2020年度 第4回 政策委員会が、9月24日(木)16:00~17:30までZoomミーティングにて開催され、5名が参加しました。
谷田政策委員長挨拶より「菅新政権の下で、中小企業の再編が行われようとしています。中小企業基本法の改訂を中止しつつ、中小企業憲章にある、中小企業は社会の主役としての位置づけ、また中小企業の声を聴くという姿勢を求めて行く必要があります」と挨拶が行われました。
このあと、滋賀県知事訪問(政策要望)が12月3日(木)の午前か午後に30分で開催調整中であることが報告されました。
続いて、報道懇談会アンケートのまとめが宮川さんより行われました。詳細は追って掲載いたします。
コロナ禍アンケートで寄せられている「中小企業のコロナ対策で将来へのツケを残すことは心苦しく感じている。」という声をどう考えるべきかについて、宮川さんより以下の通り問題提起され、意見交換を行いました。
次回の委員会では、菅政権のブレーンとも言われるデイビット・アトキンソン氏の中小企業再編による生産性向上仮説について、検証することになりました。
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学習会テーマ:(コロナ支援金の)「将来へのツケを残すことは心苦しく感じている。」を考える。
国の増税・緊縮政策でも財政赤字は膨らみ続けている
★「財政再建」等を理由に消費税が導入されて30年になるが、1989年に254兆円だった長期財務残高は2018年度末には1207兆円と4倍に。
★「財政再建」とは、「財政赤字」を返済することではなく「財政破綻」を避けること。無借金国家が目標ではない。財政黒字が必達目標でもない。「統合政府バランスシート」を均衡させ、金融市場の信頼を損なわなければよい。(※1 64p)
★私たちの納税が国家財政の源。企業や国民が納税できなくなったり納税額が減少を続ければ。国家財政は成立しない。したがって、行政や政治家が「財政の余裕がない」として経営者が経営(=雇用、納税)をあきらめてしまうような政策や態度をとることは正しくない。
★行政や政治家は、戦後最悪と言われる”コロナ危機”の今こそ、前述の基本姿勢のもとであらゆる手立てを講じて、経営者に希望を与え続けることが使命。
「人々の暮らしに思いを馳せないで、何の経済学か?」※5
国の財政赤字は家計や中小企業の赤字とは異なる
★世界最悪と言われる日本政府の財政赤字だが、1)債務と同等の資産があり日銀も含めた連結BSは健全 2)国債の国内保有が95%程度あり、超長期償還が可能 3)日銀に眠ってる国債460兆円は永遠に返済の必要もないので無いことと同じ。 など当面は深刻な危機ではない。(財務省は危機をあおりますが・・・・)なので日本国債の金利は世界トップクラスに安く、様々な危機の局面になると信用力の高い「円」が買われる。
(※4 140P)
★政府債務の増大は、それ以上にGDPが伸びていれば何の問題もない。日本の問題は債務増大にGDPが追いついていないこと。
★政府の債務は、そのほとんどが日本国民に対する債務なので、国民にとっては「将来に資産を残すこと」でありツケを残すことではない。(国民がしっかり監視していないと、ハイパーインフレ誘導とか、預金封鎖とか国民の資産を奪われてしまう可能性はある)
★しかし、それまで超健全だった日本の国家財政がこの30年で急激に悪化した原因の特定と、それを踏まえた今後の財政戦略を国民に明確に示さない限り、将来への安心感や希望は生まれてこない。(プライマリーバランスは2020年に黒字化の予定だったが、いつの間にか2025年に変更になっている。その2025年でさえも、2兆4,000億円も足りないというから、まったく話にならない。2025年に黒字化するためには、政府が定めた「成長実現ケース」としての経済成長が見込まれている。その「成長実現ケース」では、GDP成長率が毎年3%と定めているのだから驚き。何を根拠に毎年3%のGDP成長率を見込めるというのだろうか。役人も政府もわかった上で嘘をついているとしか思えない。大前研一)
★国は財政赤字の原因を「社会保障費」の増大としている。たしかに1990年代の20兆円から2016年には48兆円に増加している。しかし日本の社会保障費全体に占める国庫負担の割合は25%程度であり、ドイツ、英国30%、フランス40%、スウェーデン50%と決して多くない。要は特別会計隠しと予算の使い道に対する考え方の問題。また高齢化・労働人口の減少問題も50年以上前からわかっていたことであり、それに対し有効な手を打ってこなかった責任・原因を明確にすることなしには「財政再建」は語れない。
★英国は第二次大戦後、労働党政権で公的純債務がGDPの215.6%あったにもかかわらず「ゆりかごから墓場まで」の福祉国家を建設した。 ※4 60P
★国家財政を有効活用するために、どのような手立てがあるかは、公開されていない部分も多く、政府や財務省、政治家が本気になって取り組まなければベストな方法はわからない。(ある程度類推することはできるが)そのことを前提に幾つかの可能性を考えてみる。
① 「特別会計」を活用する。
△第154回国会(H14年)において石井紘基は、一般会計・特別会計・財政投融資から重複部分を計算したうえで、日本の年間歳出(国家予算)は約200兆円相当あるのではないか、と指摘した。
特別会計は適正な積立水準が示されず、国会での議論もされない。
天下り先確保に流用されてきた。(年金特会、労働保険特会→グリーンピア、サンプラ
ザなど数千の施設)「特別会計から毎年少なくとも10兆円規模を一般財源に継続的に
活用できる」 ※6 208P
② 不要不急の予算を停止・削減する。
日本の財政というのは、1990年代初頭までは非常に安定していた。1988年には、財政赤字を減らすことに成功している。(収入(歳入)が支出(歳出)を上回った)。この「プライマリーバランスの均衡」はしばらく続き、1990年代の初頭には、財政赤字は100兆円を切っていた。が、バブル崩壊以降の90年代中盤から財政赤字は急増し、2000年には350兆円を超え、2010年には650兆円を超え、現在は850兆円を超えている。データを見れば、財政赤字はバブル崩壊以降に急増しているものであり、1991年からの10年間で600兆円も増えていることがわかる。この90年代に生じた600兆円の財政赤字が、この20年で利子がついて、現在の850兆円の財政赤字になっている。ところで、赤字国債が急増した1990年代、社会保障関係費というのは、毎年15兆円前後しかなかった。当時の税収は50兆円前後だったので、15兆円程度の社会保障費はまったく問題なく賄えていた。だから、90年代に積みあがった600兆円の財政赤字が、「社会保障関連費のため」であるはずはない。その答えは、公共事業。1990年代、日本は経済再生のためと称して狂ったように公共事業を行なった。その額、630兆円。1年あたり63兆円。この公共事業費630兆円がそのまま赤字財政となって今の日本の重石となっている。
③ 企業数の減少を食い止める。1999年~16年の17年間で118万社減。
その一方で、非正規雇用は1990年からの30年で870万人→2090万人へ。(社会実情データ図録)
雇用の70%以上(3200万人)は中小企業が担っている。「菅氏はアトキンソン信者」(経産省幹部)だそうだが、中小企業が減少すれば雇用が一層劣化(正規→非正規化=隠れ失業)することは歴史的事実。中小企業憲章の精神に反し、経済成長のエンジンを壊す、このような亡国的政策はとるべきではない。むしろ失業防止対策として、中小企業支援を拡充するべき。
④ 税の民主化。
英国では、法人実効税率19%→24%に、資産売却益(株、土地など)税引き上げ検討。金融取引税の創設
この30年間の消費税は372兆円。同時期に企業の税負担は291兆円減少、所得税・住民税も270兆円の減少。アベノミクスの円安・株高・金融緩和政策のもと大企業の利益は過去最高を更新。内部留保は17年度425.8兆円と1年間で22.4兆円増加。大株主保有の株式時価総額は12年12月(安倍政権発足)の3.5兆円から17.5兆円と5倍に。
法人税率を50%に戻して12兆、証券課税強化で1.2兆円、累進課税適正化で1兆円。金融資産課税1%で24兆円。タックスヘイブン課税で3兆円。(※2 125P)
毎年10兆円が国債利払いとして、納税者から国債保有者に流れている。→日銀が金利のつかない超長期のゼロクーポン債に置き換えて保有。資産課税などで徐々に削減する。
天下りの撲滅=「再就職規制」の徹底と、刑事罰の設定。
⑤ 通貨発行益の活用=井上智洋。※7 一万円のコストは16円。
結論
・バブル崩壊以降の、異常な政務債務の増大政策の検証と原因・責任の明確化。
・国家財政の基礎である国民の担税能力の維持・向上のための経済政策推進。
・財政再建派(財務省)財政拡張派(リフレ派)財政民主化派などを一堂に、今後におけ る国家財政のあり方を研究・議論・提言する場を設置し、広く国民の意見を集約する。
・「現在のように、ディスインフレで国債を日銀が買い入れている限り政府債務を恐れる必要はない。真に恐れるべきは、政府債務の増加を危惧して失われた30年を40年、50年以引き延ばしてしまうこと。増税などすればデフレ不況からの脱却はさらに遠のき、その簡に日本の経済、文化、科学技術は衰退を続ける」(※7 145P)
参考文献
※1 「財政破綻の嘘を暴く」高橋洋一
※2 消費税は下げられる 森永卓郎
※3 データが語る日本財政の未来 明石順平
※4 左派・リベラル派が勝つための経済政策作戦会議 松尾匡
※5 暮らしに思いを馳せる経済学 山家悠紀夫
※6 亡国予算~闇に消えた特別会計~ 北沢栄
※7 MMT~現代貨幣理論とは何か~ 井上智洋