滋賀県中小企業家同友会

インフォメーション

2024年新春例会・賀詞交換会を121人の参加で開催

例会委員会 その他活動

晴天に恵まれ、さわやかで透き通った冬の空気に包まれた、2024年1月30日(火)16時よりクサツエストピアホテルに於きまして、滋賀同友会2024年新春例会・賀詞交換会が121人(内会員96人)の参加で開催されました。来賓には、滋賀県商工観光労働部中小企業支援課参事の大橋伊一郎様始め大勢の方(後述)にご参列いただきました。記念講演は、財政学・アメリカ政治経済論がご専門の、立命館大学経済学部河音拓郎(かわねたくろう)教授より「日本経済の現局面と中小企業の進路~世界の新たな経済政策トレンドにも触れて~」をテーマに1時間30分にわたって 熱くご講義いただきました。

【記念講演】
河音 琢郎氏 立命館大学経済学部 教授
【1】主要経済指標からみた、今日の日本経済、世界経済の様相
今年に入って、日本だけでなく世界的な「大転換期」を迎えている。2021年から始まった新型コロナ・パンデミックが23年に収束を見せ、欧米ではその反動とも言える需要が拡大し、物価と人件費が高騰し経済成長が進んでいる。日本も物価高騰しているが、為替レートが円安に働いているために輸入物価が高騰し全体の物価高騰を押し上げている。過去30年間成長が低迷しているのは日本だけである。これは日本の構造的は趨勢がそうさせている。国内の成長が落ち込んでいるのは、実質賃金の低迷に原因がある。実質賃金が上がらないから国内需要が拡大しない。そこでコストカットをして凌いで来たので長くデフレが続いている。

【2】高圧経済化と新しい経済政策への転換との峡間にある先進国経済
1980年以降、世界各国は緊縮財政を敷き「小さな政府」で民間の経済活動拡大を図ってきた。そのこともあり2008年の世界金融危機以降、世界経済は長期停滞に入ったが、新たな政府の役割として「ミッション志向の大きな政府」「デザイナー・エコノミー」(気候変動政策、先端技術への投資、教育と子育て支援に向けて政府酒豪で投資する)で対応を進めてきた。他方、ポストコロナでインフレが拡大し、欧米各政府は利上げで対応。このことで2022年から23年でインフレのピークが来ている。今では利下げの余地も出ている。日本はインフレ要因が欧米とは違うので、同じような形にはならない。

【3】コスト削減=デフレ構造の日本経済の長期停滞とその隘路(あいろ)の顕在化
日本経済は、1990年代のバブル崩壊後の財政・金融緩和依存になっている。バブル崩壊以降の知識集約型構造への転換が遅れ、あいも変わらず「コストカット経営」を続けることで、デフレ経済からの脱却ができない。一方でグローバル企業である「トヨタ」などは、現地で販売する商品は現地で製造する形態が定着している。日本国内での需要が低迷しても本体は揺るがない。2000年代の小泉構造改革でコストカット=デフレの促進がなされ、2010年代の世界金融危機、東日本大震災、コロナ・パンデミックによって財政・金融政策の総動員がなされ、その依存は今も変わらず、債務に脅かされている。欧米がインフレ対応で利上げをしてバランスを取ろうと躍起になる中、日本政府の債務残高が高すぎるので、長期金利を上げられずにいる。日銀が長期金利を上げると、日本政府自体の財政が持たない。金利差によってレートは欧米に偏る。このことで日本は円安のままである。

【4】日本の中小企業が直面する課題と役割
日本の失われた30年。日本は赤字国債に頼ってカンフルを打ち続けたことで、ICT投資は、80年からは3倍くらいになったが、2000年以降伸び悩んでいる。安倍政権で、新しいカンフル剤としてインバウンド需要に期待している。しかし新型コロナ・パンデミックでインバウンドがなくなり、観光・サービス業が壊滅状態に陥り、ポストコロナでオーバーツーリズムが発生している。こんな状況で外国人観光客はリピーターになってくれるのか?この需要で持続可能なのか?
日本は、エネルギー自給率はゼロ。再生可能エネルギーを使って自給率を上げることによって、乗り切れるかもしれないが、構造的に問題がある。日本は、デフレ脱却のために値上げ・賃上げをセットでやる必要がある。
慶應大学の小熊英二教授によると「低賃金労働ありき」構造から脱却する必要を説く。そのためには、最低賃金の引き上げが必要と。しかし、マクロで言うのはいいけれどもミクロ(中小企業の現場)で対応できるのか?が課題。
日本には、なぜ投資しないのか?日本経済の低迷の原因とされているのは「付加価値生産性の低さ」と言われているが、ここでいう付加価値生産性はあくまで(GDPなどの)数値でしかない。付加価値生産性では「品質」を問われない。統計的に、世界の産業別生産性をみくらべてみると、欧米と日本とでは製造業ではあまり変わらないが、サービス業や情報・宿泊観光では日本の生産性は低いとされてしまう。あくまで統計は金額ベースだから。ここに「質」を入れると変わってくるはずなのに。

【まとめ】
河音教授から、我々中小企業家に突きつけられた課題は「『質』の生産性」を高める努力ではないでしょうか。コストをカットすることで生産性を上げるということにはもう限界に来ています。適正な価格転嫁と給与水準のアップを進めるには、同友会の「経営指針を創る会」で問われる「自社の固有の役割」はなんなのか?自社の10年後の可能性はなんなのか?ということであり、たとえサプライチェーンであっても、自社の製品の価格は自社で決める(コア・コンピタンス)ことのできる「強み」が不可欠ということではないでしょうか?
世界的に「大転換期」に差し掛かっているこんにち、「国民と地域と共に歩む中小企業」の矜持をもって、夢と希望を社員さんと共に抱いて、自社も滋賀同友会も大変換していかなければならないことを痛感させられる記念講演でした。

【ご来賓の皆さま 敬称略・順不同】
大橋 伊一郎 滋賀県商工観光労働部中小企業支援課 参事
河上 大樹  草津市商工観光労政課 主査
村木 裕二  (株)日本政策金融公庫 大津支店 中小企業事業統轄
藤居 耕次郎 (株)商工組合中央金庫 支店長
奥田 芳久  (株)滋賀銀行 地域振興グループ長
西山 悟   滋賀中央信用金庫 本店営業部 営業部長
赤井 靖   長浜信用金庫 七条支店 支店長
今岡 久登  京都信用金庫 滋賀支店 支店長
平元 俊明  (株)京都銀行 草津支店 支店長
筒井 長徳  龍谷大学龍谷エクステンションセンター 産学連携コーディナーター
増田 英紀  びわこ成蹊スポーツ大学 キャリア支援課 課長
清水 ひとみ 公明党 滋賀県議団 議員
坂田 広志  日本労働組合総連合会滋賀県連合会 組織拡大局長
髙岡 光浩  滋賀県労働組合総連合 議長