滋賀県中小企業家同友会

委員会活動について-政策委員会-

松山市・東温市「中小企業振興基本条例」制定と推進に学ぶ視察研修会①

政策委員会 その他活動

松山市・東温市「中小企業振興基本条例」制定と推進に学ぶ視察研修会が以下のスケジュールで開催されました。

◆実施期間:2016年2月9日(火)~2月10日(水)
◆視察同友会:奈良県中小企業家同友会・滋賀県中小企業家同友会
◆受け入れ担当:愛媛県中小企業家同友会

<視察目的>
「中小企業は、経済を牽引する力であり、社会の主役である。常に時代の先駆けとして積極果敢に挑戦を続け、多くの難局に遭っても、これを乗り越えてきた」
これは、2010年6月に閣議決定された「中小企業憲章」の冒頭の文章です。
中小企業が「社会の主役」という位置付けのもとで、今後の諸政策が実現されることが求められるとともに、中小企業がその期待に応えるよう努力することも必要です。
昨年9月に引き続き、奈良同友会の条例視察を受け入れます。今回は滋賀同友会も合同で参加します。
今回の視察は、愛媛同友会の条例運動の特徴を学ぶのが目的です。愛媛同友会の条例運動の特徴とは、①3つの「定石」(実態調査、条例、円卓会議などの推進機関)で進めていること、②同友会がプロデュース機能を担っているということ、③「人を生かす経営」の総合実践、④産学官連携のプラットフォーム(基盤機能)の役割を同友会が担っていること、⑤条例は地域における経営指針であると定義づけていること―です。

◆2月9日(火)
10:00 東温市商工会会議室にて東温市との懇談会(100分)
11:45 東温市役所出発

12:15 昼食:活うどん いってつ庵(松山市久米窪田町384-3)
13:00 出発

13:30 会員企業訪問・米田順哉 副専務理事と懇談(40分):ゆるり茶屋 夢家
(愛媛県庁第1別館 地下、NPO法人家族支援フォーラムが運営)
14:10 松山城界隈を見学(みかんジュース、今治タオル、東雲かまぼこ)
15:20 出発

15:30 まつやま経営交流プラザ会議室にて松山市との懇談会(120分)
17:40 出発

18:00 道後ホテル八千代(松山市道後多幸町6-34、愛媛同友会会員)チェックイン
18:40 道後ホテル八千代にて懇親会(120分)
20:40 懇親会終了 第1日目終了

◆2月10日(水)
9:00 会員企業訪問・田中正志代表理事と懇談(120分):義農味噌株式会社
11:00 出発

12:00 昼食:カフェ 道後の町屋(松山市道後湯之町14-26、愛媛同友会会員)
13:30 出発

14:00 愛媛大学訪問・和田寿博 教授と懇談・愛媛大学ミュージアム見学(120分)
16:00 愛媛大学出発

16:30 夕食:郷土料理 五志喜(松山市三番町3-5-4、愛媛同友会会員)
18:00 会員企業飲食店出発
18:40 松山空港着
解散 お疲れさまでした。皆さん、学びをいかして条例制定を軸にした地域振興、それを担う良い企業集団=同友会づくりに取り組みましょう!

《参加メンバー》
奈良同友会
No.名前企業名役職会内役職
1 平山 雅英 大和化学工業株式会社 代表取締役会長 代表理事
2 佐野 元洋 かなえ経営㈱ 代表取締役 副代表理事
3 中西 啓二 ㈱中西運送 代表取締役社長理事・北和支部長・広報情報化委員会委員長・政策委員
4 遠藤 俊介 大倭殖産株式会社 常務取締役 北和支部幹事・政策委員
5 中野 愛一郎 ㈱イベント トェンティ・ワン 代表取締役社長 理事・青年部会幹事長
6 小林 寛樹 ㈱ファーマシー木のうた 専務取締役 青年部会副幹事長
7 西村 博史 西村博史会計事務所 所長 理事・政策委員長
行政
8 吉田 英史 広陵町 課長 企画部 まちづくり推進課
9 坪水 裕子 広陵町 課長補佐 地域振興課
経営者団体
10 東 洋一 広陵町商工会 会長 広陵化学工業株式会社・代表取締役会長
教育関係
11 松野 周治 立命館大学経済学部 教授
奈良県中小企業家同友会
12 伊藤 真理 奈良県中小企業家同友会 事務局長 理事
滋賀県中小企業家同友会
13 廣瀬 元行 滋賀県中小企業家同友会 専務理事 専務理事

○東温市「中小零細企業振興基本条例」懇談会

と き:2016年2月9日(火)10:00~11:40
ところ:東温市商工会館3階会議室
司 会:大北雅浩氏 愛媛県中小企業家同友会 事務局員
報告者:山本健吾氏 東温市産業創出課 課長補佐
藤岡貞雄氏 愛媛県中小企業家同友会 理事・東温支部長 憲章・条例委員長
米田順哉氏 愛媛県中小企業家同友会 副専務理事 NPO法人家族支援フォーラム理事長)

1.山本健吾氏(東温市産業創出課 課長補佐)の報告概要
報告資料・・別紙
東温市の概要:平成16年9月21日に重信町と川内町の合併により誕生。松山市の近郊田園都市として発展。愛媛大学医学部と国立療養所があります。人口34,037人。

《条例制定のきっかけ》

当初、市は条例づくりにはあまり積極的ではありませんでしたが、愛媛同友会東温支部総会へ市長と市の幹部が参加し、植田浩史氏(慶應義塾大学経済学部教授)の講演を聞いたことがきっかけとなり、条例づくりが加速しました。東温支部例会や視察による先進地事例の学習を重ね、調査と条例、円卓会議の設置という定石での条例制定と推進の方針を確認しました。

《調査活動と円卓会議》

そして、平成23年9月に愛媛同友会が受託して、緊急雇用創出事業を使い中小企業の実態調査を実施。1,300事業所を訪問して75%の回収を得ます。
この調査結果をもとに円卓会議を設置(委員長 井藤正信 愛媛大学教授 副委員長 和田寿博 愛媛大学教授)して、様々な施策を展開しています。
通常は市が開催する会議は年3回までが上限のところ、円卓会議は年5回の開催を目標にしています。
会議を重ねる中で、今年に入ってから委員さんの意見が活発に出るようになりました。これは、円卓会議に設置された4つの小委員会が活発に動いている結果です。
平成27年8月の中小零細企業財政支援委員会では、小規模企業の資金繰りを支援するために制度融資の手続き簡素化が提言され、取り組まれています。
条例ができたことによって、中味濃く中小企業振興が出来ています。

《広域連携による事業》

平成27年度には5つの事業が行われました。
とりわけ、中小零細企業販路拡大支援マッチング事業では、東温市と松山市が一緒になってバイヤーを迎えた逆商談会を開催するという、広域連携の事業として特徴的でした。
また、愛媛大学医学部を中心にした医療器具の開発や、ヘルシーツーリズムが開催できないか検討中です。医療機器の開発は中小企業にとってハードルが高いので、改良とか介護機器の開発や、自然を生かしたハイキングなどで健康を調査し、ヘルシーな食事を提供(レシピは大学がつくり食事は中小企業がつくる)するなど、大学の知見と中小企業の仕事が結びつきやすい事業をつくることが目標です。

《5年に一度調査活動を行うわけ》

条例を制定する前に実態調査をして、5年が経ちました。
その後、どのように変化したのかを再調査する事業を平成28年度に市の事業として予算化しました。結果として政府の地方創生の補正予算を使えることになり、再調査を行ってもう一歩踏み込んだ施策づくりに繋げる予定です。市としては5年に一度調査活動を行い、調査項目と分析のノウハウを蓄積して、東温市が全国の調査活動の基準となることを目指しています。
この様な覚悟があるからこそ、税金を使うことが出来るのです。

《条例の特徴と推進力》

条例の前文にある「キラリと光る、住んでみたい、住んで良かったまち『とうおん』」という文言が、市の総合計画にも使われています。これは市の総合計画の基本構想と条例が同じ方向を向いていると言うことです。このことは、市が中小企業振興にかける強い思いを表しています。
「中小零細企業振興基本条例」と「零細」という表現を入れているのは、5人以下の事業所が数として多いという実体と、その層が地域経済を支えているという認識かららです。
学校の役割を明記したことで円卓会議に「キャリア教育小委員会」が設置されました。
行政主導ではなく、円卓会議の中から「やりたい」という声が上がり、円卓会議で「ではやりましょう」です。行政が「あれをやろう」「これをやろう」と言うことではありません。

2.藤岡貞雄氏(愛媛同友会 理事・東温支部長 憲章・条例委員長)の報告概要

条例をつくる方針を持ったのは5年前です。愛媛県には山間や過疎の町がある中で、東温市は恵まれた環境です。しがし「このままでは駄目だ」という漫然とした不安感があり、この不安感を無くしたいというのが条例づくりの動機です。
愛媛同友会東温支部の正副支部長・幹事長3人と、同友会の事務局長、市の山本課長さん(当時 課長補佐)が中心になって条例づくりをスタート。その後、市長さんが積極的になっていただき、条例をつくることが出来ました。
本当は組織としてボリュームのある商工会が動くことが望ましかったのですが、残念ながらそこには条例をつくるノウハウがありませんでした。同友会は経営指針づくりに取り組んでいますので、地域の中でのわが社の成り立ち・役割、地域が良くならなければわが社が良くならないと言う関係が分かるので、地域の経営指針でもある条例づくりに入りやすいのです。
市では条文づくりにものすごいチェックが入り、20回を超える検討委員会が行われ、腰折れしそうにもなりましたが、大学の先生がサポートしてくれました。
大学の先生と日常的にお付き合いすることで、同友会理念を理解されている先生がいたことは力になりました。
条例が出来て円卓会議が始まりますが、当初はなかなか意見が出てきませんでした。条例づくりを進める過程に多くの参加を得て「条例をつくってみんなで良くしていくのだ」という思いを共有することが大切です。市からも国の予算を使って事業の提案がありますが、上から降りてくる提案は我々にピタッと来るかというと、そうでもありません。
円卓会議ではかしこまってなかなか意見が出ないので、昨年の夏に「とうおんまちづくり工房」という任意団体を立ち上げました。15~6人が月に1回例会をやって、いろいろと意見を交わしています。この組織をNPOにして、地方創生の予算の受け皿にできないかと考えています。
条例運動の中で、人づくりをしていかないといけません。商工会のメンバーにも、もっと横の繋がりをふやし、担い手を増やしていくことが重要になっています。

3.米田順哉氏(愛媛同友会副専務理事 NPO法人家族支援フォーラム理事長)の報告概要

東温市の特徴は、平成22年から1年間にわたって徹底して学習してきたこと
次に、条例をつくり推進するためるためには、情熱が必要です。同友会の事です。このことを通じて、市長さんも山本課長さん(当時 課長補佐)も条例制定への覚悟が出来たと思います。学習を基本に据えなければ、条例の必要性はなかなか腑に落ちません。務局長(当時)であった鎌田さんは、癌のステージ4という状況にもかかわらず「絶対に条例をつくる」と語り行動しました。この情熱が、同友会東温支部会員、市職員、大学の先生を動かしました。ただ、戦略や手順だけでは条例はつくれても推進出来ません。情熱があるから本気で激論が出来るし、主人公が誕生します。
この情熱は、条例前文への思いとして成文化されます。
基本条例は理念条例なので、何をやるかは具体的には書かれていません。ゆえに、前文に思いを込めておかなければ、何も実行されないのです。つくった人の思いがこもっているから、制定後に「これをやろう」という具体的な提案へと繋がります。愛媛同友会では、長年経験と実績のあるキャリア教育を具体的に提案しています。

先ず、学習運動から始め、情熱を持って人々を組織し、熱く議論して主人公を育てることです。
次に愛媛同友会では、条例による地域振興の定石で取り組むことを戦略にしました。

定石とは、慶應義塾大学の植田先生の提案です。「調査・条例・円卓会議(産業振興会議)」の3つを揃えて取り組むことです。これは、植田先生が条例制定活動に関わってきた中で導き出したものです。条例は地域における経営指針なのです。経営指針をつくるには、先ず現実を良く知ることから始めます。それが調査活動です。条例には理念を盛り込みます。理念を実現する基本方針と計画は円卓会議を通じて行政に提言され、実行は円卓会議によって検証されます。これは、企業における経営指針の実践と同じです。
最後になりますが、同友会が条例づくりをプロドュースすることです。愛媛同友会は1994年からキャリア教育に取り組んだ実績があり、大学との関係をつくってきました。この実績を条例づくりに結びつけました。大学や行政との信頼関係は一朝一夕には出来ません。取り組んでいる私たちの生き様への共感、感動があってこそ出来上がると思っています。
東温市の条例づくりに、松山市の担当者も参加して一緒に勉強してきました。東温市は条例制定に3年かかりましたが、松山市は半年で出来上がりました。それは、松山市では職員さんの学習が先行していたからです。

この後の意見交換では、東温市として「エコノミックガーデニング(地域活性化の手法)」を展開したいことや、円卓会議の構成メンバーだけではなく、地域のいろいろな組織を繋いで意見をくみ上げる役割を果たす組織があると、さらに盛り上がるのではないかと補足されました。

○会員企業訪問

と き:2016年2月9日(火)13:30~14:10
ところ:愛媛県庁内「ゆるり茶屋 夢屋(NPO法人家族支援フォーラムが運営)」
司 会:大北雅浩氏 愛媛県中小企業家同友会 事務局員
報告者:米田順哉氏 愛媛同友会副専務理事 NPO法人家族支援フォーラム理事長

報告の概要
NPO法人家族支援フォーラムは障害者の就労継続支援B型事業所です。職員スタッフ19人(別に非常勤スタッフ19人)、利用者55人で、障がい者を子どもや兄弟姉妹に持つ家族が立ち上げた法人です。障がい者が豊かに生活できる安心で希望に満ちた生活を永続できる仕組みを作りたいと、2003年に立ち上げられました。福祉の世界では「○○してあげる」とか「指導する」という傲慢な姿勢に陥りやすいので、同じ人間と人間、目線で寄り添いながら支援する。共に学び合い育ち合いがしたいと、理念をつくりました。
《法人理念》
家族支援フォーラムは
障がい者本人とその家族および支援スタッフが共に育ちあいながら
本人が望む豊かな地域生活が永続する環境づくりを通して
本人・家族・スタッフの物心両面の幸せを追求します。
「本人が望む豊かな地域生活」とは、「暮らす」「働く」「楽しむ」ことがバランス良く保障されていることです。例えば、障がい者が一人で飲みに行くのは無理だと思われていましたが、今では皆が自分で飲みに行けるようになりました。経験値が育まれれば、地域で楽しむことが出来るのです。また、福祉は犠牲的精神や奉仕的精神がなければ駄目と言うのではなく、働くスタッフもイキイキしていないといけません。障がい者どうしが結婚して、子どもも育てています。夫婦二人で住んでいるマンションはグループホームになり、職員スタッフが見守っています。

《職員と共に経営指針経営で危機突破》
実は現場の判断を任せていた幹部職員が二人退職して、経営危機になりました。その幹部二人がいなければ判断できない組織になっていたからです。経営指針もPDCAができていませんでした。そこで、理念と方針を全職員で見直し、皆で力を合わせて危機を乗り越えようと呼びかけ、半期に一度経営指針の総括を行うようになりました。いまでは、やっと経営指針による経営が出来ていると感じています。

《条例制定運動は本業そのもの》
私が条例制定運動を始めたのは、愛媛同友会の取り組みで北海道の事例を学んでからです。私は障がい者が仲間はずれにされない、地域生活支援に取り組んでいます。そのためには「活力と包容力のある地域」の存在が前提条件になります。
ところが、2000年代から政府の構造改革路線が進み、地域がどんどん疲弊していきました。このままでは地域生活支援が出来なくなるという危機感を持っていました。そこで、条例づくりとその実践を通じての地域づくりは、障がい者の地域生活支援に直結していると整理をして、腹に落ちました。ですから、条例運動は私の本業そのものなのです。

○松山市「中小企業振興基本条例」懇談会

と き:2016年2月9日(火)15:30~17:30
ところ:まつやま経営支援プラザ
司 会:大北雅浩氏 愛媛県中小企業家同友会 事務局員
報告者:米田順哉氏 愛媛県中小企業家同友会 副専務理事 NPO法人家族支援フォーラム理事長
三好貫太氏 松山市産業経済部 地域支援課 主査
日高真幸氏 松山市産業経済部 地域支援課 主事
鎌田哲雄氏 愛媛県中小企業家同友会 専務理事
報告資料:別紙の通り

1.米田順哉氏(愛媛同友会副専務理事 NPO法人家族支援フォーラム理事長)の報告概要
松山市の条例は、東温市での学習の中で共につくってきました。これは凄いことで、行政が垣根を超えて学び合うことは、あたりまえのことではないのです。だから、東温市の条例づくりの先進性と、松山市独自の先進性があります。
松山市の条例パンフ6ページの定義の(2)「中小企業団体」のなかに、商工会議所、商工会、中小企業団体中央会、経済同友会と並んで中小企業家同友会が位置付けられています。これは全国で初めてのことで、条例づくりをプロドュースした愛媛同友会の鎌田専務理事の情熱と、その運動を担保する愛媛同友会500名会員の経営実践のたまものです。
条例は人とひととの関係の中でつくられます。顔のある個人どうしが信頼関係をつくって、つくられるのです。

円卓会議の議論が、松山市の振興計画に反映され、それに財政的担保が成されています。そこまでが条例の条文に入っています。
円卓会議の組織も、松山市独自のものがあります。
円卓会議は行政から独立した機関です。そこには「意見を出してください」と諮問されますが、逆に言えば「意見がないなら何もやらなくても良い」と言うことになる、責任の重い機関です。
同友会は専門部会として「人育ち応援部会」を担っています。ここでは、健全な職業観を広めるために、先生・親子・PTA・教育に携わる人向けのキャリア教育教材(教案)として「未来デザインゲーム」づくりに取り組んでいます。

2.日高真幸氏(松山市産業経済部 地域支援課 主事)の報告概要

《松山市の現状と調査活動そして条例の制定へ》
松山市の地域支援課には6つの課があり、条例は中小企業支援課で取り組んでいます。
松山市の事業所規模は10名以下が殆どで、77.2パーセント。市内の総生産は伸び悩んでいて、全国平均を下回ります。市民所得も、県・全国平均以下です。
人口は、今を境に下がっていきます。65歳以上人口は、増えてゆきます。

平成24年度に市内中小企業3,500社を対象としたアンケートを実施しました。特徴的だったのは、直近3年間で売上・純利益とも減少した事業所が40パーセント、雇用面では3年間で新規雇用していない事業所が30パーセントもあったことです。この結果を踏まえて、条例をつくって中小企業を振興していかなければ、市民生活を支えられなくなると言う結論に達し、条例をつくることになりました。

《条例制定後の流れ》
松山市の中小企業支援の方向性は、中小企業の振興が地域振興の要であると言う考えから進められています。平成26年から
1)「松山市中小企業振興基本条例」の制定
2)松山市中小企業振興計画の策定
3)推進機関である「中小企業振興円卓会議」の設置
4)中小企業支援のワンストップ窓口の設置
5)各種支援事業の実施
と言う流れで取り組んできました。

条例は9つの基本方針で中小企業を支援することを定めています。
1)新たな事業活動の支援
2)経営基盤の強化
3)人材の確保、育成、定着
4)中小企業振興のための必要な調査及び研究
5)制度、組織及び拠点の整備
6)受注、発注機会の増大
7)販路の拡大
8)融資制度の充実
9)関係機関等との連携
松山市の条例の特徴は、条例の「定義」に「中小企業家同友会」を規定したこと。条例の推進機関として「円卓会議」を位置付けたことです。これは、松山市とは別の民間主導による機関で、広い分野から委員を選び、市の中小企業施策に対して分野ごとに調査・検証しています。
「円卓会議」の下に3つの「専門部会」(「まどんな活躍推進部会」「なでしこドリームプロジェクト」「人育ち応援部会」)を置いています。

3.三好貫太氏(松山市産業経済部 地域支援課 主査)の報告概要
《出来ちゃった条例にしない》
私は条例策定3年前に、初めて中小企業支援担当になって条例づくりに携わりましたが、やり方がまったく分かりませんでした。条例は法律であり、計画とはまったく違います。先に取り組んでいる東温市さんから愛媛同友会さんを紹介していただきました。東温市の担当者であった山本課長さん(当時 課長補佐)からは、「目的」「目指すところ」「思い」「理念」、そういうものが条例に入らなければ推進されないと言うこともアドバイスを受けました。要するに、市の内部で作文した「出来ちゃった条例」にしてはダメだと言うことです。

《調査を踏まえ議論を尽くす》
3,500社の調査をして、条例の骨組みを作りました。条例をつくることは市長のトップダウンで決まっていましたので、半年間でつくることが私のミッションになりました。
3ヶ月でフレームをつくり、その後は検討委員会をつくり、協議して100以上の質問が出されて、すべてに応えました。委員会で一緒につくってきましたので、委員からは「こんなに疲れる委員会は初めてだ」と声が出るほどでした。

《審議会ではなく円卓会議を推進エンジンに》
条文が出来たら、推進する組織と計画と拠点づくりを決めました。
平成26年に推進組織の設置に取り組みました。市として円卓会議のような形は、初めてのケースです。当初から「審議会」のように意見を言うだけの会議体は意味がないと考えていました。そこで、中小企業振興円卓会議は市が設置するのではなく、外部組織として位置付け、支援団体が発起人となって自主的に設置することにしました。
「基本条例」の「基本」とは、行政として重きを置いていることの証です。松山市の決意の現れです。だから、財政的措置も定めて地域活性化につなげる取り組みにします。

市の中小企業振興は、これまで地域経済課が産業計画も条例もない中で、担当者レベルで取り組んできました。市の姿勢を示したものがなかったので、まず条例をつくることになり、その中に計画をつくると定め、いまは「松山市中小企業振興計画」の策定に取り組んでいます。

平成25年度にオープンした「まつやま経営交流プラザ」は、創業と経営のセンターとして年間6,500人が利用し、創業相談83名で23人が創業する実績を出しています。

4.鎌田哲雄氏(愛媛県中小企業家同友会 専務理事)の報告概要
私たちは行政の人たちと一緒になってやってきました。人に働きかけるには、情熱と行動と戦略が必要です。人とひととの関係は曇ってはいけません。まさに鏡の関係です。同友会運動は「人間を取り戻す運動」です。社会教育運動なのです。
いくら良いことを言っても、現物がないとダメなのです。現物とは、経営者の実践なのです。人を生かす経営を実際にやっているかどうかが問われるのです。行政の方も見ているのです。「本当にやっているのですか?」と。だから、真剣になってやれるのです。経営指針による人を生かす経営を実践していない人が条例に関わると、PDCAがまわらなくなります。全国で条例が出来てもその後に進んでいないのは、そこに課題があると思います。
条例制定のプロデュース機能を、事務局長(専務理事)や担当する役員が全権委任で持つことが重要です。愛媛同友会は県域団体で、しかも教育委員会ともつながっています。だから広域連携やキャリア教育で力を発揮できました。