第17回目となる報道関係の皆様と滋賀県中小企業家同友会理事との懇談会を10月4日(木)18:30~21:00まで琵琶湖ホテルで開催し、県政記者クラブに所属する報道8社より8人と、同友会理事・事務局の18人、合計26人が参加しました。
《参加された報道関係の皆さん 順不同》
京都新聞 滋賀本社 記者 中塩路 良平 様
時事通信社 大津支局 支局長 寺沢 健之 様
朝日新聞社 大津総局 記者 山中 由睦 様
日本経済新聞社 大津支局 支局長 橋立 敬生 様
BBCびわ湖放送 報道部次長 大口 隆之 様
読売新聞 大津支局 記者 家城 健太 様
中日新聞 大津支局 記者 高田 みのり 様
NHK大津放送局 記者 穐岡 英治 様
《同友会からの参加者 順不同・敬称略》
立命館大学経済学部 橋本 貴彦 教授
副代表理事・政策委員長 青木 孝守( (株)あぐり進学 代表取締役)
理事・北近江支部長 青柳 孝幸 ((株)PRO-SEED 代表取締役)
理事・青年部担当 石川 朋之((株)HONKI 代表取締役)
共育・求人副委員長 宮川草平(宮川バネ工業(株) 代表取締役)
代表理事 蔭山 孝夫(滋賀建機(株) 会長)
理事・創立40周年事業推進本部長 蔭山 大輔(滋賀建機(株) 専務取締役)
理事・青年部幹事長 川勝 健太((株)カワカツ 代表取締役)
理事・東近江支部長 嶋田 裕士((有)島田家具工芸 代表取締役)
理事・ユニバーサル委員長 田井 勝実(滋賀ビジネスマシン(株) 代表取締役社長)
理事・甲賀支部長 田中 真 ((株)サン機工 常務取締役)
副代表理事・新産業創造委員長 坪田 明(大津発條(株) 代表取締役社長)
副代表理事・例会組織活性化委員長 永井 茂一((株)ピアライフ代表取締役)
湖南支部副支部長 能登 清文((株)クオリティライフ)
副代表理事 水野 透((株)渡辺工業代表取締役社長)
滋賀県中小企業家同友会 理事・事務局長 大原 学
滋賀県中小企業家同友会 事務局員 奥村 祐三
滋賀県中小企業家同友会 専務理事 廣瀬 元行
このあと、青木孝守副代表理事・政策委員長が「2019年度 滋賀県に対する中小企業家の要望と提案」を紹介。
青木氏は、地域に若者が残り定着することが、滋賀県経済や社会を元気にするには欠かせない課題であり、そのためには中小企業と学校、行政が輝く滋賀をつくるためにタッグを組んで職業教育に取り組むことが必要であること。滋賀県として奨学金の支援制度を調査や実施する意思が全くない(2018年度要望への回答)中でも、同友会の調査では会員企業109社中、支援制度を持つか実施を検討している企業が30%を超えている実態を示し、行政も何らかのアクションを起こすことを求めていますと紹介。さらに、企業の廃業率が全国ワーストワンである滋賀(2017年度7.9%)だからこそ、中小企業活性化条例を活かして、中小企業や小規模事業者を主人公にした産業振興の推進エンジンとなる恒常的な審議機関を作る必要があると強調しました。
続いて今年8月に実施した会員アンケート調査をまとめた「社員の奨学金返済問題への同友会の取り組み」についても、青木委員長が報告。
今回は8月1日から17日までの期間で「社員の奨学金返済実態アンケート」を実施し、短期間に109社から回答を得たこと。回答企業のうち、「奨学金」返済をしている社員が存在する会社が19社(17,4%)で、うち返済に困難を抱えている社員がいる会社が2社。その主な理由は、現在の収入で奨学金を返済しながら家庭生活と子育て・教育を続けることへの不安であったこと。
「奨学金」返済支援制度についてはすでに2社が実施しており、導入の検討意思ありという回答が32社(29,3%)もあり、その主な理由は「社員が奨学金の返済に困らないため」「学卒者(若手人材)の採用」「返済のための副業などの予防。安心して働ける条件整備」であることが紹介されました。
返済支援制度を実施する意思があって、まだ実施できていない主な理由としては、「どのような制度が良いのかわからない」「忙しくて手がつけられていない」「該当者のみに賃金を上積みすることについて社内での合意が出来ていない」ことや、回答者の中で返済支援制度が不要と考える理由については、「奨学金は自己責任で返済すべきものだから」「既存社員との賃金バランスが取れなくなる」「学卒者(若手人材)を採用する予定がない」などがあり、また少数ですが「返済に充分な給与を出している」と回答があったこと。アンケートの文書回答では「返済方法の多様化不足(ex.給与天引、クレジット払)」「県内大学卒生を地方にUターンしてもらうのに支援が必要」「インターンシップに来た学生さんも卒業したら600万円の借金というのを聞きびっくりした。」「奨学金の受給に対するリスク説明を高校の授業で行うべき」「若者に限らず、長年働いている方で、お子さんの奨学金返済で困っておられる方もでてくる」「福祉事業は収益が決まっているので、企業独自の支援制度を導入するのは、企業体力を損なう」という声が寄せられていることも紹介されました。
この調査内容を受けて、国や滋賀県への要望としては、学費の高騰、世帯収入が減少する中で日本が成長戦略を描くためには「教育自己責任論」ではなく、国として他国に比して低いと言われる教育費負担をどうしていくかビジョンを明確に示すこと。県には他の都道府県が設けている支援制度に対してどのような見解を持ち、今後滋賀としてこの課題にどう対応するのかを示してほしいと強調。同友会としては「奨学金支援規定モデルを作成する」ことを109社中57社が求めており、専門家の協力を得て取り組んで行きたいと報告されました。
立命館大学経済学部の橋本貴彦教授からは、この課題に関わる研究者としてコメントをいただきました。
大学生協連の調査では、下宿生活の仕送りが10万円以上の割合が60,7%(2001年)から30,9%(2017年)に激減。仕送りゼロも3,2%(2001年)から7,1%に増えており、学生の貧困と親世代の貧困が深刻な状態であること。現在貸与型奨学金を5割を超える学生が借りている実態があり、就職先を賃金優先で決定したり、結婚や出産への影響も大きく(もし夫婦二人とも奨学金返済をしているとすればその生活は実に大変)、高等教育の費用負担問題は社会全体の問題であること。政府もこのことには問題意識を持ち、地方公共団体も地方創生予算を活用した若者定住施策の一環として取り組むところが生まれているとし、滋賀県中小企業家同友会がこの課題をよい会社づくりを進める課題として位置づけ取り組もうとしていることに敬意を表しつつ、県として以下3つを提案されました。
①滋賀県下の若者層の経済実態の把握(これは既存の経済指標では捕捉されていない)
②貸与型奨学金返済中の卒業生(または雇用している企業)に対する支援制度の創設
③滋賀県独自の給付型奨学金制度の創設
参加した記者からは「現在支援制度を実施している企業の内容を伺いたい」「返済に苦悩している社員の声をさらに聞かせてほしい」という要望が寄せられました。
参加した同友会役員からは、「行政も若者の定着や女性の活躍を推進すると言うのであれば、実態を調査しそうなるための条件整備をしなければ、スローガンやかけ声だけに終わってしまう」「そもそも若者人口の減少に歯止めをかけなければ、根本的な課題解決にならない。高齢者の雇用延長や女性の活躍はもちろん大切なことだが、現役を終えた方が地域社会を担う役割も重要だし、女性が安心して出産し子育ても自己実現にも取り組める条件整備に力を入れなければ、活躍ばかりが先行して本末転倒になるような気がする」など、当面する課題から本質的な課題への意見も出されました。
このあと、場所を移して懇親会を開催。日本経済新聞社大津支局長の橋立様より「滋賀県の物作りを担っているのは中小企業。人材を確保して技術を伝承し、滋賀県経済を切り拓くには、同友会の皆さんの積極的な取り組みが欠かせません。報道機関としてもバックアップして行きたい」とご挨拶をいただき乾杯。
参加企業の新しい取り組みなど、歓談を通じて活発に情報交換されました。
閉会の挨拶は、滋賀県中小企業家同友会創立40周年事業本部の蔭山大輔本部長より、「同友会を知らせ、広め、仲間を増やすことこそ、滋賀に若者が残る魅力ある企業づくりに欠かせない。10月から同友会を知らせお誘いする取り組みを推進するので、報道関係の皆さんにも是非ご協力を」と呼び掛けられました。(M・H)
「2019年度 滋賀県に対する中小企業家の要望と提案」⇒2019_政策要望 提出用
「社員の奨学金返済問題への同友会の取り組みリリース資料」⇒配布用:中小企業と奨学金調査結果2018.10.04