(一社)滋賀県中小企業家同友会と立命館大学経済学部との連携協定に基づいてスタートした同学部2回生対象の「キャリアデザイン講義」(担当:共育・求人委員会)第10講が12月5日(木)16:20~17:20まで立命館大学 びわこ草津キャンパス(BKC)で開催され、有限会社 天平フーズ 代表取締役社長 池田昌弘さんが「地方創生のために食品業ができること」をテーマにご講義いただきました。
【(有)天平フーズについて】
(有)天平フーズは昭和32年安曇川町、現在の高島市で中華料理「天平(てんぺい)」として創業。長らく地域に愛されたラーメン屋さんでしたが、最盛期にお店を閉め昭和57年に(有)天平フーズを設立しました。デパートの催事で中華惣菜の実演販売を行ってきました。ところが、法規制の影響で火気の取り扱いが難しくなり、事業転換をするために韓流ブームに乗って、キムチの製造販売を始めました。また、冷凍食品・菓子・天津甘栗の製造・卸売、飲食店経営など、幅広く事業を展開。今や年間売上約100億円の地域を代表する会社まで成長しました。その他、ふるさと納税の返礼品を中心にEC販売(通販)の運営も行っています。現在は天平グループとして事業を多角化して、天平キムチやiroHa(イロハ)大福のほか5つの自社ブランドがあります。
【池田さんと事業承継について】
池田さんは大学卒業後、外食・レジャー・ホテル事業を展開するバルニバービに入社。4年間カフェレストランでホール業務を経て最終的にマネージャーを経験しました。その後、2011年に(有)天平フーズに入社、2021年に代表取締役社長に就任し、三代目として事業を承継しました。
【地方創生~高島市消滅を回避するには~】
地方創生は、『地域の持つ独自の資源や特色を活かし、人口減少や地域経済の衰退に対応するための国や自治体の施策』ということです。天平フーズがある高島市は国から将来、消滅の可能性がある自治体に指定されました。池田さんは生まれ育った、高島市の人口が現在の4万7000人から2050年には半減する可能性に危機感を感じています。しかし、「人口予測データは過去の蓄積であり、今、対策を行なえば未来を変えることができる」と前向きに捉えています。
池田さんは「人口減少と人口流失による地域経済の縮小を抑えるためには、企業や学校、大型施設を誘致して、それに関連した仕事を行う“関係人口”増やす必要がある。しかし誘致活動は地方公共団体の裁量で行われるため、一企業ができることは限りがある」と述べられ、食品業を営む自社が地元・高島市にどのような貢献ができるのかを考えました。高島市は豊かな自然に恵まれ、観光資源が豊富です。近年は観光客数が着実に増加していて、令和4年度は日帰りが320万人から485万人、宿泊者は33万人から65万人に増加しました。
近年は外国人観光客を中心に、旅先での食事を観光の目的とする“ガストロノミー ツーリズム”(Gastronomy tourism)がトレンドになっています。池田さんは、『食事×観光』の需要に応えることが高島発展のカギと予測します。しかし、高島市内の飲食・サービス業は夜の営業時間が短いなどで、その需要にまだまだ対応できていないと池田さんは感じています。(有)天平フーズは食品で地域の観光開発に貢献するために、高島市内の道の駅指定運営業者に名乗りを挙げ、食品などの物販に力をいれたいとしています。そのほかに、地ビール販売や古民家カフェギャラリーを運営する予定です。
【学生に向けて】
池田さんは淡路島が観光開発で有名になったことから、次は高島が皆に知られる観光地になると考えています。それを達成するための試みには、成功だけではなく失敗もあり、まさしく七転び八起きです。
しかし、転ぶのなら「毎回失敗から何かをつかまなければならない」チャレンジ精神をもつのなら、「行動できるひとにチャンスがある」「いやなことをいやと思わないことが大切です」と学生らに伝えました。最後に池田さんは(有)天平フーズは「東のたねや、西の天平をめざす!」と目標を語られました。