滋賀県中小企業家同友会

支部活動について-大津支部-

12月18日 大津支部12月例会を開催しました~「あなたのビジョン輝いていますか?」~ダメ経営者から滋賀で一番大切にしたい会社への軌跡~

大津支部 例会レポート

大津支部12月例会を開催しました。

と き 2020年12月18日18:30~20:00
ところ ①雄琴荘
②Zoomミーティングルーム
テーマ:「あなたのビジョン輝いていますか?」~ダメ経営者から滋賀で一番大切にしたい会社への軌跡~
報告者: 株式会社ピアライフ 代表取締役 永井茂一氏(滋賀同友会代表理事)
参加者:30名
※滋賀同友会感染症予防ガイドライン(厚生労働省の基準に準拠)に基づいて開催しております。

■家業を逃げ出したダメ後継者・・・

永井さんは、愛知県の魚屋さんに生まれました。中小企業の息子さんということで、自ずと会社の専務取締役に就任されますが、夜の街で「クラブ活動」に励まれる一方で、本業では朝も起きられず、「ダメ息子」と評されるようになります。そんなある日、永井さんは実家を飛び出し、幾ばくかのお金を握りしめて京都の高級旅館でぶらぶらする日々を送りました。

やがて手持ちのお金がなくなってくると、仕事をするようになりますが、数社を転々とされます。そして今のピアライフの前身会社に「ここでは辞めない」と決意して仕事に励まれますが、会社の経営が傾き、他社へ売却するかしないか、という状況になってしまいました。そこで永井さんは、自ら会社を承継する決意をし、社名を「ピアライフ」と改めて、経営者としての人生をスタートしました。

㈱ピアライフの由来ですが、「Planning In Amenity Life」から「PIALIFE(ピアライフ)」とされ、意味するところは、「快適住環境を創造する」ということです。のちに、経営理念と経営指針書を書き直すうちに「住」は事業ドメインであって理念ではない、と学ばれ、現在では「快適環境を創造する」とされておられます。

会社を買い取り経営者となったものの、当時は経営の右も左もわからない、「無免許運転の経営者」だったと述懐。経営を学ぼうと本屋へ行きますが、書棚に並んでいるのは大企業向けの「経営学」ばかりで、中小零細企業では活かせる知識がありませんでした。

■滋賀県中小企業家同友会で「中小企業の経営」を学ぶ

そこで、永井さんは中小企業家同友会に入会、中小企業の先輩経営者から「中小企業の経営」を学ぶようになりました。

入会した中小企業家同友会の会議や例会に参加するうちに、永井さんは気づかされます。

①同友会の会議には会議資料があるのに、自社には会議資料どころか朝礼も会議もない。

②仲間の会社に訪問する中で、清掃や社員の挨拶などの基本的なことすらできていないことに初めて気づく。

③社員にやりがいを持って働いてもらわないとうまくいかない、と教えられているにも関わらず、会社では社員が「やりがい」を感じないと辞めていく。

④経営の目標は、今月の売り上げ利益だけで、経営に目的もなければビジョンもない。

この気づきを得て、永井さんは同友会活動はもとより、書籍『同友会運動の発展のために』や『人を生かす経営(労使見解)』など先達の経営実践を教訓にした文献から、経営とは何か、経営理念とは何か、経営指針とは何か、などなど多くのことを学び、実践されます。そして、中小企業家同友会では、大津支部長、共育・求人委員長、経営労働委員長など「人を生かす経営」推進に直接かかわる役職を歴任しました。

■共通の目的(ミッション)と目標(ビジョン)を共有

中小企業家同友会で学ばれ、自社で実践し、「よい会社」をつくり上げてこられた永井さんですが、自社を維持し発展させるために、「ビジョン」が重要だとおっしゃいます。

「よい会社」づくりには、共通の目的(ミッション)と目標(ビジョン)が必要です。「何のために、何を目指すのか」を経営者と社員が共有しているからこそ、何のために何をやろうとしているかが自分にも仲間にもわかりあっているから、少々の困難や危機にもたじろがないし、かえってそれを乗り切るためにお互いの知恵を出し合う、すなわち自立・自律した仲間がたくさんいる「よい会社」になります。つまり、輝かしい未来があるから、それに向かって頑張れる会社になります。

■まず経営指針の成文化を

ビジョンとは、いわば航海図と羅針盤です。それが中小企業家同友会でいうところの「経営指針書の成文化と全社一丸での取り組み」です。経営指針書には、何のために、何を目指し、どんな方法で、どこまでやるか、が明記されていなければなりません。

永井さんが経営者になられたころは、事業ドメインとして、不動産の売買の仲介しかされていませんでした。しかし、25年前の永井さんは、今は不動産の売買や仲介しかしていないが、いずれは賃貸の仲介や管理をしたい、できたらリフォームもできる会社にしたい、さらには分譲や新築もできる会社にしたい、というビジョンがありました。今ではそれらのビジョンは実現しつつありますが、その過程では、いずれはそれらの事業ができる「組織作り」を一生懸命、取り組まれました。
その取り組みの軸にあるのが、「経営指針書」の浸透と実践です。幹部で議論し、幹部一人ひとりが経営者という立場で検討し、それをチームで検討し、全体で協議し、さらに事業部ごとに精査し、そして全社で発表会をします。当初は永井さんが一人で作成されていた経営指針書ですが、いまでは幹部が作成してくれています。なによりも、作成する過程が人を育てると実感されています。

ビジョンを達成するためには経営指針書に基づく全社一丸でのPDCAサイクルの実践が不可欠です。そのためには、自社が目指す目的や達成すべき目標、現状認識、解決すべき課題を確認することが必要です。「何のために」が目的の追求であり、「現状の認識」により今どうなっているのかを把握します。そして、目的と現状のギャップを「課題」として認識し、その解決に向けて改善点を洗い出し、「何を目指すのか」という目標を明確にして計画を立てます。そして、それを軸に会社の年度計画と各部門の計画、そして個人計画で実践し、振り返り、また実践するというPDCAサイクルを回していきます。

■社員は大きな夢=ビジョンに魅力を感じる!

そのようにして中小企業家同友会で学んで実践し、「よい会社」をつくり上げてこられた永井さんですが、これまでを

  • 経営姿勢が確立され
  • 指針づくりがはじまり
  • 朝礼や会議が当たり前になり
  • 共育ちの社風が築かれ
  • 組織づくりによる全社的実践がスタートし
  • 経営の多角化を目指し
  • 就業規則や人事考課の整備などを順次行い
  • 新卒採用に取り組み
  • 障がい者雇用、外国人雇用も実践し多様な人が活躍できる組織に進化してきた

と振り返られます。

そして、今後、永井さんが10年かけて取り組まれることは「事業承継の準備」です。

残された10年間でなにをするか。永井さんは会社の「10年ビジョン」をイラスト化し、ピアライフがさらに発展していく「夢」を描いておられます。できなくても、所詮は「夢」だったというわけですが、しかし、かのエイブラハム・リンカーン(アメリカ第16代大統領)が語ったように、「夢を描いて、思いつづけることができれば、もうすでに、その半分はできてい」ます。

「ビジョン」とは、「期限をつけた実現したい夢のこと」です。その夢は、少し大きいくらいでないといけません。小さすぎると、すぐに見失ってしまうからです。その夢の大きさに、社員は魅力を感じるのではないでしょうか。

 

12月例会は、永井代表理事から、ビジョンについてお話しいただきました。中小企業家同友会で学び、実践し、また学び、実践する。経営指針書を成文化し、社員に示し、目的・目標を共有することで社員の自立性(自律性)を引き出し、社風にする。そして、社長がビジョンを思い描き、その実現を信じ、計画をたてて社員とともにどうすれば実現できるかを思い描く。

大変学びになりました。
(事務局 奥村記)