2016年6月22日、大津支部6月例会がピアザ淡海 大会議室にて「中小企業の元気が豊かな大津を築く~大津市中小企業振興計画から自社と地域の未来をさぐる~」というテーマで、基調講演・大津市中小企業振興計画の解説・パネルディスカッションの三部構成で参加者77名の中開催されました。
大津市・大津商工会議所・大津北商工会・瀬田商工会の後援をいただき、開会セレモニーでは、大津市産業観光部部長の山田崇氏より、ご挨拶を賜りました。
基調講演は、大津市中小企業振興懇談会の委員長を担当して下さっていた立命館大学経営学部教授の肥塚浩氏に「大津市中小企業振興計画の意義と期待」のタイトルでお話しいただきました。
「自分の将来がイメージできない程の速さ」で高齢化が進んでいる日本で、ついに大津市も人口減少が始まろうとしています。その中で、中小企業に課せられた使命は、まちの機能を維持させ、そして活性化させること。人口減少下で、「地域の安全・安心を支える基盤的な生活サービスを確保」させ、「持続可能な地域経済圏の再構築」を行うことが重要である。
そんな中、大津市は恵まれた交通環境を生かした製造業と、多様な商業・サービス業が集積しており、若い事業所が多かったり、大学・研究機関も多数立地していることから、産学連携の中心であったりと、その中小企業に課せられた使命を遂行する町としては比較的恵まれた環境ではあると言える。しかし、その恵まれた分、大都市圏に近く必要な資源が不足していることが無いことから、将来予測されるリスク(人口減少で成長機会が乏しくなる・京都大阪に消費者が流出し販売競争が激化するなど)に対して危機感が薄いと感じる。と肥塚氏は話されました。
そして肥塚氏は、大津市中小企業振興に関する円卓会議を行い、今回の例会のようなシンポジウムやフォーラム等による情報共有と情報発信、そして将来は「地域ビジネス支援センター」設置し、地域中小企業の経営力量を向上させることが重要と主張されておりました。
引き続いて、大津市産業観光部商工労働政策課主幹の富田直氏より、「大津市中小企業振興計画」の説明をして頂きました。
この計画は、平成28年4月から5か年の間に「中小企業が築く産業創造都市おおつ~魅力と活力を創造・伝承し、次の時代を担う人材が活躍するまち~」という将来像を実現するために取り組むべき内容をまとめた計画とのことで、基本理念としては、地域を支える人材を育む「ひとづくり」と経営者が活躍できる環境を整える「まちづくり」の両輪を目指しているとのことです。
具体的には、自ら考え行動する「経営者」の育成、小さくても魅力ある事業者が活躍できる環境整備、中小企業の創業・転入につながる施策・事業の展開、中小企業の競争力を高める戦略的施策の推進、地域経済活性化と都市格向上のための中小企業振興施策の推進を基本方針とし、それぞれの推進のために、円卓会議を設置し、将来的には「地域ビジネス支援センター」を設置するとのことです。
最後は、肥塚氏をコーディネーターに、大津市から富田氏、同友会から坂田前代表理事、大津商工会議所より琵琶湖汽船㈱の川戸良幸氏、大津北商工会より㈱リニアティの山口雅史氏、瀬田商工会より㈱古川与助商店の河村朱美氏の5名で、パネルディスカッションを行っていただきました。
地域経済、また自社を取り巻く環境として、講演で肥塚氏が指摘された問題以外にも、それぞれの事業においての問題点が出されました。観光業では、住民と観光客を結び付けるのが難しいため、地域活性になりにくい、製造業では、海外シフトによる産業の空洞化や後継者問題、建設業では、ハウスメーカー中心の世界で、地域でお金が回っていないことや、青年部からは、京都に近く細長い大津市での事業展開などについての悩み等・・。
また、それぞれの悩みに対する対策も披露していただきました。観光業では、地酒ブームを利用して地産地消の取り組み、製造業では、自社の出来ることを発展させた新製品の開発、青年部は、地域で活躍する同世代(30~40代男性)をターゲットとした無料小冊子の制作・配布等など、様々な対策が報告され、非常に学びの多いディスカッションとなりました。
最後にまとめとして、地域が元気になるためにはどうすれば良いか?についての議論が交わされ。
生産・流通・消費のバランスを常に考える(どれかが突出してもいけない)こと。地域の中で、雇用を生み出すため、フルタイムで働かない採用方法を考えること。「お客さん」に元気になっていただくことを常に考える。競争だけでなく、共存できる同業者を作り、情報交換すること。補助金を利用することや、とにかく勉強するなどなど。様々な意見が出されました。
そして、大津市の富田氏からは、「仕事に自信はあるが、展開のさせ方がわからない」中小企業経営者の下支えの取り組みにまい進するとのお言葉を頂きました。
肥塚氏は、大津市においては中小企業振興の「条例」を急いで作る必要はないとの考えでしたが、この5か年の振興計画が、総合的な課題解決(持続可能な地域社会づくり)を目指す手助けとなるよう、官民協力し、このような例会が継続して開催され、皆が情報を共有できる場も必要である。そういった意味で、今回の例会は大変意義のあるものではなかったでしょうか?
記:N,T