滋賀県中小企業家同友会と立命館大学経済学部との協力協定に基づいてスタートした同学部2回生対象の「キャリアデザイン講義」(担当:共育・求人委員会)第5講が5月12日(土)16:20~17:50、立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開かれました。
今回は、滋賀県中小企業家同友会・北近江支部長の青栁孝幸さんより、
『彦根をエンジニアの街へ~小さな企業だからこそ取組める世界戦略~』
をテーマに講義をしていただきましたので、ご報告します。
◇会社事業について◇
冒頭、(株)PRO-SEEDのPRムービーを上映されました。全編、英語のナレーションで、日本のみならず国際的に事業を展開されていること、顧客のために全社一丸となって取り組んでいる様子が描かれ、「カッコイイ」ムービーでした!
(株)PRO-SEEDは、主に産業用自動化設備の電気設計(システム、ソフトなどの設計)をされています。
たとえば、お菓子製造工業では、多くの機械が稼働しています。菓子製造機械、ベルトコンベア、冷凍装置、梱包装置など多様な機械が必要で、それぞれの機械には、それら「機械」の製造を専門とする会社があります。
しかし、それらの機械を並べただけではお菓子は出来上がりません。それらの機械を最終目的に向けて連携させ、円滑かつ効率的に作動させるためには、プログラミングが重要です。そのために、プログラマーやシステムエンジニアの存在は欠かせません。
(株)PRO-SEEDでは、そのような生産工場などの設備のプログラミング、システム構築に取り組んでおられます。
◇日本経済の展望について◇
「日本のメーカーがなぜテレビ製造から撤退したのか」をテーマに日本経済の将来について、語られました。
現在、テレビの部品さえあれば、それらを組み合わせてだれでもテレビの製造ができてしまうため、日本メーカーは人件費の点で優位に立つ韓国、中国に負けてしまいました。
日本の主要産業である自動車製造業においても、電気自動車(EV)の登場により、危機にさらされています。EVは部品さえ揃えば、自動車メーカー以外でも製造ができてしまいます。実際、グーグル、アマゾン、ダイソンなどの企業が参入しています。部品数もエンジン自動車より半分程度であり、エンジンのようにメーカー独自の技術もそれほど必要されないことから、これまでエンジン部品を作ってきた中小製造業者に大きなダメージを与えることが考えられます。
そのため、現状がどうかだけをみるのではなく、10年後、20年後を見通さなければならないと力説されました。
◇プログラマーに求められる資質◇
① 国語力(文章力)
物事を伝える能力が大事だと青栁さんはおっしゃいます。プログラムは、「プログラム言語」という、私たちが普段使う言葉とは違う言語を用いて動かしますが、コンピューターと「会話」するためには国語力が大切です。
ではどうすれば国語力をつけることができるかというと、「本を読むこと」が大切とのことです。青栁さんの日々の業務でも、本を読んでいる社員とそうでない社員とでは、たとえばメールの文章を見ただけでわかるとおっしゃいます。
② 想像力が大事(特にSEにとっては重要)
「プログラミング事故」の多くは、機械的な不具合が生じたというよりも、プログラマーが想定していなかった事態に生じがちだとおっしゃいます。
青栁さんがご自身の体験を紹介してくださいました。青栁さんが高校生の時、コーラかオレンジジュースか迷ったので、ボタンを二つ押してみて出てきたものを飲もうとしたところ、ジュースが両方とも出てきた。そこで友人を呼んできて試にボタンを4つ押してみたところやはり4本出てきた。これは、プログラマーが、ボタンは一つだけ押されるものだとの前提でプログラムを組んでしまったことが原因とのことです。
プログラマー、SEは、どこまで生じうる状況、可能性を想像できるかが重要なのだ、とおっしゃいました。
◇(株)PRO-SEEDのグローバル戦略◇
(株)PRO-SEEDのグローバル戦略は、「グローカル戦略」だとおっしゃいました。それはすなわち、地元の人を採用し世界に向けて発信することです。
(株)PRO-SEEDは、2010年に生産設備分野において世界トップシェアである
ドイツのシーメンス社と提携し、2017年には「シーメンス・セールス・アワード」を受賞されています。
シーメンス社は世界190か国に展開し、年に11兆円の売り上げがある会社で、産業用自動化設備分野において世界でおよそ40パーセントのシェアを占めています。しかし、日本でのシェアは3パーセントほどしかありません。
しかし、だからこそシーメンス社のパートナーとなることができ、世界に展開できる事業にまでなったとおっしゃいました。
◇(株)PRO‐SEEDの今後の取り組み◇
2018年10月~11月に新社屋が完成し、社屋の一角を用いて小中学生を対象としたロボット教室、プログラミング教室を行います。
青栁さんは、将来、IT事業の拡大に比してプログラマーの数が絶対的に不足するとおっしゃいます。そのため、学校教育において2020年にプログラミングの授業が始まることをにあわせ、地元の子どもたちにプログラミングを知ってもらいたい、そしてぜひプログラマーになってもらい、彦根をプログラマーの街にしたい、と熱く語られました。
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講義後、多くの学生が青栁さんのもとに集まり、次々と質問が出され、40分ほど学生と語ったとのことです。
穏やかな語り口ながらも、自身がかかわってらっしゃる事業への熱意が伝わりました。また、現状だけでなく、10年後・20年後の将来を見すえた企業経営が大事なのだということ、論理的に物事を考え、表現することの大切さを教えていただきました。
青栁さん、ありがとうございました!