滋賀県中小企業家同友会

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10月30日 立命館大学「キャリアデザイン」講義第1講で宮川バネ工業(株)代表取締役 宮川草平さんが講義をいたしました。

共育・求人委員会 委員会レポート

2025年10月30日(木)16:40~18:00まで、立命館大学びわこ草津キャンパスで、同学部2回生を対象にした「キャリアデザイン講義」の第1講が開催されました。この講義では、宮川バネ工業株式会社の代表取締役 宮川草平さんから「わが社の経営戦略は『人を大切にする経営』」をテーマにご講義いただきました。

宮川バネ工業㈱(滋賀県東近江市園町)は、パナソニックや日本発条などの大手企業と取引がある板バネメーカーです。会社としてホワイトな労働環境づくりに力を入れており、有給休暇取得を会社全体に呼びかけ、年間休日120日、月平均残業時間も2時間以下で、昨年度は社員満足度も80%を達成しました。

宮川さんが宮川バネに入社した直後は、リーマンショック後の売上不振にベテラン退職も重なり、会社として多くの課題を抱えている状況でした。当時は営業職として外に出る機会が多かった宮川さんは、会社を良くするヒントを求めて、他社の見学会や勉強会に意欲的に参加していきました。様々な会社を訪問するうち、良い会社には三つの共通点があることに気が付きます。

①会社・事業に独自性があること
②独自性をもとに会社として「何をするか」が明確に社員に示されていること
③それらを元に日々社員が主体となって事業をボトムアップで運営・改善していること

良い会社の共通点は分かったものの、事業承継をした直後のSWOT分析では自社の強みが見つからず、経営戦略は定まらないままでした。

経営戦略のヒントは「離職だけでも止めなくては」と実施した全社員面談にありました。 面談では社員から長年の不満があがる一方で、働きやすい労働環境が整っているという意見は多くの社員の間で一致していました。面談で見えてきた不満である社員共育に力を入れると社員の離職は止まり、だんだんと人手に余裕が出てきました。丁度その頃に大手メーカーでは、省人化・無人化を進める動きがあり、「人手が掛かる小ロットの仕事」の引き合いが多くなってきました。人手に余裕がある宮川バネはこれらの仕事を機械ごと引き受けることで、受注量も少しずつ増えていきました。

社員と向き合うところから始まった、宮川バネの新たな経営戦略は「働きやすく・社員が育ち、定着する会社をつくること」です。年間休日を112日から120日に引き上げ、残業を段階的に減らし、個人面談は定期的に実施していきました。会社の方針も管理職を交えて話し合い、経営指針書に社員を巻き込むことで全員参加型経営へと切り替えていきました。

良い会社を目指す過程で、障がい者雇用にも積極的に取り組み、現在では4名定着しています。2022年度にはもにす認定も取得でき、県からも高い評価を得るまでになりました。

宮川さんはこれまでの会社経営を通じて、「仕事は人が活躍できる場所を与えてくれる。地域の人にとって宮川バネもそうありたい」と語られ、人を大切にする経営への思いをまとめられました。

講義の後半では宮川バネの社員様にもご登壇いただき、現場で働く社員からの体験談もお話しいただけました。学生からも「仕事でどんな時にやりがいを感じますか?」などの質問が上がり、キャリアについて学びを深める講義となりました。