滋賀県中小企業家同友会

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2019年第2回政策委員会学習討議資料~移民問題~

政策委員会 委員会レポート

2019年6月18日に行われた滋賀県中小企業家同友会第2回政策委員会では、「難民問題」をテーマに学習しました。以下の学習討議資料を公開いたします。なお、学習討議資料ですので、滋賀県中小企業家同友会の公式見解では無いことをご了承お願いいたします。
あなたも、滋賀県中小企業家同友会政策委員会で中小企業や地域に関わる政策課題を学び合い、自社経営に生かしませんか?参加ご希望の方は、滋賀同友会事務局 TEL 077(561)5333 までお問い合わせ下さい。

移民問題             2019年6月18日 滋賀同友会・政策委員会用 Lep By 宮川

「移民」とは?
「他国に移動し、少なくとも12か月間居住する人。(国籍は無関係)」国連事務総長報告書(1997年)

社会的問題としての「移民」には、特定の出身国から来る「大勢の人々」という意味合いが含まれている。移住者数が少数である国籍等の場合、「移民問題」からは除外される。例えば、日本には欧州諸国(欧州文化地域)からの移住者が多少居住するが、日本の人口に比してその規模が非常に小さく、通常の社会・政治論ではこれを移民現象として捉えない。また、より経済力のある豊かな国へ裕福な生活を求めることが多数の移民の動機になっていることから、移民が「経済的移民」を指すことも少なくない。

「移民政策」ではない?
「移民政策」は入国条件、不法入国者の扱い、誘致政策等。
在留資格 特別永住者=旧植民地出身者(在日コリアン)
一般永住者=10年以上居住。資産、技能が条件。日本国籍ではない。
帰化=
日本人配偶者=
定住者=5年を超えない範囲で一定の在留期間を指定して居住を認める者。 永住者と同じ
く日本での就労活動に対する制限はない。
短期滞在・研修・留学

日本に「暮らす」在留外国人はすでに263万人、日本の人口の約2%。この30年間で94万人から263万人に増えている。すでに「受け入れに賛成、反対」という議論を経ずに、すでにこれだけの数が入っている。一方で、在留外国人の絶対数でいうと、統計によっては世界のベスト10入りも果たしている。

2018年6月末現在の在留外国人人口上位5ヵ国。
1位:中国(74万1656人、28.1%)
2位:韓国(45万2701人、17.2%)
3位:ベトナム(29万1494人、11.1%)
4位:フィリピン(26万6803人、10.1%)
5位:ブラジル(19万6781人、7.5%)

OECDの外国人流入者数調査(2014年) ※6 150P
国名 外国人流入者A(万人) 人口B(万人) 人口比A/B% 累計(万人)C 人口比C/B%
ドイツ 134 8211 1.63 1217 14.8
アメリカ 102 32446 0.31 4978 15.3
イギリス 50 6618 0.76 884 13.4
韓国 41 5098 0.80 115 2.3
日本 34 12748 0.27 232 1.8

在留資格のカテゴリーは26。外国人労働者は146万人、つまりは在留外国人263万人のうち6割は労働者。東京に非常に集中している。(※7)
新宿区の外国人比率は、20~24歳では約62%に達している。15~30歳で見ても、約30%が外国人。東京都全体で見ても10代に限れば、約1割が外国人。
改正出入国管理法(2019年4月改正) 今後5年間で外国人労働者を34.5万人受け入れ

なぜ積極的な「移民」受け入れが必要なのか?
・人口減少・高齢化による経済の停滞・後退
社会保障(年金、医療、介護等)の維持困難化
80歳以上人口 296万(1990)→1173万(2020)→1571万(2030)
.2025年には団塊世代が75歳(後期高齢者)に → 介護職員が38万人不足(2025年)
高齢単身世帯の増加 → 社会保障の一層の重要性 「日本型福祉社会論」の破綻(※3 16P)
「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数」(2016年)日本26位/27ヵ国。金額、持続性
が低評価。→ 外国人定住受け入れで改善(※2 36P)
経済の維持・発展
・移民定住を10万人/年受け入れると、30年後に3.8兆円/年の経済効果(※2 59P)
・出生率2.07かつ毎年20万人の移民を受け入れれば、人口1億1000万の維持が可能(20
14年2月24日・「選択する未来」委員会―経済財政諮問委員会)
・1980~89年にアメリカで上場したベンチャー創業者に占める移民は20%。06~12年で
は33%。米国経済のけん引役になっている。アップル(S・ジョブス)、ヤフー、グーグル、アマ
ゾン、FB(※2 84P)
・人口の少ない国で豊かな国(スイス、ベルギー。スェーデン等)は移民比率が高い(※2 89P)

・外国人労働者受け入れと移民の違い
移民=人口減問題への対応
・経済は人口増加と一人当たりの生産性の向上で成長してきた。
・経済成長は人口増か、一人一人の所得、生産性増が必要。生産性=国民一人当たりのGDP
・他の先進国は人口が増えている。賃金も上がっているから豊かになる。
・日本は人口減、給与減でダブルでデフレになる。国が2流先進国の下になっている。
・現時点の日本は人口多い。一億人超は先進国で2つしかない。
・人口減→売れない→コストダウンには人件費下げる競争。所得を犠牲に。
・大阪の工場数 46600社(1983)→15700社
・今後生産年齢人口が減少→賦課方式の年金・医療費をどう稼ぐか?
・中国も数年前から生産年齢人口が減少している。総人口は増えているが、直近5年で65歳以上が
29パーセント増。
・生産年齢人口の推移 2015~60年3200万人減少。高齢者、女性、障碍者の就労による労
働力人口の維持?
・人口3割減る、生産年齢人口は42.6%減る。その結果、個人消費が減る。

・移民に対する疑念
・EU諸国でも移民受け入れの見直しが始まっている(※4)
・外国人が増えると犯罪が増える?→05年から15年で7割減少(※2 73P)
刑法犯と特別法犯を合わせた総検挙件数は、前年と比較し僅かに減少。検挙件数・人員はピーク時
の04年、06年と比べ大幅に減少したが、平成初期(約100万人)の2倍以上の水準。(201
5 警視庁)
・移民にかかる社会コストは、労働力不足の損失より大きい(※4 88P)
・日本人の職が奪われる→韓国の「雇用許可制」が参考に(※2 79P)
・外国人の生活保護割合が高いのは、戦後国民年金に加入できなかった在日韓国・朝鮮人の無年金世
代の高齢化が主な要因。(※2 86P)
・デフレと人口減少は無関係(※4 50P)⇒人口増はインフレ圧力。人口減はインフレ要因にもデ
フレ要因にもなる。労働力不足→賃金増→インフレ(IMF・2014(※1 26P)
・高度成長期(54~73年)の人手不足も外国人労働者に頼ることはなかった(※5 231P)→
労働力人口が5400万人から7500万人へ増えた時期
・”健保ただ乗り”問題/高額医療不正利用問題、出産育児一時金問題(※4 89P)
外国人でも入国する経緯(ビザの種類)によって、日本の公的保険が受けられるケースもある。たとえば、短期滞在の観光ビザを取得して日本にやってくる外国人観光客や、病気の治療目的で医療ビザを取得して来日する外国人は、公的保険に加入することは認められていないが、仕事や留学などで長期滞在(3ヵ月以上)する外国人とその家族に対しては、日本人と同等の扱いになる。ネットや報道などでは、この制度を悪用する外国人が増えているとの指摘も出ているのだが、大前提として、悪用かどうか判断することが困難であり、全てを悪用と決めつけるのは問題。明らかに不正、悪用と断定されるのはごくまれなケース。ただ、総数で公的医療保険に適用される外国人が増えているのは事実。その中に、公的医療保険制度本来の目的・趣旨とは外れたケースがゼロと言い切ることもできないのが現状。悪用があり得るとすれば、他人の保険証を借りて、本人になりすまして受診する、あるいは本来医療目的であれば、「医療滞在ビザ」を取得して治療を受けなければならないのに、留学だと偽って国民健康保険に加入したり、本当は扶養関係にないのに扶養家族として、保険を不正に利用したりするケースが考えられる。日本で保険証を取得すると、被保険者であれば、前年の年収に応じた保険料を支払う義務も生じるのだが、1年未満の滞在では、保険料を払うことなく、治療を受けて、すぐ自国に戻ってしまうという“タダ乗り”と批判されかねないケースもあり得る。また、日本の医療保険制度では、高額な医療を受けても一定以上の負担については保険者から払い戻しを受ける「高額療養費制度」がある。治療目的の滞在は、医療滞在ビザで自費負担となるが、保険を利用することで、高額な医療費を低い負担で利用できることから、あっせんする業者が存在するという報道も一部にある。2017年、厚生労働省が公表した調査結果によると、保険証取得から半年以内に80万円以上の治療を受けた外国人のレセプトは、1年間で1597件あった。もっとも、この中で医療目的であることを隠して保険証を取得したケースはほとんどないと報告されている。
日本の医療保険制度がグローバル化に対応しきれていないのも事実。「国民健康保険は戦前につくられたもので、被用者保険のルーツにいたっては大正時代にまでさかのぼる。国民皆保険になったのは1961年と、すでに50年以上たつ制度で、当時はグローバル化の進展を想定していなかった。人口減少が進行する中、外国人観光客、外国人労働者の増加や、2010年6月から国が推進している、外国人患者を積極的に受け入れることが目的の「医療ツーリズム」などの影響で、日本の医療サービスの良さが海外でも知られるようになっている。外国人であれ日本人であれ、適正にサービスを利用するのはまったく問題がない。現状、明らかに不正というケースは少なく、経時的損失も深刻な状態ではないとされる。だが、将来的に不適切な事案が増えていけば、制度の信頼性を損ねる可能性がある。被保険者の支え合いで成り立つ社会保険において、不正加入や不適切な利用が生じ得る潜在的なリスクが制度にあるならば是正すべき。性善説に立って、このまま放置しておいてしまうと、将来的には制度の根幹を揺るがすような問題に発展するかもしれない。外国人に限らず、医療保険の不正や悪用は許されるものではない。では具体的にどのような対策法があるのだろうか。これまで入管、市町村レベルでは、不正や悪用があるとは想定していなかった。すでに、国も対策に乗り出したところだが、本人確認、被扶養者の認定の確認、資格取得・喪失の確認など、もろもろの厳正なチェックが必要。2020年度にマイナンバーカードによるオンライン資格確認の運用開始が見込まれているが、オンラインで保険証の取得資格確認が容易になる。適正な資格管理は、日本人による不正や悪用を未然に防ぐことにもつながる。ごく一部の不正や悪用が、全て外国人のせいであるかのように喧伝され、排斥運動につながってしまうのは本末転倒であり、それは一番警戒しなければならない。現在はまだ小さな問題かもしれないが、将来的にはさらに大きな火種になる可能性も否定できない。今のうちにグローバル化に対応した医療保険制度の負担と給付の両面について、整備することが国に求められるだろう。

まとめ
世界史を見ても、中国で西暦2~57年にかけて、人口が1/3になっ(※8 6P)て以来の危機的人口減少に直面している日本は、すでに世界有数の「移民受け入れ国」になっているが、問題解決にはきわめて不十分であり、かつ政府が国民的議論を避けて「移民の隠れ受け入れ」のような形になってしまっている。その結果、人口減に対して有効な効果が発揮されないばかりか、疑念として挙げられている諸問題が将来、深刻化する恐れがある。

語学教育の問題

入管法改正に時を同じくして、政府は「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」を取りまとめ、閣議決定しました。外国人との共生社会の実現に向けた環境整備を推進する目的で126項目(予算総額211億円)に上る対応策が盛り込まれ、多言語相談体制の整備や生活サービス環境の改善に加え、円滑なコミュニケーションのための日本語教育の充実に関する施策などが含まれました。今回、適切な言語教育機会や安心して暮らせる環境を整備することが必要不可欠であると政府が認め、推進に動き出したことは大きな意義を持っていますが、その実現には多くの課題が残されています。
これまで、外国人の地域への受け入れ体制整備については自治体に一任(丸投げ)された状況が続いてきました。その結果、外国人が多く暮らしている自治体やボランティア活動の盛んな地域と、外国人が少なく、予算も人材もいない自治体・地域との間で大きな格差が生じています。
特に定住者や外国人労働者の家族、日本国籍を有する海外ルーツの方々や子どもたちなど、日本語学校等で学んでいる留学生以外が日本語を学ぶ機会はその質も量も限定的です。日本語がわからないまま、学ぶ場もなく、日本での生活に必要な行政手続きや医療や子どもの教育等の場面において、多くの困難な状況に直面しているのが現状です。
例えば、海外にルーツを持つ子どもたちの内、日本の学校に在籍しているものの日本語がわからない子どもたちが全国で43,000人以上います。その内10,000人以上が学校の中で日本語支援が受けられず、無支援状態にあることが先日もメディアに取り上げられていましたが、教育を受ける権利の観点からも危機的な状況にあると言って過言ではありません。
日本語を学ぶ機会が得られない子どもたちが、教室の中で友達も作れず、勉強についていくこともできず、孤立して学校に行けなくなってしまうようなケースを筆者は数多く目の当たりにしてきました。母国語も日本語もどちらも中途半端な状況となり、心身のバランスを崩してしまう子どもたちもいます。このような状況に陥っている海外ルーツの子どもたちやその家族は日本への永住・定住を希望している場合が多く、筆者が支援する家庭の子どもたちも、97%は帰国の予定がないと答えています。彼らが日本の学校で十分に学び、成長し、日本社会に巣立っていけるよう適切なサポートを行わないことで生じるリスクは、その子どもや家族に留まらず、日本社会全体に及ぶ可能性が高いのです。
多様な人々が共に生きる社会を実現するために、日本語教育が重要な役割を担うことは間違いありませんが、実は現在に至るまで、日本語教育には法的な足場が整備されていない状況が続いています。一般的に「日本語教師」と呼ばれている人々の「資格」は公的なものではなく、民間の養成講座を受講したり、日本語を教える能力をはかる試験に合格した人々がその担い手となっています。さらに日本語教師の内、常勤で働く日本語教師は全体のわずか13%で、約30%は非常勤で働いており、残る57%は無償のボランティアが担っていることが文化庁の調査(平成29年度「国内の日本語教育の概要」)から明らかとなっています。給与水準の低さから、日本語教師になりたいけれどなれない若者が少なくありません。日本語教育の多くを担うボランティアも高齢化が進み、活動が維持できないと言った問題が生じるなど、今後、増加していく日本語教育の需要にどこまで対応できるのか、担い手の不足が懸念されています。(田中宝紀 NPO法人青少年自立援助センター  定住外国人子弟支援事業部・事業責任者)

難民問題
世界の難民数 6850万人(国連UNHCR 難民高等弁務官事務所・2017年)
ドイツ アメリカ フランス カナダ イギリス 日本
認定数 147671 26764 25281 13121 12496 20
認定率 25.7% 40.8% 17.3% 59.7% 31.7% 0.2%
世界各地で難民が増え続ける一方、難民を受け入れ、支援する国の数は減少しています。難民の6割をわずか10カ国で受け入れている。

2018年12月・国連総会 難民に関するグローバルコンタクト→2020年から第三国定住による受け入れ2~3倍に
難民の80%が途上国に→毎年数百万人が第三国に
2010年 ミャンマー難民 30人/年 → 2020年 60人/年 5年後には100人/年
中東からの難民も
現在 44家族174人 半年間、語学・マナー研修。住居・仕事のあっせんを受ける。
・自治体を主とした地域連携が必要。現在は国主導で地域連携はうまく機能していない(自治体、企業、学校、NPO)
・同国民のコミュニティのサポート。現在は東京などに集中。
・難民への理解、支援方法などの情報提供

「還流」型受け入れから「定住」型受け入れに

※1 日本人の勝算(D・アトキンソン)
※2 限界国家(毛受  )
※3 人口減少と社会保障(山崎史郎)
※4 未来年表の嘘(高橋洋一)
※5 移民亡国論(三橋貴明)
※6 新移民時代(西日本新聞社)
※7 ふたつの日本(望月雄大)
※8 人口と日本経済(吉川洋)

PDFデータ⇒移民問題学習討議資料2019.06.18