2020年度第7回オンライン政策委員会・学習会が、2月16日(火)16:00-17:30まで開催され、6名が参加しました。
今回は「最低賃金の引き上げ」について、その経済的な効果や中小企業での取り組みに対する考え方・必要な政策について政策委員会相談役の宮川卓也さん(宮川バネ工業(株)会長)よりご報告をしていただき、意見交換を行いました。
宮川会長の報告内容は、以下の通りです。
★中小企業と最低賃金
2021年2月16日 Lep By 宮川
〇最低賃金をめぐる日本と諸外国の動向
・最低賃金をめぐっては、安倍首相が平成27年11月の経済財政諮問会議で全国平均1千円(27年度は798円)を目指すことを表明。30年度は874円まで上がっている。2018年11月12日の会議では、民間委員が消費税増税による消費減退を抑えて経済の好循環を確立するため、最低賃金を継続的に引き上げていくことの重要性を強調。体力のない中小企業に対しては、生産性向上に向けた支援策を強化すべきだと訴えた。
・今、先進国では、デフレを克服し経済の好循環を実現するための政策が重要視されている。中でも、 最低賃金の引き上げによる効果が注目されている。
イギリスは1999年に最低賃金を導入した。実は1993年からの6年間は、イギリスには最低賃金が存在しておらず最低賃金導入による経済効果を研究するためには格好の、雑音のないデータが手に入るという好条件がそろっていた。イギリスでは最低賃金の導入により、予想以上に大きな成果が生まれた。1999年から2018年まで、毎年平均4.17%も最低賃金が引き上げられ続け、最低賃金は実に2.2倍になったにもかかわらず、インフレには大きな悪影響もなく、生産性も上昇した。2018年6月の失業率は4.0%で、1975年以降の最低水準。1971年から2018年までの平均である7.04%を大きく下回った。
一方韓国では2017年に16%の最賃引き上げを行い、失業者の増加が起こっている。最低賃金をうまく引き上げれば、失業率は下がる事例が多く、上がる例は比較的少数派。最低賃金を賢く引き上げ、経営者がパニックにはならず、ショックを与える程度に引き上げるのが効果的だ。アメリカのある分析によると、12%以上の引き上げは危険な水準であるとされている。
イギリスでは、成人の一般労働者の最賃を全国一律で定めた上で、年齢や訓練期間中などの「属性」による例外規定を設けている。4つの年齢区分ごとに最賃が決められ、18歳から20歳では25歳以上の約75%、訓練期間中は最初の半年間に限って50%以下の最賃が設定されている。スキルの乏しい人、若者や失業者にはまず仕事に就くことを優先しうる一方、一般成人の最賃は上げやすい。
また、最賃引き上げをシステム的に組み込んでいる国も多い。フランスは、物価や平均賃金が上がると自動的に最賃が上がる。イギリスは「2020年までにフルタイム労働者の平均賃金(中央値)の60%」という明確な数値目標を掲げ、段階的に引き上げている。
こうした政策の背景にあるのは、「最賃引き上げはみんなにメリットがある」という社会的コンセンサス。最賃引き上げは格差是正、消費拡大、さらには、担税力の強化につながる。つまり、税金を払う社会の支え手を増やしつつ、就労による自立が可能となることで社会保障費が減るという、広く社会の構成員へのメリットが共有されている。
・アメリカでは2021年1月に連邦政府の最賃を現行の時給7.25ドル(750円)を15ドル(1550円)に2025年までに段階的に引き上げる法案が提出されている。チップ労働者(2.13ドル)、10代労働者(4.25ドル)身障者も15ドルまで引き上げる。これは労働人口の20%以上(3200万人)に恩恵が及ぶ。
〇自社や地域の将来と、「最低賃金」
中小企業の経営の基盤である地域経済(国民所得)は今後一層の後退の可能性が大きい。
・世帯当たりの平均所得は90年代半ばの664万円をピークに17年には552万円に低下。さらに中央値では423万円。平均所得金額以下の世帯比率は6割を超えていることと、高所得層によって平均所得がかさ上げされている。ただし、これには単身世帯や高齢者世帯のような所得金額が元々低い世帯も含まれており、その世帯数の割合が影響する。
・一人当たり雇用者報酬で見ても、ピークの97年に516.1万円が2012年には408万。
日本の国民所得の7割近くを占める雇用者報酬は、1995年を100とした時、2009年には90となっている。世界と比較するとアメリカ186、イギリス201、ドイツ121です。消費購買力の源泉である雇用者報酬を下げているのは日本だけ。
・低いのは「最低賃金」だけではない。日本人の賃金は過去20年以上に渡って基本的に下がる一方だったが、諸外国の賃金は上昇を続けている。2018年における日本人労働者の平均賃金は4万573ドル(OECD調べ)だが、米国は6万3093ドル、ドイツは4万9813ドル、オーストラリアは5万3349ドルと、先進諸国は総じて日本よりも高い。(購買力平価)。
各国の平均賃金の伸びを比較すると。OECDのデータでは、日本の平均賃金は25年近くにわたってほぼ横ばいで推移してきたが(厳密にはわずかにマイナス)、同じ期間、米国は約2倍、ドイツは1.6倍、オーストラリアは2.1倍に賃金が増えている(いずれも自国通貨ベース)。
人口が減少しているときに賃金を下げるのはより経済を縮小される。個人消費総額が減り、回り回って結局は企業自身の首を絞めることになる。
・1989年に導入された消費税は2020年度見込みで22兆。国民一人当たり年間18万円可処分所得が奪われている計算になる。
・厚生年金、健康保険、介護保険などの社会保障費負担も増加。労働者一人当たりの月間法定福利費負担は1985年の27740円から2016年には48507円に。介護保険、労災保険以外は労使折半。集計の分母には社会保険未加入の労働者もおり、実際の労働者一人あたりの負担はさらに高額と思われる。(就労条件総合調査/厚労省)
・収入が減少し、税、社会保障費など税的負担が増加してはGDPの6割を占める個人消費が減少するのは当たり前。
〇ではどうすれば????
・労働者の70%を占める中小企業での賃上げがなければ、いくら一部の大企業で賃上げがあっても景気浮揚効果は限定的。
・税的負担の軽減。
・「年金+2000万必要」と言う実態に対して国が見て見ぬふりなので、結果老後不安が解消出来ていない。=消費が伸びない。年金制度の充実が必要。
・「最低賃金」が充分生活出来る金額とは言い難い。ただ地域別最低賃金額×1.15未満の賃金の労働者は全国で13.4%(平成26年)平成21年の9.2%から増加。最低賃金の低さだけを議論しても、国民所得の向上=地域経済の立てなおしには充分ではない。
〇日本の最低賃金の現状と課題
額が低い。現在、地域別最賃の全国加重平均は848円だが、フルタイム労働者の平均賃金(中央値)の約40%にすぎず、OECD諸国では最低レベルだ。ちなみにフランスは60%、イギリス、ドイツ、韓国が50%前後。アメリカは日本よりも低い(750円)が、これは連邦最賃の金額であり、過半数の州ではそれを上回る州別最賃が設定されている。またバイデン民主党政権の誕生を受けて、連邦政府の最賃を2025年に1500円に引き上げる法案も提出されている。さらにチップ労働者(現状2.13ドル)、10代労働者(4.25ドル)、身体障碍者も最終的に15ドルに引き上げる内容。
これは日本の最賃制度の始まりにも関係する。戦後の高度成長の始まりの時期にILOや米国からの「ソーシャルダンピング」批判などの外圧に対応し、かつ国内企業の人手不足=賃金の高騰に対処するために1959年に「中卒初任給協定」として策定され、同年「最低賃金法」が成立した。
2つめは、諸外国の最賃は全国一律の金額であるのに対し、日本は地域(都道府県)別に設定され、その差が大きいこと。全国加重平均を超えているのは7都府県にすぎず、いまだ700円台の県が32もある。
3点目には「家計補助」論がある。主婦パート、学生アルバイト労働が、世帯の家計を主に担う労働ではなく「家計補助」のための労働であり、労働者本人が暮らせる額である必要はないという議論。「同一労働同一賃金」とは相反する場合がある。
根本的な問題として、たとえば時給848円で、8時間×25日働いても手取りは15~6万円程度にしかならず、一人の人間が食べていくのがやっとの金額と言う現状がある。
〇なぜ最賃1500円が必要なのか?
・最賃は「貧困救済」「格差是正」のための社会政策でもあるが、ここでは「経済政策」の一環として検討する。
・コンサルティング会社のマッキンゼーの分析によると、人口が増加すると、何もしなくても経済は勝手に成長し、政府の税収も伸びる。政府は、人口増加という数の力によって、高齢化により増加する社会保障の負担を捻出することも可能。このような状況下であれば、政府は賃金など、民間企業の経営に口を出す必要はない。しかし、人口増加要因による経済成長率が低下すると、政府は生産性向上に注目し始める。一方、日本のように人口が減少すると、経済成長率にマイナスに作用する。経済成長率が下がれば、国は社会保障費をはじめ、高齢化によって増え続ける各種の負担分を捻出するためには、一人当たりGDPを向上させなければならない。何もしなくても自然と一人辺りGDPが上がるのならいいが、人口増加による経済成長と違い、そのような都合のいいことは起きない。国が主導し、一人当たりGDPを高めるための政策を打つ必要がある。
〇「家計補助」論
最低賃金で働いていると考えられる労働者の約半数は、年収が500万円以上の中所得世帯の世帯員、つまりパートタイムで働く主婦やアルバイトをしている子供であることから、貧困世帯の世帯主に対する経済的な支援という本来の目的への効果は期待通りとはいい難い。(就業構造基本調査)
最低賃金水準の労働者を世帯主か世帯員かに分けたうえで、年収ごとに6段階(~99万円、100~199万円、200~299万円、300~399万円、400~499万円、500万円以上)に分類した。その結果、年収が200万円以下の世帯の世帯主は2002年時点で9.5%にすぎなかった(表1参照)。300万円以下でも15%弱。つまり、最低賃金水準の労働者の中で貧困世帯の世帯主である割合はごく一部にとどまっている。
では、どのような人が最低賃金労働者なのかといえば、最も多かったのは年収500万円以上の世帯の世帯員です。その比率は50.5%に達しており、2人に1人という格好。
これは世帯主の配偶者がパート労働者として働いたり、もしくは世帯主の子供がアルバイトしていることを示している。こうしてみると、最低賃金の引き上げで本当に恩恵を受けるのは、むしろ中所得以上の世帯の世帯員ではないか、ということになる。(独立行政法人/経済産業研究 2009)
〇全国一律最賃の是非
2018年度の最低賃金は最高の東京都(時給985円)と最低の鹿児島県(時給761円)で200円以上、1・29倍の格差がある。ちなみに全国平均は時給874円。(滋賀 868円)そもそも最低賃金以前に、賃金水準(月給)にも地域差がある。’17年の賃金構造基本統計調査によれば、全国平均30・4万円、東京37・8万円、鹿児島24・9万円。格差は1・52倍と、最低賃金よりも格差が大きい。
日本が最賃を「地域別」に設定する根拠として、まずは「平均賃金の違い」が挙げられるが、都道府県別の賃金分布を見ると、最賃プラスアルファ程度の時給で働く人がとても多い。むしろ最賃の低さが地域の平均賃金を引き下げているとも考えられる。
次に、「生計費の違い」という根拠については、生計費を生活保護費と比較するだけで足りるか、検証が必要。
生計費(食料費、住居関係費、被服・履物費、雑費の合計)は、自治体の人事委員会が地方公務員給与の改定の際に参考資料として提出している。’18年4月では1人世帯で東京15・4万円、鹿児島12・5万円。格差は1・23倍と、最低賃金(時給)の格差と近似する。
生計費を最低賃金時間額で割ると、生計費を稼ぐために必要な最低労働時間が算出されるが、東京では156時間、鹿児島では164時間)また、「使用者の支払能力の差」も根拠に挙げられる。しかし、データを見ると、「地域間格差」よりも企業規模や産業、職種による「地域内格差」のほうが大きい。
いま「同一労働同一賃金」が政策スローガン化する中で、同じ仕事の時給が地域だけで大きく異なることに、説明がつくだろうか。調査では、健康で文化的な最低限度の生活水準として想定した生活を送るには、時給にして1500円以上が必要だと分かった。現在の最低賃金は最も高い東京都で時給985円。5割以上もの開きがある。労働者の生活に必要な賃金は地域によってほとんど変わらないことも調査で分かった。
日本では地域ごとに最低賃金が異なり、最も低い鹿児島県では時給761円だ。最低賃金の差は物価の違いなどと説明されることもあるが、生活に必要な食品や日用品の価格は全国どこでもほとんど変わらない。都市部は家賃相場など住居にかかる費用が高いが、一方で公共交通機関が発達していて車の所有が必要なかったり、交通費が安価に済ませられたりする。こうした違いを考慮すると、生活に必要な費用は地域によってほとんど変わらないという。
時給1500円で想定しているのは、病気をせず、独身で子供のいない20代男性だ。地方在住で車を持つ場合は、軽自動車を7年落ちの中古で購入し、6年以上使う設定とした。家庭をもったり親の介護を補助したりする金銭的な余裕はない。実際に生活に必要な水準よりも最低賃金が低いということは、国の経済水準に比べて過剰に安い労働力が存在するということだ。こうした状況では本質的に生産性を高める投資が抑えられてしまう。(中澤准教授(静岡県立大)調査より)
〇賃金政策と社会保障の役割分担
最賃1500円を目指す結果、企業の人件費負担の向上→販売価格の上昇は避けられないのではないか?その場合、最賃政策から漏れる、個人事業主(675万)、生活保護受給者(214万人)年金受給者(3200万人)等の問題が発生する。特に収入・貯蓄が最低生活に必要な水準に満たない「生活困窮高齢者世帯」(※1)、とその予備軍が2012年段階で412万世帯(高齢者世帯の24.2%)もある。90年代以降のリストラ、減給を受けた労働者、非正規雇用の増大が原因とみられ、2035年には562万世帯に達すると見られる(日本総研)
〇現状はどうなのか?
★正社員・非正規社員。時給1500円に満たない労働者のボリュームは?(コストインパクト)
★主要国の賃金の推移
1996年の平均賃金は、467万円、2012年には408万
日本の国民所得の7割近くを占める雇用者報酬は、1995年を100とした時、2009年には90となっている。世界と比較するとアメリカ186、イギリス201、ドイツ121。グローバル競争の中で、消費購買力の源泉である雇用者報酬を下げているのは日本だけ。
★中小企業の労働分配率はすでに約72.1%と高い(大企業は47.2%。中小企業ではオーナー経営者の人件費も含まれる場合がある)(商工会議所/2020年)
★最賃アップのためには、生産性の向上(売価のアップ、原価の低減)が必要だが・・・。
〇最賃1500円実現のために必要なこと
★14兆円弱が必要?(労働総研・「最低賃金1500円がつくる仕事と暮らし」175P)
★平成30年度予算98兆円。特別会計197兆円。(内、国債償還費等87.5兆円、社会保障給付費70.3兆円、地方交付税交付金等19.3兆円、財政融資資金への繰入れ12.0兆円)
★デジタル課税、中小企業の法人税実質負担率を大企業並みの10%程度に(現状20%程度)あるいは大企業優遇税制(研究開発減税、(海外子会社)配当益不算制、分離課税、タックスヘイブン税制等)の見直し。MMT(Modern Monetary Theory。S・ケルトン)仮説の研究。
★各社での最賃1500円でのインパクト計算(パート、非正規社員が多い方がインパクトが大きい?)
★発注企業、サプライヤー間で、見積もり明細に基づく賃金原価の是正(買いたたき、便乗値上げ監視)
★一般競争入札主義の転換。
★上記に関する、法律・条令の整備。特に中小企業振興基本条例の内実化。
★ベーシックインカム(ナショナル・ミニマム)の研究
★中小企業経営者内部での学習・議論
〇最賃1500円への具体的ステップ私案
正規社員 3423万人 非正規 2036万 (2017年度)
★最賃1500円を決定(厚労大臣、最賃審議会)ただし実施は、普及、対応のため数年後とする。
★各種制度の実施(最賃アップにより経営が困難化する可能性のある企業は、申請→補助金給付/おおよそ3年~5年を限度とし、雇調金支給に準じた申告を求める。当該企業経営者は教育を受ける義務が発生/原価低減、生産性向上、IT活用など。企業OBなどによる改善指導を受ける)
★厚労省の業務改善助成金の利用は700社(2017年度)程度に留まっており有効ではない。
★物価値上がりが予想されるので年金受給者、生活保護受給者等に対する救済措置検討。
★下請け法整備などにより下請け企業が発注元に対して最賃UPによる原価上昇を織り込んだ再見積もり提示→発注元は原則としてこれを受け入れなければならない。(公取による監視)
★同じく、販売業では最賃UPによる原価上昇を織り込んだ価格改定をしなければならない。
★非雇用の個人事業主(コンビニ、一人親方等)は、発注元やフランチャイザーと最賃に準じた再契約。
個人請負は170万人(厚労省・19年4月)
★上記の措置を続けて、年率8%程度の最賃Upで7年で1500円となる。
〇中小企業支援策の実情
1)「総合相談窓口」の設置。「働き方改革推進支援センター」。全国で相談件数20万件/年を目標としたが、H30年4~10月の約半年で6000件程度に留まっている(H30年10月24日(中小企業・小規模事業者の長時間労働是正・生産性向上と人材確保に関するWG)
2)「業務改善助成金」
予算規模は2014年の35.9億円(2767件交付、執行24.9億円)から2019年は6.9億円に削減(交付542件、執行3億円)。これは中小企業1社あたりわずか200円。交付決定も14年の2767件から17年798件に激減。条件も時間額30円以上引き上げ、同時に新規設備投資(例えば賃上げと同時にパソコン購入など)が必要。最賃引き上げは23~7円で、それに合わせてギリギリの引き上げを行っている多くの中小企業には使えない。
日本商工会議所アンケート(2019年)では、最賃支援策として「税・社会保険料の軽減」65.2%、「助成金の拡充・使い勝手向上」46.8%。フランスでは03年~05年最賃を11.4%引き上げに伴い2兆2800億円の社会保険料事業主負担軽減を実施。アメリカでは07年~09年最賃41%引き上げ、中小企業に対し8800億円の減税を実施。日本の最賃引き上げ支援は11~14年度の4年間で149億円。
2013年度から賃上げをした企業に対して一部を法人税から控除する「賃上げ減税」を実施したが、資本金1億以下の中小企業への適用は34.8%。14年に減税を受けた中小企業は74286社で全体の3%にも満たない。
〇中小企業の賃上げへの努力
企業規模別に賃金をみると、男性では、大企業が380.3千円(前年比1.7%減)、中企業が323.2千円(同0.5%増)、小企業が297.1千円(同1.7%増)、女性では、大企業が270.9千円(同0.1%増)、中企業が248.1千円(同1.5%増)、小企業が228.7千円(同2.2%増)となっており、男性は中企業及び小企業で、女性は全ての企業規模で前年を上回っている。
企業規模間賃金格差(大企業=100)は、男性で、中企業85.0(前年83.1)、小企業78.1(同75.5)、女性で、中企業91.6(同90.3)、小企業84.4(同82.6)となっている。(2019年)
※1「生活困窮高齢者世帯」
年金等の世帯年収が最低生活費(東京で夫婦のみの場合220万円未満/地域・家族構成により異なる)に達せず、貯蓄残高が平均余命期間の赤字補填額(600万円)に満たない世帯。「予備軍」は年収は「生活困窮高齢者世帯」と同等で、平均余命以上の長生きや長期入院などがあれば困窮に陥るとみられる貯蓄残高600万~900万の高齢者世帯。
〇まとめ
1)「最低賃金」見直しの目的は格差・貧困解消の社会政策か?景気浮揚の経済政策か?経済政策ならば、国は喫緊の最重要課題として取り組むべき。
2)中小企業は日本の労働者の、収入(可処分所得)の減少に大きな影響を受ける。
3)経済浮揚政策として見るなら、「最賃」だけでは不十分。本体の賃金に対しても増額が必要。
4)アベノミクス(金融緩和・財政出動・成長戦略)の7年間でも、日本経済は低迷したまま。本当に日本経済を回復させるなら「最賃」も含めた、労働者収入の向上を実現する必要がある。
5)労使見解(中同協)
8.中小企業の労使双方にとっての共通課題
「中小企業家がいかにして企業努力を払ったとしても、労使関係に横たわるすべての問題を企業内で解決することは不可能」です。なかでも、物価問題、住宅問題、社会保障問題、福利厚生施設問題などは企業内では解決できず、当然政府ならびに自治体の問題、政治的に解決をはからなければならないきわめて重大な問題です。これらの問題を解決するために積極的に運動することは、中小企業家としての責任であり、また、自己の経営の労使関係にも重大なかかわりがあるのだ、という自覚をもって同友会運動をより積極的に前進させなければなりません。広く中小企業をとりまく諸環境の改善をめざす同友会運動は、そこに働く労働者の問題でもあり、その意味において中小企業経営者と中小企業労働者とは、同じ基盤に立っていると考えます。
参考資料
最低賃金 1500円がつくる仕事と暮らし(後藤道夫)
不況は人災です(松尾匡)
特別会計への道案内(松浦武志)
最低賃金~生活保障の基盤(日弁連貧困問題対策本部)
人を生かす経営(中同協)