第3分科会
『新卒採用は新たな仕事づくりの第一歩』
~新卒と共に挑む10年間の取り組みと100名企業のビジョン~
報告者 堂上 勝己氏 梅南鋼材株式会社 代表取締役 (大阪同友会 代表理事)
座長 前出 博幸氏 前出産業株式会社 代表取締役
室長 山岡 朗氏 株式会社 松屋 代表取締役
第3分科会では 堂上氏に 新卒採用は新たな仕事づくりの第一歩をテーマに報告していただきました。
同友会入会後、雇用の意義を学び、新卒採用に取り組み 現在では採用・定着で業績、収益を著しく向上させ成長を続けられています。
梅南鋼材株式会社は堂上氏が社長に就任された当初、鋼材の販売を中心に事業を行っていたがコスト競争の激しさより、このままでは将来の経営が厳しいとの考えより、鋼板の加工に取り組み加工業者(メーカー)への事業転換を実行されました。
そのような事業展開の中、同友会の考え方である 新卒採用、定期採用の取り組みを開始されました。バブル崩壊後、厳しい経営環境、人が余っている状況の中、新卒を採用するには既存の取引先の仕事を増やすか、新しい仕事を始めるしかありませんでしたが、世間は大変厳しい状況でした。
しかし、新卒採用は新しい仕事づくりの原動力だとの思いにより、展示会、見本市等へ出向き設備投資を実行し新しい仕事に取り組まれました。ただし、新卒採用を実施したものの、定着率はなかなか上がらず厳しい状況が続いたそうです。
そこで従業員に対し、魅力ある企業とはと問いかけ、すぐに出来ることは実行し、検討すべきことは検討するなど 従業員に応えるようなかたちで少しずつ信頼関係を築くことが出来るようになりました。
そして近年定着率が上がってきた理由に、前年入社した先輩が後輩を育てる仕組み、社風を創ることにより定着率が上がり始めたそうです。
新卒採用により、社員研修も充実し、採用部門以外から順次全ての部門で研修を実施することなど新入社員は育ち、育てる側も成長することが出来るようになったと言われます。
そして定着率が良くなり雇用が増えることにより、ますます新しい仕事を増やすことが必要となり設備投資を進めることとなったそうです。
そして2008年、リーマンショックが到来しましたが、厳しい状況においても定期採用を続けられました。ですが、売上げがダウンする前に内定を出していた学生を雇用せざる得なかったとの事です。
経営指針においては将来のビジョンを立てるが、幹部社員と共に『社員100人の企業』との計画を立て事業を進められています。100人企業とは大きい会社をめざす訳ではなく、介護休暇、産休、育児休暇が取れる企業で復帰後も働く場所、仕事がある魅力ある企業をめざしておられます。
また、事業を継続するには技能を承継する必要があり、その為には定期採用を続け、引き継ぎを行い後継者の育成が重要であると考えらます。
最後に 仕事があって採用するのは誰でも出来ることであって、採用してから新しい仕事を見つけるのが経営者の醍醐味であると考えられています。
今の世の中、絶対保証のある仕事なんてありえない。そんな状況の中、一生懸命仕事に取り組み常に会社が変わっていくことが重要であると報告していただきました。
グループ討論においても、まだまだ人が余っている状況のなかで、採用する考え方が出来ない方が多くおられるようです。仕事があって利益があって採用するという考え方が多く根付いています。
現在、世間では労働者不足が騒がれています。そのような状況になる前から新卒採用、定期採用を継続して実行されている 堂上氏の報告は非常に学ぶところが多く、良い会社とは何か、のめざすべき企業であると分科会で感じました。