滋賀県中小企業家同友会

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2018年度 立命館大学経済学部キャリアデザイン講義第9講 ㈱清原 代表取締役 清原大晶さんが講演!

共育・求人委員会 その他活動

滋賀県中小企業家同友会と立命館大学経済学部との協力協定に基づいてスタートした同学部2回生対象の「キャリアデザイン講義」(担当:共育・求人委員会)第9講が6月7日(木)16:20~17:50まで立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催され、滋賀県中小企業家同友会の㈱清原 代表取締役 清原大晶さんより「『ふくさ屋』のこれから」をテーマに概要以下の通り講義をしていただきました。

㈱清原は、1968年に祖父の三郎さんが創業され、冠婚葬祭時に金品をお渡しする際に用いる「ふくさ」を中心とした各種繊維和雑貨の企画・製造・販売をしている会社です。

「ふくさ」の語源は「ふくさめる」という言葉が由来で「ふんわりと優しく包む」という意味があります。新鮮なものや気が満ちているものを贈る際、ホコリをよけるためだけではなく「気」を保つために掛けられた「掛けふくさ」が発祥といわれ、その掛けふくさが時代や暮らしの変化に寄り添い、現代の「ふくさ」が生まれました。
「ふくさ」は日本人のやさしさ、思いやり、きめ細やかな心づかいから生まれた美しい日本文化のカタチです。
「ふくさ」は主役にはならないが、それを持つ人のステータスを際立たせるものです。

清原さんは、1976年に守山市で長男として生まれました。家のことは考えなくていいから、とにかく色んな経験を積みなさいという父の方針から、将来、跡を継ぎなさいというようなことは一切言われませんでした。
1999年、超氷河期時代といわれた厳しい就職活動を経て、大手繊維会社に入社。帰省した時に父から「中小企業には夢がある」と言われ、2003年に退社し、家業を継ぐため㈱清原に入社。跡取りだからと入社してすぐに役員なった訳ではなく、色んなことをゼロから学び、常務取締役、専務取締役を経て、2013年に代表取締役に就任。その後、毎日の日課として一番に出社し、社員を迎え入れるということを続けており、裁断や出荷は今も率先してやっているとのこと。

去年の5月からは、新たな会社の制度として、商品開発に関する社内公募制を始めました。毎月テーマに基づいて、みんなで試作品を持ち寄り、お茶でも飲みながら一時間ぐらい意見を出し合っています。女性ならではの視点で、新しいふくさとして実際に商品化し販売しています。今年の秋にも、女性のアイデアから生まれた商品、抗菌作用のある生地を使ったマスクポーチを販売する予定です。

中小企業は地元に愛される企業でなければならないと思っています。守山市は、人口が増えていて、お店を出す人も増えています。そこで、ここ2~3年で企業した人との交流会を開催し、企業家精神を伝えるなど、地元の「人」とのつながりを大切にしています。そこから新しいものが生まれるということもあります。

今は、ミシンが出来る若い人が少ないですが、ふくさは縫製が命なので、職人や内職を積極的に養成しています。
モノづくりの力を高めたことで、ふくさの縫製技術が、地元の地域産業資源に認定されました。地域産業資源とは、滋賀県知事が国の定める基本方針に基づき、県の地域産業資源を用いて行われる地域産業資源活用事業を促進することにより、地域経済の活性化が図られると見込まれるものを指定するものです。
認定されると、試作品開発や販路開拓に対する補助など国の総合的な支援が受けられます。

他にも「守山のばら」が守山市の地域産業資源として、認定されています。守山市は災害も少なく気候も安定していることから農作物が有名で薔薇の産地でもあります。世界でたった一つの「和ばら」という品種を作っている会社があり、その和ばらを使い草木染めが出来ないかと考え、農家の方と話合い「和ばら染め」を商品化しました。香りも良かったので、パッケージにばらの香りカードを入れて販売しています。

このように、これからも事業を通じて地域に貢献していきたいと考えています。

琵琶湖がある滋賀は、昔から繊維の産業が盛んで、天然繊維(綿・絹・麻)の3つが揃っているのは全国で滋賀だけで、非常に素材の豊富な県です。
2012年に立ち上げたオリジナルブランドの和奏は、高級感があるものにしたいと考え、滋賀県の生地を使い商品、企画をすすめています。
商品の依頼は一つからでも受け、自社生産で品質にこだわり、一つひとつこころを込めて丁寧につくっています。それは、縫製職人や内職を大事にするためでもあります。

また、ふくさを新しい販路として、もっと伸ばしていきたいと考え、色んなところと連携して販路を広げています。最近では、和紙の産地の岐阜県美濃市で祝儀袋を作っておられる会社からお声掛けいただき、限定の開発をすすめています。7月上旬に、展示会にも出されるそうです。

ふくさは頻繁に買い換える商品ではないので、新しいものを生み出していかなければ会社として継続していくことは困難です。そのため、国内で文化を広げていくことはもちろん、海外にも広めていく必要があると考えています。しかし、海外にはお金を包むという文化はありません。日本の文化をそのまま海外に持っていっても、物珍しさで最初は売れるかもしれませんが継続は難しいでしょう。これからは、海外の文化に適応したふくさの新たな可能性を探し、地元の産地を生かしつつ、日本から海外へ展開していきたいとお話いただきました。

きめ細やかな心遣いから生まれた、美しい日本の文化のカタチを知ることができました。清原さんありがとうございました。