滋賀県中小企業家同友会と立命館大学経済学部との協力協定に基づいて大津市、草津市とも連携してスタートした同学部1回生対象の「キャリアデザイン」講義第7講が11月9日(水)16:20~17:50まで立命館大学びわこ・くさつキャンパスで開催され、滋賀県中小企業家同友会会員の㈱シンコーメタリコン 代表取締役 立石 豊さんより「人を大切にする経営」をテーマに講演していただきました。
立石さんは、1983年に大阪芸術大学映像計画学科を卒業、1985年に㈱シンコーメタリコンに入社され1994年に代表取締役社長に就任されます。
㈱シンコーメタリコンは、日本で最初に溶射を始めた会社です。溶射とは、金属やセラミック(溶射材)などをさまざまな熱源により加熱し、溶融またはそれに近い状態にした粒子を物体(基材)表面に吹き付けて皮膜を形成する表面改質技術です。基材を錆や摩耗、熱などから守ります。
そんな溶射の作業はとても過酷です。夏は暑く冬は寒い、そして埃まみれの環境の中での作業です。しかし、㈱シンコーメタリコンの社員さんで泣き言を言う人はいません。それどころか、86%の社員が「この会社で働けてよかった」と回答しています。(2014年度滋賀でいちばん大切にしたい会社アンケート)世界最大手の某企業の社員満足度77.2%、日本企業はわずか7%といわれている中、86%という数値は大変高い値だといえます。
「会社は家族」と全力で社員と向き合ってきた立石さん。今までで一番嬉しかった受賞は「滋賀でいちばん大切にしたい会社(滋賀いち)」に認定されたことだそうです。社員を思う会社の取り組みが滋賀いち認定という素晴らしい結果をもたらしました。
どんな取り組みをされているかというと、まず社員旅行は毎年海外に行き、76名の社員一人ひとりにお小遣い10万円を支給。この社員旅行は全員参加が義務で欠席するとクビ!(今までにクビになった人はいません。)
そして、社員の結婚記念日にホテルのお食事券&社長直筆のメッセージカードを渡すそうです。お小遣いがゼロの社員(恐妻家)の奥様に「お小遣いをあげて!」というメッセージを送ったこともあるそうです。
さらに、社員の誕生日には、立石さんとの2ショット写真と直筆のメッセージ入りのハガキをご両親に送付。
そして、なんといっても各種手当が豊富です!夏・冬の賞与以外に決算賞与があります。儲かっても内部保留にまわすのではなく、社員皆で山分けするそうです(株)五常さん顧問の税理士さんからは怒られているそうです)。資格手当10万円、誕生日手当10万円、スーツ手当5万円もあります。これらは、すべて現金支給です。
年2回20分の全社員個人面談があります。自己評価制度を取り入れ、立石さん自らが面談されています。この面談ではプライベートなことも話されるそうです。
40歳になっても結婚しない社員にデートプランから結婚までプロデュース、子供の頃の夢はプロレスラーだったという話を聞けば、本物のリングを調達し、シンコープロレスを開催。さらに社内結婚されたカップルには手作りの結婚式。立石さん自らが神父になるそうです。このようなイベントの動画を見させてもらいましたが、全て全力本気で取り組まれていました。
「恋するフォーチュンクッキーシンコーメタリコンVer.」というYouTubeにアップされている会社紹介(全社員参加)の動画も見させていただきました。そこに映っている社員の方々の表情は皆笑顔でイキイキとしています。社内のアットホームな雰囲気が伝わってきます。
そして、育児休暇中の社員の方には、月一で“子育て面談”をしているそうです。月に一度会社に来ることで、職場復帰をする時に不安にならないようにと、戻ってきやすい雰囲気を作っておられます。
さらに、来期からは、「イクメンファイブ」という制度を導入予定だそうです。それは、子供が生まれたら5日間の連続休暇を取得しママを助けようという制度です。
このような様々な取り組みを通じて、社員のモチベーションが上がっているそうです。そうすることで社内の一体感が高まり、助け合いが行われ、生産性がアップし、利益も上がります。利益が上がれば社員に還元され、社員のモチベーションは更に上がるという良い循環が生まれています。
利益を社員の喜びのために見事に活用されている、素晴らしい実践だと思います。
ユニークな取り組みをユニークな動画で説明していただき、とても楽しく学ばせていただきました。立石さんありがとうございました。
滋賀県中小企業家同友会
事務局員 中村 香澄