滋賀県中小企業家同友会と立命館大学経済学部との協力協定に基づいてスタートした同学部2回生対象の「キャリアデザイン講義」(担当:共育・求人委員会) 第11講が12月6日(木)16:20~17:50まで立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催され、㈱ローカライズ 代表取締役 河村 剛さん(滋賀県中小企業家同友会 大津支部所属)より「堅田3丁目から地球の裏までわが社の領域~創業4年目、現役ヒッチハイカー社長が創る付加価値とは~」をテーマに概要以下の通り講義をしていただきました。
河村さんは、大津市出身で比叡山高校卒業後、千葉県にある日本自動車大学校で学びながら、成田空港でレストランのウェイターのバイトをされていました。お客さんは外国人が多く、英語を勉強するきっかけになったそうです。
大学卒業後、23歳の頃にワーキングホリデーでニュージーランドへ行かれます。
滞在2ヶ月目の時、日本に電話したいと電話ボックスに入ったのですが、繋がらなかったので、しばらく経ってから電話しようと財布を置いたまま電話ボックスを離れてしまい、10分後に戻ってきた時には、財布は盗まれ全財産をなくすという事態に陥ります。
しかし、この出来事が河村さんの人生を大きく変えます。お金がないので、牧場の住み込みで働くことになったのですが、牧場まで行くお金はありません。仕方なくヒッチハイクをすることとなり、それが今のヒッチハイク好きに繋がります。
帰国後、自動車の査定・買取・販売をする会社に入社。そこで4年間働き、父の経営する自動車整備工場に就職し社長に就任。しかし経営方針の違いから父と対立し、社長でありながら解雇されてしまいます。突如創業することになり、今の㈱ローカライズがあります。当初は軽トラ1台、マクドナルドがオフィスという環境の中で仕事を行わなければなりませんでした。
創業から3ヶ月後、守山市にあるボロ倉庫を借りられます。
トイレは近くのお店に行き、インターネットは向かいの会社の無料Wi-Fi。夏はエアコンがないので40度を越える暑さ、冬は凍えるような寒さの中で経営をしていたそう。
その後、ボロ倉庫の時から車を買ってくれていたお客様や銀行の協力もあり、大津市の堅田で、中古車買取専門店のユーポスをフランチャイズ開業されます。
通常、買取専門店というのは、オークションの販売する車が90%を占めます。ほとんど市場に出して売ってしまうのです。
“ボートオークション”という中古車最大の流通オークションサイトがあり、世界中の人が日本の中古車を入札できるものです。車1台、約10秒で取引され、1日に4万、5万台が販売されます。
元々、河村さんは、このオークションに車を供給するだけでしたが、「オークションを介さず直接お客様とやり取りして仕事がしたい」「中古車でも地産地消できないか?」とオークションに供給しないでダイレクトにお客様同士を繋ぐという事業をはじめられました。
70代のご夫婦の話で、昭和63年式のマツダのルーチェという車を売りに来られました。そのルーチェはご主人が定年退職する時に自分へのご褒美に購入された車で、雨の日は絶対に乗らず、毎日手入れをして大事に乗られてきた車でした。本来、買取で査定をすると0円、スクラップして鉄くずになるものですが、ここまで大事に乗られてきた思い出のぎっしり詰まった車です。河村さんは「何とかこの車を欲しい人を見つけるからちょっと待って」とお願いし、半年かけて、とても良い値段で買い取って頂ける人と出逢いました。その人は「日本中探してもこんな良い車はない、ここまで愛着を持って丁寧に乗られた車はない。80万で買ったけど安いぐらいです。」と言われたそうです。
オークションは便利です。どんな場所でも一瞬で取引ができ、手間も時間もかかりません。しかし、オークションでは年式や走行距離で価値をつけるので、このルーチェのように、愛情を持って、大切にされてきたものに価値をつけることは出来ません。河村さんは、必ず自動車を売りに来られる方は、どんな人でどんな想いで乗って来られたかを聞き出し、そこに価値をつけ、次に買う人に引継ぐことを大事にされております。これが付加価値です。単に物を右から左へ流すのではなく、その物に対していかに価値を見出せるかが重要なのです。
付加価値とは損得抜きで人のために能力をアウトプットすること、人と繋がる(コミットする)事で相手も自分も良くなっていくことです。
ルーチェを渡す前日、車を見に来られたご夫婦は涙を流しながら喜ばれました。
スクラップになると思っていた車が、自分たちの想いを引き継いで大切乗ってくれる人に渡ったことが嬉しかったのです。
こんなことは大企業には出来ません。ここまで一人の人に寄り添って経営をすることは出来ないのです。中小企業はこういったことが出来るのです。ここが中小企業の面白いところでもあります。
中小企業の役割とは①地域になくてはならないインフラ②安心して暮らせ夢が持てる地域の作り手③人と人、地域と地域を結ぶ懸け橋だと仰います。
河村さんが経営をしていて一番嬉しいときは、近所の方が野菜を届けてくれる瞬間です。売り上げが上がるより野菜を貰う方が嬉しいと仰います。それは、河村さんが地域との関わりを大切にしているからです。地域に根付いた中小企業だからできることです。
また、河村さんは北大津養護学校に講師として“仕事とは何か”を伝える活動をされておられます。仕事とは、自分に出来ること(役割)を一生懸命し人に喜んで貰うことだと伝えているそうです。この活動の中で小学校から足が悪くなり、車イスで生活をしている生徒が職場体験に来られました。その生徒は、先生の車を洗車し「ありがとう」と喜んでもらえたことで人に喜んで貰える喜びを知り、未来を語るようになったそうです。後日、両親が河村さんに泣きながらお礼を言いに来られたそうです。
このように子供達に夢を与える活動ができるのも中小企業の魅力の一つです。
また、仕事でミャンマーに行かれた河村さんは、すごく貧困な地域に住む、耳が聞こえない20歳の女の子と出逢います。夢は学校の先生と言う彼女、河村さんは放っとけず、今度行く時に補聴器を持ってくると約束し帰国します。そして、もう一度彼女に会いに行き、補聴器をプレゼントしました。耳が聞こえないので働く事は無理だと諦めかけていた彼女は、現在、仕事を見つけ働いています。
仕事は手段です。目的は自分の周りをHAPPYにする事です。自分の為だけに仕事をすると続きません。それは楽しくないからです。人の役に立っているという充実感がないからです。その充実感というのは、自分の周りをHAPPYにすることで感じられます。
人が幸せを感じるのは「人に愛される」「人に褒められる」「人の役に立つ」「人にあてにされる」この4つです。これを幸せの法則と呼びます。
“勇気を持って自分を捨てる→新しい自分に出会う→更にあてにされる”
幸せになれる人は仕事もプライベートも全力で取り組めている人です。
最後に、仕事は手段で、目的ではありません。皆さんには仕事とは何の為にするものなのか?を考えて就職活動に取り組んでいただきたいと思います。と感動的な講義をしていただきました。河村さんありがとうございました。