ができるということでした。このことから宮川バネ工業㈱の経営戦略は「社員満足度を高めて採用と共育に力を入れる」に決まりました。宮川さんは「労働人口がどんどん減っていることで、“人を大切にする”が経営戦略として成り立つ時代が来ているのです」と中小企業のこれからについてまとめました。
宮川さんは社員満足度について、賃金・労働条件・成長ができること・仕事に誇りを持てること・良い仲間の5つから成ると考えています。これらの5つの要素に気を付けながら、社内改革に取り組んだ結果、社員満足度アンケートは78%の社員が「この会社で働けて良かった」と回答するまでに至りました。
[中小企業の社会貢献]
宮川さんの考える中小企業の地域貢献とは大きく2つあります。1つは優良な雇用を地域に供給し、地域を支える人材が長くその土地に根付き、成長する機会を支えることです。大企業と違い中小企業のおおくはその土地に根を下ろして活動しています。よい会社づくりに取り組み、地域に若者を残すことが中小企業の社会貢献ということです。
もう1つは障がい者雇用です。企業には障がい者の雇用義務がありますが、多くの会社はこれをクリアしていません。大企業の多くは特例子会社をつくり、雇用義務をクリアしていますが、どうしても社会から隔離されてしまいます。年々障がい者が増加していく社会のなかで、社会から障がい者を隔離することなく、活き活き働くことができる環境を創りだすことが地域の中小企業に求められていると宮川さんは語ります。現在宮川バネでは障がいを持っている従業員が3人働いています。誰もが明るくいきいき働くことが出来る会社を目指して宮川バネの取り組みは続いています。