滋賀県中小企業家同友会では、以下の位置づけで毎年報道関係者との懇談会を開催しています。
1.国民や地域と共に歩む同友会運動を県内報道機関へPRし、同友会への注目度を高める。
2.報道関係者と「中小企業のことなら同友会に聞けばわかる」という信頼関係をつくる。
3.上記を通じて滋賀同友会の組織強化と拡大を図る。
第16回目となる懇談会は、2017年11月2日(木)18:30~21:30まで琵琶湖ホテル「さくら」の間で報道関係より7名、滋賀同友会より15名が参加して開催されました。
◯報道関係からご参加の皆様(順不同・敬称略)
1.大原 一城 毎日新聞社 大津支局記者
2.岡本 洋太郎 朝日新聞社 大津総局 記者
3.神山 純一 朝日新聞社 大阪本社経済部 記者
4.川本 修司 読売新聞社 大津支局 記者
5.髙橋 道長 京都新聞社 滋賀本社 記者
6.寺沢 健之 時事通信社 大津支局長
7.水沼 崇 びわ湖放送 報道制作部 次長
◯滋賀県中小企業家同友会からの参加者
1.青木 孝守 (株)あぐり進学 代表取締役 副代表理事・政策委員長
2.青柳 孝幸 (株)PRO-SEED 代表取締役 北近江支部長
3.石川 朋之 (株)HONKI 代表取締役 青年部幹事長
4.井内 良三 (株)タオ 代表取締役 副代表理事・組織活性化委員長
5.蔭山 孝夫 滋賀建機(株) 会長 代表理事
6.川崎 博治 (有)ワークロード 代表取締役 甲賀支部長
7.北野 裕子 (株)エフアイ 代表取締役社長 実行委員長
8.嶋田 裕士 (有)島田家具工芸 代表取締役 東近江支部長
9.田井 勝実 滋賀ビジネスマシン(株) 代表取締役社長 ユニバーサル委員長
10.坪田 明 大津発條(株) 代表取締役社長副 代表理事・新産業創造委員長
11.中野 光一 (株)びわ湖タイル 代表取締役 湖南支部長
12.永井 茂一 (株)ピアライフ 代表取締役 副代表理事
13.水野 透 (株)渡辺工業 代表取締役社長 副代表理事
14.大原 学 滋賀県中小企業家同友会 事務局長
15.廣瀬 元行 滋賀県中小企業家同友会 専務理事廣瀬元行滋賀同友会専務理事が司会を担当してスタート。
蔭山孝夫滋賀同友会代表理事は「衆院の解散総選挙と日程がぶつかり、延期しておりました懇談会を開催できて幸いです。同友会では懇談会に向けて毎年特別調査を実施しています。今回も中小企業の労働力不足を中心に310人より回答を得て結果を取り纏めました。この調査結果を通じて、中小企業の人材不足を個別企業努力の課題に済ませず、行政はじめ学校関係者や広く県民生活に関わる社会的な課題として認識していただき、その解決に向けた施策づくりへと結びつけられれば幸いです」と開会の挨拶を行いました。
つづいて、「第28回滋賀県経営研究集会」のご案内を北野裕子実行委員長((株)エフアイ代表取締役)が、「2018年度 滋賀県に対する中小企業家の要望と提案」の概要説明を青木孝守副代表理事・政策委員長((株)あぐり進学代表取締役)が、「労働力不足と改正労働契約法の実態調査報告」は廣瀬元行滋賀同友会専務理事がそれぞれ担当して行いました。
2018年度政策要望⇒ファイル 1851-2.pdf
今回調査を行った、中小企業の労働力不足と改正労働契約法に関する結果報告は以下の通りです。
==中小企業の「労働力」不足アンケート結果報告==
2017年11月2日
滋賀県中小企業家同友会
滋賀同友会では、8月8日~9月19日会員企業の「労働力不足」と「改正労働契約法への対応」についてアンケート調査を行い、9月20日時点で310社の回答を得ました。以下その傾向や特徴を見てみたいと思います。
調査概要
調査用紙に記入、あるいはe.doyuシステムにて回答を依頼。310社、平均社員数30名(総数9440名)の回答を得ました。
◯ポイント1.単なる「人手不足」ではない!?
回答社中、71.3%(221社)が「労働力が足りていない」と答えています。不足している人材の中身(複数回答可)を見てみると、「ラインスタッフ」の15.8%(35/221)に対して「専門職(技術・経理など)」と回答した企業が68.8%(152/221)、さらに記述で営業職等と回答した企業を含むと、今回の調査に関しては実に89.6%(198/221)の企業が、単なる「人手」ではなくスキルや経験を持った「人材」を求めていることがわかります。つまりメディア等で喧伝される「人手不足」という表現は正確とは言えないということです。90%の企業が単なる「人手」ではなく、明確に「経験」「技能」を持った「人材」に困っているということがわかります。
これは単に表現上の問題だけではなく、行政の支援などの上でも重要なことです。
人材採用に関する行政支援はほぼ「ハローワーク」に集約されていますが、今回の調査でも「広告」などハローワーク以外にも求人の手段を求めている企業が44%(98/221)に上ります。さらにハローワークでは募集せず、広告のみという企業が21社あります。これは「ハローワーク」では希望する人材が集まらないという現実の反映とみるべきかもしれません。
「企業は人なり」と言いますが、少子高齢化によりますます労働力人口が減少していく今後、滋賀県の地域中小企業を維持・発展させていくために、経営者団体、行政、ハローワーク、メディアなどが職業安定法の理解のもと協力・協議して有効かつ長期的な対策を講じていく必要があるのではないでしょうか?
例)中小企業で働くことの良さの紹介、新聞紙上などでの中小企業Q&Aコーナー設置、街づくり等との連携、求職者の要望・意識調査、など。
特に「滋賀県中小企業の活性化の推進に関する条例」は、県の責務として「勤労観および職業観の醸成、職業能力の開発の促進、就業環境の整備その他の方法により、中小企業の事業活動を担う人材の確保および育成を図ること。」と唱っています。7割を超える県内中小企業が悩む「人材不足」の問題についても是非、行政当局の真剣かつ有効な取り組みを期待したいものです。
◯ポイント2.どのように求職者、社員のスキルアップを実現するか
一方で、「不足」と答えた企業のうち、新卒採用ではなく、中途採用のみで対応しようとしている企業が58.8%(130/221)と過半数に上っています。
スキルや経験のある人材が枯渇していますから、目先の即戦力を求める中途採用だけで今後も安定的に確保し続けるのは困難と気づかなければなりません。同友会が提唱するように中長期の経営方針に基づき、新卒定時採用を行い、人が定着し、成長する企業づくりを着実に進めていくことの大切さが改めて示されていると言えるのではないでしょうか?また求職者、社員のスキルを継続的に向上させるための行政支援も重要です。有用であっても、制度が複雑、手続きが煩雑とされる「人材開発支援助成」(旧キャリア形成促進助成)などをもっと使いやすくし広くPRすることも大切です。
なお障害者雇用をしている企業は10社(4.5%)でした。2019年10月に滋賀で開催される「障害者問題全国交流会」の設営を通じて、障害者、高齢者、外国人などユニバーサルな雇用をどのように増やせるのかも課題と言えるでしょう。
◯ポイント3.周知が不十分な「改正労働契約法」
来年2018年4月1日より「改正労働契約法」が発効します。その最大のポイントは「有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたとき、社員が申込をすることで、期間の定めのない労働契約=無期労働契約に転換できる」(18条)ということです。例えば1年契約で5年以上雇用されてきたパート社員が希望すれば、それ以降は無期契約に変更しなければならないことになります。これは雇用の安定を図るという趣旨で設けられたもので、これを理由に逆に雇止めなどが起こると趣旨に反する(小宮山厚労相・当時)と政府は説明しています。一方で就業規則、給与規定にもよりますが一般的には無期契約化することで、賞与、退職金、各種手当など有期雇用と無期雇用の給与に差がある場合、企業としては人件費の増大という問題が起こります。
今回のアンケートでは、この「改正労働契約法」の有期雇用契約の制限条項について「知らない」と回答した企業が134社(43.2%)に上りました。違反すると監督署の指導を受ける事もあるだけでなく、急激な雇用の不安定化にもつながりかねませんので、県や市町の迅速かつ入念な周知の努力が求められます。有期労働者が居る企業で「雇止めにする」と回答した企業は1社のみでした。安易に解雇せず雇用を守り続けようとする姿勢が大勢を占めているのは、さすが同友会企業と言えるでしょう。しかし、「検討中」「わからない」と回答した企業が53.7%(51/95社)あります。同友会としても、支部例会などで、また当アンケートを通じて、周知・議論していく必要があるようです。
また各メディアも是非この問題を取り上げていただき、「どうあるべきなのか」「雇用の不安定化につながる危険はないのか」「あればどのように防ぐのか」等、切り込んでいただければと思います。
同友会からの活動と情報提供のあと、意見交換が行われました。
記者からの「中小企業の労働力不足の実態について具体的には?」との質問には、下請け中小製造業や建設関連工事業では、人材はもちろんだが人手も相当不足していること。そのために、外国人労働者を受入れなければ現場が成り立たなくなっているという実態が紹介されました。
またある企業では、従業員の半数ほどが外国人(就労ビザによる社員と技能実習生)で、幹部候補技術者として2年連続ベトナムハノイの工業大学より学卒者を採用していることや、定着して幹部に育ってもらうために必要な制度面の改善(例えば就労ビザを持つ外国人社員が結婚した場合、配偶者は就労ビザが取れないため共働きが出来ないことを緩和する等)についても報告されました。
加えて、現場で働く外国人の多くは残業してでも賃金を得たい思いが強く、政府主導の働き方改革で生産性の向上と残業の削減が提唱されても、中小企業で働く人々の思いはそう簡単ではないことも強調されました。
中小製造業が付加価値を高めるためには、日本だけにあるコストダウンという商慣行を無くす(既にある大手機械メーカーはコストダウンの廃止を決め通達していますので)など、下請取引関係を政策的にも改善する必要があるとなど、リアルな実態も報告されました。
意見交換のあとは懇親会。
寺沢健之時事通信社大津支局長より乾杯のご発声をいただき、参加役員の事業PRも活発に行われました。
最後に、井内良三滋賀同友会副代表理事より「今日を始まりとして同友会と中小企業の情報発信を進め、2019年の創立40周年に向けて県内に中小企業家同友会運動と良い企業づくりを広めましょう」と閉会挨拶が行われ終了いたしました。(M・H記)